色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第145回 昔々……84 1995年その4 衝撃の3月(中編) ソウルで僕らを待ち受けていたものは……

もうあと2週間ほどで実写版「宇宙戦艦ヤマト」こと「SPACE BATTLESHIP ヤマト」が公開になります。いやあ、もう、なんかね、ワクワクしちゃってるんですよね!
実はこの映画の製作が発表された時、正直僕は「けっ!」っとか思っていたのですよ。ほら、マンガとかアニメーション作品の実写化で成功した試しってほぼないじゃないすか!(←断言!w) しかも「ヤマト」ですよ? あの、僕らの少年期の不朽の名作「ヤマト」を実写化ですよ? そんなモン、あなた、「けっ!」ってなモンですよ。
でもね、徐々に公開されてきた予告映像の数々を見せつけられて、僕は180度回頭! ですよ。「これはイケるんじゃないのか?」と。もうね、いまや期待度120%であります! いやあ、観る前からヤラレてますな(笑)。一刻も早く観たくって、知り合いのツテで試写会の券とか手に入らないかと画策してたんですが見事空振り。一般試写会の応募も全部ハズレ。試写会組のネタバレトークに耳を塞ぎながら、しかたなく一般公開を待つ身であります(泣)。ちなみに、前売り券の特典目当てにチケット2枚買っちゃいました(笑)。
去年の暮れ公開の『ヤマト復活篇』といい、やっぱりね好きなんですよね『宇宙戦艦ヤマト』が。先だってとある席で『ヤマト復活篇』の映画の話してたら、湯浅監督に「辻田さんは映画に対して優しすぎるw」って言われちゃいましたが、もうね、いいんですよ。『ヤマト』は別格(笑)。でもホント、ヒットするといいなあ。
僕の高校時代からの友人たちも「みんなで観に行こう!」と静かに、でもかなり熱っぽく盛り上がっております。きっとやたらと「オジサン率」の高い観客層になるに違いないですね!

さてさて。
2週間のマニラ出張から帰国後、数日して今度は韓国・ソウルへ向けての出国でありました。
実はこのソウル行き、なんとプライベート旅行でありました。東映動画で苦楽を共にしてる友人と4人で何となくソウル旅行を思いつきまして、で、2泊3日のパッケージ旅行にお出かけです。もうごく一般的な添乗員さんつきのパッケージ旅行ですから、普通に観光して普通に食事して、で、普通に免税店で散在して帰ってくる、っていうヤツ。劇場作品のたびに韓国のプロダクションにお世話になってる僕たちですから、やっぱり韓国は気になるのです。どんな街なのかどんな文化なのか、みんな何食べて頑張ってるのか(笑)。きっかけはそんな軽めな感じでありました。
僕らを乗せた飛行機は定刻通りにソウル金浦空港に到着。入国審査通って、税関通って、到着ロビーへ。仕事じゃないので大きなジュラルミン・ケースもなし。みんなそれぞれ手荷物ひとつの身軽な旅姿です。自動ドアを抜けて広い到着ロビーに出ると、案の定、僕らの名前を書いた大きなカード掲げた韓国人の女性添乗員さんが、僕らを待っていてくれました。「おおっ! なんかこうして自分の名前書いてあるのっていいなあ!」33歳11ヶ月にしてパッケージ旅行初体験の僕は結構ドキドキしておりました。

ところがです! 僕らを待っていたのは添乗員さんだけではありませんでした。ちょっと強面の感じのガッシリとした体格の韓国人の男たちが数人、僕らの到着を待ち構えていたのです! 「◯◯サン、デスヨネ?」一団の中のリーダー格の男が、僕ら4人の中心人物だった◯◯氏に歩み寄って話しかける。うっすらと色の入ったサングラスのレンズの奥で彼の鋭い瞳が光ります。「お迎えに参りました! さっ、どうぞ!」「……へっ?(汗)」と僕らと添乗員さん。「えっ? なに? あなたたちは一体……」

実は彼ら、東映動画と関係の深いソウルのアニメ制作会社・D社の手のモノ、あ、いや、社長さんと制作部長さん、そして制作の方々だったのです。僕らが今日からソウル旅行だという情報を密かに入手した彼らは、なんと、ツアーの添乗員さんの代わりに僕ら4人を引き受ける、と言い出したのです。もちろん僕らは寝耳に水。しかし戸惑う僕らを置いたまま、添乗員さんに社長さんがガンガン何か言ってます。そんな様子を唖然と見ている僕ら。不安げに見やっている同じツアーの他のお客さんたち。添乗員さんと社長さんの会話はもちろん韓国語なので、一体何が話されたのかは僕らにはまるで不明なのですが、「じゃあ、必ず◯時にはホテルに連れてきてチェックインしてください!」という条件で、なんとまあ添乗員さんが折れちゃいまして……(苦笑)。
かくしてD社による韓国ソウル大接待旅行が始まっちゃったのでありました(笑)。考えようによってはコレは拉致(笑)。もはや僕らに抗う術はありません(笑)。「でも、ま、いいか(苦笑)」なんかおもしろいことになってきちゃったのでした。

第146回へつづく

(10.11.16)