色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第166回 リンゴのマークの機材のお話

またしても原稿落としました(汗)。申し訳ないです。
前回もチラッと書きましたが、幾原監督の新作TVシリーズ『輪るピングドラム』の制作に参加しております。7月の放映開始を目前にして、現場はいろいろ緊迫してまいりました(苦笑)。やることいっぱい! でも、楽しいですよ、TVシリーズの現場は。
幾原監督とは『少女革命ウテナ』以来(『ウテナ』では僕は「國音邦生」でクレジットしてもらっておりました)。劇場版『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』から何年ですか? 12年? 13年? とにかくもう、お久しぶりの幾原監督とのお仕事であります。
TVシリーズに参加してるといつもそうなんですが、放送開始が迫ってくると、自然と気持ちがわくわくしてきますねえ。早く皆さんの反応が見たいです(笑)。
地上波の放送の他、CSとかBSとかでもいろいろ放送されるようで、一応全国で見ていただけるようですね。ですのでみなさん、よろしくお願いいたします。乞うご期待!

さてさて。
今回は僕が使ってる機材のお話。
現在僕は『輪るピングドラム』の現場、東京・三鷹のブレインズベースさんのスタジオに日々詰めているのですが、いつものように自前の機材を持ち込んで作業させていただいてます。
先日キーボードの不調がひどくなっちゃいまして、新しいものを買ってきて取り替えました。キーボードは消耗品。この古くなったキーボード、本体のデスクトップ機を買ったときについてきた(というか、一緒に買った)もの。ずいぶんいろいろな作品を旅したキーボードでした。というのも、いまここ三鷹のスタジオで使っているこのマシンは、最初、新井薬師の東京ムービーで劇場版『北斗の拳』三部作に参加したとき、その1作目の制作途中で購入したものであります。確か2006年だったですかね? MacProの初代タイプです。そう、バリバリのMacユーザーの僕です(笑)。
最初、東京ムービーさん所有のマシン(奇跡的にMacがあったのです!)をお借りしていたのですが、実はちょっとパワー不足。とりわけポスターとかの大きな版権スチールの作業をしたり、Photoshop使っての本編のカットの彩色データのバッチ加工の連続技とか、かなりアップアップで時間がかかっちゃって大変だったのです。当時は大泉の東映アニメーションでの仕事があっての掛け持ちでありまして、日中→大泉、夕方〜朝→新井薬師という生活。なので、マシンの力で作業時間が少しでも短縮されるのであれば、多少の自腹切り、持ち出しは仕方なし、でありました。で、発売された新型(当時)を自腹買い(!)。
それから約3年間、新井薬師のスタジオで劇場版『北斗の拳』三部作とその合間に同じく『北斗の拳』のパチンコやらパチスロやらに参加。なんとか終わったところで新井薬師のスタジオを引き払いまして、これらの機材、今度は大泉へ。東映アニメーションのスタジオに持ち込んで使っておりました。

東映アニメーションでの僕ら色彩設計の機材は、実は基本撮影さんのお下がりマシン。撮影さんが使ってたマシンならバリバリにハイパワーかと思いきや、なんとこちらも正直パワー不足。なので「ええい! 自分の機材使っちゃえ!」ってことに。
で、東映でもこのマシンで劇場版『ゲゲゲの鬼太郎』やら『STRONG WORLD ONEPIECE FILM』やら『マリー&ガリー』やら、その他諸々の作品をこのマシンでやりきりまして、去年、今度はここブレインズベースさんへと運んできたわけです。
僕の場合の基本の機材のセットは、デスクトップ機MacProとキーボード、WACOMのペンタブレットintuos、モニターが2面(EIZOの24インチColorEdgeと19インチのサブモニター)。それに必要に応じてA4のスキャナー、外付けのHDD、ああそうそう、それと無停電装置(笑)。まあ、だいたいそんな感じ。ってなんだ、とんでもない大荷物。自分で書き出してみてビックリ!(笑)
一方、『キャシャーンSins』に参加した時もマッドハウスさんに実は同じく基本の機材セットを揃えました。こちらは制作が終わったあと一旦神保町の小学館ミュージック&デジタルエンタテイメントさんへ持ち込んで『極上! めちゃモテ委員長』。そしてこちらは途中でふたたびマッドハウスさん(今度は新中野)へ運んで『四畳半神話大系』をやりきりました。で、こちらも今はブレインズベースさんに。諸々のチェック用に活躍中です。ちなみに自宅仕事部屋にも同じセットがあるので、なんと都合3セット。なので毎年、確定申告で減価償却中です(笑)。

たいていの制作会社さんはWindowsの機材をメインに使われていまして、先方のスタジオで機材をお借りするとなるとどうしてもWin機になっちゃいます。しかも機種によってOSや機材のスペックにやはりバラツキが多いのですね。それと、やはり気になるのはモニターです。これこそ機材によってバラバラで、自分が今見てる色は果たして正しいのか? という問題が。これが実はイチバンのストレス。
なので、できるだけ日頃使っている環境を統一した方がストレスなく作業に集中できるという観点から、必ず自分の機材のセットを持ち込ませていただいているのです。
そもそもどうしてMacだったのかは、先だってもここで書きましたが、山内監督による「布教活動」と東映でのデジタル環境がMacだったからなのですが、一応Windowsも使えることは使える僕ではありますよ。ですがやはり相性はMacがイチバンです。Windowsって無骨で男性っぽいのかな? Macは直感的に優しいフンイキ? 女性っぽいのかな?で、僕はやはりMacに惹かれちゃうのであります(笑)。
ただ、これから先、どんな方向に僕の仕事が向かっていくのかによって、いろいろ変わっていくのでしょうね。もし3DCGとかに向かうとなれば、使うアプリケーションによってはやはりWindowsだったりするんでしょうしね。どうなのかな?
それでも僕は、このリンゴのマークの機材から離れられないんだろうなあ、と思うのですね。

第167回へつづく

(11.06.28)