色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第168回 昔々……105 1995年その25 ホテル缶詰ミーティング合宿の行方は!?

この週末、2日間だけお休みもらって、四国は香川県さぬきまで小田和正のライブに行ってきました。大串半島の突端、瀬戸内海の海原をバックに繰り広げられた3時間半に及ぶ熱い野外ライブ、最高でありましたよ! いやあ、いい夏休みでありました。
で、日曜、この日に日本全国的な大イベントがあったんですよね。そう、TVのアナログ放送の停波です。24日正午停波ってことで、そのとき僕は金比羅さんの長い石段の上でありました。その瞬間をTVの前で体験できなかったのは残念。物心ついてから40数年、ずっとお世話になってきたTV放送の節目です。このTVのおかげでアニメーションに魅せられて、そしてこうしていまここにいるわけですから、そんなTV放送の歴史に感謝であります。
夜に帰京したのですが、僕の仕事部屋のTV受像器はアナログ機(BDデッキ接続で地デジ化は済んでますが)で、実は旅行に出かける直前までアナログ波の方で視聴してました。なので、帰宅したらTV点けて砂嵐を確認しよう! と半ば楽しみに帰ってきたのです。
で、TV点けてみたら……あ? あれ? 普通に放送が見られます(汗)。
「あ〜、そうだった!」
実は我が家のマンションはそっくりケーブルTV回線だったので、ケーブル局で地デジのアナログ変換の配信をやってるらしく、何のことはない普通に見られちゃってる。なんだかちょっとガッカリです(笑)。

さてさて。
森下プロデューサーの号令の下、第一ホテル光が丘(当時)に集められた劇場版『DRAGON BALL 最強への道』のスタッフの僕らであります。なんかやたら広いミーティングルームのついてる大きな客室に集められまして、会議は始まったわけです。
まずはいろいろ現状についてのお話。スケジュールの話とか、すでに決定してるCG処理発注の話とか、スポンサーと雑誌発表の話とか、そんなこんないろんな枠組みの話とか。で、そんな前振りがちょろっとあって、さて一気に本題に突入です。

「集まってもらったのは他でもない……」という切り出しではなかった気がしますが(笑)、結構緊急かつ深刻なお話。実はこの期に及んでシナリオの構成を変える、というのが今回の本題だったのです。
すでに夏以降今日まで絵コンテ作業は進められてきてはいるのですが、なかなかコレが遅々として進まず、といった状況ではありました。で、途中まででき上がったコンテをもとにすでに作画はINしていたのですが、「ちょっと待った!」と。
この『最強への道』の筋立てですが、基本としてはブルマと悟空の出会いからレッドリボン軍をやっつけるまでのお話。すべてを原作どおりに作ってみせるような尺は当然ないわけで、いくつかのエピソードを選んで繋いでまとめあげての脚本になってはいるのですが、どうもそれが今ひとつ盛り上がりに欠ける、みたいな印象なのだそうです。それで脚本段階にまで遡って、でき上がってる脚本のエピソードをブロック分けにして並べ替え、必要ならば書き足してでもなんとかしよう、というような話なのでありました。この辺の話、どなたが言い出したことなのかは不明。こういう話って、普通なら企画関係と脚本家と監督とで内々にまとめて変えるものだと思うのですが、でも今回こうして合宿みたいなことまでして「なにか突破口を」みたいな状況になってるのは、ちょっと異常なことではありました。なのでミーティングの場内も尋常じゃない感じがヒシヒシでありました。
そんな感じでミーティングに突入。最初はみんなあまり口を開かなかったのですが、それでもやがて喧々諤々なミーティングに。たしか部屋にはホワイトボードか何かがあって、アシスタント・プロデューサーがそれにいろいろな意見を書き留めながら、エピソードの順番の入れ替えのプランを作って行ったのですね。
で、そんな中、僕はというと……すみません、ほぼ居眠りしてました(爆)。
というのも、この時期僕は劇場版『セーラームーンSS』の追い込みに入ってて、ほぼ毎日朝までコースで作業続き。寝不足もピークにさしかかってたのです。なので、そんなミーティングにかり出されてはきたものの、超絶な眠さには勝てず、思わずコックリコックリと……。で、気がつくと、なんかミーティングは収束の方向に向かっておりました(汗)。ひととおり議論は尽くされ、いくつかの組み替えを行うことになったような結論でありました。

で、「この日の議論の結果を持ってかえって再検討します」みたいな……。え〜? ここで話し合って決定じゃないんだ?? ……とまあ、そんな感じ(苦笑)。なんかやたら疲れが。この時、時計の針はもうすでに翌日へとオーバーランしておりました。
僕はそのあとスタジオに戻って劇場版『セーラームーンSS』の作業で泊まり。もうね、誰がなんと言っても、その時の僕には目の前のて劇場版『セーラームーンSS』の方が大事でしたから、「そんなミーティングに呼ばれて拘束されてもなあ」みたいな気持ちがほとんどだったのは事実。そして結局のところ、肝心のシナリオ構成問題はそれほど大きな変更も結果的にはされなかったような……。そんなナゾの一夜の合宿であったのでありました。

あ、そうそう、その日その客室は朝まで借りていたワケで「せっかくだから誰か泊まっていけ!」と森下さん。ということで、後片付けも兼ねて長峯くんと境くんがお泊まりでありました。あれ? あのベッドルーム、ダブルベッドだったような記憶が……。どうだったんでしょうね? ←ナニが?

第169回へつづく

(11.07.26)