第180回 『輪るピングドラム』色彩設計おぼえがき その7
ただいま東京・池袋のサンシャインシティにあるナムコ・ナンジャタウンにて『輪るピングドラム』とのコラボ企画「ナンジャタウンで生存戦略ー!!」が開催されております。で、そこへ先日ピンドラスタッフ数名で行って参りました。一緒に行ったのは脚本の伊神さん、助監督の山崎さん、キャラデの西位さん、演出の金子さん、そして僕。来場者用の寄せ書きノートにみんなで描いたり、記念写真撮りあったり、企画モノのスウィーツたちをみんなで食べまくったり、5人でワイワイがやがやまるっきり遠足でありました(笑)。いやあ、楽しかったです。
それにしても、こういうタイアップやコラボレーションのイベントって以前の僕はちょっと斜に構えちゃって敬遠してたんですが、なんか『ピンドラ』のイベントは不思議と行きたくなっちゃうんですよね。でもね、当然一般の『ピンドラ』ファンの方々がいらっしゃってるワケじゃないですか。そんな方たちが真剣に展示に見入ってたり、コラボのスウィーツを楽しそうに食べたりしてるのを目の当たりにすると、いやはや、なんか異様に緊張しちゃう瞬間がありますね(汗)。
今後もまだちらほらと企画モノがありそうなので、またみんなで行ってきたいと思ってます(笑)。
さてさて。
第5話 だから僕はそれをするのさ 絵コンテ/幾原邦彦 演出/そ〜とめこういちろう 色指定/齋藤亜沙美
赤坂見附駅での事件で怪我を負って入院中の九宝阿佐美を見舞う真砂子が赤い玉のパチンコ銃で額を狙い、離婚別居中の父とのデートがいまひとつだった苹果は、さらにはゆりと仲よくデート中の多蕗を目撃してしまい、傷心の土砂降りの雨の中、陽毬に誘われ高倉家での夕飯だったが、運命日記をめぐり晶馬とケンカし、さらにクリスタルワールドでひと暴れの結果、雨の中を疾走するトラックの扉に引っかかったペンギン帽を追って冠葉と1号が自転車チェイス! ……という5話。
5話はアートランドさんのグロス制作回でした。絵コンテは幾原監督で、演出以降作画彩色までがアートランドさん担当。色指定さんもアートランドさんの方でありました。あ、作画陣の中心メンバーはこちらで手配したんだっけかな? そしてまさかの「パンチラ回」(笑)。
『輪るピングドラム』では「原則としてパンチラ禁止」というのが暗黙の了解でありました。スカートの中見せるとか下着姿とか、いわゆる「深夜アニメ」にありがちなそういう要素、お色気系な要素は、サスペンス&ミステリーなこの作品にどうも似つかわしくない感じ。ま、2話ではペンギンがパンティー&ブラジャーかぶってましたが。っていうか、それ以上に第1話からプリンセスがこの上ない脱ぎッぷりでありましたけど(笑)。
ただし、自然な芝居の流れで見えちゃうのはまあ仕方なし的なところは余地としてあったわけですが、5話では苹果となんと冠葉までパンツ見えてしまいました。僕個人の感想としては「え〜? 見せなくてもいいじゃん!」だったんですが、まあ監督がOKならば致し方なしというところでありました(笑)。
で、まあその、苹果のパンティが白、というのはまあ当然といえば当然(げほげほッ)なのですが、冠葉のピンクってどうよ? と(笑)。これ、僕の指示ではなかったハズ。色指定の齋藤さんが決めたのか、演出のそ〜とめさんの趣味か。う〜む、僕はピンクって言わなかったよなあ、たぶん……(記憶が曖昧)。
実はこの冠葉のピンクのパンツ、僕はラッシュチェックの時に見てなかったんですよね。放映直前に白箱DVD見てびっくり。で、放送後にBlu-Ray&DVD用に色を修正しちゃおうって考えていたんですが、どうも小泉豊さん岩崎愛さんホストのUSTEAM放送「こっそりピングドラム」をはじめ、ネット上のあちこちでなんかビミョウにウケちゃってたので直しづらくなっちゃって、結局そのままピンクであります(笑)。まあ結果オーライでいいかな。こういうところもまあみんなで作ってるアニメの面白いところだなあと思ってます。え? 何色に修正しようとしてたかって? それはヒミツです。
この5話ではトラックを追いかけるシーンが雨の夜なワケですが、背景美術の色味に対してキャラとトラックの色味で青を意識的に強く出してます。こうすることでキャラとトラックが画面のバランス的に締まって見えて、疾走するスピード感と緊迫感をより感じられると考えました。また、撮影処理の雨が上から乗ることを考えても、青味を強くして硬めの調子にキャラを作っておく方がよいというのも計算でした。演出のそ〜とめさんからは「青みが強くない?」との指摘はあったのですが、「これで行きたいです!」とお願いして断行。結果、計算どおりの画面になったと思います。
ちなみにこのシーンで登場のトラックは3Dのモデルを使用しました。確かライセンス・フリーの3DCGのモデルをどこかのサイトで買ってきたハズ。そのモデルに越阪部さんデザインの「GOOD-BYE運送」のステッカー素材を貼り込みました。このトラックの色味も当然僕の方で調整です。psd形式のサンプル画像をキャラクターの場合同様にBGボード上に置いて、その上に各種調整レイヤーを乗せて(今回は「レベル補正」+「色相彩度」+「レンズフィルター」)大まかなバランスをつくり、さらに細部は個別に調整して決め込んでいきます。モデル上、運転席はフロントガラス素ヌケになっていて、でも中が見えちゃうと運転手の問題とかあって面倒なので、見えないように暗い色で思いっきり塗りつぶしました。『輪るピングドラム』では、このあとの話数でも様々な3DCGの素材が登場してきますが、ほとんどの場合、こんな感じで色味を作ってます。
とにかく、ここ何年も演出込みでグロス制作でお願いする仕事がなかったこともあって、なかなか上手くいかないこともあったりして、僕的には少なからず反省点の多い1本であったのでした。
第181回へつづく
(12.03.01)