第23回 昔々……(18) 『聖闘士星矢』その5 教えられたこと、肌でカラダで憶えたことの話
引っ越しをすることになりました。結婚して7年間住んできたマンションが、やっぱりどうにも手狭になって、それでちょっと広い物件に引っ越すことになったのです。
問題は荷造り。そもそも奥さんは荷物の少ない人なので超余裕なんですが、ご想像の通り僕は……(汗)。それでも少しずつ始めたのですよ、箱詰めを。
ところがですよ、その荷物を詰めた箱のおかげで身動きが取れなくなってしまいました。ふたつ、みっつの段ボール箱で自室の床が見えません! ああ、確かに狭いわ……。
ということで、本番の引っ越し前に、可能な限り自力で新居に荷物を運ぶことに。まあ、近所なんですがね、新居は。この暑い最中に地道な努力を強いられてます(泣)。
ところで、こうして『聖闘士星矢』の昔話を書いてる間に、新作の情報が正式にオープンになりました『聖闘士星矢 冥王ハーデス・エリシオン編』(http://www.toei-anim.co.jp/sp/seiya/)。実は現在、荒木さんをはじめ『冥界編』のスタッフで、この冬放送開始(スカパー!)に向けて制作中なのです。もちろん僕も参加してます。
このシリーズで、車田先生のオリジナルの原作の最後までやります。途中の長いブランクを挟んで約20年。いよいよ『聖闘士星矢』のシリーズも最後に。乞うご期待です!
さてさて。
第26話以降、3〜4話に1話程度の割合で台湾の会社への一括動画仕上げ発注が継続的にスタートしまして、よって僕も「台湾出し話数」は色指定・検査を担当させてもらっていました。番組の評判も視聴率もなかなかで、放送も2クール・半年どころか、2年目に突入していました。番組も「十二宮編」に突入し、内容的にもドンドン盛り上がってきていきました。
TVシリーズの楽しいところは、やはりローテーションに入って作品に参加していけばいくほど、「次はどうなっていくんだろう?」と、TVを観ている人たち以上に盛り上がっていくところです。それまでは、何か問題のあるときだけ呼ばれていた僕ですが、こうしてがっぷりと作品に参加させてもらっていくと、ちょっとクサイ言い方ですが(笑)、その作品に対する愛情がググッと育っていくモノなのですね。だんだん自分が、誰よりもその作品のファンになっていく、そんな感じ(笑)。
また、コンスタントに関わっていく中で、演出さんたちにたくさんいろんなコトを教えてもらいました。この頃の『星矢』の演出陣は、CDの森下さん、勝間田さん、明比さん、菊池さん、山内さん、そして石崎さんの6人が中心。数多い東映動画の演出さんたちの中でも、なかなか“濃い”面々です。さらにそこへ、若い演出さんたちが、少しずつ加わっていきました(石崎さんは制作会社ライフワークさんのグロス回担当だったので、残念ながら石崎さんの演出回には僕は参加できませんでした)。
例えばカットのつなぎ方の意味性や、レイアウトとそれを捉えてるカメラのレンズ持つ意味(広角なのか望遠なのかとか)、原画とタイムシートとタイミングのことなどなど。職種の域を越えて、より演出的な分野の様々なことが身についていった気がします。
一緒に仕事をさせてもらっていく間に、ことあるごとに質問したり、誰か別の人が訪ねてるのを横から聞いて憶えたり。とにかく演出をはじめ多くのスタッフたちと近い場所で、数多く一緒に作品を作っていくうちに段々身についていったことがたくさんありました。
やっていくその中で「今回はこうしたけど、次回はこんなコトも試してみようか」という具合に、じぶんなりにいろいろなコトを考えてみて、打ち合わせでもドンドン自分から発言して提案してみたりして、新しい処理の試みなどを画面に足していけたりもしました。
特殊なイメージシーンの特殊彩色ひとつとっても、ただキャラの色味を考えるだけでなく、撮影処理とかも含めていろんなコトを次々と試せたのも、“濃い”演出陣とこの『聖闘士星矢』という作品であったからだな、と思っています。
そしてこの時期、何よりイチバンの勉強になったのは、自分がヘマをして怒られたコト(笑)。顔から火が出るような思いをした失敗は絶対に忘れないし、2度と同じ過ちは犯さないモノです。肌で憶える、カラダで憶える、というか(笑)。
とりたてて手取り足取り教えられたということだけではなく、そんな風に数多くの経験を重ねていくことが、やっぱり若い頃には絶対必要なんだと思います。僕にとってそれが『聖闘士星矢』だったのは幸運だったと思います。
さて、人気作品となった『聖闘士星矢』、その人気は劇場版公開へとつながりました。劇場用第2作目『聖闘士星矢 神々の熱き戦い』の製作が決まりました。劇場版1作目は残念ながら参加させてもらえなかったのですが、今回は僕もバッチリ参加させてもらえることになりました。そして監督:山内重保。
さあ、山内さんです!
■第24回へ続く
(07.07.24)