第43回 もうすぐラストだ!『墓場鬼太郎』 僕のご幼少の頃の東京の話
春3月。3月といえば毎年恒例、JRのダイヤ改正ですね!
特にとりたてて“鉄”な人ってわけではない僕ですが、書店の店頭に置かれた分厚い時刻表の表紙の「ダイヤ改正」の文字を見ると、無性に嬉しい気持ちになります。皆さんもなんか気持ちがウキウキしてきませんか? なんか、どこかへ鉄道で旅したくなりません? ……あれ? おかしいなあ。
その今週末15日に行われるダイヤ改正に合わせて、実は「パスネットカード」が使えなくなります。みなさんご存じですか?
「パスネットカード」というのは、東京首都圏のほとんどの私鉄各線をこれ1枚で切符買わずに乗り降りできるプリペイド・カード。登場した時は小躍りして喜んで日々お世話になってた僕ですが、私鉄+JR東日本も利用できるようになったSUICA、PASMOの登場で、今では僕もすっかりSUICAの人だったり。
で、手元に残っている未使用のパスネットカードを、実は現在必死で消化中です。消化って言ったところで日々の通勤くらいしか使い道はないので、どうがんばっても使い切ることは無理。残っちゃったらそれはそれで、まだ当分は自販機で切符購入に使えるし、あるいは窓口で払い戻ししてもらうこともできるんですけどね。
それでもずいぶんお世話になったパスネットカード。敬意を払って最後まで使ってみようかなと、そう考えたわけですね。
ということで、暖かくなって自転車日和全開なのにも関わらず、地道に電車で通勤しております(苦笑)。
さてさて。
絶賛大好評放送中の『墓場鬼太郎』ですが、残すところあと2話となりました。
先週放送の9話を観たうちの奥さんから(すみません、ちょいネタバレですが……)「鬼太郎って3年も溶けてるの? じゃ、次は3年後の話?」という素朴な質問。まあ、厳密に3年後の話ってワケではないのですが、9話から少し時間が経ちまして、今週放送の第10話「ブリガドーン」は、東京オリンピック直前のお話になってます。なので、昭和37〜38年くらいのお話。ちょうど、僕が生まれた頃のお話です(笑)。
今回『墓場鬼太郎』に参加させてもらって嬉しかったことのひとつに、昔の東京の姿や生活を映像化できるってことがありました。アニメ『墓場鬼太郎』の舞台は、太平洋戦争終戦より少し経った昭和20年代の最後から、東京オリンピックに沸いた昭和39年くらいまでの約10年くらいの間の東京です。
僕が生まれたのは昭和38年の4月。僕は東京生まれ東京育ち。根っからの東京ッ子、中野ッ子です(笑)。その翌年秋には東海道新幹線が開業し、10月10日には東京オリンピックが開幕しました。聞いた話では、母がまだ1歳の僕を抱いて、聖火リレーが青梅街道を走るのを見物しに行ったそうです。そんな記憶も、東京オリンピック自体も記憶も当然僕にはありませんが、その頃の風情は4歳頃くらいまで色濃く残っていました。
自宅前の路地は未舗装の土の道路で、雨上がりはどろどろになったものです。道路の脇には板でフタしただけの側溝、いわゆるドブですね(笑)、がまだありました。当然トイレもくみ取り式。定期的にバキュームカーが来て、ゴゴゴゴ〜と音を立てて吸い上げているのを、庭の端から遠巻きに眺めていたものです。
近所には地肌むき出しの崖があって、そこには防空壕として使われた横穴がまだ残っていて、立ち入りできぬように封鎖されていました。
よく親と祖母に連れられて出かけた新宿、東口はいまのスタジオアルタの場所に“二幸”という食品デパートがあり、靖国通りにはまだ、都電が走っていました。親に連れられて確か九段の靖国神社あたりへ出かけた帰りに1度だけ、新宿の新宿松竹の前(いまはなくなっちゃいましたね、新宿松竹。新宿区役所の交差点あたり)まで、都電に乗って戻ってきた記憶が残ってます。新宿西口にはまだ超高層ビルなどなく、淀橋浄水場の跡地そのままでありました。中央線の国電も、床が板張りのチョコレート色の車両がまだ走っていたものでした。
『墓場鬼太郎』の制作準備のため、大量の書籍や写真データを用意してもらいました。「ああ、これ知ってる、憶えてる」っていうものがいっぱいで、実に楽しい(笑)。かなり楽しんで読んだり見たり眺めたりしています。家電とか生活雑貨とか、もうね、見るものみな懐かしい(笑)。
で、このフンイキをどうやって画面に出せるかな? と。
実は『墓場』のスタッフってかなり若いのです。演出のうえださん、角銅さん、芝田さん、佐藤さんは僕より年上ですが、地岡監督はじめ、演出の羽多野さんや美術の倉橋さん、演出助手さんや制作スタッフはみんなまだ30代、20代の若者揃い。色指定さんも、僕と同年代の佐久間さん以外はみんな若者でありました。なので、その頃のフンイキとか体験的に知ってる“年長組”は、細かなところにこだわりがあって、自ずと力が入ります(笑)。
また今週放送の10話の美術打ち合わせでは、担当の美術さんが当時の新宿に詳しく(僕よりもだいぶ年長な方なのです)、資料用に用意した当時の写真を前に、打ち合わせそっちのけで僕と美術さんとで盛り上がってしまいました(笑)。演出の羽多野さん、話についてこれず汗ジトでしたね(笑)。
そんな『墓場鬼太郎』、僕も含めた“年長組”のこだわりも、いろんなところに感じていただければと思います(笑)。
■第44回へ続く
(08.03.11)