第53回 昔々……(34) 鮮やかなる神々の世界を! 『天上編 宇宙皇子』その2
先週実に3本のコンサートに行ってきました。いやあ、さすがにこんなのは初めて(笑)。重なるときは重なるんですよね(笑)。
まず1本目は小田和正のコンサート。さすが超メジャーな感じでど〜ん! と1万人規模の大規模ライブでありました。JR新横浜駅すぐの横浜アリーナでの公演だったので、もうね大人は迷わず東京駅から東海道新幹線(笑)。のぞみ新型の700系車両で往復です(笑)。
実は僕、オフコースの頃からの30年来の小田和正ファンであります。還暦越えた彼が、まさかこんなにブレイクしちゃうとは思ってもみませんでしたよ(苦笑)。あ、いや、嬉しいんですけどね(笑)。
2本目は恵比寿のライブハウスで松尾一彦。彼は元オフコースのメンバーの1人でありまして、こちらは70名限定のこぢんまりとしたアットホームなライブでした。彼は僕より9つ上の物静かなアニキな感じ(笑)。彼は大ホールよりもライブハウスでしっとり、がいいですね(笑)。
そして3本目は一青窈。大宮駅前の大宮ソニックシティ大ホール。こちらは2500席の中規模ホールであります。彼女のコンサートに行ったのは今回が初めてだったのですが、いやあ歌うまいです! CDで聴く印象よりもシッカリ聴かせる感じがGOOD。しかもライブは遙かにはっちゃけてまして(笑)、実に楽しいコンサートでした。
で、仕事柄、コンサートで気になるのはステージや照明効果などのビジュアルの演出です。いやあ、コンサートの照明ってすごいですよ! 曲順や曲調に合わせて様々なライトを組み合わせて空間を作り上げていきます。歌っているアーティストやステージのみならず、僕らのいる客席にも巧みに照明を投げて、ホール全体の一体感を作り出していくんですよ。これはね、ライブのDVD観ただけじゃ伝わりきらないもののひとつです。光と色。アニメやってる人たちは、是非とも機会作って、お気に入りのアーティストのコンサートに足を運びましょう!
さてさて。
いよいよ動き出したOVAシリーズ『天上編 宇宙皇子』です。
監督は今沢哲夫氏。今沢さんとはこの作品で初めてご一緒させていただきました。この『天上編 宇宙皇子』がきっかけで、後に劇場用作品『遠い海から来たCOO』も参加させていただくことになります。
で、全13話を今沢さんと梅澤淳稔氏、吉沢孝男氏の3人のローテーションで絵コンテ&演出でありました。
前回も書きましたが、僕はキャラクターの色彩設計と各話の色指定を担当させてもらいました。全13話のシリーズではありますが、テレビと違って毎週納品とかじゃないので、原則、全部の話数の色指定と検査も任せてもらえるということでした。キャラクターの設計やったら、やっぱり色指定と検査もやりたくなっちゃうのですね。並行して参加させてもらってた東映ビデオ系のOVAもそうですが、この時期、僕の仕事の流れはそんな風に「全部自分でやる」というものが多くなっていました。
さて、宇宙皇子のキャラクターの設計です。
『天上編 宇宙皇子』の原作自体は小説なのですが、表紙画などのヴィジュアルはいのまたむつみさんが描いていました。なので、大まかにはいのまたさんの画集(?)かなにかを参考にした記憶があります。それと劇場版『宇宙皇子』をちらっと観ていたので、その辺もちらっと参考になってたような気が……。
ですが今回の『宇宙皇子』は「天上編」であります。第1話こそ地上界、都(みやこ)と金剛山が舞台なのですが、第2話からは天上界、神々の世界が舞台になっていくのです。そう、神さまたちですよ! 「阿修羅王」「四天王」「不動明王」などなど、宇宙皇子たちの行く手に次々現れる神々は、たしかこれといった色味の参考がなく、大部分は僕がひねり出したモノを、いつものようにみんなで決め込んでいきました。
監督をはじめ、みんなの中で共通の認識としてあったのは「天上界って色鮮やかで派手な世界だよね、きっと」。なので、ともすればモノトーンとも取れるような落ち着いた彩度の低い地上界と対照的に、美術もキャラ色も天上界は明るく、きらびやかな世界に、ということになりました。そして神々もバリバリ極彩色な色味で考えたのです。
登場する神々は、基本、仏教の守護神たちです。そもそもの大元の仏教美術のヴィジュアルを考えたとき、やはり極彩色なのですね。なので、それまで苦しめられてきた鮮やか系のセル絵の具であるSTAC絵の具の特性を逆手にとって、鮮やかな神々を登場させたのでした(笑)。
それと、もう一つ大事なポイントだったのは「金色」でありました。まず劇中「天翔船」という空を飛ぶ船が登場するのですが、そいつが「眩くばかりの金色」という設定なのでした。天上界へ渡るもの、そして天上界。色を作っていく上で、僕の中では「金色」が結構「鍵」なのかな? と思ったのですね。なので、天上界では、キャラクターや小物たちにポイントポイントで「金色」を結構使ってます。
「金色」って撮影でキレイに出るんですよね。特にこの当時はフィルムでありましたから、本来の意味での透過光処理だったわけで、光そのままを写し込んだエフェクトは、まばゆく美しく、第1話でのなよ竹姫が天上界へ戻る、その迎えの金色の雲の輝きは、いま観返しても惚れ惚れします(あ、ただ、色パカが……今さらながらすみません(号泣))。
(実は今回、実家からレーザーディスクのデッキを発掘して来ました。で、10年ぶりくらいに観てみたのです。いやあ、なんか、そこかしこにいろんなこと試してて、楽しそうに仕事してた感じが画面にあふれてて、なんとも微笑ましいです(苦笑))
そんな感じで第1話が終わりました。
初号見終わった僕の感想は「ニヤリ」でありました(笑)。作ってる時から予感はあったんですが、これは僕的には「かなり面白い仕事に出会えたな!」と(笑)。なんとも「はまった!」感というか、そんな感触があったのです。まず自分が楽しんで、「次の話もその次も、全部自分でやれるんだ!」とドキドキでありました。
ところがこのあと、思いもしない事態が僕を待ち受けていたのでした。
■第54回へ続く
(08.05.27)