第70回 番外編 さらに宣伝です!『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』
11月といえば「酉の市」。今年は「三の酉」まであるようです。
あ。「酉の市」「お酉様」って全国区の風習・祭事ではないってのを、つい2〜3年前知りました。なんとビックリの東京ローカル。東京でやってるものはきっと全国区なんだと、ついつい思いこんじゃうのはネイティブの東京人の傾向っぽいです(笑)。
毎年11月の「酉の日」に神社に市が立ちます。その市の露店で商売繁盛の縁起物の熊手を買い、前年に買った熊手を神社にお納めする、と。東京にはそんな行事があるのですな。
なんかね、心躍るのです、酉の市。小さい頃に連れて行ってもらった新宿・花園神社の酉の市の記憶が身体の奥の方から甦ってきて、この歳になってもなんかわくわくそわそわするのですね。
自宅の近所にも酉の市の立つ神社はあるんですが、やっぱり僕の「お酉様ルーツ」は花園神社。あの混雑の夜市がたまらなくいいのですね。さすがに熊手買いませんけど、熊手が一つ売れるたびに繰り広げられる売り手と客との手拍子が、なんとも心嬉しくなります。
しかしながら、去年も一昨年も、どうもこの時期仕事に追われっぱなしで、どうにも出かけられずにいて寂しい限り。今年も同様で、すでに「二の酉」まで終わってしまいました。
で、月末に「三の酉」。
はたして今年の僕は酉の市に行けるのでしょうか?(笑)
さてさて。
来月(12月20日)公開の劇場用作品『ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』、いよいよ制作もラストスパート!というところ。
「え? まだ完成してないの?(汗)」という突っ込みは禁止です(笑)。
その作業の追い込みに忙殺されておりまして、先週はまたまた連載の原稿を落としてしまいました。どうもすみません>読者のみなさま
で、まあ……。
先週の状況で原稿落とすくらいなのですから、さらに忙しい今週、当然他の話題を集中して書けるわけもなく(爆)、なので、今週も目下激闘中のこの『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』の宣伝特集その2であります。
今回の『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』での僕のお仕事は、この劇場版、全編約80分ちょっとの本編と、本編の始まる前にちょこっと付く3分ほどの短編『ゲゲゲまつりだ!! 五大鬼太郎』の色彩設計、そして色指定と検査であります。
みなさんご存じのとおり『ゲゲゲの鬼太郎』のTVシリーズ、目下絶賛放映中なのですが、そちらの方の色彩設計は、板坂泰江さんが担当されております。鬼太郎やネコ娘、大勢の妖怪たちそれぞれのキャラクターの色味はTVシリーズですでにできあがっているわけですが、それをそのまま劇場版で使うのか? というと、実はそうではありません。
TVシリーズの色味はTV画面用ということで、多少明るめに作られております。TVの画面と劇場用作品のフィルム上映とでは、色の(あるいは明るさの)表現域の幅が違っているので、劇場用作品はそれにあった色味で画面を作る必要があります。
それと、TVシリーズでは、毎週繰り広げられるいろんなエピソードを踏まえて、最大公約数的に対応できるように柔軟な設計がなされているワケなんですが、劇場版ではその1エピソードだけに特化させてしまえばいいので、そのお話の内容だけに絞り込んだ色彩設計が必要になります。
なので、まず僕の最初の仕事は、各キャラクターのTVシリーズの色味を、今回の劇場用にコンバートすることでありました。
最初にまず主人公の鬼太郎の決め込みです。
どんな作品でも、キーになるキャラを設定し、そのキャラを中心に【基本】【ベース】を作っていきます。鬼太郎の場合は、もうすでに色味の組み合わせは決まっているので、そのバランスを保ちつつ、明るさと色味の発色を調整していきました。まずは明度と彩度を若干一律に下げてみて、そこから沈みすぎた色を立たせ、出過ぎた色を抑えて、の作業を手探りです。まるで天秤ばかりですね。
結果、TVの色指定に比べて、多少彩度と明度が低く、影の色味に深さを足したものになりました。それと、TVシリーズよりも肌色の黄色味を抑えてみました。
「ホワイト」の明度も大きな鍵になります。キャラクターで言えば、白目や歯がいちばん明るく「ホワイト」に近くなりますが、その値をどのくらいに設定していくか、ということも大きい要因になっていきます。
TVシリーズでの鬼太郎の白目は[RGB:244.244.244]になっているようですが、この劇場版では[228.228.228]に設定しました。この[RGB:228.228.228]は、この色単体で見れば結構グレーなんですが、肌とのバランスで白に見えればいいわけです。そんな感覚で全体のバランスを整えていくわけです。
ちなみに、今回のゲストキャラの風祭華は、肌を色白に見せるため、逆にその肌色とのバランスから、白目は鬼太郎の白目よりも明るい[233.233.233]にしてあります。
あ、目玉オヤジの「白目」は別扱いです(笑)。
で、そうやってまず鬼太郎を決めて、次に華ちゃんの色を作りました。あとはその2人を基軸に他のレギュラーのキャラクターたちの色味を調整しつつ、劇場用オリジナルのキャラクターたちの色味を作っていきました。
新しく色味を作るにしても、TV版からのコンバートにしても、まずは個々のキャラの個性考えつつ、キャラ立ちのバランス意識して、そのキャラ単体での色味を作ります。そして他のキャラたちとの登場シーンなどの組み合わせを考えてバランス調整。そんなことを延々繰り返していくわけですね。
で、そんなこんなで今回この劇場用に作った色指定がなんと総勢200体超!(笑)
もう、妖怪多すぎ!(苦笑)
いったい誰ですか? 「妖怪四十七士」とか考えたヤツは?(苦笑)
以前僕が色彩設計を担当した『おジャ魔女どれみ』で、最初の2年間で作ったメインのキャラクター色指定が200に届かないくらいでしたから、この数がいかに多いか、と。しかも、この他にシーンごとでの特殊彩色用の色指定も作りますから、さらに増えて400近く? いや、もっと? さすがに、僕の劇場用作品史上第1位の色指定の数でありました(笑)。
で、これはまだ僕の作業の最初の部分にすぎません。さらに闘いの本番は、色指定、そして彩色上がりの検査であります。闘いはいよいよ最前線へと入っていくのであります。
次回に続く!
■第71回へ続く
(08.11.18)