色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第94回 昔々……(57) 『Coo』色指定書の作り方 その2

今年も東京地方は「空梅雨」な模様。毎朝毎日、天気予報では「降るぞ! 降るぞ!」的な予報が比較的多いんですけど、それでも実際は「パラパラ」「ポツポツ」と降って終わり、みたいなことが多いようです。

「降水確率」なんですよね。

例えば、ある日のある時間帯の降水確率が70%だったとします。70%とか言われちゃうと、僕らの感覚的には、

「すっげえいっぱいの量の雨が降る」

って言う感覚でとらえちゃいがちですが、実はこの数字、

「こんな気象状況のときに雨が降る確率が10分の7の確率」

ってことなのです。「降るのか降らないのか」という確率の話でしかないんですよ。「ざばーん!」と大降りでも「ぱらぱらぱら」でも雨は雨。雨が降りさえすれば「予報は当たった!」ってことなんですな。

なんか、ずるい! って思っちゃいませんか? 皆さんはどう思います?(笑)

さてさて。

色指定書の作り方の続きです。

前回書きましたが、作画用の設定画から切り貼りして整理して作った色指定書用の設定のモト。これに絵の具の番号を書き込んでいきます。

昔っから決まってる「絵の具の番号の書き込み方の約束事」っていうのがあります。日本でイチバン最初に色指定書作った方が始めたものか、はたまた海の向こうから伝わってきたモノなのか。調べてないので真相経緯はわかんないのですが、色指定書における絵の具の番号の表記の法則は「濃い方が下」ということなんであります。

昔、仕上げプロダクションで働いていた時、ある新人さんに色指定の見方を教えてたのですね。僕の説明聞いて「あ〜、影が『分母』になるのですね?」と返されまして、逆に僕の方が「あ◯、なるほど、そうですね」と思ったことがあります。まさに分数の表記みたいなものです。分子よりも分母の方が暗い色、ってことです。

色指定書のどこにどうやって番号を書き込むか。

まず、色の指示を入れたい部分から、画の外の空間に線を引っ張ってきます。その線の先に絵の具の番号の指示を入れていきます。「ノーマル色」の番号、その下に線を引いて、線の下に「影色」の番号を書きます。さらに「2号影」(「影色」のさらに影、「2段影」という言い方もあります)がある場合は、「影色」の下にさらに線を引いて番号を書きます。ちなみに「ハイライト色」は、「ノーマル色」の番号の斜め上に[Hi.]などの記号を添えて書いていきます。

東映動画作品に限らず、他社の作品においても、この表記はおおむねおんなじでありました。実はこれって大事なのです。

仕上げの作業は複数の仕上げプロダクションで人海戦術的に並行作業することが多く、また仕上げプロダクション側でも、絶えず複数の制作会社の作品の作業を抱えてたりしていました。たとえば、とある仕上げプロダクションでは、A社のAという作品と、B社のBという作品が同時に作業進行中、という感じですね。この時、作品ごとに独自の表記方法で色指定書が作られちゃうと、作業者の方で混乱しちゃうこともあるのです。その結果、つまらない間違いが発生→やり直し、ということに。

そうならないためには、表記の仕様は同じ法則に則ってた方がいいわけです。僕もそうでしたが、色指定、色彩設計の担当者は仕上げ出身の方がなることが多く、そんな苦労や問題点を身をもって体験済み。なので、自然と「業界スタンダード」な色指定表記へと集約されていったのでは、と思います。見やすく、間違いの起きにくい指定書、ということが、ひとつのテーマになっていくわけですね。

この法則はデジタル彩色になった今でも基本はおんなじです。

■第95回へ続く

(09.07.09)