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『la sorciere 哀しみのベラドンナ』

[あらすじ]
中世フランスのとある村。ジャンとジャンヌの婚礼の日、領主は貢ぎ物の代わりにジャンヌを犯し、家来達に輪姦させた。悪魔の力を得た彼女は紡いだ糸を売って生計を立て、ジャンは税金を取り立てる役人になる事ができた。だが、戦争の資金が調達できなかったジャンは左手首を切り落とされ、やがて、ジャンヌは悪魔つきとして村人に追われる事に。ジャンにも見放された彼女は、身も心も悪魔に委ねて魔女となる。

[解説]
虫プロダクションの「大人のためのアニメーション」第3作。歴史学者ジュール・ミシュレの「魔女」を原作に、強烈なエロティシズムと沈痛なリリシズムで1人の女性の物語を描いている。イラストレーターの深井国を起用し、全編を彼の画で構成。静止画を多用する手法が採られている。これが単独での初の劇場監督作品となる山本暎一の才覚が炸裂したフィルムであり、アーティスティックな色の濃かった虫プロの集大成的な作品である。

[公開データ]
劇場作品 1973年6月30日公開 90分

[備考]本編中で表示されるタイトルは『la sorciere 哀しみのベラドンナ(※正確には、最初のeの上に`が付く)』というもの。WEBアニメスタイルの他の記事では、混乱を避けるため、『哀しみのベラドンナ』と表記している。
 虫プロの「大人のためのアニメーション」第3作だが、陽性の娯楽作であった前2作とは方向性を大きく変え、芸術性の高い作品として企画された。キャッチフレーズもそれまでの「アニメラマ」から「アニメロマネスク」に変更。また、手塚治虫はこの作品の制作中に虫プロから離れており、彼の名はクレジットされていない。
 当時の資料には、スタッフの中に「実写撮影」の役職で前衛的な作品で知られる写真家の森山大道の名がある。実は当初、劇中に実写パートが挿入される予定であり、そこに彼が撮った映像を使うプランだったのだ。内容は現代の日本の女性を撮影した、ジャンヌの物語とは直接関係のないものであったようだ。当時の「キネマ旬報」の記事によれば、マスコミ向けの試写では、まだその実写パートが残っていたようだ。
 ラストシーンも数バージョンあり、現在ソフト化されているものは、ヒロインのジャンヌが火あぶりになったあと、エピローグのフランス革命に物語がつながるかたちになっているが、この他にも、火あぶりのシーンで終わるバージョンなども公開されている。

[スタッフデータ]
●スタッフデータ詳細

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[DVD情報]
「哀しみのベラドンナ」(廉価版)
カラー/90分(+映像特典8分)/MPEG-2/片面2層/4:3
映像特典:予告編、火あぶりシーン特別編集映像(「虫プロベストセレクション」より)
音声特典:スタッフ座談会
価格:2520円(税込)
発売日:3月1日
発売・販売元:コロムビアミュージックエンタテインメント
[Amazon]

「虫プロ・アニメラマ DVD-BOX(千夜一夜物語/クレオパトラ/哀しみのベラドンナ)」(廉価版)
カラー/332分(+映像特典38分)/3枚組/MPEG-2/片面2層/16:9 LB(「千夜一夜物語」「クレオパトラ」)、4:3(「哀しみのベラドンナ」)
※映像特典・音声特典の詳細は、単品の商品情報を参照
価格:6300円(税込)
発売日:3月1日
発売・販売元:コロムビアミュージックエンタテインメント
[Amazon]

(06.02.09)

 
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