【EVENT】「マイマイ新子と千年の魔法 公開宣伝会議」開催
イベント報告&感想メールです!
第54回アニメスタイルイベント「マイマイ新子と千年の魔法 公開宣伝会議」を2010年2月7日に開催した。
昨年11月に公開された映画『マイマイ新子と千年の魔法』は、興行的に苦戦したにも関わらず、続映を望むファンによる署名運動が始まり、また、口コミの力もあり、レイトショーが満員になるなどの現象が起きた。『マイマイ新子』の関係者は、当面はDVD化などはまだできないと考えており、このまま上映を続けていく予定だ。
今回のイベントは、そんな『マイマイ新子と千年の魔法』について、今後どうやって盛り上げていくかを関係者とファンが語り合うというコンセプトだった。ゲストは片渕須直監督、アニメ評論家の氷川竜介、司会は小黒編集長。第1部では、片渕監督が現在までの経緯と、どんな思いでこの作品を作ったのかを語り、氷川竜介、小黒編集長がそれぞれの立場からコメント。片渕監督からは、この映画の興行について、シビアな現状も語られた。
そして、今回のイベントは第2部が本番。来場されたお客さんから、『マイマイ新子と千年の魔法』を今後盛りあげていくためのアイデアを募った。次々にファンから意見が出され、それについて片渕監督をはじめとする登壇者が応えるかたちでトークは進んだ。発言するファンの真剣な態度が印象的。また、ステージに上がった『マイマイ新子と千年の魔法』宣伝スタッフが、それぞれのアイデアを丁寧にメモをとっていた事も記しておこう。トーク最後には、マッドハウスの丸山正雄プロデューサーも、飛び入り参加。初日、2日目の観客動員でのちの興行が決まってしまうという映画興行の現状に違和感を表明しながら、この作品にはそうした流れを変える可能性もあるかもしれない、と語ってイベントを締めくくった。
今回はイベント終了後、感想メールだけでなく、イベントで発言できなかった方に『マイマイ新子と千年の魔法』を盛り上げるためのアイデアも寄せていただいた。
■EVENT DATA
第54回アニメスタイルイベント「マイマイ新子と千年の魔法 公開宣伝会議」 |
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会場 |
新宿 ロフトプラスワン |
日時 |
2010年2月7日(日) 開場/18時 開演/19時 |
出演者 |
片渕須直、氷川竜介、宣伝スタッフ、小黒祐一郎(本誌編集長) |
以下に、来場されたお客さんからいただいた感想&アイデアメールを掲載する。なお、掲載にあたり、原稿の一部を整理させていただいた。
■感想&アイデアメール
藤枝和夫さん
こんにちは。「マイマイ新子宣伝会議」に参加させていただいた者です。
会場では発言しませんでしたが、その時のやりとりを聞いて考えてみたことのいくつかをまとめてみました。
1)年配の映画ファンを取り込むには
残念ながら、一般の映画ファンは殆ど「マイマイ」の存在を知らないと思います。なにしろ映画評論家でさえ観ていない人がかなりいるようなのですから。たとえば、今回のキネマ旬報ベストテン」で「マイマイ」は100位。点を入れたのは、55人の選考委員の中で高橋聰さんのみで、3点。ちなみに、1979年度の「キネマ旬報ベストテン」でも「ルパン三世カリオストロの城」に点を入れたのは、60人の選考委員の中で深澤哲也さん(木曜洋画劇場の解説者)のみでした。
ということで、一般の人に「マイマイ」を認知してもらうのは、なかなか難しいと思いますが、それでも特に年配の方々に観てもらいたいと思います。この作品世界にもっとも共感するのは、高樹のぶ子さんと同世代ぐらいの方々だと思われますので。
さて、その方々を劇場に足を運ばせるための方策ですが、松竹の昭和の名作と2本立てという興行はいかがでしょうか。「昔も今も〜」みたいなキャッチコピーで。単館で、「二十四の瞳」(木下恵介)や「お早よう」(小津安二郎)などとカップリングして、料金を少し低めに設定すれば(近年の「釣りバカ」シリーズは1000円での興行)、お子さん連れ、お孫さん連れの観客が来ると思うのですが。
2)ライトなアニメファンを取り込むには
残念ながら、世間一般の人がアニメ作家として認知しているのは、ジブリ関係以外は押井・富野・庵野諸氏ぐらいだと思います。
ジブリの高畑勲さんが作品を御覧になったとのことなので、推薦の言葉をいただいてはいかがでしょうか。誘導尋問的に「ジブリでこの作品が作れなかったことが悔しい」「ジブリでも片渕監督のような後進を育てたい」みたいな言葉を聞き出して提示できれば、興味を持ってくれる人が出てくると思います。
宮崎駿さんにもかつての同僚ということで推薦の言葉をいただけるとよいのですが……。あるいはマッドハウスつながりで細田守さんの感想なども。
3)リピーターを増やすには
昨年、「エウレカセブン」が公開されましたが、公開後期に入場特典として切り出しフィルムを配布して客足が伸びる現象がありました。「マイマイ」の上映時にも配布してはどうでしょうか。
セル画なき今、作品の一部を所有する気持ちを満足させるのは生コマフィルムだと思います。一度観たからもういいかなと思っている観客も、もう一度劇場に足を運びたくなるのではないでしょうか。失礼ながら、眠っていて処分を待つばかりのフィルムもあるかと思いますので。
単純に計算すると、映画1本分のフィルムから、1枚に6コマとして、93分で2万2320枚とれることになります。黒一色とか白一色とかのコマをはずすともっと少なくなるでしょうが。これまでの鑑賞者総数が約3万人とのことですから、フィルム1本分がさばけるようなら、かなりの増益になると思われます。
以上、長々と駄文を連ね、失礼しました。
今後とも貴サイトの発展をお祈り申し上げます。
元クラッパーさん
マイマイ新子イベント参加させて頂きました。
私は実はこのロフトプラスワンのイベントスケジュールでこの作品に出会い、イベント前の予習として作品を観させて頂いたという、ある意味、邪道な入り方をしてしまった者です。
まず、作品をみさせて頂いて、皆様がおっしゃっているように「なぜ不振?」という疑問がわいたんですが、このイベントに参加して「こういった方々がいたからこそ、私が作品を観ることができた」という事に気づきました。
後半での皆様からの活発な意見が出ていた所やそれを宣伝プロデューサーさんがしっかりメモしている姿は「イベントだけど本気でディスカッションしている」わけで、感動しました。
今後とも作品を応援させて頂きます。
皆様、他のお仕事もあると思いますが、作品の今後の展開に期待しております!
中川さん
関係者の皆さん、いいイベントをありがとうございました。
やはり厳しい話もあり、特にムックが出そうにないとわかったのは残念です。
絵コンテ本はもっと無理そうですね……。
会場で「もっとグッズを用意しては?」とのご意見に同感しつつ、でも予算がなあ、と思ったのですが、すでにある物を活用して、例えば監督が文学フリマで出されたというマイマイ同人誌などを劇場で販売できないものでしょうか。
欲を言えば、ムックが出ないのなら、絵コンテや設定資料、監督の書き下ろし解説などを、新たに同人誌として編纂して販売してくだされば僕は買います。新規のグッズを今後上映される劇場窓口で発売すれば、既存のファンが改めて劇場に足を運ぶ理由ができますし、いかがでしょうか。
kazutamaさん
それぞれ何とかしたいともやもやしているファンと壇上の熱気が混ざり合って、とても濃い空間だったと思います。
いろんなご意見がうかがえたのはよかったのですが、重要な話を聞けなかったのが残念です。
それは今後の目標。
例えば、半年間ロードショーを途切れないように全国のどこかの映画館で上映して貰うとか、DVDを出すためにはあと何万人の観客動員数が必要だから、そのために何をすればいいのかとか、もしくは、興行的な部分は一度忘れて、とにかくこの素晴らしい映画を1人でも多くの方に知って貰うための算段は何が効果的かとか、何でもいいので、目標が話し合われなかったのが心残りです(私は、一番目に今後のターゲットは? と発言したため、二つ目の発言は遠慮しました。今思えば先に「目標」について発言すればよかったと思ってます)。
個人的には、まずは多くの方に知って貰う事に軸足を置くことが必要だと思っています。
そして宣伝費ゼロの中で最大限の効果を得られるのはやはりネットではないでしょうか。
そこで提案ですが、今話題の「フリーミアム」のビジネスモデルをマイマイ新子で実行できないでしょうか?
具体的には多くの人に認識してもらう事を第一義にして、映画本編を無料でWEB配信するのです(画質を落として期間限定で)。
『マイマイ新子』は言葉では説明しにくい映画なので、とにかくどんな手段でもいいから観て貰う事を目的にして、それを一番低コストで行えるWEB配信を行う。
勿論事前に入念にプレスリリースを準備して、ロードショー中かつDVD発売前の前代未聞の取り組みとしてメディアに取り上げて貰うようにする。
「フリーミアム」の考え方からすれば、その無料配信を見た5%が映画館に足を運ぶ、そしてその5%がDVD・Blu-rayを購入という計算をして、何人に観て貰えるようにするかを逆算してみる。
フリーミアムが非現実的であることを承知で、このような提案をさせていただく失礼をお許しください。
無料配信以外でも何でもいいので、目標は必要です。
そして現時点では「多くの方に知って貰う」という目標が必要ではないでしょうか。
私は飢えているのです、目標が見えない事に。
見えないから、どんなお話をうかがっても渇きが治まらないのかもしれません。
蜃気楼のオアシスのように。
若月さん
試写会やHPの開設では一般ユーザーへの認知度向上は期待できない。
そこで、お手軽に経費をかけず、爆発的に認知度を向上させる計画を立案する。
それは、家庭用ゲーム機Wiiの「Wiiの間」の利用である。
現在、Wiiの普及数は900万台を越えており、その内(Wiiの)ネット接続率は35%と言われており(任天堂の発表)その数は300万強である。
Wiiのコンセプトは「リビングのTVに繋いで家族で楽しむ」であり、主なユーザーは小学生およびその両親と言われている。
まさに片渕監督の言う「子供および親に鑑賞して欲しい」と合致するユーザー層である。
「Wiiの間」には企業チャンネルが存在しており、その企業には「グリコ」社も名を連ねている。 「Wiiの間」のグリコチャンネルでは、現在6種類の動画を配信している。その動画の主な内容は既存製品のCM、グリコ製品の懐かしいCMおよびグリコの歴代オマケ紹介である。
企業チャンネルのコマ数は最大12だがグリコ社が使用しているのは6コマ程度であり、半分のコマは遊休化している(推測だが、チャンネル契約料金は使用しているコマ数ではなく、12コマセットだと思われる)。配信用動画製作コストがグリコ社に負担となっていることがコマ使用数が増えていない原因と推測される。
幸い、マイマイ新子はグリコ社とタイアップ関係にある。グリコ社が配信している動画とマイマイ新子のPV(ウィスキーボンボン編)はグリコのオマケを介して密接な関係にある。この事からグリコチャンネルにマイマイ新子PVを無料で掲載して頂けるよう交渉してみては如何だろう。
PVはウィスキーボンボン編と90秒予告編の2本は掲載したい。
マイマイ新子PV掲載のグリコ社にとってメリットは
- 昭和30年から現在まで(グリコのオマケで)子供達に
夢を与え続けている企業イメージの強化。 - 空きコマに制作費ゼロで動画を追加できる。
マイマイ新子側にとってメリットは
- 全国規模のWiiユーザーに認知される。
- 上映中&上映予定の地方映画館への鑑賞訴求効果が見込まれる。
- なんといっても経費ゼロ。
さらに「Wiiの間」におけるグリコチャンネルには動画の閲覧数およびユーザーによる評価を知ることができ、ユーザー動向解析のツールとして両社に有用である。
冒頭に述べたように300万強のユーザーの内、マイマイ新子PVを1割のユーザーが視聴しただけでも30万人の認知を開拓できる。
この認知は、TVCMや雑誌の広告とは異なり(能動的にPVを視聴するので)、ユーザーの記憶に深く定着するものと思われる。
以上がグリコ社とマイマイ新子側のWin-Win関係による「マイマイ新子と千年の魔法」認知度向上計画の概要である。
グリコ社との交渉が失敗した場合、「Wiiの間」にあるSD画質専用の「シアターの間」にマイマイ新子を期間限定で有料提供する(ただしレンタル専用の条件で)。「シアターの間」の長編アニメはディズニー主体であり、国産アニメ映画(しかも新作)は「シアターの間」経営会社には、喉から手が出るほど望まれるもとの思われる。 ただし、コチラは経費が必要となるのでオススメできない。
(10.03.24)