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EVENT

第26回
「佐藤順一のアニメ屋人生 〜メモルから最新作まで〜」


日時■2005年10月2日(日) 16時〜
会場■LOFT/PLUS ONE
出演■佐藤順一、佐藤恭野、細田守、錦織博、五十嵐卓哉、池田東陽、小黒祐一郎

■上映作品
『とんがり帽子の メモル』10話「みんなそろって 忘れ草」、25話「二人を結ぶ風の手紙」(抜粋)他
『土田勇のマイメモル 光と風の詩』
『機動戦士 Zガンダム』19話「シンデレラ・フォウ」(抜粋)
『ユンカース・カム・ヒア』(パイロット、本編[抜粋]、予告)
OVA『魔法使いTai!』1話[ツリガネと高倉先輩と空とぶ魔法](抜粋)
『TOKUMAアニメビデオえほん はないちもんめ』「五月はじめ、日曜の朝」



  またもや大入り満員となった今回のイベント。ここのところ毎回、身動きとりづらい状態で、会場に来たみなさんにはご迷惑かけっぱなし。誠にもって申し訳ない!
 まずは登壇した小黒が、「みんな何を期待してきたの?」と軽く先制のジャブを放ち、『おジャ魔女どれみ』の話も『ふしぎ星の☆ ふたご姫』の話もしないよ、と釘を刺す。会場は笑うだけだったが、『美少女戦士セーラームーン』も含め、佐藤順一の代表的な美少女作品についての話題が、まさか本当に出ない事になろうとは……。観客も想定の範囲外だったのでは!? それと言うのも、登壇する人する人が、作品やキャラクターの話はある意味そっちのけで、「佐藤順一の演出術」「監督術」を知りたい、盗みたいと強く迫ったからだった。演出とは何か、監督とは何かに迫る、アニメスタイルイベントとしても異色のテイストになったのではなかろうか。
 第1部はフロンティアワークスからDVD-BOXが発売されるのを記念して、『とんがり帽子の メモル』の特集。まずは20年来の『メモル』ファンという、ゲストの細田守が登場し、「今日は佐藤さんの教えを乞いたい。佐藤さんの凄さの核心に迫りたい」と宣言する。続いてメインゲストの佐藤順一がにこやかに登場。話は『メモル』企画の成り立ちから始まり、意外な裏話も明かされた。
 そして、最初期の代表作10話「みんなそろって 忘れ草」を丸々1本上映。佐藤監督が語る川の撮影についての思い出話を聞いて、細田が技術的な問題をクリアするその巧みさを指摘。彼が演出助手でついた『ゲゲゲの鬼太郎(第4期)』でもやはり技術的な工夫をみせたというエピソードを披露した。
 続いて『メモル』の名場面集を上映、25話のBGMの話に移ったところで、もう1人のゲスト、佐藤監督の奥さまである選曲家の佐藤恭野が登場。佐藤監督の選曲へのこだわりを語った。一方佐藤監督も、演出家が音響面をしっかり押さえる事の重要性を指摘して曰く、「シナリオの時からダビングは始まっている」。また、トーク中、監督の子煩悩な一面がうかがえるエピソードにも触れて下さった。



 第2部では、第1部の細田守に加え、錦織博、五十嵐卓哉が登場した。後輩のアニメ監督3人が、ベテランの佐藤監督を囲む構図だ。佐藤監督とは直接仕事をした事がない錦織博監督だが、佐藤順一のイベントをやるならぜひ参加したいという事での登場だ。演出をやるにあたって目標だったのが佐藤順一だという錦織は、冒頭から、佐藤演出の本質を「情感を形にする点で、抜きんでている」と喝破。いきなり、話題は佐藤演出とは何か、という本質的なものとなった。五十嵐は「佐藤さんがいなかったら、業界には今いないだろう」と思い出を語り、「曖昧にやろうとすると怒られる」「アニメではゼロを1にするのが大変。それをやれるのが佐藤監督」と述べた。それに応じて、佐藤監督も「コンテを読む時にマンガを読むように相手に伝わってほしいと思いながらコンテを描く」「そのキャラクターがいるような感じで演出したい」と、惜しげもなく自らの演出観を披露した。あるいは「他のスタッフと組むからこそ面白い。全部自分でやってはきっと楽しめない気がする」と言い、「誰でも使える船にしておかないと、すぐに転覆する。目的地に行く事が大事」と、シリーズを担う監督として的確な演出プランを提示する事に心を砕いていると述べた。「なるほど、演出家・佐藤順一と、監督・佐藤順一とは分けて論じる必要があるわけだ」と、小黒編集長も、この展開には興奮。テンションの高いトークに、聴衆もリアクションする余裕もなく聞き入ってしまった。
 2部、3部と分けるはずが、勢いにのって、そのまま3部で予定していたコーナーへとなだれ込み、『ユンカース・カム・ヒア』、OVA『魔法使いTai!』についての話に。『ユンカース』ではアニメスタイルイベントらしく作画の話題が多く、アニメーターとしての佐藤監督のスキルの高さに、他の出演者が唖然とする一幕も。
 さらにレアものの『TOKUMAアニメビデオえほん はないちもんめ』から「五月はじめ、日曜の朝」を上映。モチーフ等について、『ユンカース』のプロトタイプと言える作品であり、「(登場人物の)気持ちだけで行ける(1本作れる)はずだ」と高まっていたと、佐藤監督自身が語る1本。大切な子犬を喪った少年が、死別を受け入れ立ち直るまでの数日を、たんたんと描いた作品だ。初見の錦織監督もこれにはひどく感銘を受けた様子だった。
 続く第3部では、お馴染み大地丙太郎監督の新作短編アニメを、まずは披露。内容は会場に来た人だけのヒミツという事にしておこう。残念ながら大地監督自身は、今回のイベントには出演できなかったが、新作短編ビデオとともに「佐藤さんも短編を作って!」というメッセージを残し、佐藤監督は承諾。次のイベントでそのオリジナル短編が観られるのだろうか。
 そして、『カレイドスター』の池田東陽プロデューサーが登場し、『カレイドスター』OVA第2弾についてトーク。今度の新作は、佐藤順一ファンには嬉しい仕掛けもあるそうだ。今秋の新番組『ARIA The ANIMATION』についてもちょっとだけ、トボけた佐藤監督のトークを挟み、会場とのQ&Aコーナーへ。どんな質問でも受け止めて、中身の濃い話につなげる、佐藤監督のサービス精神が大変印象的だった。すでに時刻は22時を回り、完全に予定を超過。6時間以上のマラソンイベントとなってしまった。みなさん、お疲れ様!
 イベント終了後、楽屋に戻ってきた演出家お三方が口を揃えて「今日は勉強になった」と言っていたそうだ。専門的な話が多かったが、実りの多いイベントだったのではないだろうか。
 
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