【EVENT】オールナイト「マッドハウス・マニアックス」
イベント報告&感想メールです!

 2009年12月5日(土)に、アニメスタイルと新文芸坐の共同企画によるオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクション Vol.4 マッドハウス・マニアックス」が開催された。上映作したのは『ボビーに首ったけ』『グリム童話 金の鳥』『X(劇場版)』『カムイの剣』の4本。DVD化されていないタイトル2本を含む、タイトルどおりマニアックなプログラムだった。
 トークに登場していただいたのは、『X(劇場版)』『カムイの剣』を手がけたりんたろう監督、『ボビーに首ったけ』『グリム童話 金の鳥』を手がけた平田敏夫監督。お2人が若い頃の映画体験の話に始まり、上映する作品や、映画作りに関する考え方について話をうかがった。観客として来場していた大橋学に途中から参加していただくというサプライズもあり、充実したトークになった。なお、大橋学は上映した4作品の内、『ボビーに首ったけ』『グリム童話 金の鳥』で作画監督を務め、『カムイの剣』には原画で参加している。
 今回のオールナイトは、いずれの作品もフィルムで上映する事ができた。4作とも比較的フィルムの状態はよく、特に『X(劇場版)』はニュープリントかと思うほど。本編上映前には、マッドハウス新作の『マイマイ新子と千年の魔法』『よなよなペンギン』の予告編の上映が、休憩時間にロビーでは『REDLINE』のプロモーションの映像がビデオで流された事もつけ加えておこう。

■EVENT DATA

新文芸坐×アニメスタイルセレクション Vol.4
マッドハウス・マニアックス

会場

新文芸坐

日時

12月5日(土)夜22時30分〜

上映作品

『ボビーに首ったけ』『グリム童話 金の鳥』『X(劇場版)』『カムイの剣』

トークショー
出演者

りんたろう、平田敏夫、大橋学、小黒祐一郎(本誌編集長)

 以下に、来場されたお客さんからいただいた感想メールを掲載する。なお、掲載にあたり、改行などに手を入れさせていただいた。

■感想メール

Hマンさん

 『カムイの剣』はリアルタイムに映画館で観たのですが、ぜひもう一度映画館で観たかった作品です。というより、映画館でもう一度観たいと思わせられた唯一のアニメでした。ビデオ化されたあと何度か見返してみたのですが、やはりあの映像と音響の快感は映画館でないと味わえないと、満足できなかったからです。
 とはいえ、まさか本当にまた映画館で見られるとは思っていませんでした。今回企画してくださった皆様、ありがとうござしました。
 でも、ひとつだけ残念なことがあります。初上映時では、サラウンド音響による強烈な印象が僕の記憶には残っています。今回の上映ではフロントスピーカーだけだったようで(違っていたらすいません)、音響面では当事の記憶がさらに美化されてしまった部分があります。
 というわけで、まだ満足できません。次回上映時はぜひサラウンドで上映をお願いします(笑)。

ケータさん

 大画面でアニメを観るのが久々だったという事も相乗し、終始興奮しながら楽しませていただきました。初見の『金の鳥』に関しては「こんな素晴らしい作品を観てなかったのか」と恥じるくらい。画、動き共にアニメアニメしている作品はやはり良いですね。今回の目的は劇場で『X』を観るという事だったのですが、これこそ劇場アニメ。機会があったら劇場で観るべき、としか言えません。次回のイベントは『餓狼伝説』『餓狼伝説2』『劇場版 餓狼伝説』もしくは『ゴウカイザー』の大張正己ナイトとかやってほしいな、とか。『からくりの君』も劇場で観てみたいですね。長くなりましたが、次回も期待してます!

よよりさん

 今回のラインナップは本当にマニアックなものが多く見応えがありました。
 特に金の鳥には感動し、もう一度観たかったくらいです。
 DVD化が待ち遠しい作品です。
 あれだけマイナーな作品でもフィルムを確保できるものなのですね。
 トークショーは思っていたよりも長い時間、りん、平田監督のお話が聴けて嬉しかったです。
 スペシャルゲストの大橋さんには驚きました。
 カムイの剣の見所を話す姿が印象的でした。

 次回以降もこういったなかなか観れる機会の少ないマニアックなラインナップだと嬉しいです。

久野さん

 先日のマッドハウス・マニアックスのオールナイト上映、山形から参加しました。久し振りのオールナイトでしたが、内容が充実していて満足でした。終演後は始発の新幹線で眠りながら戻りましたが……。
 『カムイの剣』を劇場で観ることができて感慨無量です。あの波は大橋さんの作画だったんですね。あの震える感じの迫力は、スクリーンの方が映えますね。
 『金の鳥』も、15年ほど前にビデオで観て以来でしたので、劇場で再見できて良かったです。なんか久し振りに安心して観ることができる作品に接した感じです。プロフェッショナルの力が結集した作品だと思います。今回の上映で特に感じたのは、声の力ですね。『金の鳥』はベテラン声優の勢揃いで、その芝居だけでも嬉しくなってしまいました。酔っ払い鳥の八奈見乗児さんのアドリブは最高です! 三輪さんの声も可愛い! 最近は出演作が少なくて残念です……あと、富山敬さんもいわずもがな。
 『カムイの剣』でも小山茉美さんのお雪さんに惚れ直してしまいました。正直、設定や描写的にはお雪のキャラは淡白な感じなのですが、茉美さんの声が加わると、体温が宿るというか、ものすごく情感的に迫ってくるキャラになっていると思います。次郎が看病するシーンでは、真田広之の朴訥とした芝居との対比もあってぐっときます。
 次回は、是非 小山茉美特集での企画をお願いします。『幻魔大戦』『SF新世紀レンズマン』『Dr.スランプ アラレちゃん』『魔法のプリンセスミンキーモモ 夢の中の輪舞』とかのラインナップでどうでしょう? もちろんゲスト出演ありで!
 『カムイの剣』は、音楽も大好きです。宇崎竜童は監督の指名だったんですね。ケチャが監督の実録だったのは驚きでした。どうりでサントラに入ってないわけですね。宇崎竜童は、竜童組のファーストアルバムでも『カムイの剣』のメインテーマ(主題歌ではありません)を「The KAMUI」のタイトルでセルフカバーしています。こちらはサントラよりもアップテンポでカッコ良いです。愛聴盤です。
 今後のオールナイト企画にも期待しています。次回もまた楽しい夜になることを!

ボビーが首だけさん

 平田敏夫監督とりんたろう監督の息のあったトーク面白かったです。
 途中、会場にいらしていた大橋学さんが登壇されたのも嬉しいハプニングでした。
 個人的には、りんたろう監督がおっしゃっていた、
 「アニメーション映像の表現方法はまだまだ無尽蔵にあると思う。自分では新しいことをやったつもりでいても、まだまだお釈迦様の手のひらから出ていなかったりする。だから、いつも新しいことに挑戦したい」
 というお話に感銘を受けました。
 監督のような方が「まだまだ無尽蔵に表現手段がある」とおっしゃっているのに、
 自分たちみたいなのが「俺らの世代って損だよなあ。あらかたやり尽くされてるもんなあ」なんて言っている場合じゃないですね。
 もの凄くやる気になりました。

 映画の方も豪華な4本立てで、大満足でした。
 特に『金の鳥』はさすがアニメスタイルさんのセレクト!!
 平田監督もおっしゃっていましたが、作画、背景、声優陣にそうそうたるメンバーが名を連ねていて驚きました。男鹿和雄さん山本二三さんによるファンタジックな背景美術が非常に美しく、大画面で見られたのが本当に良かったです。

おぎにゃんこさん

 アニメ業界のかたすみにいながら、お恥ずかしいことに『カムイの剣』を見たのは、今回が初めてでした。
 古典アニメを見る、寝てしまったらどうしよう、時間も時間だし(オールナイトで夜も深かった)、なんて思ってたのですが、息つくひまもないおもしろさで、画面に圧倒されっぱなしでした。
 トークショーでの、りん監督の、音響のお話、「ケチャ」のお話をうかがっていたせいか、サウンドと絵の一体感に感動し、ケチャがあまりにもハマり方がすごすぎて笑いそうになったり、また、ストーリーの頑丈な骨組みに安心したり、とにかく、「これが20年以上前のアニメか……」と、色々な意味で感慨深くなる、胸打つ作品でした。
 『カムイの剣』を初めて見る機会が劇場だったことを、とても幸せに思います。
 また、他では見られない『金の鳥』を見られたことも貴重な体験でした。
 平田監督の、暖かくユーモアあふれる作品を、またひとつ見ることができました。

ドナドナNo.5さん

 トークショーは、名画座の思い出から始まった。
 若い頃、りん監督は東映のヤクザ映画に夢中だったと語り、平田監督はヌーヴェルヴァーグにハマったと語る。
 そんなおふたりは、ディズニーなどの影響からアニメ業界に入ったのではなく、実写映画にあこがれて、東映動画に入社したのだとか。
 ヤクザ映画とヌーヴェル・ヴァーグ。
 案外こんな嗜好の違いが、そのまま作風の違いとして、如実に表れていたのかと。

 自分が、「新文芸坐×アニメスタイル セレクション」という企画が好きなのは、このトークショーがあるからだと断言できる。なぜなら、制作秘話のような当時の想い出話を聞くことで、ひとりで観ていたら気づかなかったようなことを教えてもらえるからだ。すると、たとえ観たことのある作品であったとしても、新しい発見ができる。それがうれしい。
 たとえば今回は、作画するということが、実写における俳優の演技に等しいのだということに気づかされた。今までは中の人の演技にばかり気をとられていたが、考えてみれば、実際にそれがどう動くかは、作画によって決まるのだ。
 それだけに、作画によってもたらされる描写には、意味が深い(もちろん、絵コンテを切った段階での演出も重要だが)。
 そしてさらには、絵ということに関して、考えさせられた。
 アニメーションは、良くも悪くも絵からは逃れることができない。だからこそ、どんなときでもそれは絵になっていなければいけない、という美学。自分にはなかった発想だっただけに、衝撃的な視点だった。
 あとはサウンド。邦画にありがちな上から降ってくるような音ではなく、洋画のように地から沸き上がってくるサウンド。それがもたらす効果の心地よさに、酔いしれることができた。

 そしてもうひとつ、改めて感じたことがある。
 それは、映画を劇場で観るという体験の重み。角川が劇場アニメに手を出したとき、自分は小学生で、それを劇場に観に行くことは叶わなかった。やがて、20数年の時を経て、ついにスクリーンで対面することができた喜び。スクリーンがデカイから凄いとか、音響がクリアーで素晴らしいとか、そういうことすら飛び越えて、今なお新鮮で、刺激的で、貴重な体験だった。
 もしもこの再会が、自宅のホームシアターであったら、それがどれだけ最先端の機器をそろえたものであっても、まったく違った体験になっていたと思う。
 映画は劇場で観るもの。
 そんなあたりまえのことを、再確認できた夜でもあった。
 感謝。

タロウさん

 トークショー、全上映作品ともにとてもおもしろく、大満足のオールナイトでした。恥ずかしながら、どの作品も初見だったのですが、先に監督方の制作話などを聞くことで、より楽しむことができたような気がします。イベント終了後に、来てよかったなあと思いながら劇場を後にすることができました。
 今後のイベントでも、今回の「ボビー」や「金の鳥」などのような見る機会の少ない作品を上映していただけるととてもうれしいです。

やくにさん

 当日新潟から二時間ほどかけて到着し、五時から文芸坐の邦画2本立てを見て、そのままオールナイトに突入するという強行軍となり、はたして体力がもつのか心配だったのですが、1本目の「ボビーに首ったけ」のあまりの衝撃にかんぜんに疲れが吹っ飛びました。
 ボビーの感想を書きはじめるとすさまじい長文になってしまいそうなので、ここではやめておきますが、とにかくいろんな人にみてほしいアニメ映画です。
 ボビー上映後の休憩中のトイレの列に、困惑したような呆れたような、今のはなんだったんだろうと途方にくれたような変な顔つきをした人が何人かいて、その人たちの表情に妙に共感したのを覚えています。
 面白いアニメ、というより、なんだかトンデモナイものを見たというような感覚におそわれた一夜でした。
 企画がマニアック過ぎて客の入りが云々、という話も聞きましたが、その企画に心を動かされ、そのために東京行きを決意する者もおりますので、これからもバラエティに富んだ企画を継続していただけると嬉しいです。

(09.12.18)