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『FREEDOM』森田修平監督インタビュー

 アニメスタイルが注目する3DCGアニメ『FREEDOM』。作画アニメの快感を見事に採り入れたCG映像は、一体どのようにして作られたのか? 現場でのスタッフワークや、CF版との映像タッチの違いなど、興味は尽きない。OVA1巻の発売を前にして、森田修平監督にお話をうかがってきた。前に掲載した「東京国際映画祭レポート(4)」とあわせて、読んでいただきたい。

●プロフィール
森田修平(Morita Shuhei)

1978年生まれ、奈良県出身。京都造形芸術大学を2001年に卒業。在学中にデジタル映像制作グループ「神風動画」の立ち上げに参加し、MTVのステーションIDや、NHK特番内で放映された短編『MARS BRAT』の監督などを手がける。 平行してSTUDIO4℃でもCGIスタッフとして活動。2003年に独立し、「YAMATOWORKS」を設立。その第1弾として監督作『カクレンボ』の制作に取りかかり、2005年に完成。この作品は2005年の東京アニメアワード公募作品一般部門で優秀作品賞を受賞し、カナダのファンタジア映画祭ショートフィルム部門でも金賞を獲得。デジタルアニメの新旗手として一躍注目され、今回の『FREEDOM』監督オファーに繋がった。

●2006年11月8日
取材場所/都内
取材/小黒祐一郎、岡本敦史
構成/岡本敦史



小黒 『FREEDOM』第1巻は、ウチでは基本的に大絶賛なんですよ。
森田 ありがとうございます。
小黒 こんなに「日本のアニメ」らしい動きをつけた3DCG作品は初めて観ました。
森田 そこは徹底的に、CGのスタッフに話をしました。要はコマ数を減らしたんですよ。僕が日本のアニメでいちばんいいところだと思っているのは、枚数を使わないで効果的に動かす部分なんですよ。手塚治虫さんが『鉄腕アトム』でTVアニメを始めた時に「コマ数を減らして、コストは安く、早く仕上げる」というのをやったじゃないですか。結果的に悪くなった部分もあるけど(苦笑)、よくなったところは、コマを減らした分だけ工夫があった。その時から、今ある日本のアニメが始まった、という気がするんですよね。そして、そこから培っていったもの、集大成的な作品として、やっぱり『AKIRA』がある。当時の手描きアニメとしてはかなり動いてるわけじゃないですか。
小黒 そうですね。
森田 僕らからすると、なかむらたかしさんの描く動きは3Dに凄く転化しやすいんです。そういうところと、コマを減らす上での工夫というのは、まず最初に徹底して話しました。今のスタッフはみんな若いんですよ。20代前半とか、10代もいるぐらいで。その平均25歳ぐらいのスタッフに、そこら辺の事を徹底的にレクチャーして。今のCGの人達って、技術力はあっても表現力が弱いという部分があるんですよね。1話でやっと、イイ感じには見えてきましたね。
小黒 僕らはCFを先に観てるんですけど、作っている順番としてはどちらが先になるんですか?
森田 順番としては、僕がプロジェクトに参加してまず最初に作ったのが、CFの1本目です。その後、色々細かいものを作って、CF2を作って、その最中にOVAの1話を作ってますかね。
小黒 最初のCFを拝見した時には、「あれっ?」と思ったんですが……。
森田 (苦笑)
小黒 だからOVAはそんなに期待してなかったんですよ。そしたら、素晴らしい進歩ぶりじゃないですか。
森田 アハハハ! あれは進歩というかスタイル自体が違うので、好き嫌いが分かれるんですよ。元々、CFの方もOVAと同じ方法でやろうとしてたんです。あの方法なら行けるというのは見えてはいたし、実はその方が簡単なんです。だけど、大友(克洋)さんが「線を細くして質感を入れられないか」と。テクスチャで、宇宙服っぽい質感とかを見せたいと言われたんです。僕の方は「それはCGでやっちゃうとマズイかな」と思っていたんですが……。その事については何度も話をしました。
小黒 マズイというのは、よくあるCG映像っぽくなりかねない、という。
森田 そうそう。だから僕は最初、反対派だった。でも大友さんは常に新しい事をしたいという人なので、「それは前にやった事だから、しなくていい」と考えていて。それで最終的に、大友さんの言うとおりに1回やってみよう、という事になったんです。あのテイストって好き嫌いは分かれるんですけど、僕はやってみて凄く面白いと思った。というのは、CFでやるのなら普通のアニメじゃ面白くないんです。なんか見た事もないような、アニメなのかCGなのか、という変な質感(笑)。結局はそういう仕上がりになったので、CFとしては目立つ作品になった。
小黒 なるほど。
森田 「不思議な魅力がある」と思いましたね。

▲CF1作目の映像より

小黒 動かし方はOVAと同じなんですか?
森田 同じです。12フレームで。ただ、作品中ずっとキャラクターがビークルに乗ってる事が多いので、あんまり人間味が出てないというのはありますね。あの時はまだ立ち上げてすぐの時で、スタッフも全然いない頃です。僕は1月に参加して、2月にはもうCFを作りだしていたので、早かったですね。
小黒 話は後先逆になるんですけど、参加された時、企画の概要みたいなものはあったんですか?
森田 概要はありました。それと、大友さんの描いたアポロジャケットを着た少年のデザインがあって、「これは面白いな」と。脚本の佐藤大さんもそのキャラにハマッて、2人で話してたんです。やっぱり僕らは大友作品をリスペクトしてきた世代なんで、リスペクトしつつ新しい展開をやりたい、と。特に、CGであのキャラを動かすというのは、結構勝負なわけですよ。どうしてもCGってまだキャラクター表現が弱いじゃないですか。
小黒 はい、はい。
森田 シリーズでは、各話ごとに“人間的な課題”を設けてるんです。今回の1話で言えば「青春」。月の青春グラフィティみたいな。2話ではまた別の課題があって、3話は「友情」とか。そこをクリアしていくために、CGで人間表現にチャレンジするというのは……まあ、危険なんですけど(笑)、前の『カクレンボ』という作品の時に手応えはあったんですよね。あとはアニメーターの腕次第というか、そこを育てられればいいなと思ってた。その部分に関しては上手くいったかな、と思いますね。
小黒 なるほど。
森田 そう考えるとCFの1本目はまだ本当に実験段階で、段々と成功していった感じですね。最初はスタッフも少ないし、なかなか上手くいかない部分もあった。途中から少しずつ上手くいくようになって、今はある程度システム化もできてきました。ただ、やっぱり外注の事とかも含めて、CGの現場には共通言語がないという怖さがある。だから、今回の作品でそういうシステムを作っていってもいいんじゃないかな、とは思いますね。日本ならではのCGアニメのスタイルを、ラインも含めて作っていく、というのが重要かなと考えてます。
小黒 ストーリーは、主に監督と佐藤大さんの2人で作られたんですか?
森田 いえ、千葉克彦さんにも入ってもらってます。特に、前半は千葉さんの色が濃いですね。後半は佐藤大さん、野村祐一さん。そして設定的なところで大塚ギチさんというメンバーを中心に、5人でずっと話し合いました。
小黒 参加される前から、月を舞台にした未来SFというのは決まっていた?
森田 大枠はあったんですけど、中身の話は全然決まってなくて。脚本家陣も含めて、こうした方が面白い、ああした方が面白い、というのは散々練りましたね。あとは、何を伝えたいか。今の時代に求められているもの、子ども達に伝えたい事も含めて。たとえばそれは「行動力」であったり、ベタに行きたいねとか、その辺を全部決めていきました。
小黒 もう最終回までのシナリオは完成したんですか。
森田 まだ上がってないです(笑)。
小黒 今は何話まで決定稿に?
森田 一応、5話まで。もう6話に入ってます。
小黒 ああ、じゃあもう先は見えてるんですね。
森田 そうですね。

▲OVA1話より。物語の主人公タケル(左)と、その親友カズマとビス(右)

小黒 クレジットを観ていて驚いたのが、作画監督・原画・動画という役職があって、かなりの名前が並んでますよね。具体的に、手描きアニメーターの方はどういう風に参加してるんですか。
森田 実は本編の中に作画があったりするんですよ。例えばレースシーンで、モブがワーッとなってる画があるじゃないですか。あれは1人だけCGで、周りが実は作画だったりとか。メインキャラ以外は結構、作画だったりするんです。僕の中では別に3Dでやろうと2Dでやろうと関係なかったので。逆に3Dが作画に近い感じになったし、作画の方達にもそのテイストに合わせて描いてもらったので、観客が違和感を感じなければいいのでは、と。
小黒 じゃ、手描きアニメーターの方がレイアウトを描いて、それを3Dに起こして、といったやり方ではないんですね。
森田 作画でレイアウトを起こすものと、3Dでレイアウトを起こすものと両方あります。例えばカップヌードルを食べる場面は、麺だけが作画なんですよね。それはどういう風にしてるかというと、原画である程度まで作って、それに合わせてCGを動かして、麺だけは作画にして、という。そういうところでは、本当に2Dと3Dが融合してますね。
小黒 なるほど。
森田 あと、作監の方には全体のアニメもチェックしてもらっています。やっぱりアニメ的にいきたいんで、作監の方に「ここはこういう風にした方がいい」とか「こういう時はこんな芝居にしよう」とか言ってもらって。
小黒 1話の作画監督は新井浩一さんですよね。新井さんは3Dの芝居も見ているんですか?
森田 見てます。もちろん、全部を通してチェックしています。
小黒 全カット、全編ですか。
森田 全編ですね。でも新井さん、チェックしてる時は結構「いいねえ、いいねえ」しか言わなかったけど(笑)。
小黒 3DCGのチーフは別にいるわけですよね。
森田 います。CGI監督の佐藤広大という、彼もまだ若いんですけど。25歳くらいかな。実は僕の『カクレンボ』でも一緒にやっているんですよ。だから、唯一僕のやり方を認識していた人間なんです。彼がかなり厳しくチェックするので、僕は助かります(笑)。僕は最初の段階で、ある程度教えただけで……まあ、僕自身が元々アニメーターで、CGは全部やってきたので。結構、現場ではコミュニケーションを重視しているんです。スタッフが若いから、その辺は特に。僕と片山一良さんという演出の方と2人でやってますね。
小黒 片山さんは1話のコンテ・演出ですね。
森田 片山さんもコミュニケーション好きなので、若手に対して結構教えたがりというか、「こういう時はこういう動かし方をすると面白いよ」っていう作画の面白さに関しては、常にやりとりしてましたね。
小黒 エフェクトで橋本敬史さんの名前が入ってますよね。橋本さんはどういうお仕事をされてるんですか?
森田 橋本さんはCFを含めて、最初からメインでエフェクトの作画をしていただいてます。月面の土ぼこりの飛び散り方とか、橋本さんって凄くこだわるじゃないですか。
小黒 そうですね。
森田 月面だとこうなる、みたいな部分を凄くリアルにやってもらっています。CFの方は結構できてたんだけど、1話はあんまりやれなかったな、とは本人も言ってました。割合が低いんですよ。1カットか2カットぐらいかな。
小黒 じゃあ、今後は増えていく?
森田 それはできる限りお願いしたいですよ。月面のシーンが多くなれば、必然的にエフェクトも増えるので。
小黒 橋本さんは手描きでずっといくんですね。
森田 そうです。橋本さんの仕事もまた特殊で、一度CGで動画を作ってから、連番をプリントアウトして、それに合わせてエフェクトの原画を描いていくんですけど。原画マンと言いながら動画マンに近いぐらい描いてます(苦笑)。凄くこだわりを感じるし、面白い動きもつけてくれるし。こないだも2話のエフェクトの事で打ち合わせしてたんですよ。「僕は特殊な事をよく頼まれるからなあ」とか言いながら(笑)。
小黒 なるほど。
森田 僕はまだCGって信用してないんですよ。一番大切にしているのは、やっぱり“絵力”なんです。作画ってやっぱりパワーがあるじゃないですか。人間の手で描くから出せる力って、絶対にあるんですよ。エフェクトなんかも普通はCGにしがちなんですが、あれこそ人間のパワーで作るべきものなんです。今回みたいに、2Dの背景で3Dのキャラを動かして、その上に手描きのエフェクトを乗せてサンドイッチすると、本当によくなるんですよ。
 実はこの作品が成功しているのは、そういう事なんです。CGでアニメーションを作る時、いかに人間のパワーを入れ込むか。この作品に参加する前から、僕はずっとそれを研究していて、ある程度は自分の中で「こうすれば出せる」っていう方法論を見出したんです。細かいところはいろいろあるんですけど、「エフェクトは作画でいきたい」というのもそのひとつですね。
小黒 今回、モーションキャプチャは使ってるんですか?
森田 いえ、全部手づけです。
小黒 そうですよね。
森田 3Dアニメーションのスタッフがみんな若いので、仕事は結構早くなってきましたね。今、うちで重視してるのは「スピードを上げる」っていう事。客観的に見てアニメ業界もゲーム業界も、技術力はあるんですけど、作業がそんなに早くないんですね。(3Dアニメーションは)動かせてしまうから無駄に細かいところまで動かしてしまう。だから全体的に情報整理が必要なんですね。無駄な動きを減らす事で、自然に作業スピードは速くなるわけなんですけど、でも動かさずに止め絵で感情表現をする事って、3Dは苦手なんです。
小黒 CGって、止め絵になるとちょっとツライ時ありますよね。動いてる時に活き活きしてる作品であっても。
森田 そうなんです。やっぱり弱いんですよ。作画とか漫画も含めて、絵の凄いところは、止まってる時でも「走ってきた時の止まり方」とか色々できる。それはなぜかと言うと、嘘をつけるんですよね。顔を変形させたりとか。それで僕が考えたのは、やっぱりCGも作画と同じように嘘をつくという事。スタッフにもその方法を教えて、だいぶよくなってはきました。まだ足りないな、とは思ってるんですけど。

▲入江篤によるキャラ設定。目と口の描き方に関する注意点が

小黒 目パチ・口パクは、普通の作画アニメみたいにパターンを作って貼ってるんですか?
森田 いや、あれは3DCGのモデルが動いてるんです。だいぶCGっぽく見えないようにはなってきたんですけど。最初の頃にはそういう実験もしてました。目パチは作画にしようか、とか。
小黒 やっぱり目と口ですよね、今回の見どころは。
森田 そう、人間がいちばん気にする部分ってその辺なんですよね。人と話す時には目を見たり、手を見たり。口はあんまり見ないんですけどね。やっぱり手と目。ここを何とか強くしたい。そういう意味では、最初のCFよりはだいぶ進化したんですよ。初めはやっぱり目が弱かった。その辺をどんどん改良していって、今はある程度の強さは出てきました。このままどんどん進化していけば、ちょっと面白いものにはなっていくかなあ、と。
小黒 アニメの『AKIRA』については最初から意識していたんですか? それとも結果的にそこに近づいた?
森田 最初から意識したわけではないです。さっきも言いましたけど、なかむらたかしさんのアニメーションって、CGの人間にとってはまだやりやすいスタイルなんですよ。大友さんの絵もそうなんですけど、リアリティがあるんですよね。ちゃんと、物が回転した時にはこう見えるとか。そういう意味では、CGの人間でもある程度は参考にしやすい。
小黒 つまり、動かす時にひたすら現実の動きに近づけるのか、様々な線引きや選択肢があるけれど、今回は“あのぐらいのリアリズム”にした、という事ですね。
森田 そうです。“あのぐらいのリアリズム”ですね。ちょっとリアルでありつつ、アニメのいい要素はちゃんと持っているという。どうしても、本当に面白いアニメはもっとスタッフに見せていかないといけない。今の若い子って、そんなに見てないじゃないですか。動きの面白さを研究してないんですよね。
小黒 まあ、普通に今のTVを観てると目につきにくいですね。
森田 昔のアニメは凄くいいじゃないですか。『未来少年コナン』とか、『風の谷のナウシカ』や『AKIRA』も含めて。その辺を今のスタッフには研究させてます。別になかむらさんだけじゃなくて、その頃の凄いアニメを研究しろ、と。「あの頃はスーパーアニメーターがたくさんいたんだ!」という感じで(笑)。……残念なのは、その頃の人達は本当に「見て盗め」だったじゃないですか。それが時を経るにつれて、誰も見て盗まなくなって、誰も教えなくなった。僕がスタッフに言ってるのは、まず見て盗めという事。今、情報が氾濫しすぎていて、模倣的要素があるとすぐに「これは○○のパクリだ」「オリジナルじゃない」みたいな話になるんですけど、僕の中ではまず「基礎ができてからやれ」というのがある。基礎も何もないのにオリジナルを見つけるなんて無理なんです。やっぱりあらゆる作品を観て、まず自分の中にストックをいっぱい貯めた上で、自分の表現をしていったらいいんじゃない? と。自分で作品作りをすれば、絶対にオリジナル要素は出ますしね。面白いのは、アニメーションを見ると、誰が担当したカットかすぐ分かる。少しですが、顔やモーションが本人に似てたりと。それでいいんですよ。
小黒 1話だと、カズマの妹のチヨを前にしてタケル君がドタバタするカットなんかは、凄く頑張ってましたよね。
森田 (笑)。あれはコンテにそういう指示があるんでね。あの場面を担当してるのは22歳と19歳ですよ。
小黒 へえ。
森田 本当に若い2人がやってます。やっぱり素直に頭に入れるんですよ、「こういうのを見てこういう風にしろ」って言うと。それは凄くよかったですね。今、CGでいいアニメーションをつけられる人間って本当にいないんですよ。それはもうびっくりするほどいなくて(苦笑)。なので、チーム編成としては若手重視で面白くしていこう、という方向で。そういう意味では上手くいってますね。

▲渡部隆らによる世界観設定も見どころのひとつ

小黒 あと、渡部隆さんが原画にクレジットされていたのも気になったんですが。渡部さんの主な役職は背景原図ですか。
森田 背景設定ですね。このプロジェクトのスタートから参加してもらって。ただ、作品のスケジュールも考えると、渡部さんだけ全部抱えるわけには行かなかったので、曽野由大さんという漫画家さんが……実は原図に2人ぐらい漫画家さんが入ってるんです。というのは、背景をどういうテイストにしようかと考えた時、僕の中では大友さんのビジュアルを使った作品であるという事も含めて、漫画的な感じを入れたかった。要は、原図の線をちょっと強くしよう、と。それなら漫画家さんがいる方がいいよね、という話になった時に、ちょうど曽野さんが遊びに来たんです。ホントにただ遊びに来ただけなんですけど、その時に1枚だけ描いてもらって、そのままズルズル引き込んで(笑)。
小黒 その方がOVAではかなり活躍してるんですね。
森田 漫画家さんなんで、とにかく早い! 設定が遅れていて「どうしようか」って言ってた時期に、1ヶ月で100以上の設定を上げてきてくれて。化け物ですね(笑)。
小黒 それは1話分ですよね。1話はカット数いくつなんですか?
森田 えーと、400か、450かな? そういう変な繋がりもありつつ……だから、変な作り方してますよね。やっぱり“絵力”を重視しているからなんですけど。今やってる方法って、実は2Dアニメの作り方に凄く近いんです。特に「レイアウトで勝負!」っていうところでは、厳しくやってます。今のCGで何が弱いかというと、レイアウトを切る前にすぐアニメーションにしちゃうんですよ。無駄な動きが多くなって、キメのポーズがなくなってしまう。
小黒 つまり、いきなり3Dで空間を作って……。
森田 そう。空間を作って、いきなりカメラ置いて、キャラを歩かせたり。それってアニメの作り方として間違ってる。やっぱりまずレイアウトがあって、原画があって、動画がある、という事ですから。CGでも手描きでもいいから、とりあえずレイアウトを1回作って、チェックに回す。その時に一番重視するのは、ポーズとか構図といった事ですね。止め絵で状況や感情を感じさせるように。その辺がまだCGの人って凄く弱いんです。そこを徹底的にやってから、原画みたいな感じでラフの動きをつけさせて、その後で動きの中割を作って、みたいな。本当にライン的には作画アニメのように、CGでそれを重視しているというか。
小黒 じゃあ、今回のコンセプトとしては、通常の手描きアニメと、雑誌マンガのタッチに近づけるという事なんですね。
森田 近づけるというよりは、表現として「見やすい表現」にするという事ですね。観てる人は、あんまり新しい技術だと見にくいわけじゃないですか。要は、最初のCFでやったような実験的な映像でやっても難しいし、オープニングのようなカッコイイ映像で本編をやったとしても、観る人はつらいし。そういう意味で言うと、コンセプトは「一番見やすいかたち」ですね。観客は映像美も見ますけど、一番重要なのはお話ですからね。
小黒 なるほど。
森田 普通に作品を観てる人って、5分も経てば絵柄なんて見ないわけですよ。あとはストーリーに入っていく。それで感動したり、泣いたり笑ったりしてもらうのが映画の役割ですから。でも最近、観てると急に作画になったり、3Dになったりして、それが気になっちゃう事がありますよね。つまり、ストーリーと関係ない情報の横槍がポンポンポンと入ってくるわけです。それはつらい。観客が、そんな余計な事を考えずに観られる作品がいいんじゃないかな、という思いはありましたね。
小黒 なるほど。全然違う話ですが、ちょっと気になった事がありまして……カップヌードルは今後もポイントで登場するんですか?
森田 もちろん毎回出てきますよ。
小黒 まあ、当然ですよね(笑)。
森田 タケルとタイラは無類のカップヌードル好きっていう設定ですから(笑)。まあ、面白い見せ方にはしてます。スタジオでも、スタッフが結構お世話になっているので、そういう意味では馴染みの深いものなんです。
小黒 あ、スタジオにカップヌードルがいっぱいあるんですか?
森田 新製品が出ると送ってもらったりしてます。でも僕が手を出す前に、若手が全部持って行っちゃう。早いんですよ、若者は(笑)。

●商品情報
『FREEDOM 1』(OVA・2006)
11月24日発売
カラー/本編24分(映像特典18分)/ドルビーデジタル(5.1ch)/16:9スクイーズ/ビスタサイズ/片面1層
商品仕様:スーパージュエルケース+アートケース
映像特典:FREEDOM PROJECT メイキング映像2 スタッフ座談会(出演:森田修平、佐藤大、大塚ギチ)/デジタルギャラリー(設定線画)
価格/3990円(税込)
発売・販売/バンダイビジュアル
Amazon

●関連サイト
“FREEDOM-PROJECT”公式サイト
http://freedom-project.jp/


(06.11.22)

 

 
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編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
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