本文抜粋 その1 第8回 関弘美
―― なるほど。いい話を聞いておいて、こんな些末な事を聞くのも何なんですが、『どれみ』に関先生っていうキャラクターがいますよね。
関 えーと、この番組に出てくる色んな名前はですね、ウチの会社の人間とか、スタッフの名前からチョコチョコと、とっております。どれみ達の学校の担任の先生の名前を関先生にしたのは、シナリオライターの山田(隆司)さんの考えです。それに関して私は「えっ!」と言っただけでした。ただ、そのキャラクター設定を作る段階で「江角マキコ風にしろ」と(笑)いう注文は馬越さんに出しました。それ以外が上がってきてもOKしないというワガママも言いました、ごめんなさい。ウフフ。関先生をどういう性格にするかっていう事を、山田さんと佐藤さんが話し始めた時、私は何も言えなくなりまして(笑)。そーかぁ、この二人はあたしの事をそういう風に思ってるのかって思いながら、聞いていました。
―― この前、放映した話はおいしかったですよね。「関さんは、いい人だなあ」なんて思いながら観ました。
関 ウフフフ。そうでしたね。でも、それに関しては、演出的な事にはなんの注文も出していません。ああしろ、こうしろとは言っておりません。
本文抜粋 その2 第9回 原恵一
―― 1本目の『アクション仮面VSハイグレ魔王』では、前半は本当に淡々と日常を描写していて。
原 ええ。あの辺は僕がやったんです。
―― 後半の本郷さんのパートはアクションシーン山盛り。分かりやすい構成ですよね。『雲黒斎』はどうなんですか。
原 時代劇シーンは、ほぼ僕がやりました。時代劇という事もあって、相当入れ込んでやってましたね。
―― 時代劇がお好きなんですね。
原 うん、そうですね。メチャメチャ好きな人に比べれば、僕はそんなに観てる方じゃないと思うんだけど、一度やってみたかった。原画にもそういう人がいてね、助かったんですよ。模擬刀を横に置いて、コンテやってましたよ(笑)。
―― 自分で刀を持って、ポーズをとりながら。
原 うん。分からなくなると誰かに相手してもらって、「こう来てこう来たら、次はこうか」とかね。チャンバラはかなり燃えましたね。また機会があったら、やりたいですね(笑)。
―― 5作目以降は、本郷さんが抜けて、原さんが監督としておやりになっているわけですが。
原 そうですね、割と好き勝手に遊ばせてもらっていますね。「今度はこんなのにしよう」という上からの声みたいなものが、ほとんどないんですよ。僕みたいなタイプからすると、誰かから「今度はこんなの」と言われて、やった方がいいのかもしれないけれど。
―― 最新作の『温泉わくわく大決戦』ですが。
原 今回、個人的に一番燃えたのは丹波哲郎ですよ。これはもう大興奮でしたね。
―― 今回は随分と「邦画」でしたよね。
原 それは思いました。「俺は日本映画をやっているんだよなあ」と。丹波さんに出演交渉をした時に、丹波さんが「その映画に自分が必要なら出てもいい」と言ってくれたらしいんです。その話を聞いた時にね、ちょっと感動したんですよ。「映画? ……映画なんだよ! さすが映画人、言う事が違うなあ」って。「『しんちゃん』とはいえ、日本映画なんだ」って。
本文抜粋 その3 第11回 大地丙太郎
―― 他に、ここ数年でスタンスが変わってきた部分はあります?
大地 一番大きいのは自分の環境ですかね。自分の子供の成長が、かなり大きいですよ。例えば、僕が『赤ずきんチャチャ』をやっていた頃は、娘達が『チャチャ』を観て楽しんでくれていたんです。『チャチャ』の時は無邪気に、コケたら笑ってくれた、ドツいたら笑ってくれたんです。
―― その頃、娘さんはお幾つくらいだったんですか。
大地 小学校低学年ですね。でも、年齢が上がってくると、一筋縄ではいかなくなってくるじゃないですか。そうすると接し方なんかに関しても、今まで父親として手を抜いていたところが、露わになってくるわけですよ。娘と接しているうちに自分の欠点とか、ダメなところがどんどん見えてくるわけですよ。そうなると作品の中で、あんまりスーパーマンみたいなヤツとか、カッコいいヤツが描けなくなってくるんです。
―― そういうものですか。
大地 最近、思うんだけど、僕の作品に出てくるヤツって頭悪いですよね。得意な事はあるけれど、苦手な事は全然ダメで、そのダメな部分が強調される事が多いなあ、と思いますね。それは、段々、自分のダメさ加減が見えてきているからなのかもしれませんね。
―― ……う〜ん。ここで「ああ、なるほど!」と頷くとマズいかな(笑)。
大地 (笑)。いや、大丈夫ですよ。
本文抜粋 その4 第15回 今石洋之
―― いよいよ、伝説となっている19話の劇メーションについて、うかがいたいんですが。
今石 (笑)。
―― あれはどういう経緯で生まれたんですか。
今石 僕は普通にやるつもりだったんですよ。だけど、僕がコンテを描いている横で、毎日、庵野さんが「『猫目小僧』だ」とか「劇メーションをやれ」とか、囁いてですね(笑)。段々それをやらざるを得なくなってきて。それに、この先10年アニメをやったとしても、こんな事ができるチャンスはもう無いんじゃないかと思いはじめて。
―― 『猫目小僧』は、観た事あったんですか。
今石 観た事なかったんですよ。「観た事ないですよ」と言ったら、庵野さんが『猫目小僧』のビデオを持って来てくれて。「これだ!」と言われたんですけど。意外と……というか、ちゃんと作ってあるんですよ、『猫目小僧』は。
―― ちゃんとした番組になっていたわけですね。
今石 ええ。庵野さんから「割り箸に画を貼り付けたものを撮影しているんだ。それで色んな事やっていて、凄いんだよ」と聞いていたので、かなりショボいんだろうと思っていたら、ちゃんと作ってるじゃないですか。しかも実写畑の、例えば特撮とかやってるような人が作ってる番組じゃないですか。それで、これをそのままパクるのは無理だよと思って。