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アニメの作画を語ろう
animator interview
 小池健(1)

▲右と中央の写真は『TRAVA-FIST PLANET episode1』(発売・販売元/株式会社レントラックジャパン)。2003年春には「TRAVAスペシャル版」DVDが、いよいよGrasshoppa!よりリリースされる予定!
 『PARTY7』のオープニングで突然に、小池健は我々の前に出現した。そのアメコミ調のキャラクターとディフォルメの効いたアクションは、実に新鮮なものだった。それまで彼は『獣兵衛忍風帖』『VAMPIRE HUNTER D』等の川尻善昭作品への原画として参加が多く、自分のオリジナルキャラや演出の担当は『PARTY7』が初めてだったのだそうだ。
 その後、小池健は『PARTY7』の石井克人監督とのコンビで『TRAVA Fist★Planet』を発表。さらに公開待機中の『THE ANIMATRIX』の1本、バラエティ番組『SmaSTATION』で放映される短編と、オリジナルキャラクターの作品を次々と手がけている。
 その作画のスタイルは金田伊功系のアクションと、川尻善昭作品のスタイリッシュな魅力をミックスし、それに彼のオリジナルティを加えたものだ。今、最も刺激な映像を作り出すクリエイターといえるだろう。

2002年6月12日
取材場所/東京・マッドハウス
取材/小黒祐一郎
構成/小川びい、武井風太

PROFILE
小池健(KOIKE TAKESHI)

 1968年1月26日生まれ。山形県出身。アニメーター・演出家。高校卒業後、マッドハウスでアニメーターとしての活動を始める。『妖獣都市』で初めて動画として参加し、初原画が『MIDNIGHT EYE ゴクウ』。以降も『獣兵衛忍風帖』『VAMPIRE HUNTER D』等、川尻善昭作品を中心に原画として活躍。実写映画『PARTY7』のオープニングで、初めてアニメーションディレクターとキャラクターデザインを務める。続けて、SMAPのコンサートのアニメパート、『TRAVA Fist★Planet』等を手がける。現在の立場はフリー。マッドハウスを拠点に活動している。

【主要作品リスト】

小黒 今回は、最近、アニメ業界で注目を集めている小池健さんを……。
小池 そうなんですか(苦笑)。
小黒 「PARTY7」で突然に出てきたという印象があるんですよ。
小池 まあ、それまでは一原画マンでしたからね。
小黒 川尻(善昭)作品にずっと参加されていたそうですが、川尻作品で作監はやってないんですよね。
小池 そうですね、かなり前にメカ作監をやったぐらいですかね。作監自体もそんなにはやってないんです。『十兵衛ちゃん』がほとんど初めてでした。その次が「PARTY7」なんですよ。
小黒 この業界にお入りになったころの事からお伺いしたいのですが。
小池 僕が入ったころはアニメーターっていう職種がメジャーになってきた頃で、金田(伊功)さん、森本(晃司)さん、なかむらたかしさんといった人達に憧れていたんですね。その人達が参加されていた『幻魔大戦』がマッドハウスで作られていたんです。川尻さんの絵柄が好きだったというのもありまして、その両方の理由でマッドハウスに入ったんですね。
小黒 作品としてはどういったものがお好きだったんですか。
小池 作品だと『銀河鉄道999』ですね。『999』に関しては作品全体が好きなんですけれど、調べていたら自分が印象に残っているところが金田さんの仕事だと知って、アニメーターでもああいう演出的な事ができるんだという事で驚きました。そのアニメーター独自の表情づけとか独特の演技づけとかが、面白いなと。
小黒 個性の出た仕事や、その人のクリエイティブが作品に反映されるようなところに興味をもったんですね。
小池 そうですね。で、業界に入ってからは、画を描くだけじゃなくて、作品作りが面白くなって、いずれは演出的な事をやっていきたいという気持ちを持ちつつ、アニメーターをやってきたんです。
小黒 高校3年の時に、面接を受けるために地方から自転車で上京してきたと、うかがっているんですけど。
小池 自転車じゃないですよ。オートバイです(笑)。面接で川尻さんに画を見てもらったんですよ。「これで落としたらかわいそうだろう」という感じだったんで、その場で合格になって(苦笑)。
小黒 その時は、どちらにお住まいだったんですか?
小池 実家は山形なんですよ。
小黒 山形からバイクで来ると、どのくらいかかるんです?
小池 バイクで6時間ぐらいですかねえ。
小黒 なるほど(笑)。学生時代には画は描いていたんですか。
小池 個人的に画は描いてましたけど、アニメーションは全然やっていませんでした。模写とか、自分で好きな画を描いたりとかですね。その当時は金田さんの画や、あとは天野(喜孝)さんの画集が好きで、それを真似たような画をよく描いていましたね。
小黒 実際に仕事を始められて、どうだったんですか。原動画の実作業については、勉強してないわけですよね。
小池 まず、線を引く作業でつまずきましたよね。毎日毎日同じ画をトレスし直すわけですから。その頃は「これでやっていけるのかな」という感じもあったんです。でも、中割りの作業があって、それで初めて動かす事が楽しくなったんです。それがあったから、続けられたのかなと思います。
小黒 その当時マッドの中には、仕事を教えてくれるセクションがあったんですか。
小池 動画チェックの人が、面倒をみてくれるという形になっていました。それに、分からない時は社内の原画マンに持って行ってチェックしてもらえましたんで、自分で勉強しようと思えばいくらでもできましたね。
小黒 原画はどなたかに教わったんですか。
小池 ああ、2原体制というシステムがあるんですよ(注1)。川尻さんがレイアウトを切って、大まかなラフまで入れてくれるんです。それをクリンナップして、必要な原画を埋めていくという作業なんですけど。その段階で、川尻さんに原画を見てもらった事がいちばん大きかったですね。
小黒 それは作品で言うとどの辺ですか。
小池 『(MIDNIGHT EYE)ゴクウII』かな。
小黒 『妖獣都市』の頃は川尻さん自身が全編のラフ原画を描いていた、と聞いた事があるんですけど。
小池 『妖獣都市』はどうか知りませんけど、『ゴクウ』に関しても、そんな感じでしたよ。キーになるところは、ほとんど川尻さんが起こして、という感じですね。
小黒 川尻さんのアニメって、今でもそのシステムをとってるんですか?
小池 最近まではその傾向にありましたね。2原体制でなくなったのは、『(VAMPIRE)HUNTER D』の頃からかな。あの頃になると腕に自信のある原画マンがそろってきたので、原画マンの動きを尊重して、川尻さんがチェックするという形になってました。
小黒 小池さん自身は、初期からアクション指向だったんですか?
小池 アクションは好きでしたよ。やっぱり、アニメーターとしては「動いてなんぼ」ですから。どうすれば川尻さんみたいな渋い動きになるのかという事に関しては、かなり勉強したつもりなんですけどね。それでもなかなかあの感じは出せないんですよ。特殊なコマ打ちをしている感じでもないですし。2コマもベタ打ちだったりするんですけど。
小黒 そうなんですか。不思議ですね。
小池 崩れた画がないと言うか、構図が決まってるからなんでしょうね。
小黒 長く川尻さんの作品に参加されていますけど、川尻作品らしく描く秘訣はあるんですか。
小池 無駄な事を省くっていう事じゃないかと思います。前に川尻さんと話をした事があるんですけど、川尻さんは、会話シーンで喋っている時の描写では極力芝居させないと決めて、その代わり喋っている相手のリアクションを印象的に見せる、というような事をするんですよ。
小黒 なるほど、無駄に動かさない事で効果を上げるわけですね。
小池 キャラクターも構図を含めて川尻さんの作品は、完成されてると思います。そこを真似ながらやったんですけれども、今でも川尻さんのところまでは到達できないですね。
小黒 それは、美意識みたいな部分という事ですか。
小池 ええ、そうですね。あのセンスはやっぱり川尻さんじゃないとできないと思います。だから、自分のテイストで勝負しないとダメなんだろうなって最近では思うようになって、意識的に自分のカラーを出すようにしているのかもしれません。
小黒 2回ほどマッドハウスから離れてやられた仕事があるそうですね。
小池 『ジャイアント ロボ』と、『BLOOD』ですね。
小黒 『ジャイアント ロボ』は自ら志願されたんですか。
小池 そうなんです。参加したいちばんの要因は、キャラ作監の山下(明彦)さんに憧れていたからなんです。「あの人の画面の作り方が凄いな」と思って。画面をアニメーター的にではなく、むしろ演出的に消化しているんですよ。山下さんはイメージボードもかなり描いているんですよね。『(超神伝説)うろつき童子 魔胎伝』だったかな、そのラフコンテと言うか、イメージボードみたいなものを見せてもらった事があるんですけど、山下さんが全部描き起こしてるんです。それが凄くよくて、「これは一回、一緒に仕事がしたい」と。そう思いまして、『ジャイアント ロボ』の時に「どうしてもやりたい」と丸山(正雄)さんに頼みました。
小黒 『ジャイアント ロボ』で得るものは多かったんですか?
小池 得るものも多かったんですけど、あまり吸収できていないかも。とにかく凄すぎて。
小黒 例えば、山下さんのどういうところが凄いんです?
小池 悩みが感じられないんですよ、画面作りに。こうしたいんだと思った事が思った通りに、すらすら描けてしまうように見える。
小黒 本人として本当はこうしたいんだろうけど、そこまでいってない……みたいな感じがないわけですね。
小池 そうなんです。勿論、ご本人のレベルでは色々あるんでしょうけど。あの人の頭はどうなっているんだろうって、ビックリしましたね。
小黒 『ジャイアント ロボ』では、小池さんは具体的にはどこを担当されたんですか。
小池 1話のパリの街が荒れていくようなところだと思います。ロボが格納庫に収納されて、機械が整備を始めるところも。
小黒 アームが伸びてくるところですね。
小池 ええ。アクションシーンはあまりやっていないんです。メカと少しエフェクトをやったんですよ。ぜひ見てくれ、というようなところではないんですけど、あれは作品全体がいい感じだったので、参加できてよかったと思います。
小黒 『BLOOD』の方は?
小池 あの時は寺田克也さんの画に凄く憧れていたんですよ。作監の黄瀬(和哉)さんと一緒に仕事したいという気持ちもあって、それで参加したんです。“ゴールデンスタッフ”と言われる井上(俊之)さんや磯(光雄)さんといった人達がバリバリとアクションシーンをやっていて、力の差を見せつけられたという感じですね。
小黒 でも、井上さんや磯さんは、どちらかと言えばリアル系じゃないですか。小池さんとは傾向が違うでしょう。
小池 違いますけどね。違いますけど、ああいう人達がどこをポイントに原画を描いているのか、全然分からないんです。そういったところに関して少し葛藤がありましたね。
小黒 そうなんですか。
小池 それを感じたのは終わってからですけどね。やっている時はただ自分のパートを消化しているだけなんですけど、上がってきたものを見ると、アニメーターとしての力のある人達の仕事を、まざまざと見せつけられたっていう感じですかね。  僕が直接仕事で関わった方では、作監の黄瀬さんも印象的でしたね。黄瀬さんは全体を引いた目で見られるのか、ちょっとした演技づけだとか、「このシーンはここまで派手にしなくていいよ」というような事を的確に指示してくれるんです。そこが、今まで一緒に仕事をした作監とは違った印象を受けました。
小黒 なるほど。直すにしても全直しのような形ではないんですね。
小池 ええ。部分的な直しなんですけど、それによって「演出的に望まれている演技はここまで」と具体的に指示してくれるんです。
小黒 「ここまで」と言うと?
小池 必要以上なものはいらない、という事です。かと言って淡白でもない。ちょっとした演技づけなんですけど、それが、頭で考えて描いているのかなと不思議に思うくらい自然なんですね。やっぱり映画をたくさん観ていらっしゃるんでしょうね。
小黒 川尻作品の話に戻りますが『獣兵衛忍風帖』はどこをやられてるんですか。
小池 鉄斎っていう、皮膚が岩に変わる大男と獣兵衛が戦っているところです。
小黒 かなりカット数がありますけど、女が岩男に襲われているシーンからですか。そこに獣兵衛が入ってきますよね。
小池 いえ、その後一度獣兵衛が逃げるじゃないですか。で、もう一回岩男に捕まるんです。そこからが僕になります。あのころはちょうど動かすのが面白くなってきた時期で、重量感や力強さが表現できる原画をやりたいと思って、使ってもらいました。
小黒 岩の固そうな感じがよかったです。あそこは見せ場ですよね。
小池 ありがとうございます(笑)。
小黒 『D』ではどちらを?
小池 トンネルの中でマイエル・リンクと、Dが初めて会うところです。馬車の上で戦っているところですね。
小黒 つばぜり合いですね。
小池 そうです。そこと、バルバロイっていう妖怪のような奴らがいっぱい集まってるところで、グローブっていう霊体がやってくるところですね。
小黒 ああ、あの身体の弱い人。あの人がビームを撃ったりするところですね。あそこのシークエンスはまるまるやられたんですか。
小池 レイアウトはまるまるやって、原画はアクションシーンからやっています。
小黒 川尻作品で大きな仕事はその辺りになるんですか。
小池 そうですね。ずっと川尻作品をやる機会が多かったので、そろそろ違うところでやってみたいなという欲が出てきたんですね。それでTVシリーズに参加してみて、それが刺激になったんです。『D』が終わって、大地(丙太郎)さんの『十兵衛ちゃん』をやり始めた頃に、作監の吉松(孝博)さんとか、ライブから来ている菅野(利之)さんといった方の仕事ぶりに強い影響を受けました。TVでも凄い原画を描いてるんですよ。
小黒 原画枚数を沢山描いてるという事ですか?
小池 枚数もそうだし、演技のつけ方にしても凄いんです。TVでもここまでやっちゃうんだ、と思って刺激になりました。それがきっかけになって、とりあえずやりたい事はTVだろうがなんだろうが、全部やろうと思うようになったんです。それが原画の描き方や動かし方が変わったきっかけになりましたね。
小黒 吉松君は『十兵衛ちゃん』の時は、シリーズ作監だから、レイアウト段階で修正を入れたり、ラフを足したりといった作業をしているわけですよね。
小池 そうですね。TVだから、全ての面でクオリティを上げるっていうわけにいかないじゃないですか。こういう言い方をしていいかどうか分からないんですけども、「ちょっとキツイな」と思うような部分を、見られるレベルまで引き上げるための作業が尋常じゃないんですよ。特に菅野(利之)さんは、ここまでやるのかって驚くくらいの原画を描いていたんで、本当にビックリしました。
小黒 先ほど『月影蘭』のオープニングではチャンバラを担当したという事でしたが。
小池 ええ。あれは大地さんが打ち合わせの時に、自分で殺陣をやってくださるんですよ。イメージを具体的に伝えてくれるんで、やりやすかったですね。あと杉井(ギサブロー)さんの『陽だまりの樹』を1話だけお手伝いしたんです。それもちょっとした間の取り方とか、演出の仕方が全然違うし、演技のつけ方も違う。1年ぐらい、そんな風にいくつかTVの仕事をやったんです。やっぱり色んな人とやってみる事が面白いなと思いましたね。
小黒 最近だと『はじめの一歩』の仕事もありますよね。何話くらい参加しているんですか。
小池 いちばん最初のオープニングと20話(「ショットガンの脅威」)を手伝っているくらいです。ほとんど同期の林(秀夫)ってやつが、演出をやるという事で手伝いたかったんですよ。
小黒 20話では試合シーンですよね。西村(聡)監督が、『はじめの一歩』で最初にボクシングらしい足裁きを描いたのは、小池さんだと言っていましたよ。
小池 ああ。フットワークを“らしく”見せるためにはどうすればいいのかなって考えながらやっていたんです。そういうふうに見てもらえると嬉しいですね。
小黒 『はじめの一歩』のオープニングで小池さんが描いているのはラストの方ですよね。ヒロイン達が応援しているカットとか、一歩の回り込みとか。
小池 ええ、そうです。あと、最初の部分もやってるんですよ。一歩が背中から入ってくるあたり。タイトルロゴが出るまでですね。『一歩』の時は西村さんが、ボクシングはこういう感じで、という動きの指導をしてくれたんです。「脇を締めて」みたいな。西村さんと演出の高柳(滋仁)さんが「ボクシングを“らしく”見せるためには」というのを色々研究していて、それを聞きながらやれたっていうのがよかったかなと思います。
小黒 『MEMORISE』ではどこを描いたんですか。
小池 自衛隊が、中央道を攻撃するところかな。戦車なんかが、逃げている主人公を狙っているところ。前半の方です。20カットぐらいですかね。
小黒 『D』ぐらいまでの作品を並べると、『真・孔雀王』や『D・N・A2』もやっているんですけど、やはり川尻作品が中心ですね。
小池 ええ。川尻さんの仕事が空く時に、他の仕事をやっている感じした。
小黒 マッドハウスの主流のひとつが川尻ラインだとして、小池さんは川尻ラインの中で純粋培養されてきた、と考えてよろしいんでしょうか。
小池 純粋培養ですか(笑)。まあ、そうですね。画作りはかなり影響受けてますよね。基本的な事も、川尻さんの元で勉強できて、それがかなり役に立ってるって思いますね。派手に見せるにしても、やっぱり基本が分かってないと、派手に見せられないんですよね。
小黒 ピーター・チョンさんとは、どこで出会ったんですか?(注2) 『Aeon Flux』になるんですか。
小池 そうですね、『Aeon Flux』です。そのゲームのプロモーション用のアニメーションを一緒に作ろうという事で、ピーターがマッドハウスに来て、初めてお会いしたんです。
小黒 ピーターさん自身が、金田系の画を描くわけですよね。
小池 ええ。ピーターの画と動かし方を見て、「まだまだ自分は金田テイストが薄かったんだな」と痛感しました(苦笑)。海外でここまでやっちゃってる人がいるんだ、と。背景の描き方なんかも特殊なんですね。カメラの動かし方も「こんなつけPANがあるのか」と驚くくらい特殊でした。スムーズなカメラワークは一切ないんです。どこかでワンクッションを置いたりして、視覚のポイントを作っているんでしょうね。そう言えば、金田さんのアクションにもそういうところがあったなとピーターの動きを見て再確認しました。
小黒 『Aeon Flux』のゲームに参加したのは、いつぐらいの事なんですか。
小池 劇場版『X』が終わった後ぐらいですね。ゲームのプロモーション用のものです。
小黒 何分ぐらいのものなんですか?
小池 1分ぐらいです。短いんですよ。基地内部を走ってるやつかな。実写の「メトロポリス」に出てきたロボットがあるじゃないですか。
小黒 マリアですね。
小池 はい。あのマリアみたいなロボットが、イオンに攻撃するような内容だったと思います。
小黒 その時の小池さんの作画は、ピーター調というか金田調のものだったわけですか。
小池 そうですね。ピーター調にしたつもりだったんですけど、やっぱり僕の方は大人しかったです。まだまだでしたね。ピーターの事は尊敬しています。ああいう画が描けて、自分でコンテも演出もやって、トータルにディレクションができるのは、凄いです。しかもあれだけ数をやっているのにネタが被っていない。
小黒 「PARTY7」で突然自分の作品をお作りになる事になったわけですよね。これは降って湧いたような話だったんでしょうか。
小池 映画のオープニングをアニメーションで作ってくれという依頼だったんです。最初は、時間に関しても予算に関しても、ちょっと受けるのが難しそうな条件だったので、一度断ったんですよ。でも、2ヶ月ぐらい経ったら、制作期間もとって制作費も上げるから、どうしてもやってほしいという話になったんです。監督の石井(克人)さんが『Aeon Flux』で僕の名前を見たらしくて、ああいうテイストを入れてやってほしい、と(注3)。なおかつ金田調のものが好きだから金田調でやってくれ、という事だったので、引き受けたんですよ。
小黒 石井さんが最初に「金田調」と言ったんですか。
小池 どうだったかな。でも、石井さんのラフコンテには「これは金田動き」って書いてありました。

●「animator interview 小池健(2)」へ続く

(注1)2原体制
 作画監督等のメインスタッフがレイアウトと第1原画を描き、それをベースに原画マンが第2原画を描くシステム。第1原画とは、大まかなキャラクターと動きを描いたラフな原画の事。
(注2)ピーター・チョン(Peter Kunshik Chung)
 アニメーター、イラストレーター、監督。1961年ソウル生まれのアメリカ人。MTVやCMを中心に活躍。代表作に『Aeon Flux』がある。日本での作品に『アレクサンダー戦記』のキャラクターデザイン等。
(注3)石井克人
 映画監督。東北新社のCMディレクターを務めながら、「8月の約束 」で監督デビュー。「鮫肌男と桃尻女」で注目を集める。
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