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アニメの作画を語ろう
animator interview
 和田高明(4)
小黒 41話の後は原画マンとして各話に参加ですね。
和田 うん。「ここから先は総力戦だぜ」みたいな感じで。
小黒 ラスト10本中、6本参加ですよね。
和田 そうそう。とにかく、やれるのは全部やるよと。
小黒 やっぱり話題になったのは「犬」ですね(47話 舞い降りた すごい 天使)。
池田 あのクレジットは誰が考えたの?
和田 あれは、内田(哲夫)さんでしょ。内田さんが「作監のところに名前出します?」って訊くから「作監と言っても、犬しか描いてないからね。役職は(犬)がいいよね」みたいな話をしたんだけど。
小黒 あれは作監じゃなくて、実際には原画を描いてますよね。
和田 実際には原画を描いちゃっているんだけど、先に他の人の原画があるにはあるんですよ。
小黒 描いたのは、盲導犬が出てきた最初からですか。
和田 犬が出てくるところは、演出がチェックする前に俺のところにくる、みたいな形にしてもらって。でもさすがに全部はやり切れないから、犬がワンアクション動くぐらいのヤツは手をつけないで、長回しでピョンピョン跳ねたりするようなのを描き直して。
小黒 で、犬とからむカットはキャラクターも描いているわけですね。
和田 そう。そういうのが一番難しいから。
小黒 あの、犬がベンチに座ったそらの顔を舐めた後に、そらが犬を抱きしめるカットがありましたよね。あそこのタイミングは思った通りなんですか。すごい気になるんですけどね。
和田 「思った通りなんですか」って言われるとね、「あ〜」みたいな。
小黒 ちょっと早すぎるんじゃないかと思ったんですが。
和田 まあ、思ったとおりって滅多にないですけどね。まあ、思ったとおりかと言われれば「すいません、もう1回シートつけ直していい?」というヤツなので。
小黒 なるほど。すみませんでした(苦笑)。
和田 いや、大体他の人から、こうね、「あそこ、よかったよね」と言われてもね。大抵の場合は「いいのかなあ?」みたいなね。
追崎 疑心暗鬼みたいなものですね。
和田 そうそう、常に疑心暗鬼でね。例えば最初見た時に「あ、上手くいった」と思っても2、3回見るとね、「違うかな?」とか、そんな感じになっちゃうからね。自己採点って難しいんだよなあ。
小黒 そういう意味では、あのカットは描いたとおりのものにはなってる?
和田 描いたとおりにはなってるけど、思ったとおりじゃないかも知れない。微妙なとこで「ちょっと違うかな?」みたいな。
小黒 最終回(51話 約束の すごい 場所へ)はどこを描いたんですか。
和田 最終回はね、みんなでステージで盛り上がっているところ。
池田 誰も見てないような、地味なところばっかりでしたね。
和田 でね、ネットで感想を見たら「アレは演出の邪魔だよ」って貶されていた(笑)。
一同 (笑)。
和田 だってあれ、絵コンテに「みんな、動いてる」と書いてあってさ。「ここ、誰がやるの」と思ったの。で、「これは『カレイド』に付き合ってきた人間がやらなきゃしょうがないでしょ」と。
小黒 何カットぐらいだったんですか。
和田 カット数的にはそんなに多くないですね。
金子 最終回は15カットぐらいですよ。皆がジャグリングやってたり。
和田 火吹いてたりね(笑)。
金子 そうそう。和田さんが作画をしながら「パメラに火吹かせる」と言ってたんですよ。でも完成して最初に見た時には、気づかなかくて。何回か観てみたら本当に火を吹いてたんです(編注:飛び入り参加のパフォーマー達も交えて、ステージでそれぞれが得意の芸を披露するカットの事。レイラの顔とダブっているのでますます見づらい)。
和田 あれ、色を間違ってんだよ。ちくしょう。「これは、どんなにがんばっても報われないよね」とか思いながら作画していた(笑)。
金子 あと、天使のブランコも描いているじゃないですか。
和田 天使のブランコね。あれも「これを動かすのかよ」と思った。だって、「斜めに軋みながら廻る」とかコンテに描いてあって「佐藤さん、これ、無茶だよ」と思いながら。
小黒 それも最終回ですか。
和田 いや、最終回じゃなくて、その前の話数からあったけど。
池田 50話(避けられない ものすごい 一騎討ち)からですね。
和田 ブランコそのものだけを描いた。「ブランコは、和田君ね」とか言われて。「俺は人間描かないのかよ」みたいな(笑)。
小黒 50話と51話で、ブランコだけ描いたんですか。
和田 そのからみで少しキャラも描いたけど、基本的にブランコを全部描いて。
金子 あと、メカ作監もやりましたよね。自動車を直して。
和田 車作監やったっけ?
金子 描きましたよ。
追崎 44話(笑顔の すごい 発進!)かな。
和田 『カレイド』の場合は、なんかチマチマと細かくやってるんで。
追崎 毎回毎回、コンテが上がった時点で「これはちょっと大変だな」とかっていうとこだけ、「これ、和田さん、お願いします」と金子が泣きつくみたいなノリですね。
和田 そう、毎回毎回ね。
小黒 自分で「ここは俺がやるよ」って言ったところと、「ここ、やって下さい」と言われるところがあるんですね。
和田 状況を見ながら「ここはやらなきゃいけないよね」と思うところと「やりたい」と思うところが微妙に違って、時々辛くなる時が(笑)。
追崎 犬の時は、和田さんの方から「これ大変だよね? 俺がやる」って。
和田 うん。犬はなんか「描きたいな」と思ってたんだよ。
小黒 鳥はもっと動かしたかったんじゃないですか(49話 ひとりひとりの すごい 未来)。
和田 鳥の時は、もう変な流れができててね。
金子 そう。その頃は動物もの作監が続いて。
和田 鳥が出てますよと言われて、「分かったよ、描きゃいいんだろ」とかね。あの辺も綺麗に見せないと成立しないところだったから。
小黒 で、これは普通に作監したんですね。
和田 まあ、作監というか要するにね(笑)。
金子 原画ですよ。和田さんの作監作業って。
追崎 和田さんが人の画に普通に黄色い紙を載せて修正するって事は、まずないですね。直す時はゼロから自分で描くからね。
金子 だけど、佐藤順一さんが一原を描いてきた時は……。
和田 それはさすがに活かしますけど(笑)(編注:監督が描いた第一原画だからという事ではない。佐藤監督はアニメーターが舌を巻くほど巧いのだ)。
小黒 そう言えば、50話についた最終話の予告が、和田さんの描きおろしだったんですよね。
金子 ええ。予告を作る段階で使える画がまだ上がっていなくて、「最終回だし、予告もちゃんとしたものにしたいですよね」なんて話していたら、和田さんが「全部止めでよかったら、描くよ」と言ってくれて。
小黒 あれって最終話のカットを先行して予告用に作画したとかじゃなくて、全て予告のための新作だったんですね。
和田 ええ。コンテもなしで、ナレーション原稿に合わせて、いきなり原画とタイムシートを描いて(苦笑)。
小黒 それは凄いなあ。それから『カレイド』で和田さんと言えば太ももだと思うんですけれども。
和田 どうなんですかね。それもどちらかと言うと、佐藤さんがレールを敷いて乗っかった感じですけど。
小黒 和田さんの回だと、そらやロゼッタが、はしたなく足を開いている印象が。
和田 とにかく、股を開いて倒れ込んでる、とかね。
金子 確かに多かった。
和田 上がってきたレイアウトをチェックする時にフレームを下げて、脚が入るようにしたり、そんな事やってたよね。でもそれは、監督の意向を汲んでやっていたんですよ。
小黒 主に和田さんがやっていたわけじゃないんですね。
和田 そうでもないんじゃないですか。
追崎 みんなでやってたから。
和田 ま、佐藤さんがレールを敷いて、みんなで、その上をドンドン走っていったみたいな感じだったと思う。佐藤さんのコンテが、肉感とか胸とかを強調しているんですよ。
池田 基本的には健康的な描写ですけどね(苦笑)。
追崎 佐藤さんはあれを無意識にやっているのかな。
國音 あれは無意識でしょ。
和田 無意識でやってるのか(笑)。
池田 順一さんのコンテのああいう部分は、本能から出てきているものだと思うなあ(苦笑)。
小黒 じゃあ、和田さんのフェチはどこにあるんですか。
和田 フェチですか……?
金子 和田さんが描く身体は、結構ムチムチしてますよね。
和田 『カレイド』の場合、説得力持たせるために、肉体をちゃんと描かなくてはいけないというがあったから。
金子 ある方が、和田さんの「乳の描き分け」はさすがだと言ってましたよ。
和田 「乳」ってね(苦笑)。だって、いつもはじめさんと「誰が一番胸が大きいんですか」とか話してて。「レイラは胸が大きいつもりで、僕は描いてるけど」と言われると、じゃ、レイラは巨乳に描こうとか。
金子 と見せかけて、サラさんが一番巨乳なんですよね。
和田 サラさんは巨乳なんだけど、歳のせいでちょっと垂れてるとか(笑)。
追崎 そういった細かい描き分けが。
和田 その辺は、はじめさんと話しながらやってます。はじめさんは多分、本気で受け取ってないだろうけど、私はマジです、という感じで。ま、そういうのはフェチっていうより、単に描き分けた方が面白いんじゃないか、と。
池田 確かに『カレイド』で和田さんが描いたところは筋肉質というか、肉の付き方で躍動感を感じるみたいな部分がありますね。
和田 筋肉質は、昔からなんだよな。『姫ちゃんのリボン』を始めた時に、はじめさんに「和田君、筋肉質すぎ」とかって言われて。
金子 え、誰が筋肉質なんですか?
池田 姫ちゃんが?
和田 うん。膝とか足首とか、ちゃんと描いていたんだよ。本当は手足は棒のように描かなきゃいけなかったんだけど。途中から描き慣れたけど、最初に描いたヤツは、ガチガチの「鎖骨ありまっせ」みたいな身体だった。
小黒 話は遡りますけど、デッサンなんかをやられた事は?
和田 デッサンはね、実は仕事しながらやってる(笑)。デッサンの勉強っていうのは、まとめてしてないんです。
小黒 高校時代は美術部だったと伺ってますが。
和田 美術部といったって、やっていたのは静物画だから。お皿とか椅子とかコップは描いたけど、人体画は、描いた事がなかったんですよ。今でもそうだけど、結局仕事しながら勉強してるって感じゃないでしょうか。
追崎 こう言ったら何ですけど、和田さんの絵って、デッサンの基礎がしっかりしていて、カチッと描いてる絵ではないんですよね。とにかく原画として動かすのが最優先で描いているというか。
小黒 多分、原画を描き慣れてから、リアルになってきた感じですよね。
追崎 そうそう。本当にそうですよね。
和田 まとめてこの期間勉強しましたっていうのがあるわけでじゃない。必要に応じて勉強していくみたいな感じだったから。
小黒 総論的な内容に入っていきますけど、影響を受けたアニメーターさんとか、絵描きさんとかいますか。
和田 それが、いれば楽なんだけど(笑)。
小黒 いないんですか。
和田 どうなんですかね。基本的にアニメは観るんだけど、「ひととおり見てます」みたいな感じで、「この人のを繰り返し見てます」というのがないんだよね。
小黒 他人のやったアニメをコマ送りしたりはしない?
和田 一時期やった事もあるんだけど、結局、動きのタイミングとか軌道ってその人のセンスだから。その人のを真似したいと思うんだったらやってもいいけど、別にそれはその人になり切るという事でしかないような気がしたので、結局やるのやめてしまった。今はやってない感じかな。どちらかと言うとむしろ、実際の人間の動きを見て、それをどうアニメ流に解釈するかっていう方向でやってる感じだけど。
小黒 さっきちょっと話題になりましたけど、パソコン上で実際の動きを分割して見る、というのは、よくやるんですか。
和田 うん。パソコンを使うようになって、「こういうツール使えるじゃん」みたいな感じでやってる。でも、それでアニメの動きを分析するっていうのはしないんだよね。あくまでも、実際の人間の動きを観察した上で解釈していく、みたいな感じで。まあ、そのうちまた変わるかもしんないけどね。
小黒 それはいつぐらいからやってるんですか。
和田 それは『カレイド』がそういう方向なのでやらざるを得ないというか。
追崎 『カレイド』を始めてからパソコンを使うようになったんですよね。
和田 そうです。パソコンを買ってみて、それで「色々できるじゃん。こういう事がやりたかったんだ」みたいな。
小黒 それをやった事で、リアクションが増えたとか、タイミングが変わったとか、そういう事はない?
和田 元々自分がやりたい事を補強する意味でやっているわけだから、そういう意味で変わったりはない。『カレイド』の方向性が普通に人間の芝居を積み重ねる部分があったから、そういうやり方が、ちょうどよかったというのはあるんじゃないですか。
小黒 なるほど。
和田 他の作品と比較すると分かるけど、「ドアを開けて入ってきて、てくてくと歩いて椅子に座って、足組んで喋り出す」なんていうのは、(最近の作品では)『カレイド』ぐらいしかやらないから。普通の作品だと、ドアを開けるところでカットを切っちゃって、次のカットでは座ってるからね。途中のアクションを、ちゃんと描くというところに『カレイド』らしさがあったので。
小黒 『カレイド』をやって、描き方が変わったところはあるんですか。
和田 変わったというよりは、今まで描いてなかった部分を補強できた感じ。
小黒 ようやくアニメスタイルらしい取材になってきました。
一同 (笑)。
小黒 その補強されたところというのは、例えば?
和田 今の例で言えば、ドアをバタッと勢いよく開けるとか、かっこよく座るみたいな部分は今までも描いていたわけです。勢いよくドアを開けた後、今度はゆっくり歩いてきて、それから、かっこよく座る。そういう、今まで参加してきた作品だと端折っていたようなところを、演出から要求されたから、必然的に覚えていくというか、演技立てみたいなものの勉強になったのかなあ。動きをかっこよくする、という事じゃなくて、「このキャラはこういう気持ちでいるんだから、こういう風に歩いて、座って」みたいな事を考えて描く。そういう事を1年やって覚えたという感じじゃないですか。それはこれからの課題でもあると思うんですけどね。ま、他の作品だと、あまりそういった事は要求されないですけど。
小黒 41話とか見ると「次は劇場作品にいくしかない」と思うんですが。
和田 そうですね。普通のTV作品だとやれないですよね。今、TV本来の姿を取り戻そうと思って、ちょっと普通のTVアニメをやっているんです。「端折って端折って、止め止め止め」っていうやつを。
小黒 振り返ってみると、あんなに動かしてきているのに、和田さんは劇場作品は、ほとんどやってないわけじゃないですか。
和田 大地さんや桜井さんが基本的に劇場をやらないから、というのがあるんだけど。
小黒 本人の気持ちとしてはどうなんですか。
和田 まあ、別にやりたいとは……劇場を作品を作る会社にいなかったというのもあるかなあ。
小黒 例えば、今GONZOでは、OVAでも、『戦闘妖精雪風』といった重たいやつをやってるわけですよね。でも、そういう重たいものには今までほとんど関わってないですよね。基本的にギャグものか少女もので。これは偶然ですか。
和田 気分として「人が死んだりする話、ヤだな」というのがあってね。ぎゃろっぷにいる時に、『剣心』を1回だけやって「イヤだな」と思ったの。刀振り回してるのはイヤだな、というのも降りた理由のひとつなんですよ。だから、銃をぶっ放したりするような作品からは逃げてるんだよな。
小黒 ミサイルが出るような作品も「ニャンダバー」ぐらいですものね。
和田 「ニャンダバー」は人が死ぬ話じゃないし(笑)。別にそういう作品がダメだとは思ってないんだけど……。
小黒 見るのは見るんですね。
和田 自分がやりたくないという感じでね。それで、結果的にやってないんじゃないですか。でもね、最近辛いんだよな、そういうアニメが多いからさ。『おぼっちゃまくん』あたりからやってきた、日常中心のお笑い系が一番居心地がいいかな。そんな風に思っているので、そっちが中心になるんじゃないですかね。
小黒 原画を拝見すると、かなり初期から分厚い原画をお描きだったようですが。仕事を始めてから、他の人が分厚い原画を描いてるのを見て「あんなに描いていいんだ」と思って描き始めた、といった事はないんですか。
和田 えーと……どうだろ。その辺は自分で話すよりも、昔一緒にやっていた人に訊いて補足してもらった方がいいかもしれない。多分、最初からやってたような気がする。初めから分厚かったんじゃないかな。
小黒 誰に教えられるでもなく。
和田 まあ、やりたかったんじゃないですか(笑)。別に分厚くするのが目標じゃなくて、「ここの絵が必要だし、ここも必要だよね……」って描いていくと「原画ナンバーが50までいっちゃいました」みたいな、そんな感じかな。
小黒 普通の作品なら、「コラ!」と怒られそうですが。それは大丈夫だったんですね。
和田 私の場合、あちこち(のスタジオ)に動いてやっているからね。あんまり「コラ!」という状態でもなく。
小黒 はあ、なるほど。
和田 適当にやり逃げができて。
小黒 で、現在に至ると。
一同 (笑)。
和田 そうです。現在に至ります。
小黒 『カレイド』でほとんど家に帰らなくなったという話が出ましたが、これは今までの仕事歴の中でもかなり過酷な方だったんでしょうか。
和田 音地さんに会った時に「あんなに規則正しかった和田君が……」と泣かれてしまいましたけど(笑)。
小黒 それまでは規則正しい生活の中で、身の濃い仕事をしてたんですね。
和田 規則正しいといっても、この業界にいるので、そんなには規則正しくもないんだけど。とりあえず毎日帰るとかね。そういうところを守ろうとはしてました。まあ、『カレイド』はそれだと絶対に間に合わないというか、妥協してたらこの内容はできないよね、というのがあって。妥協したくないなら時間削るか、みたいな話で。それから、地理的にもっと自宅に近ければなんとかなるんだけど、ここは遠いし。
小黒 なるほど。それから、今拝見した『チャチャ』や『カレイド』の原画はとてつもなく似ていて、そのまま動画にできそうな感じですが。例えば、絵柄が濃いアニメを描いても似たんでしょうか。『るろ剣』とか『遊☆戯☆王』とか。
和田 『遊☆戯☆王』は加々美さんが、作監修をレイアウトの時にいっぱい入れてくれていたから、そこそこ似ていたんじゃないでしょうか。『剣心』の時は、シートに花丸もらいましたよ(笑)。
小黒 へえ。
和田 (『るろ剣』監督の)古橋(一浩)さんが「よくできました」という事で花丸を描いてくれて(笑)。「なんですか、この花丸?」とか思ったけど。
追崎 確かに和田さんの原画は、そんなにキャラを外してないですよね。さっきも原作を買いに行った話が出てましたけど、作業に入る前の下準備が長いので、そこで(キャラクターをつかめるところまで)持っていくのかな。
和田 「俺、絶対に描けねーよ」と思うものからは、逃げてるというのもあるけどね(笑)。
小黒 例えば、描けなさそうなものってなんですか。
和田 うーん、今、GONZOでやってるやつで言うと……。
金子 『GANTZ』ですか。
和田 いや、『厳窟王』だ。『GANTZ』は意外と描けそうな気はするんだけどね、『厳窟王』の微妙な線の持っていき方は、描けないかもしれない。デザインはシンプルなんだけど、あの線を拾うのが難しそうだ。
金子 じゃ、やってみましょうよ。
和田 うん。そういうやった事がないものには興味があるんだよ。
小黒 今のところ、キャラデザインはやった事がないんですか。
和田 だって、周りに上手い人がいっぱいいるし。
小黒 いやいや。
和田 はじめさんとか千羽さんを見てたらさ、「俺はいいよ」と……思うじゃん。
小黒 いやいやいや。
和田 「デザインさせて下さい! 俺、一所懸命描きます」なんて思わないよ。
小黒 でも、1回ぐらいは。
金子 そう。やりましょうよ。
追崎 たまたまそういう機会がなかっただけとか……?
小黒 例えば、職人的なアニメーターで、他の人の絵を描くのが好きって人もいるわけですよね。それとは反対にキャラデザインの仕事がこなくても、プライベートでオリジナルキャラを描いてる人はいるわけですよね。
和田 そもそも、俺、仕事以外では絵を描いてないしなあ。デザイナーをやる人のホームページを見ると、みんな自分の絵を描いてるじゃないですか。
小黒 そうですね。
和田 ああいうの全然やってないんです。そういう方向性がないんじゃないかな。
小黒 欲求としてないんですか。
和田 どちらかというと、仕事がきてから考えるタイプだから。「こういう絵を描いたいから」という事で仕事をする感じじゃなくて、仕事がきてから「じゃあ、こういう絵でいきますか」みたいな感じかな。だから、「企画を出せ」とか言われれば困っちゃうけど、「こういう話があるんだけど、あなた、キャラを描かない?」と言われれば、描くような気がする。こういうキャラを動かしたいから話を作るんじゃなくって、話があるからキャラを描く。あるとしたら、そっちの方じゃないかなという気がするんだけど。原画作業してきて、話に合わせてキャラを描く、みたいな習性がついちゃったのかな。
小黒 むしろ、すでにあるキャラクターを読み込んでいったりする方が楽しいわけですね。
和田 ただね、俺の場合ね、自分では原作やコンテに沿ってやっているつもりなんだけど、人から見ると、どうも違うらしいというのが……。
小黒 ああ、余計な事をしちゃうんですね。
和田 そうそう。俺はそのとおりやったつもりでいるんだけど、他の人に「全然違う」と言われるからね。その辺はちょっと自信がなかったりする。
池田 和田さんの場合、コンテになると脚本と全然違うものが上がってきますよね。
和田 一回、シナリオをバラすからね。
池田 ホントに。ここまでバラすかっていうぐらい、すごく個性があるコンテが上がってきて(笑)。コンテを見て「このシーンは脚本の何ページ目だっけ? ……ないじゃん、コレ!」というような事がいっぱいありますからね。別に脚本の意図から外れるわけではないんだけど。
追崎 そういったアレンジが好きなのかな、とも思うんですけど。
和田 そうだね。どちらかと言うと、アレンジャーなのかも。多分、デザインをやるにしても、原案で別の人に立ってもらって、それを元にデザインするなら、やりやすいかもしれない。
小黒 それでは、どこまで載せられるかわかりませんが、OVAとして制作中の52話の展望を。
和田 展望?
小黒 あまりネタばらしにならないように。
和田 ネタばらしになっちゃうけど、まあ、皆さんの予想通りですね。ネットの書き込みを見ると、半分ぐらい当てられていて、「ヤバ!」とかって(笑)。
國音 いや、そう思わせておいて、違うものにする気がする。
小黒 僕もTVの最終話を見て、半分ぐらいは分かったような気がした。
一同 (笑)。
池田 まあ、ロゼッタマスターがやる事なんで……。
和田 内容的な事は置いておいて、今回何がキツいかってね、売らなきゃいけないっていうのがキツイわな。
小黒 それは別に和田さんが考えなくても。
池田 こっちで考えますんで。
和田 お金を払ってくれる人に喜んでもらえればいいんだけど。
追崎 物語の結末がどうこうでなく、それぞれのキャラクターがそこに至るまでの過程や展開がどうなっていくのかが、お楽しみなところです。
池田 そうだね。最終回を受けて、フールとロゼッタの今後がどうなるのか。プラス、それに、そらがどう絡んでくるのか、というところですね。
小黒 ついにフールは、お風呂に入れるのか。
池田 それはないんじゃないかな(笑)。
小黒 着替えが覗けるのか。
和田 せめてパンツぐらい見られるのか、とかね。それはどうでしょうかね(笑)。まあ内容的に「ほどほどに期待して下さい」といった感じで。
小黒 表現的には?
和田 表現的には、基本的にTVの延長だから「OVAだからココがスゴイ」みたいなのはないんですよ。あくまでもTVの延長で、という作り方だから。
小黒 でも、和田さんのTVは、普通のTV並ではないですからね。
一同 (笑)。
小黒 それでは最後に途中から取材に同席していた池田プロデューサーに、コメントを。

●「カレイドの すごい 関係者」が語る和田高明の仕事ぶり
 その4 池田東陽(アソシエイトプロデューサー)


池田 和田さんと出会ったのは、もう4年前で、プロモーションビデオを作った時に原画として参加していただいたんです。原画を依頼した時に、佐藤監督も僕も「何だ、コレは!?」と驚くくらいの厚みの原画があがってきて(笑)。「これはプロモーション用だからこうなんだよね」という話でまとまったんですけども、まあ、本編が始まっても変わらずだった。僕は、佐藤監督と一緒に「和田さんと心中しようか」という気持ちで、和田さんに託していった部分が大きかったですね。是非、52話でも「和田ワールド」を皆さんにご堪能いただければ、と思っております。
小黒 きれいにまとめましたね。
一同 (笑)。
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