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アニメの作画を語ろう
animator interview
 山下将仁(3)
小黒 山下さんと言えば、BL影が印象的ですが。あれはどこら辺から来ているんでしょうか。
山下 ああ、BL影か。今は好きじゃないんですよ。BL影は映画の影響ですよね。「スター・ウォーズ」とか、宇宙空間だと太陽光線が当たっていないところが黒いじゃないですか。そういうSF映画の影響でBL影を入れようと、単にそういうテクニック的なものだったんです。だけど、人体に入れるのはやっぱり抵抗ありましたね。人間の顔にBL影を入れるのは好きじゃなくて。でも、当時流行ってましたね、『北斗の拳』とか。
小黒 そうですね。でも、山下さんの方が先ですよ(笑)。
山下 でも、BL影は金田さんもやってましたからね。
小黒 そうですか。でも、やっぱり『うる星』とかで、山下さんがおやりになっていたBL影が印象的だと。
山下 失敗してますからね。
小黒 そうですか(苦笑)。
山下 今もあんまり好きじゃないんですよね。いまだにハイライトがなかなか巧くいかないんで。難しいですよね、作画は。
小黒 昔の事ばかり聞いて申し訳ないんですけれど、山下さんは形の取り方が、凄く独特だったと思うんですけれど、どこからああいったものが……。
山下 形の取り方というのは、具体的にどういう?
小黒 例えば、人の形そのものとか。
山下 うーん、どうなんでしょうかね、意識してやった事はないですけど。まあ、とにかく個性的にやってみたいという時期があったので。人とは違うものを表現したくて、ちょっと偏った形のものは描いてましたね(笑)。
小黒 特に、動いた時に映える形というふうにしてきたわけではない?
山下 それはこだわってましたね。形を整えるっていう作業よりも、一連の流れの方を重視していたので。動きを優先して原画を描いていたので。キャラクターに合わせて描いていくと、どうしてもそっちばかりに気が取られてしまうんです。どちらかというと、動き重視の、ポーズなり、画は描いてましたね。
小黒 山下さんがお描きになるものは、人間でもエフェクトのようだと言われますが(笑)。
山下 でも、今の人の方が凄いんじゃないですか。なんでしたっけ、あの今石(洋之)君の『DL(DEAD LEAVES)』とか。
小黒 完成品はご覧になりました?
山下 ええ。ビデオをもらいましたから、観ましたよ。
小黒 監督の今石君から、山下さんの感想を聞いて欲しいって言われてるんですけど。
山下 ああ、そうですねえ、元気な作品ですよね。ちょっと音声が聞き取りにくいかな。どういうセリフを言ってるのか、ちょっと聞きとりにくかった。……まあ、作画主導で引っぱっていく作品でしょうね。
小黒 今石君は、貶し言葉でもいいので、山下さんの感想が聞きたいと。
山下 なるほど。今ああいう作品って受けるんでしょうかね。僕はちょっと分からないんですよね。
小黒 そういう意味では、先祖返りしたような作品なんじゃないですか。久々の『BIRTH』みたいな作品ですよ。
山下 確かに『BIRTH』っぽいですよね。
小黒 ああいう作品って、一度途絶えたじゃないですか。
山下 そうですね。でも作画レベルについては、昔より今の方がずっと高いんでね。
小黒 作画の密度は上がってますね。
山下 上がってますね。ただ、参加した作画の人は楽しんでやってたんでしょうかね。
小黒 そこは難しいところだと思いますね。
山下 僕は、同時にやってたのが『攻殻機動隊(INNOCENCE)』ですからね。だから「やっぱりこっち(『DEAD LEAVES』)の方がいいな」とか思ってやってましたけどね。
小黒 でも、『DEAD LEAVES』で一番リアルなプロポーションを描いていたのが、山下さんだったと聞きましたが。
山下 (笑)かもしれないですね。みんな、体がエフェクトしてましたもんね。
小黒 メチャメチャですものね。ヒロインが妊娠してる事とか途中で忘れてますしね。
山下 そうですね。……なんか、僕、真面目に描いてましたね。久々にああいうアクションをやって、タイミングがなかなか難しかったですね。もうちょっと長くやってれば、もうちょっと面白く描けたかもしれない。「もっとここを、こうすればよかったのにな」というのがいっぱいありましたからね。
小黒 昔の話に戻りますが、ご自身の中だと『BIRTH』は印象的な作品なんでしょうか。
山下 そうでもないですね。自由にはやらせてもらったし、作画は自分ではそこそこがんばったつもりだったんですけどね。
小黒 描かれたのは、あのロボットですよね。「アスパラガース!」とか。
山下 ああ、そうですね。
小黒 『BIRTH』の中でも一番面白いところだと思うんですけど(笑)。
山下 貞光さんのギャグが一番冴えてたんですよ。
小黒 さっきおっしゃっていた「金田さんの作画についてはリミテッドの方が好き」という話にも関連してくると思うんですが、割と皆さん、ふんだんに枚数を使ってましたよね。
山下 使ってましたね。
小黒 そのせいか、動いているわりには、さほど面白くないんですよね。
山下 いろんな人達が入ってましたからね。大塚(伸治)さんとか、リミテッド志向じゃない人達もたくさん入ってたと思うんで。
小黒 金田さん自身も、枚数を使って描いていましたよね。。
山下 描いてたと思います。あの頃はずっと劇場用の作品をやっていますから、タイミングがそうなってますよね。……とにかく、昔から「山下君の描くものは全部軽い」と皆にからかわれてたんで、ミニロボットですけど、少し、重さを出して描こうかなと思ってやりました。ああいう作品は、ずっと観てると疲れちゃうんですけど、たまにアニメーターの息抜きとして存在すべきですよね。
小黒 そうですね。そういうのが好きなマニアもいますから。
山下 最近のアニメーションの良くないところは「面白いものを作ろう」じゃなくて、「いいものを作ろう」という意識が強いところですよ。みんな外面を気にして作っている。そうやって作るのは凄く大変なんですよ。
小黒 もう少し、以前の話を聞かせてください。山下さんは『(装鬼兵)M.D.ガイスト』とか『DRAGON’S HEAVEN』の頃に、もう画の描き方が変わってきてると思うんです。その頃にはエフェクトとかもかなり細かくなって。
山下 それはありますね。
小黒 それより前は、ずっと大らかじゃないですか。爆発を描いても、中にちょっと模様が入っているぐらいでしたよね。
山下 最初はゴテゴテするのが嫌いだったんですよ。ある程度きれいにまとめた、単調なフォルムで見せるのが好きだったんですよね。ただ、例えば庵野(秀明)さんとか、(描き方が)細かいじゃないですか。この時期ぐらいになると、そういった人達が出てきて、それまでの描き方がやりにくくなったというのはありましたね。
小黒 一番聞きたい事なんですが、山下さんは、そうやって自分が変わっていく事に対して抵抗はなかったんですか。
山下 そうですねえ。一時、自分の作画に飽きていたんですよ。自分のやり方自体に。だから、自分で違う指向性を求めていた事は確かですね。でも、やっぱり(変わっていった事で)長所も失っていった時期があると思うんです。機会があれば、また昔みたいなものもやってみたいなとは思ってますけど、なかなか作品がないんでね。
小黒 山下さんの作品歴を見ると、本当に原画一代って感じですよね。監督と名のつくものはほとんどやられてないですよね。
山下 そうですね。今は作監をやってますけど。やっぱり、やるたびに後悔するんですよね。やっぱりダメだな、自分には合わないなって。本橋(秀之)さんなんかは作監やりながら、原画をやるじゃないですか。やっぱり原画は重要ですよね。アニメーションの基本なんで。
小黒 さきほど、3DCGのモーションづけをやられていたという話がでましたが、それは今までの手描きアニメをやるのと、全然違う感覚だったんですか。
山下 そうですね。とにかくコンピュータとか、機械に対して抵抗のある人は苦手意識を持っちゃいますよね。鉛筆がコンピュータに変わっただけなんですけど、憶える事が多すぎて。そういう部分では非常につらい作業ですよね。なかなか思いどおりに自分の動きがつけられないですし、失敗したからといって消しゴムで消すわけにいかないですからね(笑)。
小黒 でも、コンピュータならやり直しは何度もできるわけじゃないですか。
山下 できますけど、大変ですね。コンピュータって意外と不器用なんで、できそうでできないというもどかしさがあるんです。まあ、アニメーションをつけると言っても、モーションキャプチャーでおとしたやつを、自分なりに整えていく作業に近かったんですよね。だから、何もないところからはじめて動かしたわけではなくて。その整える作業がまた苦手なわけじゃないですか(笑)。
小黒 なるほど。
山下 それは作監もしかりなんですけどね。本当は嫌なんですよ、そういう仕事は(笑)。
小黒 3Dのアニメーションに関わって、その後手描きに戻ると何か影響があるんじゃないかと思うんですけど。
山下 いい影響は、ある人にはあると思いますね。
小黒 山下さんは、ありましたか。
山下 うーん、僕はあまり影響はありませんでしたね。
小黒 山下さんの中では、手描きのアニメーションとは全然別のものでしたか。
山下 そうですね。難しいんですよ。なんて表現すればいいのか。スクウェアの中にも、動きを自分で作って動かしている人がいるわけですけど、相当巧いわけですよ。その人はアニメーターではないわけですが、アニメーターと似た感性は持ってますよね。しかも、その人はコンピュータを使える。その両方がないと厳しいですよね。感性があってもコンピュータを巧く扱えないと難しい。僕は全くコンピュータの知識なしで行ったわけですから、そういう部分ではちょっと厳しかったんです。
小黒 アニメの仕事歴の話に戻りますね。このリストに入ってないんですけど、『SILVER HAWKS』という合作のオープニングをやられていると思うんですが。これはいつぐらいの仕事になるんでしょうか。
山下 ありましたねえ。あれはOZか、とめの時代でしょうね。当時、摩砂雪さんがやられていましたよね。
小黒 『THUNDER CATS』でのオープニングですね。
山下 ええ。それが凄いぞという話を聞いて、観させてもらって「ああ、凄いなあ」と思ったんですよ。その後ふられてきた仕事が、似た系統の仕事のオープニングで、とりあえず引き受けたんですけよ。そういえば、そういうのありましたよね。
小黒 これも代表的なお仕事じゃないかと思っているんですが。合作はそれぐらいですか。
山下 いや。やってますよ。『MIGHTY ORBOTS』とかいうやつ。あれの方が先だったかな。
小黒 そちらの方が古い作品だと思います。『SILVER HAWKS』は原画だけですか。作監とか演出とかはやってないんですか。
山下 作監は斎藤格さんという人がやってるんじゃないかなあ。あれは窪(詔之)さんという人のスタジオでやってたんですよ。
小黒 『タイガーマスク』の窪さんですね。
山下 うん、そうですね。窪さんは、あの頃は海外の作品をやっていたんじゃないですか。『ホビットの冒険(The Hobbit)』とか。
小黒 ええ。そうですね。『ホビットの冒険』とか『The Last Unicorn』とか。
山下 ハワイに行く時に「今までどういう作品をやってたんですか」って聞かれて、自分の過去やったものを調べるのが大変だったんですよ。こうリストがあると便利ですよね。年代なんて全然分からなくて。……つまらない話ばっかりですみませんね。
小黒 とんでもない。またまた細かい話ですが、当時、同人誌かなにかで『うる星』のイラストを描かれた事があると思うんですが、もの凄く太ったラムちゃんを描いてて。
山下 ええ、ひどい画でしたよね。
小黒 多分、当時は「やったぜ!」という気持ちで描き上げられたのではないかと。
山下 でも、なんていうか、「肉感的」を通り越して「デブ」でしたもんね。
小黒 目指していたのは肉感なんですか。
山下 そうですね。ただ、体型については、今でも不思議ですよね、なぜああいう画を描いたのかというのが。
小黒 当時は、ああいった画が上がった時に「これでOK!」と思っていたわけですよね。
山下 いや。そうは思わないですけどね。
小黒 自分でも変だなと思いましたか。
山下 そうでもないですけど。うーん、あれで満足していたわけではないと思いますけどね。
小黒 なにか内的な理由があってあの画を描いたわけですよね。
山下 そうでしょうね。今観ると、とても恥ずかしい感覚ではあります。
小黒 もっと些末な事を聞いていいですか。
山下 はい。
小黒 『うる星やつら』で、「クチナシ(より愛をこめて)」(52話)の回があるじゃないですか。あれで、凄く長い背動を描いてますよね。あれって元のコンテだとどうなってるんですか。
山下 長かったですよ。
小黒 もともと背動でやってほしいという話だったんですか。
山下 ええ、そうですね。
小黒 野暮な事を訊きますけど、ああいう時、ギャラはどうやって払われるんですか(笑)。
山下 ああ、考えるとそうですよねえ(苦笑)。
小黒 あれで1カット分のギャラだったら怒っちゃいますよね。
山下 そういう事は、あまり気にしませんでしたね。(描かせる側も)「あいつなら喜んでやるから」って感覚なんでしょうね(笑)。
小黒 あれって全然影が入ってなかったと思うんですけど。多分、原画だと影を入れてたんじゃないかと思うんですが。
山下 うーん……かもしれないですねえ。でも、全然記憶にないですよね(笑)。
小黒 それから、あの頃って、独特の鉛筆をお使いでしたよね。
山下 そうでしたっけ。覚えてないですね。
小黒 色鉛筆は凄く薄い濁った青色で。
山下 ああ、水色ですよね。
小黒 主線は、おそらくすごく柔らかい鉛筆を使ってたんじゃないかと想像しているんですが。流れるような線が描けるような。
山下 うーん。柔らかい鉛筆はそんなに使ってないと思います。HBが好きだったような気がしますね。今はほとんどHBですね。すみませんね、いろいろ忘れちゃってて。
小黒 いえいえ。当時、山下さんは世界堂でしか売ってない珍しい色鉛筆を買って、使っているという話を聞いたんですが。
山下 それはないですね。
小黒 違うんですか(苦笑)。あれは都市伝説だったのか。
山下 普通の水色の色鉛筆ですよ。それをガシガシ塗ってましたね。クソ丁寧に塗ってるやつもありますよね。だからそんな風に、変に見えたのかもしれないですね。今は水色使っても、そんなにゴシゴシやる事はないんですけど。
小黒 色鉛筆の色味が、セル画の色指定に反映されていた事が結構あったと思うんですよ。特にアブノーマルのシーンとかで。
山下 そうですか。
小黒 「柳のオジジ」(『うる星やつら』97話「怪談!柳のオジジ」)とか、そうだったと思うんですけど。
山下 ああ、「柳のオジジ」。ありましたね。あれもひどいですよね、キャラが全然違いましたもんね。
小黒 違いますねえ(笑)。
山下 僕のカットが終わった瞬間、他の人の原画の柳のオジジのアップになったんですけど、全然キャラが違ってて、びっくりしちゃって。「こりゃいかんな」と(笑)。
小黒 はははは(笑)
山下 当時も思いましたよ。あまりにも違いすぎるって(笑)。
小黒 当時も思ったんですか。
山下 でも、まあいいやって感じですよね。それで許されたんだから、当時は凄いですよね。
小黒 押井さんとの関係はどうだったんですか。
山下 押井さんは何でもやらせてくれた人でした。パワーがある人が好きみたいで、それは今でも変わらないみたいですけどね。ただ、やっぱり、押井さんもいいものを作ろうという方向に行ってますよね。やっぱり、世界が(押井さんの作品を)観ちゃうじゃないですか。だから、どうしても昔みたいになものはできないんでしょうね、ハイクオリティな方に行っちゃうんですよね。
小黒 『うる星』の頃は、山下さんは押井作品にはなくてはならない存在でしたよね。
山下 そうですね。でも、押井さんも落ち込んでた時期があったんですよ。『ルパン(三世)』の劇場用がポシャったあたりで相当落ち込んでたみたいですね。
小黒 山下さんも、押井さんが監督する予定の劇場『ルパン』に参加される事になってましたよね。
山下 ええ。なっていたんですけど。あれ(企画がなくなった事)で、押井さんはみんなに嘘ついたってかたちになっちゃって、それで「スタッフから嫌われたんじゃないかな」と思ったらしくて。だから、その時のメンバーとは付き合いがなくなっちゃってるんですよね。(その後の押井さんの作品のスタッフは)まったく新しいメンバーになってるはずなんですよ。
小黒 そうですね。あの時に発表された人達って、北久保(弘之)さんだったり、山下さんだったり、庵野さんだったり、それまで付き合っていた人が中心でしたね。森山(ゆうじ)さんとか。
山下 森山さんともあれからいっしょに仕事やってないんじゃないですか。
小黒 やってないですね。
山下 その後、黄瀬(和哉)さんとか新しいメンバーと付き合うようになったんですよね。この前、飲んだ時もそんな事を言ってましたけどね。あの時は大変だったんだよ、とか。
小黒 『ルパン』の時って、「いつから現場に入れ」みたいな具体的な話になっていたんですか。
山下 それで皆、待機していたんですよ。僕なんか全然気にしてなかったんですけどね。「ああ、ポシャったの」ぐらいで。でも、本人は凄く気にしてたみたいですね。
小黒 今回の『INNOCENCE』への参加も、押井さん自身が山下さんに声をかけたと聞いてますけど。
山下 定食屋に入ったら、いたんですよね。
小黒 (笑)。押井さんが?
山下 「ああどうも、お久しぶりですね」と言ったら、「ああ、山下君じゃないの。何やってんの?」と言われて。それで「いやあ、今はプラプラしてますよ」「だったらやらない?」「でも、大変なんでしょ」「いや、大変じゃないよ」って(笑)。
小黒 大嘘つきですね。
山下 大嘘つき(笑)。
小黒 大変だったんでしょ。
山下 大変ですね。もう大変なんてもんじゃないんじゃないかなあ。
小黒 『INNOCENCE』ではもの凄い活躍だったとか。
山下 全然!
小黒 全体が900カットぐらいで、(山下さんは)その中の100カット近くの量をお描きになったと聞きましたが。
山下 カット数は分からないですけど、とにかく作監には迷惑かけましたね。もう、歩きばっかり描いてましたから。
小黒 いやいや。他の人が5カットとか10カットに何ヶ月もかかってる中、山下さんがガンガンあげてくれたので映画が出来たと、Production I.Gの方に聞きましたよ。
山下 でもなあ……。まあ、仕事として楽しめはしなかった。だから、そういう意味でも、今石君の『DL』みたいのがあると息抜きになって、いいわけですよね。
小黒 ドカドカドッカーン、みたいなアニメが。
山下 考えなくてね、勢いで描けるじゃないですか(笑)。
小黒 やっぱり『INNOCENCE』はいろいろ考えないとまずいですか。
山下 大変ですからねえ。動画をやってるみたいな仕事ですから。
小黒 動きをほぼ全部描く、みたいな感じなんですか。
山下 ええ。だって、プリントアウトされたやつに上から描くわけですから。
小黒 プリントアウトっていうのは、3Dの?
山下 ええ、3Dの。例えば(カメラが)回り込んだりするじゃないですか、その中で(3D)モデルのキャラクターが歩くんですよ。だからそれに合わせて、動画みたいに一枚一枚描いていく。大変なんですよ。普通の人はやらない仕事でしょうね。僕も二度とああいう仕事はやらない。もうちょっと楽で、もうちょっと楽しい仕事がいいですね。気軽なやつですね。肩肘はらないやつがいいですよ。そういう仕事は今、全体的にないんですけどね。観ていてもパワフルさは感じないですよね。
小黒 そうですね。小ぎれいにまとまっちゃっているものが多いですよね。『DEAD LEAVES』も微妙に違うんですよね。ああいうスタイルを目指して、がんばってあれにしてるから。乱暴に描いてあれになっているわけではないんですよね。
山下 そうですよね。あれはあれでクオリティを高くしようとしてるんですからね。
小黒 まともに描いてきたら、ああいう画に直さなきゃいけないわけだから(笑)。最近のお仕事だと『ポポロクロイス』もありましたね。これはいかがでしたか。
山下 『ポポロ』は体調悪くしちゃって、しんどかったです。もうちょっときれいに上げようと思ってたんだけど。
小黒 それでもクライマックスの爆発とかは。
山下 いや、でもちょっとね。やっぱり遊びがないですね。
小黒 もうちょっと濃くしたかった?。
山下 ええ。コックピットのシーンとか、あんまりやりたくないんだけど、未だにそういうシーンが来るから(苦笑)。
小黒 20年前と同じような仕事が。
山下 なんか悪夢を思い出しちゃって。それより、アクションシーンがやりたいですね。カンフー系のアクションのやつを。今流行ってる香港系のような、ああいうやつをやってみたいですね。
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