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【SHORT INTERVIEW】
 馬越嘉彦の最近のお仕事
 『おジャ魔女どれみ』シリーズ等で知られる馬越嘉彦。ここ数ヶ月の彼の活躍には驚かされた。『おジャ魔女どれみ ドッカ〜ン!』では各話で作画監督、原画、おまけにエンドテロップのイラストも描き、『明日のナージャ』のオープニングでも見せ場のカットの原画を担当。『WOLF’S RAIN』『ボンバーマン ジェッターズ』のエンディングにも名前が見えた。さらに、春の新番組のキャラクターデザイン、各作品の版権の仕事も同時にこなしているとか。
 「いったい、馬越さんは何人いるの?」とさえ思うほどの仕事量だ。今回は『おジャ魔女どれみ』を中心に、ちょっとお話をうかがってみよう。

2003年3月6日
取材場所/東京・練馬
取材・構成/小黒祐一郎

PLOFILE
馬越嘉彦(Umakoshi Yoshihiko)

 1968年(昭和43年)7月30日生まれ。血液型O型。愛媛県出身。東京アニメーター学院在学中に、『北斗の拳2』で羽山淳一が作画監督を務めたエピソードに衝撃を受け、当時、羽山淳一が所属していたムッシュオニオン・プロダクションに入社。アニメーターとして歩み始める。その後、香川久、玉川達文と共にスタジオコクピットへ移籍。『ママレード・ボーイ』『ご近所物語』『花より男子』の日曜朝の少女アニメ三部作でキャラクターデザインを手がけ、『おジャ魔女どれみ』シリーズにはキャラクターコンセプトデザインの役職で参加。他の代表作に、OVA『グラップラー刃牙』『剣風伝奇ベルセルク』『カスミン』等がある。

小黒 『おジャ魔女どれみ』も終わりましたね。
馬越 終わりましたね。
小黒 前に最後の『おジャ魔女どれみ ドッカ〜ン!』は集中してやりたいとおっしゃってましたよね。
馬越 ええ。それまでの3年間、あまりやれなかったので、最後の1年は作監以外にも原画で参加させてもらったりして。そこそこ参加できたかなという感じですけれども。
小黒 原画で参加と言えば「秘密基地を守れ!」(17話)が印象的でしたよ。
馬越 あの話は作監をやりたいと言ったんですが、ローテーションの調整ができなくて。「じゃあ原画でもいいからやらせて」と言って、原画を描かせてもらったんです。
小黒 原画を描いたのは、人力飛行機が飛ぶところですよね。
馬越 そうです。「宮前がいなくなった」と言って、男の子の1人が校舎から出してくるあたりから、飛行機が落ちてくるまでです。
小黒 ああいう参加の仕方も、おいしいですよね。作監をやるより楽しかったんじゃないですか。
馬越 作監をやっていたら、自分で原画はできなかったかもしれませんしね。あの話は、桑原(幹根)さんという巧い人が作監をやってくれましたし、よい仕上がりになったと思います。
小黒 他に印象的な話というと、どれになります?
馬越 「どれみと魔女をやめた魔女」(40話)ですね。細田(守)さんの仕事ぶりが凄かったですね。俺、凹みまくっちゃいましたよ。
小黒 そうなんですか。凄かったというのはレイアウトチェックが?
馬越 もう全部です。画面の全部が細田さんの意図どおりになっていますから。あの話に関しては、自分はキャラを修正するぐらいしかしてないんです。原画のメンツもよかったので、自分の仕事は凄い楽だった。でも、やって、凄く凹みました(笑)。
 細田さんは、はづきの回(49話「ずっとずっと、フレンズ」)もやっているじゃないですか。あっちの方が凄いと思いましたね。「魔女をやめた魔女」は『どれみ』の中ではちょっと浮いた話なんですけれど、49話は『どれみ』のラインの中であれだけの事をやっているわけですから。
小黒 他にも自分がやりたくて参加した話はあります?
馬越 結構やらせてもらえました。「この話数のこのシーンをやらせてください」というワガママを言ったら、通してもらえたりという事もありました。最後の方は、新しい設定を書かなくてはいけないものも少なくて、作画に専念できたんですよ。
小黒 なるほど。
馬越 先々代の女王様絡みの話で、孫が一杯出てきたんですよね。そのあたりになって、「ああ、もうダメだ、キャラクターに関してもう何も出てこないや」という事になってしまって。似たようなキャラの、ちょっと髪型だけ変えたようなものにしてしまったんです。その時に、本当にもう『どれみ』も潮時なんだなって思いました。
小黒 『どれみ』をやり尽くした感じなんでしょうね。最終回近くは、毎回メインキャラの物語を締めくくるエピソードが続くじゃないですか。そのどれかをやりたいとは思わなかったんですか。
馬越 あいこは、やりたかったですね。
小黒 あ、やっぱり。なるほど(笑)。
馬越 心残りと言えばそれですかね。あいこ話が全然できなかったんで。
小黒 馬越さんは作監として、どれみやぽっぷの話はやっていて。それから、ハナちゃんもやっていますよね。はづきもやっているかな。
馬越 でもそれくらいですね。メインキャラでやったのは。
小黒 最終回は、原画も描いますよね。
馬越 あれは130カットやったんですよ。
小黒 それは凄い。Bパート最後の歌がかかっているところは、全部描いてますよね。
馬越 エピローグの部分は全部描きました。
小黒 あれはおいしかったですよ。
馬越 ありがとうございます。
小黒 最後の「ありがとう」の文字も馬越さんですか。
馬越 ええ。あれも描かせてもらいました。Aパートも、ちょっとやっています。それから、最終回は石崎(すしお)君が、クラスメイトの……。
小黒 ああ、あの見せ場のカットですね。
馬越 そうです。子供達がどれみのところに集まるカットを描いてくれて。
小黒 あのカット、よかったですね。
馬越 凄かったです。あれが最後に上がったカットになったんですけれど、仕上がりに関しては安心していました。
小黒 すしお君の原画は、あの前後だけなんですね。
馬越 小竹という奴が叫んでカメラが引いていくあたりと、クラスメイトが集まるあたりを石崎君に描いてもらって。その間の楽なところを俺がやらしてもらって(笑)。
小黒 なるほどなるほど。
馬越 石崎君も忙しかったみたいなんですが、五十嵐(卓哉)さんがダメもとで頼んだんですよ。多分、「ダメもと」と言いいながら、「やってえ〜」という凄いオーラを発していたと思うんですけど(笑)。
小黒 じゃあ、コンテ段階からあのぐらい大変な内容だったんですね。
馬越 あれは“ここは見せましょう”というカットでしたから。それで、石崎君がやると言ってくれて。
小黒 あれはかなり画を重ねてますよね。タイムシートで言うと、ABCDくらいじゃすまないですよね。
馬越 ええ。かなりですね。
小黒 エピローグの話に戻りますが、歌が始まってすぐの走っているところだけ、馬越さんの原画ではないのかなとか思ったんです。顔が微妙に違う。
馬越 それはみんなに言われました。「また、画が違うよ」って。
小黒 最終回は、全体に顔が丸かったですよね。
馬越 描いていると、どんどん丸くなっていくんですよ(笑)。
小黒 最終回は内容的にはどうでしたか。意表を突かれたファンも多かったようですけど。
馬越 そうなんですか?
小黒 どれみ自身が、皆にワガママを言う話だったじゃないですか。あまり最終回らしいプロットではなかったかな、と。
馬越 ああ、確かにそうですよね。自分は満足しています。でも、自分自身では客観的に見られなくなっている部分があったんですよ。ずっと泣いているどれみばかりを描いていて、作業をしている時には、湿っぽい感じが強い話になるのかなと思ってたんです。でも、爽やかに終われたような気が(笑)。その辺は五十嵐さんの力ですね。
小黒 『ドッカ〜ン!』のエンドクレジットも凄い暴走ぶりでしたよね。あの落書きみたいな画も馬越さんがお描きだったとか。
馬越 ええ。やっているうちにネタがなくなってきましてね。
小黒 『ドッカ〜ン!』の途中までは毎回同じ画を使っていましたよね。
馬越 すでにあるスチールを使っていたんです。それが、俺がMacを買って、指で(タブレットに)落書きができるようになったものだから。
小黒 あれ、指で描いていたんですか!?
馬越 ええ。最初は指で描いていて、徐々にマウスで描くようになって。マウスに慣れてきたら「普通だよな。変な画じゃないとダメだよ」と周囲に言われはじめて。また指で描いたりとかして(笑)。
 最初に落書きをした時に、シャレで「これを使えないかな」と言ったんですよ。他のスタッフと「きっとTV局の人が許してくれないよ」なんて話していたんですが、ダメもとで訊いてみたら、「いいですよ」と言ってもらえて。そのうちに「また描かないのか」という話になって。
小黒 ももこが唄ってるやつとか、あいこがたこ焼き食べてるやつとかは、割と長い事使っていましたよね。
馬越 それは単に次のやつが上がらなかったせいですね。
小黒 最終回が近づくと、次々と新しい画が出てきて……。
馬越 そうです。結局、メインキャラを順々に追っていく事になって、「これは1回しか使われないなあ」なんて話しながらやってました。最終回のやつは、結局時間がなくて紙に描いたんですよ。
小黒 そうなんですか。
馬越 それにしても、まさか『どれみ』が4年も続くとは思わなかったですね。
小黒 有終の美を飾ることが?
馬越 できたと思うんですけどね。
小黒 次は、ここ数ヶ月の馬越さんの仕事ぶりについてうかがいたいんですが。1月、2月は引き続き『カスミン』の放送があったし、『どれみ』はヒートしているし、しかも『WOLF’S RAIN』も1話、2話と原画で名前が出ていると、凄い大変な事になっていて。
馬越 大変な事になりましたね。まあ、『WOLF』1話、2話の作業をしたのは、去年の秋ぐらいなんですよ。たしか、『どれみ』の最終回の作業の前半をやりながら『WOLF』に入って、途中からは『どれみ』1本にして。
小黒 『カスミン』は各話の作業はやってなかったんですね。
馬越 ええ。『カスミン』は最初にメインキャラをだーっと作って、あとはもう現場にお任せしています。
小黒 『WOLF』では、狼を描いているんですか。
馬越 うーん、ちょっと狼は描けないんで。なるたけ違うとこを描かせてもらっています。
小黒 人物とアクションですか。
馬越 ええ。
小黒 今までBONESさんとお付き合いはありましたっけ。
馬越 いや、俺は劇場の『ビバップ(COWBOY BEBOP 天国の扉)』が初めてでした。あれ以降ですね、ちょっと使ってもらうようになったのは。
小黒 劇場の『ビバップ』は、どこを描いたんですか。
馬越 スパイクが清掃員になって、そこにお姉ちゃんがきて。お姉ちゃんとモップでやりあって、警備員がくるとこまで。
小黒 ああ、あのシークエンスをひとまとめですか。どうでしたか『BEBOP』は。
馬越 ちょっと、ハードルが高かったですね。ハードル高いのもやらなきゃあ、と思って参加したんですが。ちょっと他のところが凄すぎて。
小黒 いえいえ、そんな。
馬越 とりあえず、『WOLF』は終わりまで少しずつ参加する感じですかね。
小黒 1話と2話は、何カットずつぐらい描いているんですか。
馬越 最初は少なかったですね。20とか25とか。で、7話で30数カットくらいとったら結局間に合わなくて。レイアウトと一原(第一原画)までやって、原画は半分ぐらいしかできなかった。
小黒 あっ、馬越さんでもそんなことが!
馬越 無理でした。スケジュールもあまりなかったんですけどね。
小黒 最近のお仕事としては『ナージャ』のオープニングもありましたね。
馬越 俺、1カットしかやってないですよ。
小黒 でも、長〜いワンカットじゃないですか(笑)。
馬越 (笑)。いや。あれは、もう凹みまくりました。
小黒 え? なんで?
馬越 他のカットが凄すぎて。
小黒 またまた。
馬越 もうちょっと時間があったらなあ、と。言い訳ですけど。
小黒 でも、馬越さんは取りかかってすぐに上げたと聞いていますよ。『どれみ』の最終回を終わった後にやったわけですよね。
馬越 制作(のスタッフ)に「やばいですよ」って言われて慌てて上げたら、他の人は全然終わってなくて。ちょっと作戦に嵌められた感じでした(笑)。
小黒 背後に流れる止め画のキャラクターもグーですよ。あれは中澤(一登)さんの全面修正だと思ってたら。
馬越 いや、(修正が)入ってるのでは。
小黒 中澤さんも、似ていたのでほとんど修正を入れなかったそうですよ。それを聞いて「あそこまで中澤テイストで描くとは。凄いぞ、馬越さん」と思いましたよ。
馬越 (苦笑)。……ああ、そうだ。最近の仕事と言えば『花田(少年史)』の最終回も原画やりました。
小黒 あ、そうなんですか。
馬越 原作が好きで、あれは本当にやりたかったんですよ。前から、やりたいと言っていたんですけど、スケジュールが全然合わなくて。最終回でようやくできました。
小黒 最近のご活躍振りは頼もしい限りです。
馬越 闇雲にやっている感じですよね。どれも、中途半端になっちゃって。
小黒 仕事盛りのときに、思いっきり仕事ができるって事は意外とないですよ。仕事盛りの時に1本の劇場作品に何年も関わるようなケースと、対照的というか。
馬越 俺は体質的にTV向きなんで、そういう重たいやつは苦手なんです。
小黒 そうなんですか。
馬越 ええ。ワンカットに1週間、2週間とかけるような仕事には向いてないですね。
小黒 当面は新番組『エアマスター』のキャラクターデザインですね。
馬越 とりあえず動いているのはそうですね。今、その設定の作業を急ピッチで進めています。
小黒 それでは、今後の活躍にも期待という感じで。
馬越 なんとか精進ですね。また、ちょっと仕事を絞っていこうかなとも思っているんですけどね。
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