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いろんな会社にオジャマしちゃおう!
 第4回 ユーフォーテーブル

 この作品って、一体どんな人達が作っているんだろうか? なんて思うことが最近多いけれど、今年放映された中で一番の「?」だったのが、『住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー』についてなんじゃないでしょうか。9月まで放映されていた『ドッコイダー』は、とにかくよく動くアニメでした。他のシリーズでたまにある「作画に気合いの入ったエピソード」が毎回続いているような感じで。疾風怒濤の展開となった最終回は何でも総枚数10000枚だったとか。各話も6000枚くらいは使っていたそうですよ(TVアニメは1話あたり、3500枚前後が普通)。
 で、このシリーズの制作をしていたのが、ユーフォーテーブル。え〜〜、全然知らない会社だよと、皆さん、おっしゃるかも知れませんが、それもそのはず、まだ設立3年目の制作会社なんだそうです。編集部スタッフがユーフォーテーブルを訪れたのは、『ドッコイダー』の制作がほぼ一段落した9月中旬。ユーフォーテーブルがあるのは都内中野の永田ビルという建物で……あれ、このビルの名前、どこかで聞いたような……。そうです。これは『新ルパン』の最終話「さらば愛しきルパン」にも登場した、当時のテレコム・アニメーションが入っていたビルなのです。目の前には、これまた最終回に出てきた中野病院もあります(Aパートの最後、奥に中野病院が見えるカットで、手前にあるのが永田ビルだ。偽ルパン達がいた「葉桜」の看板のビルも、アレンジしてあるが永田ビルがモデルになっている)。おっ、するとこの会社はテレコム・アニメーションに縁のある会社か? 『ドッコイダー』がやたらとよく動いているのもテレコムの流れを汲んでいるためなのか? ま、とにかく中に入ってみましょう。
 今回お話をうかがったのは、この会社の代表取締役であり、『ドッコイダー』の制作プロデューサーでもある近藤光さん。楽屋話が楽しい『ドッコイダー』オフィシャルHPの制作日誌の書き手でもあります。近藤さんは、東京ムービー新社でアニメの制作に関わり、その後、総合的な映像の企画・制作をしているステップ映像に籍を移し、そこでCMやアニメのプロデュースを務めた後に、ユーフォーテーブルを立ち上げた。近藤さんは東京ムービー時代には、テレコム・アニメーションに籍をおいていたのだそうですが、それと、かつてテレコムが入っていたビルにユーフォーテーブルがあるのは関係ないそうです(近藤さんがいた頃のテレコムは、三鷹にあったそうです)。普通に物件を探していたら、たまたまこのビルが見つかったのだそうで。いやはや、これは早合点でした。
 ユーフォーテーブルという変わった社名は、彼が欲しいと思ってたレアものの海外の家具の名前から。近藤さんのこだわりなのか、スタジオ内のインテリアはかなり凝っています。このあたりにも気概みたいなものが感じられますね。
 ユーフォーテーブルは、彼と、実写のディレクターである内田勤さんの2人がメインで立ち上げた会社。そのために実写、CM等、活動が多岐に渡っている。このあたりが他の会社と激しく違うところ。そして、初期からのメンバーとしてすでに現在の制作体制の中枢をなす、演出の野中卓也さん、作画の柴田淳さん、CGの永田武士さん、鈴木龍さん、色彩設計の千葉絵美さん等、当時まだまだ無名だった多くの『ドッコイダー』スタッフが参加している。
 同社が最初に制作した作品が、TV番組「うたばん」(TBS)の中の挿入アニメ“うたまるくん”。以降、TV「笑う犬の情熱」(フジTV)やTV「ツーハンマン」(TV朝日)、映画「踊る大捜査線 The MOVIE 2」のオープニングアニメまで手がけています。『ガンダムSEED』の3DCGはシリーズ中盤まで、永田武士さんが1人で担当。実写では、TV「スーパーモーニング」の企画コーナーなども担当していて、アニメでもDVDの映像特典用の実写パートを撮る事もあるとか。TVシリーズを最初に手がけたのが『ヴァイスクロイツ グリーエン』。『ドッコイダー』が第2作。話を聞いてちょっと驚いたのですが、『ドッコイダー』では1本も外部へのグロス出し(作画、仕上げ等を1話分、他の制作会社に任せる事)が無かったのだそうです。もちろん、外部のフリースタッフへの発注はしていますが、決して大きなスタジオではない同社が、あのクオリティで全12本作りきったのは大したものです。作画スタッフの充実ぶりに関しては「今までの自分達がやってきた事の成果とスタッフの協力があって」だとか。
 『ドッコイダー』のエンディングに使用したミニチュアを使った立体アニメも、永田さんを中心に社内スタッフで撮ったもの。立体アニメ撮影用のスペースは通称“クレイ部屋”として、社内に常設してあります。なんでもありに思える制作体制ですが、それについて「いろいろやってれば、何かひとつくらい上手く行くだろうから」と近藤さんは、冗談めかして答える。
 ですが、本当に狙っているのは、プロデュースカンパニーになることだそうです。近藤さんが狙うプロデュースカンパニーとは、各スタッフがアニメトータルのプロデュース能力を身に着けている会社のこと。自分のパートの仕事だけをこなせればOKというわけではない。制作の流れだけでなく、資金の流れまでを各スタッフが把握できるように、月2回の勉強会まで開催しているそうです。
「ウチは、制作の人間を制作だと思ってないから。逆に、脚本をやりたい人、CGをやりたい人、色彩をやりたい人を制作として入れているから」。たとえば、『ドッコイダー』のCGディレクターや、色彩設計のスタッフも、CGと制作、色彩と制作の2枚の名刺を持っている。近藤さん自身も『ヴァイスクロイツ グリーエン』の脚本を書き、現在制作準備中の新作『ロックンロール30』の原案・脚本も手がけている。各スタッフそれぞれが企画力を持ち、それを実現させるための資金面含めたノウハウを持ち、オリジナルで勝負できる会社になること。それがひとつの目標なのだそうです。
 今後の事に関しては「エンドユーザーに対して、ユーフォーテーブルが作るものは面白いというイメージを作らないといけない、と感じています。だから、『ドッコイダー』も、みんな、貧乏になりながら一所懸命作ったし(笑)」。来る仕事は拒まずという姿勢でやみくもに作品本数を増やすこともしたくないと彼。今後、これはユーフォーテーブルが作りました、という目印として「『ドッコイダー』同様、これからもエンディングは全部、クレイアニメで作ろう」と企んでいるとか。

2003年9月18日
取材場所/東京・ユーフォーテーブル
取材・構成/小黒祐一郎、田中くうち
PROFILE
社名/ユーフォーテーブル有限会社
代表取締役/近藤光
設立年月日/2000年10月
従業員数(フリーランス含む)/約35名
関連スタッフ(フリーランス含む)まついひとゆき(監督)、野中卓也(演出)、柴田淳(作画)、小林利充(作画)、永田武士(CG)、鈴木龍(CG)、千葉絵美(色彩設計)、など
公式サイト
http://www.ufotable.com/
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