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新春放談 大地丙太郎×小黒祐一郎
 その2 ベテラン声優に花束を

小黒 じゃあ、例の話に入りましょう。「WEBアニメスタイル」に提言して下さいよ。
大地 え、なんだっけ?
小黒 こういう記事をやろうよ、って話ですよ。
大地 ああ、そうか。ちょっと酔っ払っちゃったな(笑)。
小黒 早っ! じゃあ、またまた読者に説明しますね。この前、大地さんと世間話をした時に、我々はもっとベテランの声優を取り上げるべきだよと言われたんですね。僕もずっと、それを考えてはいたんですよ。あれだけ声優雑誌とか声優の記事があるんだけど、いつも若い人が載ってるしね。
大地 まあ、それはしょうがないけどね。
小黒 この「WEBアニメスタイル」ってアニメーターさんの仕事を取り上げる事が多くて、アニメーターはアニメーターでもっと脚光を浴びるべきだと思うんだけど、その一方で、ベテランの声優さんもやりたい。読者だって、子供の頃から声を聞いているんだけど、顔写真とかを見た事のない役者さんが一杯いるんじゃないのかな。
大地 そうだよねえ。
小黒 僕は、一度、山本圭子さんの取材をしたい。
大地 ああ。いいですね。『もーれつア太郎』ですね。
小黒 『もーれつア太郎』のア太郎ですね。
大地 俺が『もーれつ太郎』を観ていた頃が、俺の(声優に対する興味の)ピークだったから。山本圭子さんでしょ、デコッ八の加藤みどりさんでしょ。男は大体、永井一郎さん(×五郎)と八奈見乗児さん(ココロの親分)と富田耕生さん(ブタ松)。
小黒 いいメンバーですね。あの頃の作品は何を観ても、永井さんや八奈見さんが出ていたような気がするけど。
大地 『狼少年ケン』の頃から、みんな、出ているものね。俺はあの人達が凄く好きだし、話を聞いてみたいなあと思うよね。あと松島みのりさんとか、憧れてましたしね。
小黒 あ、そうなんですか。松島みのりなんだ。
大地 それから、初めて惚れた声優が白石冬美さんなんですよ。深夜ラジオですけどね、「ナッチャコパック」をずっと中学校の時に聴いてて、投稿もしたんだよ。「小生、何とかでやんす……」みたいな。
小黒 (笑)笑いも取れる内容だったんですね。
大地 投稿のコーナーで、ネタを作って。さらに笑いをガンガン入れて、それで三回ぐらい読まれて。あれが俺の業界デビューかなとか思ってるんですけど(笑)。
小黒 (爆笑)。
大地 昔から白石さんの声をTVアニメで聞いてたんだけど、ラジオで本人の素の声が聴けたのにびっくりしてね。かなり夢中になりましたね。
小黒 笑い声とか、可愛いんですよね。
大地 可愛いですよねえ。それで俺の演出デビューだった『どろろんぱっ!』で、白石さんが主役をやったんですよ。もう会う時にドキドキした。絶対に「ファンでした」と言おうと思って、「あ、どうも、初めまして。大地と申します。『ナチチャコパック』からずっとファンでした」と言ったら、「あ、そう」とか言って目をそらしたんで、あ、こういう事は言っちゃいけないのかなって、その時は思った(笑)。そんな事はないんだけどね。白石さんは、いい人でしたよ。打ち上げで(照れながら)手にキスをさせて頂いて。
小黒 (大爆笑)。
大地 もう会えないかもしれないと思ったから。隣でずっと飲んでて、「そろそろお開きです」と言われた時に、ありがとうございましたと言って、「チュッ」と。
小黒 そりゃあ、すごい(笑)。騙し討ちみたいにやったんですか。
大地 ほとんどね。その後で外に出てから、友達のムトウユージってやつのリクエストで、「電信柱の陰から『飛雄馬』と言ってください」と言ったら、ちゃんと電信柱に隠れて「飛雄馬!」とか言ってくれて。
小黒 いい人だなあ。
大地 そうなんですよ(笑)。良かったです。
小黒 広川(太一郎)さんとか、洋画が多い人は、映画雑誌とかで取り上げられる機会も多いんだけど。
大地 広川さんって、今は、どうしてるんですか。
小黒 広川さんは普通に吹き替えやってますよ。数日前の午後ロー(午後のロードショー)で、記憶を失ったサンタが広川さんで、記憶を失っているくせにダジャレを飛ばしたりしてた。
大地 ああ、バリバリやられているんですね。
小黒 昨年は『MEZZO』でアニメのレギュラーもあったし。
大地 八奈見乗児さんも、素晴らしいですよね。『オヨネコぶ〜にゃん』って、知ってる? 俺が撮影をやってた頃の作品なんだけど。
小黒 知ってます。ええと、20年くらい前かな。
大地 あれのパイロット版の撮影監督が、俺だったんだよ。『オヨネコぶ〜にゃん』って(主役のオヨヨは)神谷(明)さんで、あれもすげえ面白えと思ったんだけど、パイロット版は神谷さんじゃなくて、八奈見さんなんですよ。
小黒 そうなんですか。
大地 それが面白いんだよ。普通だったら、女の子が当てるようなキャラなんだけど、「それが八奈見さんかよっ!」って、もう大絶賛したのね。『おじゃる丸』の貧ちゃんとか、普通だったらお年寄りの声なんだけど、それを齋藤彩夏が当てるみたいな感じだよね。俺が、そういう騙し討ちみたいなキャスティングをやるのって『オヨネコぶ〜にゃん』の影響があるかもしれない。で、声優で一番取り上げてほしいのが、大平透さん。
小黒 大平さんは、どこら辺が原体験なんですか。
大地 大平さんはね、何たってあれですよ。誰もが知っているTVの『スーパーマン』。うちのお袋だって、大平透といったら「ああ『スーパーマン』の」と言う。観る側としてはそれが最初なんだけど、仕事としての初めては『(藤子不二雄Aの)笑ゥせぇるすまん』。これも演出デビューしたちょっと後の作品なんだけど、スタッフの間で「録音の現場で大平透がうるさい。必ず怒られるぞ」と言われていたんです。
小黒 うるさいっていうのは、アフレコの時に画が揃ってないと怒るとか?
大地 そういうんじゃなくて、内容が面白くないと。
小黒 ああ、なるほど。
大地 ひどいでしょ。そんな事を言う人っていないでしょ(笑)。短い作品だから、同時に3本ぐらい録るわけですよ。通しでテストをやった後に、必ずブースから大平さんが出てきて、「(ドスの効いた声で)おい、何だよ、今日のはよ。面白くないよ」とか言うんです。それで、皆がシュンとしちゃう。『笑ゥせぇるすまん』って、ラストで喪黒福造が去って行くんだけど、人間の弱いところを衝いたお話なんで、その時に「人間というものは欲深いものですねえ」とか言うわけね。その台詞が毎回必ずあるんだけど、大平さんは、その台詞が気に入らない。で、ブースに入ったら、総監督が「来い」って呼ばれるわけね。中で話している内容は僕らには聞こえないけど、その総監督が「はい、そうですか。はい、ありがとうございます」と言って戻ってきて、(他のスタッフに)「これでいきます」って(笑)。
小黒 あ、台詞を直されちゃうんですか。
大地 そうそう。シナリオの台詞が気に入らなくて、大平さんが全部直してちゃうんです。いつもそんなふうにやっていたらしい。それをスタッフが「怖い怖い」と言っていたんだ。でも実は、俺、大平さんの言ってる事は正しいと思ってた。確かに元の台詞より、大平さんの作った台詞の方がいいと思った。面白くないものは、面白くないんだよ。かく言う俺が演出したやつも、自分でもそんなに良く出来てないと思ってたのね。そしたら、これは不思議な事だけど、俺の回だけテストが終わった後にブースから出てきて「面白えじゃねえかよ」と言ったんです。「ええーっ、面白いんですかあ!」って、それが凄い自分の中に残ってるの。自分が褒められたからという事じゃなくて、この人は『せぇるすまん』を愛してるんだな、作品を一所懸命やってるんだなと思ったんだ。何でもかんでも「面白くない!」じゃなく、「面白い」と思ったら「面白いじゃねえか!」っていう。声優でそんな事を言う人はいないし、制作現場でも「これがいいんだ!」とガツンという人はいない。あ、ただしコレは声の収録現場で感じた事ね。米ちゃん(米谷良知[米たにヨシトモ])の『せぇるすまん』の演出はホントに斬新で面白かったよ。彼のパワー全開で。彼のコンテは面白くてさ、美術監督もクオリティ上げたいから兼用背景を多くしてくれって言う要求するの。それに応える米ちゃんとかカッコイイと思ったね。この場合そっちのフィルムを作る現場の話はおいといて、アフレコの時にまだ演出ひよっこの俺っちが素直に感じた事ね。新人演出としては、その当時、それを口には出して言わないけどね。ずっとそれを思ってた。それで時を経て『十兵衛ちゃん2』で、大平さんのお弟子さんの新子夏代をキャスティングしたんですね。キャスティングした時点で、大平透が挨拶にくるって言うんだよ。
小黒 (笑)。
大地 「(慌てた感じで)いいよ、いいよ! 怖いからいいよ! 何でわざわざ挨拶にくるの」と思ったら、「いや、うちの弟子を使ってくれたから」って。その新子さんが小猿の役に決まった後に、柳生但馬守の役を決める事になった。目黒さんが柳生十兵衛だから、それに釣り合う柳生但馬守の声は誰だ。だったら、それは大平透だろうという事で、大平さんに出てもらう事になったんです。打ち上げにもきてもらって、その時にも、とにかく弟子を使ってくれた事が嬉しいんだみたいな事を言っていた。
 話はどんどん長くなるけどさ。目黒祐樹さんが、大平透さんを大好きだったんだよ。現場で「ええーっ、大平さんが、俺の親父役ですか」とか言って、舞い上がってるのね。「だって、スーパーマンだよ」とか言って(笑)。『J2(十兵衛ちゃん2)』が終わった後に、目黒さんの家で飲み会があって、大平透さんと一緒に目黒さんの家に行ったんですよ。大平さんと個人的に話ができるのは、その時が初めてだったので、さっきの『せぇるすまん』の話をしたんです。その前に大平さんが「俺はね、自分が関わった仕事はヒットしてほしいから、自分がいいと思ったようにやっちゃうんだよ。だから、俺は本当に嫌われるんだよね」とかおっしゃって。それで俺が「いや、『せぇるすまん』は大平さんの情熱が大きく影響して傑作になったんだと思いますよ」と話をしたら、急に調子が変わって、そんな事を言ってくれたのは、大地さんが初めてだって。その日は、もうベロベロに酔っ払って、帰りまでずっとその事を「嬉しかった、嬉しかった」って言ってたんですよ。大平さんほどの人がそんな事を言うんだ。逆にどうして、誰も大平さんの事をそんなふうに言わないのかという事に、凄く驚いた。
 それでアニメの黎明期に必死にやった人とか、一所懸命やったみたいな人の話というのは、聞いておいた方がいいんじゃないかなと思ったんです。今、声優ブームで沢山の声優がいるわけだけど、大平さん達の頃は、人がいない中でやっていたわけでしょ。
小黒 業界全部で、声優の人数が数えるほどしかいなかった時代があったわけですよね。
大地 そんな中でやっていたわけじゃないですか。俺達のアニメの仕事も同じでね。スタッフが全然いないところから始めたわけだよね。今もスタッフは不足してるけども、100本も作品ができるくらいのスタッフはいるわけだから。フロンティアスピリッツでやってた人達がいるんだというのは、やっぱり知っといてほしいなと思う。温故知新じゃないけど、そういう証言は残したいと思いますね。
小黒 そういう企画をやるなら、大地さんが関わった方がいいですね。じゃあ、取っかかりは大平さんですかね。
大地 大平さんがいいですね。
小黒 その後は誰がいいですか。
大地 大平さんの後は。考えつかないですね(笑)。大平さんだけかよ! 大平さんから、友達の輪みたいのやろうか(笑)。もしかしたら、声優っていうだけにこだわらないで、60歳70歳の先駆者達の話みたいな奴の方がいいかも知れないですね。
小黒 でも、記事としては声優に区切ってった方が面白いかも知れないですよ。
大地 だったら、白石さん、白石さん。
小黒 白石さん。
大地 で、改めてプロポーズをしたりして。いや、できないわ(笑)。
小黒 太田淑子さんとかね。
大地 太田淑子さんね。太田さんも、俺が顔知らない人だよね。
小黒 確か、太田淑子さんは顔出しの仕事もされていて、昔、水谷豊の「熱中時代」ってあったじゃないですか。あれで父兄の一番うるさいお母さん役をやってましたよ。
大地 へえ。『ドラえもん』の青木和代さんとかね。たてかべ(和也)さんも面白いし。
小黒 『ドラえもん』なら、千々松(幸子)さんとか。
大地 千々松さん、いいねえ。ピョン吉だよね。
小黒 今だと、のび太のお母さんですよね。
大地 野沢雅子さんの取材があるなら、俺、本当に行きたい。野沢雅子さんは凄いよ。野沢雅子さんと、2回仕事したんだけど、何がいいって、テストの時に大笑いしてくれてんだよ(笑)。ずうっと笑ってんの。「ワッハッハッハ」とか言って。
小黒 しかも、普段からあの声なんですよね。取材で何度かお会いしているですけど、「ちょっと、貴方」とか声かけてくれる時も、「あっ、この人、悟空の声で喋ってるよ」みたいなね。
大地 『おじゃる』の映画で『約束の夏 おじゃるとせみら』というのをやった時に、せみらという役をやってもらったんだ。声優を誰にするって言われて、ピーンときたのが、野沢雅子さんだったのね。俺って、あまり人気声優とかベテラン声優を使うタイプじゃないのね。
小黒 そうですね。
大地 大平さんはまた別だけど。だけど「この役は多分、野沢さんじゃないとできないんじゃないかな」って思ったのね。そしたら、プロデューサーとか「ええ? 野沢さんですか」って意外な顔してさ。それで、野沢さんに声を出しもらったら、そのプロデューサーに「なぜ野沢さんを選んだかよく分かりました」と言われて、嬉しかったですけどね。やっぱり、野沢さんは凄かった。せみらっていうのが、ちょっと、ボケーッとした役なのね。それを知恵遅れの子みたいに思われると、ちょっと違うので、そう思わせない感じでやるとしたら、野沢さんじゃないかなと思ったんだよね。そしたら、バッチリだった。野沢さん、いいです。

●新春放談 大地丙太郎×小黒祐一郎 その3へ続く

(05.01.28)
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