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■新春放談 大地丙太郎×小黒祐一郎
その4 夢は広がるショートアニメ計画
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小黒 あ、そうだ! 忘れてた。その話をしなくちゃ。アニメスタイルのイベントですよ。
大地 あ、そうそう! ショートフィルムを作るから、アニメスタイルのイベントで上映してくれないか? という話をするんだった(笑)。
小黒 もう少しでその話をするのを忘れるところだった(笑)。
大地 久里洋二さんが作った「11PM」のアニメを観る機会があって、すっごい面白くてゲラゲラ笑っちゃったんだ。エログロなんだよね(笑)。2分のものを集めて、50分間上映するんだけども、もうオッパイとお尻しか出てないの。エログロっていいながら、ギャグなんで、やらしいとかそんな感覚ではないのね。そういうエログロナンセンスみたいなやつは、面白いなあと思って。エログロは見るのは好きなんだけど自分がやる機会はないからね。だったら、自分もショートフィルムでやろう。全部自分でやって、金はかけない、若干の努力はするけれども。
小黒 手間もそんなにかけない。
大地 うん。手間もかけない、時間もかけない。今、デジタルが発達してきたからね。作家としては、せっかくツールがあるんだったら、全部自分の手で作るというのもやんなくちゃウソだろうと思ってさ。それを発表する場がないと作んないから、小黒さんがやっているアニメスタイルのイベントで上映させてほしい。年に何回かやるやつで、必ず発表すると。それを一緒にやる仲間も募集したいんだよね。
小黒 吉松(孝博)君に声をかけたら、機材があればやるって言ってましたよ。
大地 ホントに? 機材がなくても、きっと誰かがやってくれるよ。そうやって、ギャグを競いたいのね。吉松君だったら面白いね。俺、負けるかもしれない。イベントに、大地達がやった馬鹿アニメコーナーがあるっていうのも、ちょっとした売りになるじゃない。俺達もそれだけ楽しみが増える、どんなに忙しくってもやると。どんなに手を抜いてもいいから作るというのを決まりにしてやってくと。
小黒 実現するといいですねえ。
大地 ねえ、やりたいですねえ。
小黒 WEBで発表じゃダメなんですね。
大地 WEBじゃ、ヌルいんだよね。
小黒 皆で見てるところで上映して、しかも目の前で笑うか笑わないかを競うわけですね。
大地 そうそう、その緊張感がいいんじゃないかなと思うんだよね。
小黒 それを、5年くらいやってDVDにしましょう。
大地 5年くらいかかるか。
小黒 多分、1年や2年じゃ足んないですもんね。
大地 久里洋二先生はさ、2分ものを毎週作ってたんだよ。毎週2分作って、それを18年間やった。その気迫が凄いなあと思った。それに比べればこの企画はまだヌルいんだけど、でも足元にでも及びたいみたいなところがあって、感化されたんだったら行動に移そう。やっぱりそれをやろうよ。
小黒 実現させましょう。
大地 次回はいつなの。
小黒 次のイベントは、夏ぐらいでいいかなと思ったんだけど。この前、その話を大地さんから聞いた瞬間に、春にやんなきゃあと。
大地 (笑)。
小黒 年4回はやんないと、とか。
大地 年4回やったら、相当つらくていいよ。
小黒 つらくていいですね。
大地 じゃあ、春だ。
小黒 例えば、出崎統さんのイベントをやるとして、真ん中にそのギャグコーナーを入れる勇気が、俺にあるのか(笑)。
大地 (笑)。
小黒 「すいません、出崎さん、ちょっと変なコーナーが入ります」とか謝ったりして。
大地 大丈夫だよ(笑)。
小黒 和田(高明)さんとか、作ってくれないですかね。
大地 いいよね。作るんじゃないの。「ナンセンスギャグじゃないとダメよ」という事にしよう。
小黒 それは縛りなんですか。
大地 笑いを取るのを大目標にする。
小黒 シュールギャグでもいいんじゃないですか。
大地 シュールでもギャグであればいいですよ。でも、私の内なる気持ちを表現しました、みたいなやつがあるじゃない。何だか分かんない、パターンが動いているみたいなやつ、ああいうの絶対にダメ。
小黒 ビデオアートみたいなやつね。
大地 それは最悪(笑)。エログロナンセンスをやろう。
小黒 エロかグロかナンセンスの、どれかクリアしてればOKなんですね。
大地 どれか入ってればいいの。全部じゃなくてもいいんだよ。
小黒 じゃあ、春くらいには実現させましょう。
大地 いいねえ。怖いけどいいねえ。よし、何かやってみよう。
小黒 「WEBアニメスタイル」も何かよろしくお願いします。
大地 うん、何か。
小黒 声優の記事も実現するといいですね。
大地 そうだね。
小黒 じゃあ、僕は山本圭子で。いや、勝手な事を言っているけど、本当に申し込んだら断られたりして(笑)。
大地 山本圭子さんの時に、俺も同席はさせて欲しい(笑)。
小黒 じゃあ、ずっとコメンテーターできてくださいよ。
大地 山本さんの全部を語ったりとかはできないけども、自分の中にある山本圭子さんの思いとかを語るの。白石冬美さんにしても、白石冬美の全部を語るなんてできないけど、自分の中の白石冬美みたいな話はしたいなあと思う。そういう意味では、是非とも声優の記事の中に「大地コーナー」を作っていただきたい(笑)。
小黒 僕達はもっとね、ベテランの事を語るべきですよ。
大地 うん。
小黒 とにかくね。亡くなってから何かを言うのがいやなんですよ。
大地 なるほどね、そのとおりだよ。
小黒 別に、今、名前を挙げた役者さんが亡くなりそうだと言いたいわけじゃないんだけど。例えば、有名なアニメーターの人が亡くなった時に、生きてる時には全然記事にしなかった雑誌が、突然、特集を組んだりするじゃないですか。僕自身、そういった記事を手伝ったりするんですけど、気持ち的には複雑ですよね。ファンの中にも、晩年にそのアニメーターを応援してたわけでもないのに、「アニメ雑誌はもっと彼を特集するべきだった」とか言う人がいてね。実際にそういう事があって「何言ってんだよ、お前らはよっ!」みたいに思いましてね。
大地 それはあるね。
小黒 それが、ずうっと引っかかっていてですね。それは僕らインタビュアーの自己満足に過ぎないかもしれないけれど、とにかく聞けるうちに話を聞きに行こうよ、というのがあるんですよ。
大地 今のアニメ界の現状について、不満は色んな所にあるんだよ。作品の数が多過ぎるのが大きな要因なのかも知れないけど、俺にとっては、アニメ誌がちっとも面白くない。それは、取材にこないから拗ねてるわけじゃなくて。
小黒 (笑)。
大地 アニメ雑誌を見ていると、何か分散しちゃっている気がする。それはアニメ業界の現状が反映されているんだろうね。そのために、わくわくするものがなくなっている。
小黒 萌えアニメの記事でもいいんですよ。世の中には萌えアニメがもの凄く好きな編集者も当然いるだろうけど、本当に自分達が好きな記事を作ってるのかというと、ちょっと違うように思いますね。
大地 そうなんだよね。何かコアな物でもいいんだけどね。皆、喘いでるんだなあと思ってね。
小黒 喘ぐ、ですか。
大地 信じてるところで行ってないなあって思ってね。自分自身も何か見えないところがあってさ、「お茶の間アニメを目指す」とか言ったけど、今、お茶の間なんかあるのかよと思ったりさ(笑)。そういう疑問があるのね。
小黒 家族揃ってTV見る機会なんて減っているでしょうね。
大地 自分でも家族揃ってTV見てきたかというと、そういう経験ってあまりなかったと思うのね。でも、例えば、ウチの子供がTVを観ていて、そこに通りかかった俺が後ろから覗き込んで、「ああ何か面白そうじゃん」と言ってるだけでもいいような気がする。だから、CSとかで放映してくれる局も非常にありがたいんだけど、やっぱり地上波の、普通にお茶の間に流す事ができるTV局がもっと頑張って面白いものを作らなくちゃいけないと思うし、そこで仕事したいなあと思うのね。それが目標なんだけど、これだけは自分では何ともし難いんでね、そればっかりこだわってると仕事がなくなるじゃない(笑)。食ってかなくちゃいけないという現実はあるけども、でもやっぱりそれを目指したいなあと。一家団欒で見るのは、もうあんまり期待できないけれど、何となく気になるものをお茶の間で流すってのは、いいんじゃないかなあと思うね。これが永遠の課題ですね、きっと。
小黒 何かまとまったような、まとまってないような感じですが、そんなところで。
大地 そんなところですね。じゃあ、本格的に飲もっか。
■対談後に、春のアニメスタイルイベントが決定しました。第21回アニメスタイルイベント「監督10周年記念 大地丙太郎、語りまくりっ!」です。大地さんの演出デビューから現在までをガガガっと語っていただきます。勿論、対談で話題になったショートアニメも上映する予定です。詳しくはこちらを。
(05.02.10) |
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