昨年公開された『BLOOD THE LAST VAMPIRE』は、光や色
、質感等に関して、かつてないほどのレベルで作り込んで制作されたフルデジタルア
ニメである。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、毎日映画コンクール大
藤信郎賞、高崎映画祭特別賞と、次々に映画賞を受賞した話題作だ。
4月25日に発売されるDVD「COMPLETE BOX版」には、「オリジナ
ルフィルム版本編」に加え、「デジタルマスター版本編」というもうひとつの『BL
OOD』本編が収録される。
現在、フルデジタルの劇場アニメは、制作過程で一切フィルムを使用しないまま
作られた映像を一旦フィルムにして(=フィルムレコーディング)上映する形式が大
半だ。デジタル映像をそのまま上映するシステムもあるのだが、それはまだ一部の興
行で使用されているのみである。
デジタル映像はフィルムレコーディングをする事によって、ある程度、色や画質
が変化してしまう。スタッフは、フイルムに落とす段階での変化を計算して映像を制
作するべきなのだろうか。ビデオやDVDといった映像ソフトにする際には、元のデ
ジタル映像から作るべきなのか、それともフィルムから作るべきなのだろうか。フル
デジタルで制作される劇場アニメについては、そんな微妙な問題がある。
『BLOOD』の場合は、北久保弘之監督を初めとするスタッフは、フィルムレ
コーディングで色や画質が変化する事を想定して、綿密に画面を設計し、色や明るさ
を決めた。つまり、フィルム上映版を「完成品」と考えているのだ。今回のDVDで
、フィルム版の方に「オリジナル」という名が付けられているのもそのためだ。
『BLOOD』は基本的にフィルム上映で劇場公開されたが、一部の興行で、実
験的にデジタルマスターによる上映も行われている。デジタルマスターによる上映は
、フィルム上映よりも映像が明るく、画質もクリアだった。制作スタッフの意図から
すれば、それは「クリア過ぎる」のだろう。だが、勿論、このデジタルマスター版の
ような、シャープな映像を望む観客もいるはずだ。
「オリジナルフィルム版本編」と「デジタルマスター版本編」の両方を収録した
「COMPLETE BOX版」では、その両者を見比べる事ができるというわけだ
。実にマニアックな企画である。
ちなみに、DVDというメディアの特性もあり、オリジナルフィルム版は劇場公
開時よりも画面が鮮明になっているのだそうだ。DVD版では劇場公開時よりも、オ
リジナルフィルム版とデジタルマスター版の色や画質の差は縮まっているのかもしれ
ない。
●「『BLOOD』予約限定COMPLETE BOX版DVD」商品データ
※DVD3枚セット+特典で構成。DVDは「オリジナルフィルム版本編(48分)
」、「デジタルマスター版本編(48分)」、「映像特典」の3枚。
特典は、ショットボード集(総点数490・完全収録)、台本(日本語/英語)、寺田
克也描き下ろしピンナップ等。※2001年4月25日発売予定/SVZB-5002/税抜価格
11,800円(予定)/発売:SME・ビジュアルワークス
●「オリジナルフィルム版本編」のみ収録したレギュラー版(初回生産分のみ税抜
4,800円)も同時発売。
●以下は関連サイト
Production I.Gのホームページ
http://www.production-ig.co.jp/index.html
『BLOOD』のホームページ
http://www.sonymusic.co.jp/Animation/blood/index.html
SME・ビジュアルワークスのホームページ
http://www.sonymusic.co.jp/Animation