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■ BOOK REVIEW 「アキラ・アーカイヴ」
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これは作画マニアなら買わないわけにはいかないだろう。昨年末に発売された『AKIRA』の単行本である。作画およびデザイン、美術のみに焦点を当てた内容で、大半のページが本編で使用された原画で構成されている。
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作画監督のなかむらたかし、森本晃司の原画、修正原画は勿論、『AKIRA』の作画と言えば必ずと言っていいほど話題になる井上俊之の手によるバイクシーンの原画、沖浦啓之のモブシーン、鉄雄の腕がメタモルするシークエンスの田中達之の原画、金田対鉄雄の梅津泰臣の原画など、オイシイ原画が沢山掲載されている。印象的な、本谷利明の冷凍カプセル崩壊や、大平晋也による爆風等のエフェクト原画にもたっぷり紙面を割いている。ほんの少しではあるが金田伊功の原画まで載せているあたりは、さすがにツボを心得ている。ほとんどの原画が、これが初公開となるものであるはずだ。また、掲載されている原画の大半に、担当アニメーターの名前が明記されているのも嬉しい。 ファンが見たいと思う原画の全て掲載されているわけではないが、むしろ、完成から15年を経てこれだけの量の資料が残っているのが驚くべき事であり、これ以上を望むのは贅沢だろう。原画の掲載形式だが、枚数の多いものに関しては全部を載せず、1カットの中からポイントとなる原画を抜粋するスタイルとなっている。作画マニア的には(恐らくアニメーター的にも)間を飛ばさず、連続したかたちで見たいところだが、全部載せると際限なくページが増えてしまう。ビジュアルブックとしての見栄えを優先しての選択だったのだろう。画質に関しては、設定も原画も非常に鮮明であり、納得の仕上がり。レイアウト的にも掲載サイズが小さすぎて何が描かれているのか分からないようなものは、ほとんどない。 大友克洋監督の手による原画やレイアウトが大量に掲載されているのも、この書籍の大きな収穫である。ここに掲載されたものとて全てではないはずだが、載っているものを見るだけでも、この作品における彼の作業がいかに膨大だったかが分かる。「大友さんがこんなに原画を描いていたのか」と、驚いたファンも少なくないだろう。 インタビューも掲載されており、登場するのは大友克洋、なかむらたかし、森本晃司、井上俊之、沖浦啓之、北久保弘之の6人。『AKIRA』に関しては「WEBアニメスタイル」でも何度か話題になったが、今回の記事も今だから話せる的なニュアンスのものであり、色々と興味深い。特に、井上俊之の、なかむらたかしの仕事に関するコメントは今までの中で一番重いものであるだろう。 買った方はカバーを外して、その下を見るのを忘れないように。(黒)
●商品データ 「アキラ・アーカイヴ」/講談社/定価2800円(税別)
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