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「東池袋アニメ積読録」 小川びい
2003年10月
神無月は、読書の秋らしく充実の本に出会う日々
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双葉社の“大全”シリーズといえば、アニメや特撮を中心とした、主に過去の名作の情報をコンパクトに一冊にまとめた本として、今やお馴染みでしょう。編者によって時に堅実に、時に熱く、と作品へのアプローチはそれぞれの本で異なりますが、「定評ある名作」にいかにアプローチするかが、編者&執筆者の腕の見せどころであり、読者にとっては読みどころと言えるのではないでしょうか。
中でも、そうした定評に大胆なアプローチをして記憶に残る本と言えば、(アニメの本ではありませんが)「帰ってきたウルトラマン大全」が真っ先に挙げられるでしょう。「帰ってきたウルトラマン」に対しては、朝日ソノラマの通称・ファンコレの一冊「素晴らしきウルトラマンの世界II」(朝日ソノラマ)が、長く定評として流通してきました。その定評に反旗を翻したのが、「帰ってきた帰ってきたウルトラマン」(辰巳出版)だったのです。執筆者陣と同世代の筆者としては、この本は涙なくしては読めないのですが、アンチ・ファンコレの意識があまりに強すぎるために、いささか冷静さを欠く憾みがありました。そこで、もう一度、原点に立ち返って、一話ずつ作品と真っ直ぐに向かい合い、シナリオや制作者に丹念に当たり、時代背景をも視野に入れる――と真っ当に真っ当を重ねたアプローチで、対立する2つの評価をアウフヘーベンしたのが「大全」だったのです。同様に、シナリオに丹念に当たる事で定評に新たな光を当てようとした、「怪奇大作戦大全」も長く残る本だと思います。
今回の「ザンボット3 ダイターン3大全」も、定評に正面からアプローチしようとしている点で、大いに評価したい本です。名作・傑作にアプローチする場合、下手をすれば、定評を拾うだけで一冊になってしまいかねません。その点、シナリオに丹念に当たり、実際の放映版との異同を細かく拾う試みは、積極的で面白い。もっとも異同チェックはメモ欄程度の扱いで、全面展開していないのがちょっと残念ですが、これは脚本未発見のエピソードがあるためかもしれません。
スタッフインタビューも、富野監督をはじめ、山浦栄二、鈴木良武、安彦良和、塩山紀生と基本ラインを確実に押さえています。ただインタビュイーの記憶違いなどもそのまま掲載しているためか、これまでの書籍や各記事間での異同も散見されます。オーラルヒストリーの難しさを改めて感じさせるところです(富野監督が『ザンボット3』について「生まれて初めてロボットものの総監督をやる」と語っているのは、さすがにその場でフォローが必要ではないでしょうか)。解説がこれまでの関連書を丹念に読み込んで構成されているだけに(坂井由人の仕事が光ります)、もう少し交通整理できなかったのか、と読んでいて歯がゆい思いがしました。
なんだか苦言の方が多くなってしまいましたが、それもいい本ゆえ。久しぶりに「アニメムックを読んだ」という気にさせてくれた一冊です。
さて、同書が「以降のアニメ評論本の方向性をも一変させることとなった、アニメ評論史の金字塔」と大いにリスペクトしているのが「20年目のザンボット3」(太田出版)。その著者である氷川竜介も参加した「東京ゴッドファーザーズ エンジェルブック」(宝島社)は、まず手に持った感じが大変よい本でした。四六変型判と言うのか、A5変型判と言うのか、正方形に近い形で、大変こぢんまりとまとまっています。絵本やクリスマスブックのような感じと言うと、大げさかもしれませんが、厚すぎず、大きすぎず、実にいい感じです。
それでいて、中身は充実。ロケハン写真がびっしりと詰め込まれたページあり、声優と制作スタッフのインタビューあり、論評ありで、読み応えもかなりのものです。インタビュー下の細かな情報もうれしい。まさに手にとって嬉しいアニメムックと言えるのではないでしょうか。絵コンテやレイアウトや美術ボードがもっと見られれば……と少しだけ欲に駆られますが、読み手にそんな気持ちを抱かせるのも狙いのように思います。
「大全」のように定評にいかにアプローチするか、ではなく、これから定評を作っていく本として、お手本のようなムックでした。
そうそう、宝島社と言えば、「別冊宝島」の一冊として出た、「キャプテンPERFECT BOOK」にご注目。表紙だけだと、一見、マンガの「キャプテン」の本かと思いますが、中身はびっくり、アニメ版『キャプテン』の本なのです。アニメファンもお見逃しなきよう。一方、「キミたちの知らないエヴァンゲリオン」(角川書店)は、値段、表紙周り、タイトルと別冊宝島の形式を意識した本。まるで別冊宝島のパロディのよう。あちらが「僕たちの好きな」なのに対し、こちらは「キミたち」と、エヴァ本の本家本元にまで影響を与えるとは、別冊宝島ムーブメント恐るべし。あと、これは小黒編集長がうるさいので触れますが、「テレビアニメ完全ガイド DRAGON BALL Z 孫悟空伝説」には鳥山明と中鶴勝祥対談が収録。“なかなかマニアックな企画”……なんだそうな。
最後に、これは11月の刊行ですが、竹書房のアニメ雑誌「X―VISION」の2号が出ました。詳しくは次回に譲りますが、1号の時に触れ損ねたので、とりあえずご報告。
●10月の既刊
(▼書名・誌名[著者] 発行・発売元/判型/価格[税別]/発売時期)
※発売日・価格等はあくまで目安。店頭にて要確認の事。すでに発売中のものには発売時期はつけていません。順序は大体の発売順です。
▼テレビアニメ完全ガイド DRAGON BALL Z 孫悟空伝説
集英社/A5/1524
▼別冊JUNON 声優アーティスト スペシャルブック VOIX
主婦と生活社/A4変/1200
▼大人は判ってくれない[野火ノビタ]
日本評論社/四六/1700 ※庵野秀明との対談あり
▼PEACE MAKER鐵 STARTER BOOK
マッグガーデン/A5/781
▼ヒーロー&ヒロインの描き方 基本動作篇[竜の子プロダクション]
グラフィック社/B5/1400
▼別冊宝島892 キャプテンPERFECT BOOK
宝島社/B5/1048
▼歌って弾けろ! アニソンGO!GO! ベストヒットアニソン110曲
宝島社/B5/933
▼東京ゴッドファーザーズ エンジェルブック
宝島社/四六変/1100
▼別冊宝島902 僕たちの好きなガンダム 『機動戦士Zガンダム』全モビルスーツ&メカ
宝島社/B5/952
▼ザンボット3 ダイターン3大全[ブレインナビ]
双葉社/A5/2200
▼公式ガイドブック3 機動戦士ガンダムSEED 明日への翼
角川書店/AB/1200
▼キミたちの知らないエヴァンゲリオン(ニュータイプ12月号増刊)
角川書店/B5/933
●11月以降の新刊
▼メガミマガジン スペシャルセレクション らいむいろ戦奇譚 ビジュアルコレクション
学習研究社/A4判/2400
▼メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋[吉川惣司・矢島道子]
朝日選書/四六/1400
▼「冬の日」オフィシャルガイドブック[遠山純生編]
エスクァイヤマガジンジャパン/B5変/1600/11月22日
▼メガミマガジンスペシャルセレクション 藍より青し ビジュアルコレクション
学習研究社/A4判/2400/11月25日
▼「アニメ評論家」宣言[藤津亮太]
扶桑社/A5/1600/11月29日
▼機動戦士ガンダムSEED写真集アスラン DECISION
角川書店/A4/460/11月下旬
▼機動戦士ガンダムSEED写真集キラ DESTINY
角川書店/A4/460/11月下旬
▼キディ・グレイド コンクルージョン
角川書店/A4/2000/11月下旬
▼ロマンアルバム 機動戦士ガンダムSEED【フリーダム編】
徳間書店/A4変型/1600/12月22日
▼傑作アニメ批評集(仮題)[五味洋子]
ふゅーじょんぷろだくと/未定/未定/冬
▼新世紀エヴァンゲリオン完全補完計画(仮題)
角川書店/未定/2000/来春
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