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『ANIMATRIX』を語ろう

第5回 小池健。なのである。
    今石洋之(アニメーター)

 「WORLD RECORD」である。
 小池健。なのである。
 アニメーターとはプロの絵描きであるからして、絵がうまいのはあたりまえである。最近では技術も高く、リアルに描ける人も大勢いる。そんな基本をおさえつつも、小池健のアニメはその上でただ、
ひたすらにカッコイイのである。それも大変にわ
かりやすく。

 ──オッサンがタバコをふかす。ワッ…!!
 ──主人公が車から降りる、コートがブゥワッ…!!
 ──ホテルのボーイにキーを投げるだけでスローで
シュヴァアア! グヴァアァ…!!

 ハリウッドの誇張されたマンガ的描写。コミック感。そういった単純かつ純粋なところでの格好良さを、あれだけの高いレベルで定着させ、そして誇張しすぎてマンガに落ちる(自分はいつもここに行ってしまうのだが……)ことのない程良い描きこみと、中割り枚数多めの重さのある動きのリアル感。2D作画特有の ゆがみも、キャラクターの力のみなぎりの迫力として使う豪快さ。ストーリーの面白さやテーマの高尚さ、も大事だが、ハッタリやケレン味を忘れずに作品の魅力のセンターに置くことはアニメの、いや映画の醍醐味なのだと思い起こさせ、そしてそれをこのレベルで今実践できるのは小池健をおいて他にないと確信させる。「WORLD RECORD」なのだ、と思う。私は。
 絵柄も動きもセンスも全て含めてもうただ一言、「カッコイイ」のだ。心の底から。ここまで言えるのは、今、この人一人である。

 『ANIMATRIX』全体の話となると、原作や設定について考えざるを得なくなるし、リローデッドやらレボリューションズやらへのあらぬ不満が噴出し始めるので置いておくとして、ただこのソフトの存在、これだけの質のアニメ短編が、この低価格(今じゃ1500円!)で全国で買えてしまう情況は素直に喜びたい。『ロボットカーニバル』や『迷宮物語』など、良質なオムニバスアニメは過去の日本にもあるが、どれもメジャーでは決してなく、必ず高価な商品であることを考えると、 もし今自分が中学生とかだったら本当にウハウハ言って喜んでいるに違いない。これもウォシャウスキー兄弟のおかげなのか。今や本当にオタクが世界を征服してしまった感が日々強まっているが、いつかまたこんな日々も終わる時が来るのかもしれない。
 今のうちに、存分に恩恵を受けておこうではないか。

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