|
|
|
■
「東池袋アニメ積読録」 小川びい
2004年2月 如月は、なんだか80年代について考える日々
|
書店で思わず、アッと声を挙げました。「聖闘士星矢 荒木伸吾&姫野美智ILLUSTRATIONS 光」(集英社)を見て、です。事前の情報を全く知らなかったので、大変驚きました。荒木&姫野コンビと言えば、アニメブーム以前から美麗な作画で知られる人物です。ある意味、アニメブームを用意した(そしてアニメブーム以降は引っ張った)方と言えるでしょう。ところが、驚くなかれ、(帯にも謳われているように)今回が初めてのイラスト集なのです。劇場新作『星矢』に合わせて、急遽出版が決まったらしく、熱烈なファンからすれば、もっといいビジュアルもあるのでは、という感想もあるでしょうが、まずは、初の画集を素直に喜びたいと思います。お2方のインタビューやフィルモグラフィーも掲載と、『星矢』以外の情報も、ちゃんとフォローされているのもありがたい。『ベルサイユのばら』やせめてTV版『星矢』の頃に出ていればという思いもよぎりますが、それは言いますまい。いい時代になったものです。
書店で驚いたと言えば、「超ロボット生命体トランスフォーマー マイクロン伝説 YEAR BOOK 2003」(ジャイブ)にも驚かされました。紛れもなくアニメの本だったからです。『トランスフォーマー』の本と言えば、玩具系の本という印象があります。実際、本書にも玩具のページはあるのですが、それ以上に充実しているのが、『マイクロン伝説』の記事。各話解説では関係スタッフのコメントを各話ごとに掲載、変形バンクシーンの作画マンに作画の解説を求めるなど、スタッフの証言がとにかく充実。特に監督のうえだひでひとさんは、全面協力と言ってもいい活躍ぶりで、いたるところにコメントや文章を寄せています。ジャイブとは耳慣れない出版社ですが、聞くところによると玩具メーカー・タカラの関連会社なんだとか。本家本元ならばこその、充実でしょうか。ともかく、ここまでアニメ版『トランスフォーマー』寄りの本は珍しく、興味深いです(……と思ったら、3月に別冊宝島からも、トランスフォーマーの特集本がでました。ぎゃふん)。
さて、その別冊宝島はいよいよ1000号を迎えようとしています。2月の「別冊宝島985 このアニメがすごい! 絶対観たい“超名作”編」(宝島社)は久々に、別冊宝島の地力を見せた一冊と言えるでしょう。これまでに比べて目測で3倍以上の密度を誇る内容量。色々な作品に目配せも利いていて、かなりお得感があります(これで1000円を切るのはすごい)。新作『鉄人28号』の詳細な情報は、どのアニメ雑誌よりも早かったのではないでしょうか。文章原稿もなかなか面白い。今、日本で一番忙しい(と勝手に決めつけますが)アニメライター3人のうち、氷川竜介、藤津亮太の2人も参加しています。
一方、忙しい(と勝手に決めつけた)残りの1人(?)である、坂井由人・直人兄弟が参加しているのが、「新映画宝庫8 男泣きアニメ劇場 劇場公開アニメ号泣編」(大洋図書)です。“泣ける”“劇場”というキーワードに沿って、多くのアニメを紹介する本ですが、特に坂井兄弟の原稿のバランスのよさには感心させられました。もっとも、この本の白眉は、竹熊健太郎による、木村圭市郎ロングインタビューかもしれません。“劇場”とも“泣ける”とも関係ありませんが、それを置いてあまりある内容。「キル・ビル」を巡る会話は面白すぎます。今年は単著の年になる、と予言しましたが、こうしたバラエティ型のムックを見ていると、大作目白押しなだけに、このタイプのムックも数多く出てくるような気がします。
アニメ関連本とは言えないのですが、毛色の変わったところで、注意しておきたいのが、大塚英志「『おたく』の精神史 一九八〇論」(講談社現代新書)。刺激的かつ強力な内容で、これから1980年代について語るときには参照すべき一冊と言えます。それはともかく、アニメ関連で見ておきたいのが、7章の「『徳間書店第二編集局』とは何であったか」です。大塚自身は、アニメージュ編集部に関わったわけではありませんが、勢いのあった当時のアニメージュ編集部周辺がうかがえる、貴重な証言集としても読む事ができます。
ついでながら、同じ大塚の「サブカルチャー文学論」(朝日新聞社)を読んでいたら、気になる記述にぶつかりました。1980年代のサブカルチャー表現が、架空年代記を作る背景には作り手の政治転向がある、という立証として「富野由悠季が足立正生の大学での後輩に当た」り、それが「『ガンダム』及びその作り手の政治的出自を正確に物語っている」というのです。『富野由悠季全仕事』(キネマ旬報社)掲載のインタビューによれば、富野は“大学の御用自治会”にいたそうなので、足立とは正反対の位置になります。大塚の立論そのものは面白いだけに、詰めの甘さが気になりました。
最後に「藤子・F・不二雄☆ワンダーランド ぼくドラえもん」(小学館)について。この本は爆発的に売れた事もあり、多言は必要としないでしょう。アニメ関連で注目は、1号にパイロットフィルムを収録したDVDがついているところ(実際にはTV放映もされているようですが)。さらに、2号には、のび太の居住する町の全景図がついているのですが、これがなんと芝山努の描き下ろし! 公式サイトには、このイラストをチェックする芝山監督のスナップも公開されているので、合わせて要チェックです。
ううむ、今回取り上げた本は、(トランスフォーマー本を除けば)どれも80年代が絡む本ばかりですね。最新アニメの話題としては、大量の押井守関連本が出版されているのですが、こちらは、もう買うだけで精一杯。なにせ劇場限定のムックもあるというのですから、とても追い切れません。というわけで、これについては来月まとめて捌かせていただきます(ちなみに、「アニメージュ」4月号の書評欄は、すべて押井守関連本で埋められています。やるなあ!)。
(▼書名・誌名[著者] 発行・発売元/判型/価格[税別]/発売時期)
※発売日・価格等はあくまで目安。店頭にて要確認の事。すでに発売中のものには発売時期はつけていません。順序は大体の発売順です。
●2月の既刊
▼押井守の映像日記 TVをつけたらやっていた
徳間書店/B6変/1600
▼新装版 天使のたまご 少女季[天野喜孝絵、押井守・あらきりつこ文]
徳間書店/A4変/2000
▼ロマンアルバム イノセンス 押井守の世界 PERSONA増補改訂版
徳間書店/A4変/2095
▼真月譚月姫 聖典
角川書店/AB/1700
▼新映画宝庫8 男泣きアニメ劇場 劇場公開アニメ号泣編
大洋図書/A5/1333
▼聖戦士ダンバイン大全[岩佐陽一編]
双葉社/A5/2000
▼藤子・F・不二雄☆ワンダーランド ぼくドラえもん
小学館/A4変/500
※月2回刊のオフィシャルマガジン。創刊号にはアニメ第1話と映画全25作予告編収録DVD付
▼別冊宝島982 松本零士 大宇宙ファンタジー
宝島社/B5/1333
▼別冊宝島985 このアニメがすごい! 絶対観たい“超名作”編
宝島社/B5/952
▼THE ART OF 天使のたまご 増補改訂版
徳間書店/A4/2381
▼超ロボット生命体トランスフォーマー マイクロン伝説 YEAR BOOK 2003
ジャイブ/A4/2800
▼聖闘士星矢 荒木伸吾&姫野美智ILLUSTRATIONS 光
集英社/A4/4762
▼オタクトリビア[原えりすん]
スタジオDNA/新書/950
▼ピンクパイナップルアニメカタログ2004
ソフトガレージ/B5/4800 ●3月の新刊
▼京極夏彦『巷説百物語』の世界
洋泉社/B5/1000
▼押井守論
日本テレビ出版/四六/2400
▼これが僕の回答である。 1995―2004[押井守]
インフォバーン/四六/1700
▼イノセンス創作ノート 人形・建築・身体の旅+対談[押井守]
徳間書店スタジオジブリ事業本部/四六/1800
▼イノセンス&攻殻機動隊コンプリートブック
宝島社/B5/933/3月7日
▼ぽぽたん どきどきROMぶっく
エム・ディー・エヌ/B5/3600
▼edge a collection of paintings
T・Oブックス/B4/4300 ※多数のアニメーターが参加した画集
▼HOW to DROPS
ローソン/A4/1500 ※声優ユニットDROPSのムック
▼エース特濃 押井守特集号
角川書店/B5/680
▼別冊宝島996 トランスフォーマー G1キャラクター大全集
宝島社/B5/1300
▼日本アニメーションの力 85年の歴史を貫く2つの軸[津堅信之]
NTT出版/A5/2300/3月20日
▼ユリイカ4月号(特集・押井守 イノセンスのゆくえ)
青土社/A5変/1238/3月27日
▼すべての映画はアニメになる 押井守発言集
徳間書店/未定/2000/3月27日
▼TVアニメーションPEACEMAKER鐵 PERFECT GUIDEBOOK VOL.1
マッグガーデン/781/3月28日
▼永遠のガンダムシリーズVol.2 語ろうシャア!
カンゼン/四六判/1300/3月下旬
▼ロマンアルバム イノセンス
徳間書店/未定/1714/3月下旬
▼注文の多い傭兵たち[押井守]
徳間書店/未定/1600/3月下旬 ※復刻に新たな対談を併載
●4月以降
▼ふたつのスピカ アニメ設定資料集
メディアファクトリー/A4/2100/4月2日
▼エリア88 コンプリートブック
メディアファクトリー/A4/1800/4月
▼絵コンテ集 イノセンス
徳間書店/B5/3300/4月 ※フィギュア付き
▼アップルシード コンプリートボックス
宝島社/未定/2590/4月9日
▼GUNDAM HISTORICA 01 一年戦争勃発
講談社/未定/570/4月9日 ※『機動戦士ガンダム』のパートワーク
▼GUNDAM HISTORICA 02 激闘!ルウム戦役
講談社/未定/543/4月9日
▼GUNDAM HISTORICA 03
講談社/未定/543/4月23日
▼TVアニメーションPEACEMAKER鐵 PERFECT GUIDEBOOK VOL.2
マッグガーデン/781/4月28日
▼TVアニメ鋼の錬金術師オフィシャルファンブック VOL.2
スクウェア・エニックス/A4/476/4月30日
▼DEAD LEAVES 絵コンテ集
T・Oブックス/A4/6800/4月
▼映像機械論[押井守]
大日本絵画/未定/2900/4月
▼GUNDAM HISTORICA 04
講談社/未定/543/5月10日
▼GUNDAM HISTORICA 05
講談社/未定/543/5月25日
▼DEAD LEAVES 原画集
T・Oブックス/A4/3800/5月
▼新世紀エヴァンゲリオン完全補完計画(仮題)
角川書店/未定/2000/春
▼GUNDAM HISTORICA 06
講談社/未定/543/6月10日
▼GUNDAM HISTORICA 07
講談社/未定/543/6月25日
▼TVアニメ鋼の錬金術師オフィシャルファンブック VOL.3
スクウェア・エニックス/A4/476/6月30日
▼GUNDAM HISTORICA 08
講談社/未定/543/7月9日
▼GUNDAM HISTORICA 09
講談社/未定/543/7月23日
▼GUNDAM HISTORICA 10
講談社/未定/543/8月10日
▼TVアニメ鋼の錬金術師オフィシャルファンブック VOL.4
スクウェア・エニックス/A4/476/8月末
▼TVアニメ鋼の錬金術師オフィシャルファンブック VOL.5
スクウェア・エニックス/A4/476/10月末
▼傑作アニメ批評集(仮題)[五味洋子]
ふゅーじょんぷろだくと/未定/未定/未定
|
|
|
Copyright(C) 2000 STUDIO
YOU. All rights reserved.
|
|
|
|