コロムビアミュージックエンタテインメントのDVDシリーズ「手塚治虫アニメワールド」の凄さについては、WEBアニメスタイル上で、逐次お伝えしてきた。データ原口氏ほかスタッフ陣の、“アニメ考古学”とも呼ぶべき執念の発掘作業については、どんなに賞賛の言葉を贈っても足りない。まさにアニメ史を塗り替える超弩級の発見の数々は、国民栄誉賞ものと言っても過言ではない。ただひとつ残念だったのは、発表の舞台がBOXという高額商品であったために、その成果を実際に味わうことのできる人が限られてしまっていた事であった。
その成果の一端に、安価で触れる事のできる機会が、ようやく実現した。このたび発売された「虫プロ 手塚治虫アニメ主題歌集〜オープニング・エンディングコレクション〜」がそれである。虫プロ作品の中から、手塚治虫が原作または制作に関わったものをセレクトし、そのオープニング・エンディングを「余すところなく」収録したDVDだ。この「余すところなく」というのがポイントで、文字通り、現在発見されている全てのバージョンを収録している。さらに、その再生には、ふた通りの方法が選べるようになっているというのが、マニアック。
いかにマニアックな作りか、まずは解説書から引用してみよう。「これまで各社から発売された“主題歌集DVD”では……スタンダードな映像のみを本編ディスクに収録し、それ以外のレアな映像……については“特典”として別チャプターにまとめる、というやり方が主流だった。だがこの仕様では……オープニング・エンディングを時代順にまとめて観賞(原文ママ)したいと思うファンには、いささか不評を買う結果にもなっていた。そこで、本ディスクでは、標準的なユーザーとディープなユーザー、双方のニーズを満足させるべく、収録映像の再生方法を選択できるようにしてみた」。基本的・代表的音源&映像を選ぶもよし、発見されているすべてのバージョン違いを年代順に鑑賞するもよし。懐かしもの好きのお父さんから、バージョン違いに血眼のアニソンコレクターまで、誰もが満足できる仕掛けである。
実際の収録曲に関しては以下のリストを確認してほしい。頭の数字は、ベーシックモードで再生したときのチャプターである。逆に言えば、マニアックモードで再生した場合、リストの頭から順に再生される事になる。どちらのモードでも、この発掘作業でずいぶん知られるようになった、話題の『アトム』の初期版(あの有名な歌詞はまだついておらず、インストゥルメンタルのみ)から始まる。
マニアックモードのラインナップ65種の子細に関しては、さすがのアニメスタイルも解説不能なところがある。封入された12頁に渡る詳細な解説書を片手に、実際に観ていただくほかはない。圧巻は、『W3』のOP5連発、『悟空の大冒険』の明治製菓提供クレジット入り&ED(後期版)=悟空音頭バージョン、『どろろ』(パイロット、『どろろと百鬼丸』含め)のOP8連発だろうか。
これだけ濃厚な中身が詰まって、定価4700円(税抜)! 鑑賞用として楽しむのはもちろんのこと、ぜひぜひアニメ考古学の深淵を覗きみて、アニメ研究の面白さの一端に触れてほしい。(04.06.10)
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