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「東池袋アニメ積読録」 小川びい

2004年11月
霜月はアニメの歴史を振り返る……っていつもか

 まずは何を置いても紹介しなければならないのが、「あの旗を撃て! 『アニメージュ』血風録」(オークラ出版)。「アニメージュ」の初代編集長・尾形英夫による、アニメ雑誌創刊と成長の記録です。興奮しながら一気に読み終えました。内容は「テレビランド」の時代から話は始まり、アニメブームを見ての創刊、イベント、映像制作へと至ります。「アニメージュ」の軌跡を送り手の側から照射する、貴重な記録と言えるでしょう。また、創刊当時(から現在まで)のスタッフや、富野由悠季、安彦良和、宮崎駿らのクリエイター、著者と親しくしていたアニメファンなど、数多くの人からのコメントも掲載されており、立体的な構成になっているのも素晴らしい。実質は副編集長の鈴木敏夫が仕切り、尾形自身は編集実務にはほとんどタッチしてなかったという驚きの事実(まあ、ある程度大きな出版社はどこでもそうですが)も、改めて活字で読むと何とも言えない気分に。『ナウシカ』『アリオン』についての成功の詳しい記述も面白い(その間の『Goshogun IN 時の異邦人』や『天使のたまご』に触れていないのは気になるところかも)。物事を動かしていく編集長には強烈な個性が必要なのだな、と改めて思い知らされます。
 アニメ誌創刊秘話を現場の人間が語った書籍としては、これまで井上伸一郎の「マモルマニア」(トイズプレス)がありましたが、アニメライターや編集者のマニアにとっては、それと並ぶバイブルの誕生です。タイムリーなことに、11月末発売の「comic新現実」2号(角川書店)にも尾形英夫インタビューが掲載されているので、併読を強くオススメします。インタビュアーの大塚英志がさほど興味がないせいか、ツッコミが弱いのはいささか残念。
 「アニメージュ」創刊は今から25年以上前の事ですが、今度はそれから5年後、20年ほど前の話。大学生の頃、関西の某国立大学アニメ研の会誌をよく買っていました。精力的なアニメ番組の講評が面白かったせいもありますが、目当てはもっぱらそこに載っているカット。ひときわうまいカットを描く方が1人いたのです。同じサークルが出していたマンガ中心の別冊会誌には、そのカットマンによるHなパロディマンガもあったりして、こちらも当然買いました(苦笑)。
 そのカットマンはその後すぐにアニメーターになりました(たしか、これまた会誌にインタビューが載っていたのです)。次第に様々な作品で大活躍するようになり、そして今月ついに初の画集を上梓しました。「MOEOHセレクション 木村貴宏画集 Risky Dolls」(メディアワークス)は、そんな個人的な事情もあって思い入れもひとしおです。
 『ゴーダンナー』や『ガオガイガー』『ダーティペアFLASH』などの代表作から、かなりHなお仕事まで網羅されており、画集と言うより仕事集といった趣。一部に、画稿が散逸したのか現物やカラーコピーを版下にしたらしきものや、ポジの状態のよくないものもあるのは残念ですが、鉛筆画の挿絵やボツ企画のキャラクター設定などまで収録されており、全体としてバラエティに富む、嬉しい作りになっています。表紙も必見なので、カバーを一度はとってみましょう。あのCMも彼だったんですね。
 一挙3冊刊行! と華々しく登場したのが、「甦る!東映アニメアンソロジー」(毎日コミュニケーションズ)。それぞれ、東映動画(現・東映アニメーション)のロボットもの、魔女っ子もの、松本零士ものの代表作を2作ずつカップリングで紹介しています。判型といい、価格といい、全体の作りといい、別冊宝島のアニメムックを意識しているのでしょうね。中身も、各話紹介、キャラクターやメカ一覧等と、実にスタンダードな構成(袋とじはちょっと謎ですが)。各作品ごとに、その作品を代表する声優にインタビューしているのは、ファンとしては嬉しい(『メグちゃん』のみ高見義雄プロデューサー)。目を引いたのは、付属のCD。コロムビアオリジナル音源のOP、EDはともかく、オリジナルの効果音がついているのはびっくり! まさかタバック音源がパソコンで手軽に聞ける時代がくるとは思いませんでした。
 別冊宝島形式を意識しているムックがさらにもう1冊出ています。「まいっちんぐマチコ先生伝説」(学習研究社)。表紙だけでは一見、マンガのムックのように見えますが、中身のウェイトはアニメの方が大きいのです。まさか『マチコ先生』のムックが出る日が来ようとは……嬉しいかどうかはちょっと微妙ですが(笑)、ありがたく購入させていただきました。興味深いのは、声優座談会とスタッフ座談会。声優座談会では、野沢雅子、千葉繁とともに、先の「甦る!東映アニメアンソロジー」には登場しなかった吉田理保子も参加。マネージャー業に転身されてからは、裏方に徹してか、こうした場にはあまり登場されないようなので、大変貴重な記事でしょう。スタッフ座談会は、神保まつえ、森島恒行、田口成光が登場。こちらも短い中でなかなか興味深い話を展開しています。神保まつえと言えば、学研の教育アニメのプロデューサーとして長年腕をふるってきた方。そちらの方の証言もいつかお聞きしたいものです。
 「前田建設ファンタジー営業部」(幻冬舎)は、話題を呼んだ、前田建設工業のユニークなWEB企画の書籍化。光子力研究所を実際に建設したら……という前提のもとで、見積もりから施工まで、ゼネコンの仕事をわかりやすくシミュレートしてみせます。しっかりダイナミックプロの許諾を得ていて、アニメの図版を使っている点からして、これもアニメ関連書籍のひとつ。記事自体はWEBサイトでまだ読む事ができますが、書籍も手にとって嬉しい、なかなかの作りです。
 最後に、梶山寿子著「ジブリマジック 鈴木敏夫の「創網力」」(講談社)をご紹介しましょう。『ハウル』公開に合わせて、宮崎駿やジブリ作品の関連書籍が大量に出ていますが、一頭地抜けていると思わせたのが、これでした。スタジオジブリとその周辺をわりに長期間、丹念に取材して、ジブリの映画作りの秘密に迫ります。と言っても、制作現場レベルでのメイキングではなく、重点はもっぱら宣伝や流通など、ビジネスの枠組みの方。要するにビジネス書なんですね。著者がアニメに詳しい方ではないようなので、他のアニメビジネスとの比較がなく、「ひいきの引き倒し」と思える部分もありますが、総じてかなりバランスのいい仕上がり。「あの旗を撃て! 『アニメージュ』血風録」と事実が食い違う点もあるので、これまた併読をオススメします。
(04.12.20)

※リストは、▼書名・誌名[著者] 発行・発売元/判型/価格[税別]/発売時期の順で掲載しています。発売日・価格等はあくまで目安。店頭にて要確認の事。すでに発売中のものには発売時期はつけていません。順序は大体の発売順です。

●11月の既刊

▼ふたりはプリキュア ビジュアルファンブック Vol.1
 講談社/A4変/2100

▼あの旗を撃て! 『アニメージュ』血風録[尾形英夫]
 オークラ出版/四六/1714

▼ジブリマジック 鈴木敏夫の「創網力」[梶山寿子]
 講談社/四六/1600

▼京の夢、明日の思い出[九里一平]
 講談社/A12取/1800 ※九里一平による絵本

▼宮崎駿の仕事 1979〜2004[久美薫]
 鳥影社/四六/1600

▼宮崎駿 映像と思想の錬金術師[井上静]
 社会評論社/四六/1500

▼Vocal増刊 アニソン大百科!
 ヤマハミュージックメディア/A4変/1333

▼School Rumble OFFICIAL FILE
 講談社/A5/1700

▼MOEOHセレクション 木村貴宏画集 Risky Dolls
 メディアワークス/A4/3000

▼ジ・アート・オブ ハウルの動く城
 徳間書店/A4/2762

▼スタジオジブリ絵コンテ全集 ハウルの動く城
 徳間書店/A5/2850

▼TVアニメ 最遊記RELOAD GUNLOCK オフィシャルガイド
 一賽舎/B5/1500

▼前田建設ファンタジー営業部[前田建設工業株式会社]
 幻冬舎/四六/1238円

▼甦る!東映アニメアンソロジー01 マジンガーZ&ゲッターロボ
 毎日コミュニケーションズ/B5/1280

▼甦る!東映アニメアンソロジー02 キャプテンハーロック&銀河鉄道999
 毎日コミュニケーションズ/B5/1280

▼甦る!東映アニメアンソロジー03 魔女っ子メグちゃん&花の子ルンルン
 毎日コミュニケーションズ/B5/1280

▼まいっちんぐマチコ先生伝説
 学習研究社/B5/933

▼マシュマロ通信大百科
 ジャイブ/B6/780


●12月以降の新刊

▼[魔法使いハウル]不思議な扉の開き方[藤城真澄]
 青春出版社/四六/1100

▼一人で作る人のためのアニメーション講座 [昼間行雄]
 洋泉社/A5/2700

▼踊るコンテンツ・ビジネスの未来[畠山けんじ/著、久保雅一/企画・監修]
 小学館/四六/1714

▼オフサイド・ブックス37 ファンタジーのつくり方[中村一朗]
 彩流社/A5/1600

▼鉄人28号 公式ガイドブック
 小学館/A5/1500

▼THIS IS ANIMATION ハウルの動く城
 小学館/AB/905

▼ハウルの動く城徹底ガイド ハウルとソフィーふたりの約束
 角川書店/A5/648

▼この醜くも美しい世界 公式ビジュアルブック
 メディアワークス/AB/1800

▼ふたりはプリキュア大百科3
 ジャイブ/B6/700

▼ロマンアルバム ハウルの動く城
 徳間書店/A4/1238

▼Mr.インクレディブル大百科
 ジャイブ/A5/700

▼TVアニメ 鋼の錬金術師 コンプリートブック マテリアルサイド
 スクウェア・エニックス/A4/1714

▼戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー ファーストシリーズ・コンプリート
 ジャイブ/A4横/2800

▼超解!ギャラクシーエンジェル
 角川書店発売/B6/1100

▼別冊宝島 僕たちの好きなガンダムDX
 宝島社/B5/1429

▼the art of Mr.インクレディブル
 徳間書店/A4変/3800

▼Comic,Animation&Stuffs+DVDブック ふたごのプラネテス
 講談社/不明/2476/12月21日

▼TVアニメ鋼の錬金術師 シナリオブック Vol.3
 スクウェア・エニックス/新書/933/12月22日

▼TVアニメ 鋼の錬金術師 ARTBOOK Vol.2
 スクウェア・エニックス/B5/1714/12月22日

▼Re:キューティーハニー パーフェクトブック
 双葉社/A4/1600/12月24日

▼ふしぎの海のナディア原画集 RETURN OF NADIA
 GAINAX/A4/2800/12月29日

▼声優インタビュー2004
 雑草社/A5/1000/12月下旬


●2005年以降

▼ジンキ・エクステンド TVアニメーション スターターブック
 マッグガーデン/B5/819/1月初旬

▼小麦ちゃん大全
 ソフトバンクパブリッシング/AB/2800/1月下旬

▼TVアニメ 鋼の錬金術師 コンプリートブック ストーリーサイド

 スクウェア・エニックス/A4/1714/1月

▼機動戦士ガンダムMS大図鑑 宇宙世紀ボックス
 メディアワークス/新書/10000/2月28日 ※14冊の復刻版に新刊2冊を追加

▼機動戦士ガンダムSEED DESTINY OFFICIAL FILE(仮)
 講談社/A4変/533/2月 ※以後月2回刊行、全10巻

▼機動戦士Zガンダム ヒストリカ(仮題)
 講談社/A4変/552/4月 ※以後月2回刊行、全10巻

▼月は東に日は西に〜Operation Sanctuary〜 コンプリートガイド
 メディアワークス/未定/1800/未定

▼ヤミと帽子と本の旅人 ビジュアルコレクション
 学習研究社/A4/2400/未定

▼新世紀エヴァンゲリオン完全補完計画(仮)
 角川書店/未定/2000/未定

▼マクロスゼロ ミッシングメモリーズ
 メディアックス/未定/1143/未定

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