―― まず、選んだ基準は?
今石 まともな作品は他の方が挙げられると思ったので、僕個人が、こういう作品を観てマニアになったという作品を集めてみました。
小黒 リストを見ると……若いよね。
今石 そりゃそうですよ(苦笑)。
●今石洋之(アニメーター)が選んだ
「今石洋之がマニアになるきっかけになった20本」
『ずっこけナイト ドンデラマンチャ』6話(1980)
『Aeon Flux』(1991)
『鉄人28号[新]』の山下将仁回(1980)
『ど根性ガエル』(1972)
『DOWN LOAD 南無阿弥陀仏は愛の詩』(1992)
『さすがの猿飛』摩砂雪回(1982)
『Gu―Guガンモ[TV]』志田正博回、井上俊之回(1984)
『真魔神伝 バトルロイヤルハイスクール』(1987)※神は「神+人」
『破邪大星 彈劾凰』(1987)
『ロボットカーニバル』(1987)
『Manie―Manie 迷宮物語』(1987)
『トップをねらえ! Gunbuster』(1988)
『銀河旋風ブライガー』OP(1981)
『機甲戦記ドラグナー』OP(1987)
『県立地球防衛軍』OP(1986)
『剛Q超児 イッキマン』OP(1986)
『MOBILE SUIT GUNDAM 0080 ポケットの中の戦争』1話、5話の磯光雄パート(1989)
『星銃士ビスマルク』の沖浦啓之回(1984)
『美少女アニメ くりぃむレモン PoP CHASER』(1985)
『マシンロボ クロノスの大逆襲』(1986)
「DAICONIV オープニングアニメ」(1983)
番外
『北斗の拳[TV]』(1984)
『大空魔竜ガイキング』(1976)
『AKIRA』井上パート(1988)
『超時空要塞マクロス』「パインサラダ」(1982)
今石 まず、『ドンデラマンチャ』ですね。これはアニメ様(小黒のニックネーム)のセレクションとかぶってますけど。金田さんものとしてはやはり、一番大事な作品ではないか、と。マニアックでもありますし。
小黒 原画がそのまま30分のアニメになってるみたいなね。そういう印象があるよね。
今石 そうですね。金田さんの原画のイメージが一本丸々フィルムになってる。悪ノリと言うか、アニメというのはこのくらいいい加減でもいいんじゃないかという意味でも凄いです。
小黒 俺の中では究極の「アニメ」に近い。
井上 今、現場もかなり窮屈な時代になっちゃってるから、これを観ると開放的になるよね。
今石 いい加減にやればいいってもんでもないんだけど、こういう遊び心も忘れちゃいかんよ、と。
小黒 そう言えば、『アベノ』の3話でUFOを出してたよね。
今石 あれは、担当した原画マンの吉成鋼さんがアドリブで描いたんですよ。頼んでないのに描いていくれた(笑)。さすが、“金田心”を分かってる。
井上 そういう事が許される機会は、他にもあると思うよ。そういう作品では、奔放にやってほしいよね。
―― 次の『Aeon Flux』って何ですか?
井上 これはマニアックだよね。解説がいるんじゃないの。
今石 MTVの番組の中で流れていた、ピーター・チョンの短編アニメです。それが1本にまとまってビデオやDVDになってるんですよ。HMVなんかに行けば日本でも買えますよ。
小黒 あ、ソフトになってるんだ。
井上 俺が見たのは、エレベーターの前で男が手錠をかけられて、やりとりしているっていうやつなんだけど、濃いよね。日本のアニメのおたくなんだよね。ピーター・チョンってのは。
今石 どういう育ち方をしたんだろうかと思いましたけどね。
井上 韓国系のアメリカ人なんでしょ? ナイキのCMみたいな、凄くメジャーな仕事もやってるね。
今石 ああいうのはまだまともなんですけど、『Aeon Flux』を観ると、ディズニーなんかを全く観てないようにみえる。
井上 筋金入りの作画おたくだよね。見た感じタイミングの取り方は、金田さんと言うより、山下さんみたい。
今石 ええ、あの偏り方は山下さんですね。あと、見せ方が日本人にないセンスがあって、それが格好いいなあ、と思いますね。
井上 デザインのセンスも東洋的じゃないよね。ヨーロッパのコミックスの影響も非常に濃く受けていて、しかも自分のものにしている。
今石 自分の世界観があって、その中に山下将仁が混じってる。「山下将仁を混ぜてる外人なんてどんな人だ」っていう驚きがありました。ガンアクションの演出も、日本人だともうちょっとアニメアニメしちゃうんだけど、映画の影響も綺麗に入ってて、上手い。混ぜ具合が非常にいいんですよね。僕としては、90年代にいちばんショックを受けたアニメだった。
井上 俺もちょっと目を覚まさせられた。リアルアニメに傾倒していた頃に観たから。リアリズムを追究しようと思った矢先に、パンパンとほっぺを叩かれて、「自国にそんないいものがあるのに」って言われたような気がしたね。
今石 いわゆるリアルな、映画っぽい演出をやろうとしたら、やっぱりリアルな絵でやらないとできないだろうと思ってたんですよ。でも、これを観たら金田伊功風の作画で、それをやってる。しかも格好いい。それが衝撃だったんですよ。
小黒 ああ、小池健さんって、日本版のピーターなんだ。
井上 そう、全くそうだよね。
小黒 アメリカに投げたボールが帰ってきて小池さんになった。
井上 逆輸入みたいなね。
小黒 そういう意味だと、『PARTY7』のオープニングで、ピーターが1カット参加しているのは歴史的に正しいんですね。
井上 でも、小池君の方がピーター・チョンっぽかったのはおかしかったな(笑)。
小黒 次の『鉄人28号[新]』は、どの回が?
今石 山下さんが参加している回ですね。ブラックオックスの回(36話)か、幽霊の回(44話)ですね。
井上 山下さんがそこまで好きで『うる星やつら』は入ってこないの?
今石 そこはあえて『鉄人』を選びたい。『鉄人』が確か初原画でしたよね。
小黒 そう、確か7話。9話の「地獄のサファリ・パニック!」もいいよ。それまで普通の作画なのに、鉄人が登場した途端に、山下絵になる。
今石 あれはインパクトありますよね。鉄人が前を見ないで、下を向いてグーっと飛んでる。下を向いてるっていうのが凄い。
小黒 あの頃山下さんはまだ19歳だよね、「原画が描けて嬉しい」って感じがね、ほとばしってるよね。
今石 他の人を見ていないってのが格好いいですよね。
小黒 いまだにブラックオックスの、戦車を投げるカットがどうやって原画描いてんのかよく分かんないもんね。
井上 山下さんのは、どれも俺には分からないよ(笑)。分からないし、俺の好きなものとは違うんだけど、敬服する。そういう意味では梅津さんも同じなんだけどね。
今石 梅津さんは様式美で、頭では分かる気がするんですよ。山下さんはもう、頭でも理屈でも、全く分からない。
井上 でも、気持ちはいいよね。
小黒 金田さんの下にいて、金田さんを超えたかもしれない唯一の人だよね。
今石 そうですね。一時期は超えてましたね。あの爆裂さ加減は。
井上 上妻(晋作)さんも同じような分からなさがあるよ。
今石 上妻さんが凄いのは、今でもそうだ、って事なんですよね(笑)。今でも変わらない。
井上 山下さんと金田さんって、一括りのように語られるけれど、実は全然違うというか、オリジナリティがある。
小黒 大体、金田さんは女性を綺麗に描くでしょ。山下さんはそうじゃない。「怪人赤マントあらわる!」の時のさ、ラムちゃんとか、凄いよね。
井上 肉を描きたいのかねえ。
今石 浮世絵寄りなんですよ。
井上 動きも絵も、山下オリジナルと言っていいものだよね。
―― 次は『ど根性ガエル』ですね。
井上 これは一応全体なの? 芝山&小林か、近藤喜文か、百瀬義行かと言うと……。
今石 全部です。いい回全部(笑)。
小黒 わがままな(笑)。
今石 正直、『ど根性』だと、近藤さんが巧いのか、小林さんが巧いのか、百瀬さんが巧いのかというのは、カット単位では分からないですよ。
井上 俺は、最近改めて観て、百瀬さんのよさを再認識した。あの作画のムードを作ったのは、百瀬さんじゃないかな。
小黒 やっぱりキーパーソンは芝山努、小林治コンビでしょ。
井上 勿論、そうではあるけれどね。芝山さんや小林さんも、百瀬さんに引っ張られてる気がするんだ。『ど根性』の後半の絵柄に影響を与えたのが、百瀬さんではないかと思うんだよ。どっちが影響を与えたという話ではなくて、キャッチボールしながらできあがったものだろうけど。でも改めて観ると、百瀬さんのは当時のアニメにしては原画の密度が濃い。芝山さんたちのはもっと――。
小黒 リミテッドっぽいパカパカした感じ?
井上 そう。
小黒 さすが、井上さんは着目点が違うなあ。確かに百瀬さんの『ど根性』は濃い印象があるけど。普通のファンには、やっぱり芝山努、小林治コンビの作品として観てもらいましょう(笑)。
今石 僕からすると、『ど根性』は、金田さんのルーツを遡ったところにある、という事も大きいですよね。
井上 ああ、金田さんの源流には小林さんがあるよね。
今石 あと、作品の雰囲気も好きなんですよ。江戸っ子で喧嘩っ早い人達がドタバタしている感じが。僕は子供の頃、ロボットが出ていないアニメは観ていなかったんですよ。でも、『ど根性ガエル』だけは、ロボットも爆発もないのに、ずっと観てたんですよ。毎週毎週、喧嘩してるじゃないですか。ああいう歯切れのいいところが好きだった。
小黒 こんな事をわざわざこの場で言わなくてもいいんだけど、『ど根性』って、TVマンガのひとつの完成形って印象はあるよね。
今石 DVDをちゃんと出してほしい。
小黒 今石君としては、『元祖天才バカボン』と『ど根性』のどちらか選べと言われたら、どっちをDVDにしてほしい?
今石 『ど根性』ですね。『元祖』も好きだけど……。『ど根性』の方がシャープな気がする。
井上 『ど根性』って、作画のスタイルが完成されていく過程もあるんだよ。そこがいい。絵画やイラストもそうだけど、スタイルができていく直前ぐらいまでが、ぎりぎり完成された頃までが活気があって面白いんだよね。
小黒 Aプロって『元祖』の途中でなくなっちゃうわけだけど、完成したあたりでなくなったからこそ、伝説的存在になったのかもしれない。
今石 で、『DOWN LOAD』です。僕もあえて『BIRTH』は外しました。90年代の『BIRTH』ですね。田中達之さん、柳沼和良さんを含めて凄い。
井上 うーむ。金田さんのアニメとしては観てほしくはないなあ。やっぱり、田中達之と柳沼和良のアニメって感じがするよ。金田さんの作画を知らない人が、これで金田さんの作画に入門すると、間違った印象を抱くんじゃないかなあ。
小黒 まあ、「金田系」という事で。
井上 そうだね。俺は金田さんの代表作を選んでいないので心配してるんだけど、そういうものは入っているのかな。
今石 『ドンデラマンチャ』と『ブライガー』のOPが入ってますから。
井上 ああ、そうか。
小黒 「金田系」という事で言ったら、『アイドル・プロジェクト』1話は入れないの?
今石 うーん。“最後のパース君”という意味では、渡部圭祐さん絡みで入れておこうとも考えたんですが。『鬼神童子ZENKI』のOPとか。
―― 今石さんは、男らしいものが好きだから、『アイドル・プロジェクト』は選ばれなかったんじゃないですか。
小黒 ああ、なるほど。確かに男らしくはない(笑)。今見ると、あれって「『うる星やつら』時代の夢」が詰まってるんだよね。
井上 そこまで広げちゃうと、まだまだあるんじゃない?
今石 そうなんですよ。
井上 『ドンデラ』は入ってるけど、例えば『(無敵鋼人)ダイターン3』なんかは入ってこないの?
小黒 『ドンデラマンチャ』6話の後に『ダイターン』とか、『(無敵超人)ザンボット3』か『(大空魔竜)ガイキング』も観てほしいという事なんでしょ。
今石 『ガイキング』は入れようかと思ったんだけど……。
井上 意外に「金田系」がないよね。もっと「そっち」一色になるかと思いきや(笑)。
小黒 次が『さすがの猿飛』の摩砂雪回。なるほど。
井上 パワーという意味では、これほど1本の作品の中で1人のアニメーターがパワーを見せつけたのは、他になかむらたかしの『Gライラン』ぐらいかな。あれに匹敵するね。
小黒 『らんぽう』もいいけどね。
井上 ただ、『らんぽう』は技で制御してるからね。『さすがの猿飛』はその点、何がなんでも動かし続けるんだ、みたいなところがあるね。
今石 さらに、ほとんど1人でやってるんですよ。しかも必ず月に1回ある。
小黒 下手すると、間1本置いてとかね。
今石 そう、あのクオリティをあのペースで出し続けてた。
井上 これから観る人には想像力を働かせてほしいよね。当時のTVアニメって、ふた月がかりという事はなくて、1本ひと月で作っているから。その中で、1人であれだけ大量にやるというのがどれだけ凄い事なのか。
今石 大体シリーズ50本あるうち、ああいう回が5本か6本あれば凄い、という感じなのに、10本以上もあって、その1話のうち、半分以上が全部アクションなんだから。
井上 一見、金田さんの影響受けた、変なアクション描く人に見られがちだけど、そうじゃないよね。ベーシックな巧さを随所に見せる。
今石 ご本人に話を聞くと、やっぱり宮崎さんが好きなんですよね。だから、エフェクトは金田調なんだけど、爆発はテレコム爆発っていう、妙な事もやっているんですよ。黒い煙に、オレンジの炎がチョロチョロって。
井上 煙は焦げ茶で、オレンジの炎で、光は白でっていう、こだわりがあった。あと、『さすがの猿飛』と言うと、木上(益治)さんは忘れちゃならない。物凄く粘っこいボリュームのある、パンチの利いた作画なんだよ。後の摩砂雪を彷彿とさせる、あるいはそれ以上の作画を一瞬見せてパっと去っちゃった。俺が敬愛する人です。あにまる屋の回で上手いところあれば、木上さん。
小黒 木上さんの作画を、摩砂雪さんの仕事だと勘違いしている人もいますよね。それから『猿飛』では、アニメアールとカナメプロの回もあって。こちらもファンの人気が高かった事も付け加えておきます。
井上 そうだね。月にアニメアールと摩砂雪の回が確実にあって、さらに木上さんがいる。スタジオジャイアンツの回では、摩砂雪以外にも、志田(正博)君のセンスもよかったし。
今石 志田さんは、やはり『Gu−Gu ガンモ』ですかね。
―― 『ガンモ』はTVですか、映画ですか。
今石 TVですね。
小黒 やっぱり、「リンダVSブリッコ!!ついにきた運動会」ですかね。
井上 えっ、そうなの? 志田君じゃないの?
今石 志田さんもいいんですけど、井上さんもいい。
小黒 この前気がついたんだけど、『ガンモ』の時は井上さんが美少女を描いて、梶島(正樹)さんがメカを描いてるんだよ。今だったら逆だよね。梶島さんが美少女描いて、井上さんがアクション描きそうだ。
井上 俺はメカには全然興味がなかったからね。それに、梶島のよさが発揮できるのは、当時はメカだったので。
小黒 コンテ切る人もちゃんとメカを入れてるからエライですよ。
井上 途中からそういう傾向が出てきたかな。俺達が描くのが分かって、やけに背動があるとか、やけに回り込むとか……。用意しておけば楽しんで描くだろう、という狙いはコンテの側にあったかもしれない。
今石 あのスタイルは、『ど根性ガエル』と言うか、Aプロの路線の新しい形だったと思いますよ。
小黒 あの頃にああいう作画を見せてくれるのは『Gu−Guガンモ』しかなかった。
今石 そうなんですよね。リミテッドで。
井上 『ガンモ』をやっている時、俺の視野に『ど根性』はあったんだけど、だからと言って、そのよさを解析して描くような事は当時はできなかった。生の原画を見た事もないし、思い出だけで描いてたから。
今石 パロディとか、オマージュとかというのではなく、別の時代で同じポジションにある人が近い事をやっていた、という気がしますね。『人狼』で井上さんを知った若い人も多いかもしれないけど。
小黒 僕らは、井上さんにもっとギャグアニメやってもらいたいよね。
今石 ここが井上さんの発祥の地だという意味も含めて挙げておきたいですね。
小黒 またさあ、井上さんのリンダがいいんだよ。
今石 リンダいいですねえ。
小黒 足がね。
今石 足ですよね。
井上 そうですか(苦笑)。……ギャグアニメやってみたいですよ、また。
今石 やってください。
井上 俺はほら、当時、ベーシックな事をやらないままに、ギャグをやったから、上手くできていないんだよね。やっぱりベーシックな事ができてから、やるべきだったんだろうと思う。
小黒 今観ると、もう少し原画枚数がほしい気がするかもしれないけど、当時としてはもう夢のようなアニメだった。特に「運動会」と7話だね。今石君は、映画版はいらないの。
今石 映画版も大事ですけどね。ちょっと別かなあ。
小黒 映画の方が井上さんとしては納得できる仕上がりだと思うんだけど。
井上 まあ枚数が使えたから。でも、枚使えないのが『ガンモ』のよさだったという気もするよね。2コマで動く『ガンモ』は『ガンモ』じゃないような。だから、摩砂雪さんの『ガンモ』は『ガンモ』じゃないかもしれない。俺が目指したのはやっぱリミテッドのよさだったから、そういう意味ではちょっと違う。
小黒 TVの『ガンモ』と言えば、あと45話ね。
今石 話数で言われると分かんない。
小黒 「ヤマトなでしこVSじゃじゃ馬娘」ですよ。
今石 ああ、あのローラースケートの話ですね。(あゆみとリンダが)急坂をすべり降りていて、スピードがつきすぎて横の壁をすべり始める。あのタイミング、今観てもいいんでよ。オットットットってなりながら、だんだん、横にズレていく。
井上 あのあたりは勘だけで描いてて。
今石 いや、それが大事なんで。そこが凄い。
小黒 あの回は、ほぼ井上原画だから。違うシーンはバーガー屋とね、正座して足しびれるところだけかな。
今石 若いアニメータに『ガンモ』の話をしても、分かってくれないんですよ。「昔、井上さんは、美少女を描くのが上手かったんですか?」って言われちゃう。
井上 そう言えば俺、最近、美少女描いてないね(苦笑)。
―― 次は『真魔神伝 バトルロイヤルハイスクール』ですね。
今石 これは、うつのみやさんの衝撃でしょう。
小黒 これで、うつのみやさんを意識するっていうのは相当に濃いよ。
今石 ずっと、誰だか分かんなかったんですよ。当時は、結城信輝さんがやった『北斗の拳』を観て、「この筋肉は新しいよ!」と思って、その流れで観たんですよ。ところが、冒頭のシーンは全然画が違う。「何だこの頭のバウンドは」と思って延々とコマ送りするんだけど、誰が描いているか分からない。
小黒 僕も、当時結城さんに訊いたよ。「あそこは誰なんですか」って。
井上 うつのみやは、『夢次元ハンター ファンドラ』もやってるよ。
今石 『ファンドラ3』ですね。最近観ましたよ。吉成曜さんに言われて。観ると、吹き出す血だけが1コマで動いているシーンがある。
井上 うつのみやはね、『御先祖様』あたりからひとつの完成をみるんだけど、その頃は過渡期だよね。
小黒 うつのみやさんは80年代後半もかなりスパークしてますね。
井上 『ダーティペア』の劇場版なんかも、ほとばしってる。荒削りなんだけどね。
小黒 『御先祖』とか観てビビっときた人は『真魔神伝』もチェックという事で。
井上 うつのみやのフィルムはどれを観ても、ビビッとくる人はくるんじゃないかな。
次回「第3回 井上・今石・小黒座談会(3)」に続く
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