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■「もっとアニメを観よう」
第14回 馬越嘉彦インタビュー |
―― 今回は、『おジャ魔女どれみ』シリーズや『エアマスター』のキャラクターデザインでお馴染みの馬越さんの登場ですね。
小黒 どうやって進めていきましょうか。
馬越 どうしましょうかね。特にメモとかは用意してこなかったんですけど。
小黒 じゃあ、思いつくままに挙げていっていただきましょう。
馬越 そうなると、やっぱり東映Vアニメになっちゃうのかな。
小黒 おお、燃えますねえ。
馬越 いや、だって、そうでないと有名なものばかりになっちゃいますし。これは誰もあまり観てないだろう、と(笑)。
小黒 実際に東映Vアニメを、スタジオの若い人にも勧めているんですか?
馬越 ええ。『BE―BOP―HIGHSCHOOL』を観ろって言ってます。
小黒 主に勧めているのは『BE―BOP』なんですね。
馬越 あ、いやいや、他にも色々あります。でも、いいんですか? 挙げていくと相当偏るんですけど……。ほとんど羽山(淳一)さん特集になってしまう。
―― 羽山さんと言えば、馬越さんの師匠筋にあたる方ですよね。
小黒 じゃあ、「馬越さんが選ぶ羽山アニメ」という形でいきましょう。これが羽山アニメのベスト、という作品を挙げていただければ。
馬越 でも、ベストって言うと羽山さんに怒られそうな気が(苦笑)。
小黒 じゃあ、「馬越さんが好きな羽山アニメ」っていうことで、どうですか。
馬越 そうですね。そういう感じで。
小黒 取材の前に改めて観返したんですけど、『BE―BOP』って普通に面白いし、よくできてますよね。
馬越 そうなんですよね。1、2巻が有迫(俊彦)さんの演出で……。
小黒 3〜5巻が角銅(博之)さんの演出なんですよね。『BE―BOP』には、馬越さんは初めは動画で参加していて、それから作監補になって、その後、原画として参加してるわけですよね。
馬越 そうですね。でも、それを言ったら『湘爆(湘南爆走族)』の方も、動画、原画、作画監督とやってるんですよ。
小黒 ああ、そうなんですか。『湘爆』は何巻で作監をやられてるんですか。
馬越 『10』ですね。八島(善孝)さんと2人でやってます。
小黒 なるほど。じゃあ、ここで、今までほとんど語られた事のなかった東映Vアニメの作画について語っていただきましょう。
馬越 ははは(笑)。そうかもしれませんね。基本的には不良ものなので、観ない人は本当に観ないでしょうし。
小黒 「これを観ろ」というお勧めは何になりますか。
馬越 まずはVアニメではないんですけど、『北斗の拳2』は外せませんね。
小黒 羽山さんの作監回ですね。特にこの話というのはあります?
馬越 そうですね、145話と……。
小黒 おっ、いきなり話数が出ますか!
馬越 ああ、すみません。
小黒 いえいえ、さすがですね。続けてください。
馬越 それから128話。あとは、ラスト前の151話ですか。羽山さんご自身は、イマイチみたいな事をおっしゃっていたんですけど、純粋に作画だけで言えば、俺は151話がいちばん好きかもしれないですね。145話は、作画・内容とも凄くよくできていると思います。
小黒 145話? (資料を見て)ああ、ハイハイ、これはよかったですね。カッチョよかった。あの話は、挙げられないんですか。仮面を被ったやつが出てくる話は。
馬越 ああ、ファルコが闘う話。はい、115話ですね。あれもいいですね。
小黒 相当観てますねえ。メモもないのにどんどん話数が出てきますもんね。
馬越 いやあ、でも結構忘れていますね。俺が『北斗の拳2』を観たのが、ちょうど新聞奨学生をしていて、アニメ業界に就職しようとしていた頃だったんですよ。それまでは、メカものが好きでサンライズに行きたかったんですよね。ところが、『北斗の拳2』の151話――だったと思うんですけど――を観ちゃって。それで、気持ちがクルッと変わっちゃった。だから、115話や128話は後追いでビデオで観たんだと思うんです。
小黒 その時、「これだ!」と思われたんですね。
馬越 ビックリしましたね、あの時は。
小黒 どのあたりが驚きだったんですか。一枚画の迫力? それともアクション?
馬越 うーん、アクションと言うほどには動かない作品でしたから。重量感と言うか、迫力と言うか、そういうところでしょうね。あとはとにかく立体感が凄かったですね。今で言う“立体感”とはまた違うのかもしれないですけど。それで、もう「この人のところへ行こう!」って決心したんですよ。
小黒 それで、羽山さんのいらしたムッシュオニオンに入られたんですね。
馬越 ええ。
小黒 じゃあ、『北斗の拳2』で特にお勧めは、151話という事ですか。
馬越 そうですね。
小黒 でも、なるべくなら全部観ろ、と。
馬越 そうです。羽山さんの作監回は全部観てほしい。
小黒 なるほど。で、次は『魁!!男塾』でしょうか。
馬越 『男塾』のお勧めは、劇場版で、富樫が馬と戦うシーンがあって、そこが羽山さんの原画なんですよ。馬を相手にブリッジで受けるんです。俺も劇場版『男塾』の時にはオニオンにいて、動画として参加できたんですけど、羽山さんの担当原画は回してもらえなかったですね。あ、でも、TVの『男塾』ではかなりやらせてもらえました。
小黒 TVでは、羽山さんの原画を動画にできたんですね。どうでした?
馬越 大変でしたけど、あの時は、面白いと言うか、嬉しい方が先だったから、随分やりましたね。確かその頃、『北斗の拳』のCMがあって、それが羽山さんの原画だったんですけど、その動画もやらせてもらったんですよ。後にも先にもそれだけですね、『北斗の拳』をやったのは。
小黒 という事は、今でも『北斗の拳』をやりたいんですね。
馬越 うーん。羽山さんの作監であれば。
小黒 あ、ご自分で『北斗の拳』の作監がやりたいわけではない?
馬越 それは思わないですね。
小黒 つまり、馬越さんにとっては、『北斗の拳』イコール羽山さんなんですね。
馬越 そうなんですよね。俺にとっては、『北斗の拳』というのは、原哲夫さんというよりは、羽山さんの画なんですよ。須田(正巳)さんの画ともまた違うし……なんて事を言ったら、怒られたんですけど、羽山さんに(笑)。
小黒 えっ?
馬越 「(須田さんのキャラクターに)一所懸命似せようとしてるんだ」って(笑)。
小黒 でも、馬越さんは、その違っている部分というか、羽山さんの個性の部分に惹かれているわけですね。
馬越 そうですね。なんて言ったらいいのか分からないけど、画を観ると「羽山さんだ!」みたいな感じで、反応しちゃいますね。
小黒 東映Vアニメをいくつか観ていると、羽山さんの作画ぐらい男性ホルモンが滲んでいるアニメはないんじゃないか、と思うんですよね。
馬越 ははは。
小黒 例えば、須田さんの画はもっとクールですよね。
―― 羽山さんの画って、肉厚があると言うか、ムチッとしてますよね。
小黒 そうそう。
馬越 あ、そうですね。女性キャラもそういう感じですよね。
小黒 TVの『男塾』ではお勧めの話数はありますか?
馬越 28話だったかな……ちょっと話数は自信がないんですけど。卍丸とJの戦いがあるんですけど、それがよかったですね。
小黒 記憶がクリアですね(笑)。それは羽山さんは原画もやってるんですか?
馬越 ああ、やってます。あとは、香川(久)さんも原画をやってますね。
小黒 羽山さんでいくと、次は『アッコちゃん』になるんですか?
馬越 あ、『アッコちゃん』もありますね。でも、やっぱり『湘南爆走族5』ですかね。あれは最後のラスボスとの戦いがよかったですね。
小黒 あの場面は、全部が羽山さんの原画じゃないですよね。途中からですか?
馬越 そうだったかな。敵のリーダー(火影)が出てきて、江口とタイマンするところです。あそこもビックリしましたね。あれは、俺は動画をやってないんじゃないかな。「やりたいなあ」と思いながら横で見ていたような気がします。
小黒 ビデオを用意してありますよ。ちょっと観てみましょう。
(鑑賞中)
馬越 あ、ここからですね。これです、この指がすごいんです!
小黒 なるほど、江口が啖呵を切るところから、火影が「タイマンは止めだ」と言うところまでですね。どうですか、久しぶりに観て。
馬越 ひょっとしたら、今観ると印象違うかなと思ってたんですけど、そんな事はなかったですね。やっぱり楽しいですね。
小黒 作画のパワーが凄いですね。
馬越 ええ。
小黒 セルをスライドさせるのも、大胆でいい感じですね。中を割っていいようなところまで、スライドで表現してしまう。
馬越 そこもいいですよね。当時もビックリしました。あとは、親指を立てるときの指がいいんですよ。あんな指はいまだに描けないですよ。
小黒 湘爆チームが指を突き出すところですね。
馬越 あれはビックリしましたねえ。火影の顔なんかは、西城(隆司)さんの修正が、もうカッチリ入ってはいますけど、それでも原画の迫力は消しようがないですね。動いているところは、多分修正が入っていませんし。
小黒 今は、羽山さんの原画担当シーンだけを観ましたけど、通して観ると、また印象が違うんですよね。ストーリーのテンションが上がった瞬間に、羽山さんの原画になるんですよ。演出の方も使いどころを心得てる、という(笑)。『湘爆』は、この『5』にとどめを刺すわけですか。
馬越 そうですね。『8』もいいんですけどね。『8』は加賀美(高浩)さんの作監なんですけど。
小黒 なるほど。事前に観ていて思ったんですけど、『6』の冒頭も羽山さんじゃないですか?
馬越 『6』の冒頭――車をひっくり返したりするやつですね。ああ、アレは、俺、動画やってますね。
小黒 あ、そうなんですか。それもビデオ、用意してありますよ。ちょっと観てみましょう。
(鑑賞中)
馬越 あ、そうだ。やっぱり、俺、ここの動画やりました。結構な数やってるな。
小黒 このあたりから羽山さんですか?
馬越 そうです。救急車の登場あたりから、羽山さんですね。羽山さんの原画を結構、俺が動画にしてますね。5、6カットはやってます。いやあ、これもいいじゃないですか。
小黒 じゃあ、これもリストに入れますか。
馬越 観ちゃうと全部入れちゃいそう(笑)。
小黒 じゃあ、『湘爆』は『5』と『6』という事で。
馬越 『湘爆』は内容的にも面白いから、どれもお勧めなんですけどね。
小黒 ああ、羽山さんの作画かどうかは置いておいても。
馬越 ええ。『湘爆』はアニメになる前から原作も読んでいたんですけど、アニメもよかったと思いますよ。
小黒 原作ファンの期待を裏切らない仕上がりでしたよね。
馬越 そうですね。『II』も『III』も面白いですし。
小黒 『III』って言うと?
馬越 ボクシングの話ですね。
小黒 ああ、『III』は、浪花節な話がよくできていて、不良ものが苦手な人も馴染みやすいんじゃないですかね。『湘爆』には、ご自身は何巻ぐらいまで関わってるんでしょう。
馬越 『10』が最後ですね。何巻まで出ていましたっけ?
―― 全部で12巻ですね。
馬越 ああ、『12』の作画の話がきそうな時に、確か、『(おジャ魔女)どれみ』の仕事が決まったんじゃなかったかな。
小黒 お話としては、『湘爆』は、どれが好きなんですか?
馬越 そうですね、『5』が好きではあるんですけど……あの、自分でやっておいてなんですけど、お話的には『10』が好きなんですよ。自分でやっているので、お勧めとは言いにくいんですが。
小黒 ははあ。
馬越 山下(高明)さんがやられた、石川の親父が芋洗いながら、刺青の入った背中を見せているカットがあるんです。それだけのカットなんですけど、すごいんですよね。親父の身体が動くと刺青も動くんですよ。
小黒 へえ。今度それ観てみます。東映Vアニメって、その後、有名劇場作品で活躍するような、濱洲英喜さんとか山下高明さんといった方の若き日の代表作でもあるわけですよね。
馬越 そうですね。山下さんなんて、『(Crying)フリーマン』は凄かったですしね。新井浩一さんもやってらっしゃるし。確かにそういう意味でも凄かったなあ。『フリーマン』も、羽山さんがやってるところが、やっぱり凄かったですね。ある意味、羽山さんの画が池上遼一の画にいちばん似ていたかもしれない。これもお勧めです。主人公が素っ裸のアフリカの女性と戦うんですけど、何巻目だったかな。
小黒 お話からすると、多分、『3』ですね。
馬越 これはエンディングも羽山さんなんですよ。
小黒 じゃあ、いよいよ、『BE―BOP』に行きましょうか。これは『北斗の拳』と並ぶ、羽山さんの代表作と言っていいんじゃないかと思うんですが。
馬越 そうですね。どれも面白いですしね。
小黒 アニメ離れした雰囲気もあって。
馬越 やっぱりそうなんですかねえ(苦笑)。確かに、観ないですよねえ、アニメファンは。『湘爆』にしろ、普通の人がレンタルする感じのものですよね。
小黒 その名の通り、Vシネマ的なアニメですからね。偏見かもしれないけれど、アニメファンって不良が嫌いな人が多いような気が(笑)。
馬越 そうなんですかねえ。でも、今観たら……。
小黒 面白いですよね。
馬越 こういうタイプの不良っていうのも、今はあまりいないでしょう。
小黒 あれに登場する不良達の純情さって80年代と言うよりも、むしろ70年代ぐらいのものですよね。
馬越 とにかく全部観てほしいですね。特に、この学ランの描き方は観ておいて損はないですよ。
小黒 おお、いよいよアニメーターらしい話に。
馬越 学ランの描き方が回を追う毎にどんどん複雑になっていきましたよね。これはもう、羽山さんにしか描けない。
小黒 馬越さんは、1巻、2巻と動画でしたよね。
馬越 あ、名前が出てました?
小黒 『2』はクレジットされてます。『3』は作監補でしたっけ。
馬越 そうですね。手伝ってはいるんですが、名前は出てるかな。
小黒 『4』はクレジットされてますよ。
馬越 あ、そうですか。
小黒 で、お勧めは?
馬越 『4』についている『5』の予告が最高なんですよね。「くまちゃんバット」のところ。
小黒 あ、アレ、羽山さんの原画なんですか。あの、3人が名乗りをあげるところですよね。
馬越 ええ。あれは素晴らしいですね。
小黒 でもあれは『5』の本編の流用じゃないんですか?
馬越 あ、本編にもありました? うーん、予告が先だったと思うんだけど。
小黒 ああ、じゃあ、もしかしたら予告用に描いたものを本編に流用したのかも。
馬越 そうなのかな。ちょっと不確かなんですけど。
小黒 あれは確かにスペシャル原画っていう感じですよね。
馬越 あれは羽山さんの原画そのまま画面になっていると思いますよ。
小黒 『BE―BOP』のビデオもありますよ。じゃあ、『5』をちょっと観ましょうか。
(鑑賞中)
小黒 この部分(トオル達が他校の教師の前で、偽名で名乗りをあげる場面)ですね。確かに相当に濃いですね。
馬越 ええ、絶妙ですよ。
小黒 やはり、この場面につきますか、『BE―BOP』は。
馬越 素晴らしいですね。でも、やっぱり、『BE―BOP』は全部観ないと駄目です。
小黒 ところで、『6』はどうでしょう? これもなかなかだと思うんです。ただ、僕が観ると、羽山色が薄いようにも見えるんですけど。ちょっとビデオをかけてみますね。
(鑑賞中)
小黒 この話は、羽山さんの修正があまり入ってないように見えるんですが。
馬越 いや、バリバリ入ってますよ。
小黒 えっ、これ、羽山さんの修正ですか。顔がずいぶんサッパリした感じになってますよね。
馬越 羽山さんは、シリーズの途中で設定を描き変えたんですよ。
小黒 ああ、じゃあ、画風が変わっているのは、キャラ表を描き直したからなんですね。なるほど、むしろ絵柄は原作に近づいているんだ。
馬越 ああ、そうかもしれませんね。この画がまたいいんですよね。
小黒 この『6』の冒頭の駅のホームの場面は、どなたがやられたのか分からないんですが、凄い原画ですよね。普段の『BE―BOP』調ともちょっと違うんですけど。
馬越 ああ、この部分は多分、濱洲さんの原画だと思います。濱洲さんはとにかく芝居が凄いですよね。
小黒 劇場作品みたいな作画ですよね。まるで『AKIRA』みたいな。
馬越 ははは。確かに普通の原画じゃないですよね。
小黒 あのシーンは口パクがリップシンクロしてるし、芝居も細かいですよね(編注:同じく『6』終盤のビルの上での不良の1人芝居も必見)。『BE―BOP』って、例えば2巻では、全部羽山さんが描いているように見えるんですけど、シリーズ後半になると、わりと原画マンの味が出るようになってきてるんですかね。
馬越 でも、それまでも濱洲さんの担当したところは、ほとんど修正を入れてないそうですよ。『4』の喫茶店の場面で、回り込みながらカメラを引いていくところがありますよね。
小黒 はいはい。女の子の出てくるところですね。
馬越 あそこも濱洲さんなんですよ。ああ、この(『6』の)エンディングも相当うまいですね。誰なんだろう? やっぱり、これも観ないとダメですね(笑)。ああ、DVDにならないかなあ。
小黒 ほしいですよね。僕達だけかなあ。
馬越 『男塾』と『BE―BOP』と『湘爆』はDVDにしてほしいですよね(編注:この取材の後、『湘南爆走族』シリーズのDVD化が東映ビデオよりアナウンスされた。vol.1が11月21日にリリース)
小黒 いいですね。『捜獣戦士』と『ヴァンパイヤー戦争』とか、単発ものを1枚にまとめてくれると助かるなあ。
―― 『捜獣戦士』って面白いんですか。
小黒 かなりの怪作だよ。あの頃のOVAがレンタル店から消えつつあるような気がするんだよ。1枚ずつ出ると買うのがシンドいので、なるべくならまとめてDVD化してほしい(笑)。
―― 『BE―BOP』に話を戻しますが、これはもう全部がお勧めですか?
馬越 ええ、もう、全部観ないとダメです。
小黒 なるほど。それでもあえて1本選ぶとすればどれでしょう。
馬越 やっぱり『2』かな。
小黒 他に東映Vアニメで、ここで取り上げておくものはありますか。
馬越 うーん。『捜獣戦士』も『ヴァンパイヤー戦争』も、羽山さんのやっているところは凄いです。
小黒 『捜獣戦士』は、最後のサルと戦うところですよね。
馬越 そうですそうです。『ヴァンパイヤー戦争』では、マントを着た長髪のヴァンパイヤーと対峙するところで、ヴァンパイヤーが自分の首に指を突っ込んで、曲がった首を治してしまうんですね。そのあと、ヴァンパイヤーが平然と去っていく。あんなのを俯瞰でやるなんてとんでもなく大変なはずなんですけど。凄かったですねえ。
小黒 じゃあ、『捜獣戦士』をちょっと観てみましょう。
(鑑賞中)
馬越 あ、ここから羽山さんですね。
小黒 このあとから最後のバトルシーンに突入するんですよ。じゃあ、ここから最後までずっと羽山さん?
馬越 ええ。スーツの描き方が、この場面でもう違うんですよ。
小黒 あ、確かに。学ランみたいになってますね。
馬越 凄いですね、この影と皺の入り方が。
小黒 なるほどお寺に向かうあたりから、もう羽山さんの担当なんですね。
馬越 ええ、車を降りてからはそうですね。(エンディングまで観て)確かに最後までですね。凄い量やってるなあ。ちょうど、この時期、俺は、羽山さんの横で作業していたんですよね。
小黒 原画陣も濃いですよね。(エンディングクレジットを見ながら)須田正巳さん……あ、山根理宏さんの名前もありますね。
馬越 増永(計介)さんもいますね。
小黒 日本中の硬派アニメーターが集まってる感じですね(笑)。ほぼ数は20本になりましたが、こんなところでしょうか。
馬越 そうですね。
―― アニメスタイルとしても、稀に見るリストができ上がりました。
●馬越嘉彦が好きな羽山淳一&お勧め東映Vアニメ
『世紀末救世主伝説 北斗の拳2』
115話「天帝怒る!ファルコ、元斗を 地上より根絶やしにせよ!!」
128話「修羅の国に救世主伝説走る! その名はラオウ!!」
145話「涙の兄弟再会!ケンシロウ、 俺はお前を待っていた!!」
151話「最終話 序章! リンの運命を握る第3の男が現れた!!」
『魁!!男塾』(劇場版)
『魁!!男塾』28話「天からの使者?絶体絶命のJに 百万の援軍が来た」
『湘南爆走族II ―1/5LONELY NIGHT―』
『湘南爆走族III 10オンスの絆』
『湘南爆走族5 青ざめた暁』
『湘南爆走族6 GT380ヒストリー』
『PURPLE HIGHWAY OF ANGELS 湘南爆走族8 赤い星の伝説』
『Cryingフリーマン3 比翼連理』
『BE―BOP―HIGHSCHOOL』
『BE―BOP―HIGHSCHOOL2』
『BE―BOP―HIGHSCHOOL3』
『BE―BOP―HIGHSCHOOL4』
『BE―BOP―HIGHSCHOOL5』
『BE―BOP―HIGHSCHOOL6』
『捜獣戦士 サイキック・ウォーズ』
『ヴァンパイヤー戦争』
番外
『湘南爆走族10 FROM SAMANTHA』
馬越 ははは(笑)。どうせなら、と思って偏ったものにしてみました。特に若いアニメーターさんは、こういった作品は絶対に観ないですもんね。
小黒 絶対に観ないですね。
馬越 自信持って断言できますもんねえ。
小黒 そう言えば、馬越さんが作監をやった作品で、羽山さんが原画を担当した作品はあるんですか?
馬越 えーと、『STREET FIGHTER ZERO(THE ANIMATION)』がそうです。あと『エアマスター』のオープニングもそうなんですよ。途中で挿し変わった部分の原画がほとんど全部、羽山さんですね。
―― ああ、後半に活躍するキャラクター達が登場するところですね。
馬越 あれは羽山さんもちょっとは満足してくれたみたいです。
小黒 ホントに羽山さんが好きなんですね。別格なんですね。
馬越 そうですね。嫌がられますけど、羽山さん本人には(苦笑)。だから、『新・北斗の拳』は楽しみなんですよ。羽山さんが原画やられているんです。
小黒 『北斗の拳』と言えば、羽山さんはゲームだとか、色々と版権も描いていますよね。
馬越 版権に関しては相当描いていますね。
小黒 羽山画集が作れるぐらいですよね。
馬越 画集出してほしいですよね。俺も一所懸命集めているんですけどね。
小黒 集めているんですか。
馬越 ええ、終わった後の原画をいただいたりしてます。
小黒 ああ、いまだに現役の羽山ファンなんですね。
馬越 俺は、歳をとったら「羽山博物館」をやろうと思ってますから。
小黒 えーと、それ、記事にしていいんですか。「いつか羽山博物館を作りたい」でこのインタビューを締めても?
馬越 羽山さんには多分、怒られるでしょうね(苦笑)。でも、いいですよ。どうせもう、そういう人間と思われているので。
小黒 素晴らしい(笑)。
●2003年6月7日
取材場所/東京・スタジオ雄
構成/小川びい
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