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リスト制作委員会通信 リスト制作委員会

 第4回「資料がうなるとデータがはずむわ
                 ファイトで“アタックNo.1”!」

 ども、リスト制作委員会のみっちゃんこと道原です。
 うーん、スポーツのルールって、けっこうこまめに変わってるんですね。
 “ルール無用の悪党”とか言ってる選手たちも、ルール破るには知ってなきゃいけないわけだし、きっと改訂されるたびに一所懸命覚え直して、新しい手を考えるんだろうなあ。
 何でこんな話かというと、今、リスト制作委員会では、スポーツもののDVDをお手伝いしているのです。
 その名は『アタックNo.1』。
 1969〜1971年に東京ムービーで制作された、『巨人の星』と双璧をなすスポーツ根性ものの金字塔。懐かしいなあ。みっちゃんも、『サインはV』の稲妻落としとともに、よく友達と木の葉落としの練習したっけ……できなかったけど。あと、隣のクラスの手作り壁新聞に「あいはらこずえ」と書いてあったのを「あゆはら」だと訂正して、イヤがられたりしたっけなあ。ぐす。
 閑話休題。
 さて、リスト制作委員会代表データ原口、『アタックNo.1』にもまた、解明しなければならない積年の課題がありました。それは“小鳩くるみバージョン”と呼ばれるオープニング主題歌についての謎です。
 『アタックNo.1』の主題歌といえば、「だって、涙が出ちゃう。女の子だもん」という極めつけのフレーズによって、まさに世代を超えて認知されている感のある有名なもの。歌っているのは大杉久美子さん、というのがポピュラーなのですが、実はもうひとつ、鮎原こずえ役の小鳩くるみさんが歌っているバージョンも存在するのです。
 さすがに本放映時のもの、とはいきませんでしたが、原口はかなり前の再放映でかかったという“小鳩バージョン”の映像のダビングを、画質に多少難あるものの、人づてで入手していました。また本放映当時、第1話から喜んで観ていたわが委員会の女性メンバーはみな、“小鳩バージョン”に聴き覚えがあったのです。
 ところが!
 1996年に東芝EMIから発売された音楽集のCD(『巨人の星』とカップリング)では、“小鳩バージョン”のレコードサイズ音源をしっかり収録していながら、肝心のライナーでは何と「実際にはレコードでの発売のみで、本編には最初から大杉久美子のものが使用されていた」と書かれていたのです。おまけに、「はっきりとしたことが判りました」とまで前置きしている始末。当時、このライナーを読んだ私たちは、あいた口がふさがりませんでした。
 あまりにビックリしたので、一時リスト制作委員会では、不確かな根拠しかない物事をわざと「はっきり判った!」と叫んで断言するのが流行ったほどでした。
 その後、このCD発売からほどなく、今度は『アタックNo.1』のLD―BOXがリリースされましたが、こちらでも全話に“大杉バージョン”がついていました。私たちは再度がっかりしましたが、収穫もありました。ライナーに小鳩くるみインタビューが掲載されており、その中で小鳩さんご自身が、当初は自分の歌う主題歌が放映に使われていたこと、「約1ヶ月ほどして」“大杉バージョン”に切り替わったと記憶していること、などを証言なさっていたことです。ほかならぬ御本人によって“小鳩バージョン”の本編使用が明言された! 私たちは百万の味方を得たような気分になりました。
 BOX第2巻のライナーで、ライターの早川優氏が“小鳩バージョン”について触れ、それが本放映に使用された可能性について言及してくれていたことも、救いにはなりました。もっとも、依然としてフィルム原版(物的証拠)は見つかっていなかったため、「〜小鳩版未使用説には現実味がある」「が、第2話の練習シーンで小鳩版が流れていること、当時確かに小鳩版をOPで聴いたことを主張するファンが少なくないことなど、断定を下す自信は筆者にはない」とあくまでも慎重な記述ではありましたが、これは仕方のないことです。

 私たちは手許のビデオテープを見ながら、「これだって物的証拠なのになあ!」と思いつつも、当時は『アタックNo.1』の映像発掘に直接関与できない身を悔しがるしかありませんでした。

 そんな苦節7年の果てに、今回の『アタックNo.1』の仕事がやってきました。きっかけは、原口が参加していた虫プロDVDシリーズ(by コロムビアミュージックエンタテインメント)のスタッフの一員であるジェー・ピーさん。この会社のみなさんは、古いフィルムのゴミとりなど、映像マスターを作り上げる大変な作業を手を抜かずコツコツとやって下さっています。原口も普段から深い信頼を置いているのですが、そのジェー・ピーさんが、たまたま『アタックNo.1』(by アミューズビデオ)に携わることになり、結びの神になって下さったというわけ。

 でも、仕事を受けるにあたって、原口はちょっと迷いました。何たって、苦節7年の関心事は“小鳩バージョン”。今度こそ目当てのフィルムを発見し、ディスクに収録することが出来なければ、参加する意味はないのです。でも、おそらくネガフィルムの普通の保管場所には“小鳩バージョン”は存在していないはず。ということは、古い再放映用のプリントの調査を一から始めない限り、収穫はないだろう……虫プロ作品でやったように、本当に一からの、徒労に終わるかも知れない作業をやらせてもらえない限り……。でも、そのためには、メーカーさんとトムス・エンタテインメントさんの全面的なご協力が不可欠だ。そんな無駄ともいえる作業を、許可してもらえるだろうか。もし許可されないようなら、仕事自体を受けないほうがいいのではないだろうか……。
 こんな思いの数々が、原口の脳裏を0.5秒くらいで駆け抜けたのだと思います。きっと。

 それで、原口は、大変控えめに、まずはこう返事しました。
 「仕事を受けるのはやぶさかではないが、かくかくしかじか……。ついてはこの機会に、オープニング主題歌の謎を何とかしたい。そのためには、最低限の作業として、東京ムービーに現存するプリントというプリントを、もう一度、隅から隅まですべて調べさせてほしい」
 一体、どこが「控えめ」なのでしょう。ああ、こりゃダメかも、とみっちゃんは思いました。
 ところが、ジェー・ピーさんからは、予想を超える力強いお返事が……

 「これがあるからこそ原口さんにお願いしたいという事です」

 原口もみっちゃんも、ありがたいお言葉に感動です。しかも、そのあとにはもっと驚くこんな文章が――

 「既に現在わかっているだけでもオープニングは3種類確認されております。小鳩くるみ歌唱バーション、大杉久美子歌唱バージョン、LD使用の『アタック』白ロゴバージョンです」

 えーーーーーーーーっ!? 小鳩バージョンが見つかってる???
 原版の所在が確認されたというわけ???
 しばし呆然の後、原口に勝利の笑みが浮かびました。
 幻だった小鳩くるみバージョン。ふふ。あった。
 やっぱりあったじゃないかあー!

 とはいえ、当然疑問が生まれました。いくら何でも簡単すぎる。あれだけ見つからないと言われていたのは何だったのでしょう。みっちゃんは心配でした。データ原口、あちこちで無茶してるからなあ、大組織による手の込んだトリックでは? ディープな愉快犯の罠? マニア向けのどっきりカメラ?

 でも真相はすぐにわかりました。
 これは、やっぱり正しい朗報だったのです。
 昨年、新井薬師にめでたくトムスさんの新社屋が完成したのをご存知の方もいらっしゃるでしょう。
 広くて大きい、♪綺麗な建物……。
 それでですね、この機会にトムスさん、都内の3ヶ所くらいに散らばっていた保管倉庫にあったフィルムや資料を集め、ひとつにまとめて大整理をしたというのです。作業した方たち、さぞ大変だったことでしょう。でも、それで、そのなかから、今まで無かったと思われていた資料やフィルムがワンサカ、うなるほど出てきたというのです。“小鳩バージョン”もそのひとつ。

 これで、“小鳩バージョン”のフィルムが存在していたことが今度こそ「はっきり判った」(笑)というわけです。
 さらに、『アタックNo.1』制作当時の社内資料もいろいろと掘り出されました。そのなかには、オープニングのフォーマットが21話から変更された(5秒長くなった)ことも記録されていました。
 小鳩バージョンは1分27秒のもの、大杉バージョンは1分27秒と1分32秒のものがそれぞれ見つかっている。
 ということは、大杉バージョンの1分32秒のものが、21話から使用されたと考えてよいはずです。自動的に小鳩バージョンの使用話数も、20話以前に絞られてきます。そしてこれは、前述の小鳩さんの証言とも合致します。

 光明が見えてきました。今度のDVD―BOXは確実に前進できる!
 ただ、それでも原口には、小鳩バージョンをめぐる謎が完全には解決できていませんでした。

 それは、エンディングクレジットのテロップの謎。
 主題歌歌手の名前がクレジットされる画面で、「小鳩くるみ」の名が表示されるのは、なぜか第1話と第9話のみなのです。さあ不思議。
 もうちょっと詳しく言うと、第2話から第5話は主題歌テロップ自体が表示されず、第6〜8話と第10話以降は「大杉久美子」と表示されるわけ。
 テロップを素直に信じると小鳩さんの証言とくい違ってきますし、そもそも何で第9話で一度だけ小鳩くるみ表記に戻る必要があるのか……。
 もしかしたら、歌い手が大杉さんにバトンタッチされると決まった時点で、エンディングネガを修正しようとして、テロップだけ一足先に変わってしまったのかも知れない。でもそれなら、第9話が小鳩名義のわけは? または、再放映ではすべて大杉バージョンをかけるつもりで、ネガを頭から手直ししてしまったのかも知れない。では、第1話と第9話が小鳩名義で残ったわけは?
 すべてをすっきり説明する答えはまだ出ていません。これについてはまだ課題のまま残っています。
 とはいえ、第1話が小鳩バージョンだったのはほぼ確か。で、データ原口は、今回のDVD―BOXでは、但し書きをつけた上で、第1話から第4話を小鳩バージョンにしようかな〜、と考えているところです。

 えーと、リスト制作委員会は、今回の『アタックNo.1』でも虫プロシリーズと同様、解説書の編集をやります。どうぞよろしく。

 『アタックNo.1』って、現在ではバレーボールのルールから、スポーツトレーニングにおける常識、国際情勢に関することまで、いろいろと時代の変化が感じられる作品です。でも女の子たちにとって何より大切だったのは、信じられる同性の仲間たちと泣いたり笑ったりしながら、大きな決まりごとや異質のものに立ち向かっていく、という構図でした。今も昔も根っこは同じはず。
 この作品、男性陣から見ると、いろいろ爆笑要素が連発らしいんだけど、女の子の普遍的な心理のナゾを解くカギがほうぼうに隠されていると思うので、ただ笑い飛ばしたりしないで、楽しく観てみてね。
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