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コラム

『マインド・ゲーム』応援団
  第12回 応援団部室トーク《Vol.1 竹内文恵》

 ども、ムックの仕事が全然終わらないのに、気が付くと日曜の朝から『マインド・ゲーム』を観に行っている糸の切れたタコ団長“でぞれ”です。やっぱいいよぉ。
 今回から数回にわたって応援団メンバーをお招きして、一緒に『マインド・ゲーム』愛を語らっていきたいと思います。長らく一人漫談状態でやって参りましたが、ようやくそれっぽくなってきました! トップバッターは、『マインド・ゲーム』の配給を手がけるアスミック・エース エンタテインメント株式会社・製作事業グループの竹内文恵さんです。映画をヒットさせるため、多くのお客さんに観てもらうために、劇場確保や宣伝活動に奔走する、いわばこっちが本家本元の応援団長さん。『マインド・ゲーム』宣伝の苦労話が、今明らかに!

2004年9月1日
取材場所/『マインド・ゲーム』応援団東京本部(長屋の屋根)
取材・構成/でぞれ


── どうも、いつも原稿チェックやらなんやら、お世話になってます。
竹内 よろしくお願いします。あの、これ大丈夫ですか? 足元抜けそうなんですけど。
── あ、気にしないでください。ではさっそくですけど、アスミック・エースさんが『マインド・ゲーム』を配給される事になったのは、いつ頃なんですか?
竹内 我々が参加させていただいたのは、一番最後の方かもしれませんね。配給権を決める前に、STUDIO4℃さんの方で映画本編をもう作られていて、出来上がったものをお持ちくださったんです。
── その時点で、ほぼ完成版に近い状態だったんですか。
竹内 ほぼというか、もう完成してました(笑)。エンドロール以外は。
── あ、本当に出来上がってたんですね。
竹内 ええ。去年の秋とか、そのぐらいだったと思います。そこが田中栄子プロデューサーさんのすごいところだと思うんですけど。もし制作中に配給元やスポンサーがいろいろと決まってたら、こんな“のびのびと自由な!”勢いのある映画にはなってなかったと思います。
── そうですよね、もっといろいろと注文がついて、窮屈な作品になってますよね。
竹内 で、STUDIO4℃さんからビデオを持って来ていただいて、社内で何人か集めて試写を開いたんですけど、もう観たら「即決!」みたいな感じで(笑)。結構、みんな勝手に熱くなっちゃって。
── まあ、そういう映画ですよね(笑)。竹内さんは御覧になってどうでした?
竹内 個人的な話ですけど、私『イエローサブマリン』が大好きで、その時の衝撃が蘇ったというか。それとやっぱり、山本精一さんの音楽ですよね(注:竹内さんはかなり気合いの入った山本精一ファン)。
── アニメーター湯浅政明という存在は、前から御存知でした?
竹内 いやー、我々はほぼ素人に近いんで、社内では全員分かってなかったですね。『音響生命体ノイズマン』や『ねこぢる草』、『クレヨンしんちゃん』シリーズは観ていても、それらを結ぶ重要人物がいるというところまでは掘り下げれておらず。全然勉強が足りない感じでした。
── まあ、ある程度アニメに関して濃い人じゃないと知らないですよね。
竹内 うちは実写作品の配給もやっているので、最初に思ったのが、実写の若い監督たちが嫉妬しちゃうというか、「みんなこれを観たらかなり悔しい思いをしちゃうんじゃないかな」と。映像の与える覚醒感みたいなものが違いすぎる! っていう感じがしました。
── しかも、映画としてストーリーがちゃんとあるし。
竹内 そうなんですよ! そこの部分がキモかな、と我々も思ってまして。どうしても、ここ最近の日本のアニメーションって、映像の部分だけで取り沙汰されてきましたよね。でもやっぱりあれだけお話が面白くて、映像でちゃんと物語ってる作品というのは、なかなかない。
── なかなか、というか今世紀初って気もしますけど。作品の宣伝方針はどのように決められたんですか?
竹内 配給が決まった時点で、今年のサマーシーズンにかかる他の大作は、もう情報がガンガン出ていた時期だったんです。我々は後発組だった訳ですね。なので、普通にやってもつらいという事で、夏に向けてイベント感をかなり出す方向でやろうと。やっぱり、アニメーションという言葉だけで鉄のカーテンをガラガラッと下ろしてしまう人もいらっしゃるので(笑)、そういう人達にどれだけリーチできるか、という話はよくしていました。どんな人に観てもらっても、比較的楽しんでもらえる作品だと思ったんです。
── 一部に特化して宣伝するのは、明らかにもったいないですよね。
竹内 ええ。なので、宣伝は「ムーミン」とか「キャンディ」といった作品で仕事をさせてもらったプチグラパブリッシングさんに、また一緒にやりましょうというかたちでお願いしました。作品を観ていただいたら、もう社長の伊藤高さん自ら乗り気になってくれて。かなり興奮気味に(笑)。劇場も、渋谷パルコのシネクイントさんにまずお話しして、劇場の方に試写を観ていただいたら、即「やりましょう」というお返事をいただいて。
── すごい威力の作品ですよね。観たらおしまいみたいな(笑)。シネクイントは、都内のミニシアターの中でもかなりスクリーンが大きい劇場ですよね。
竹内 『マインド・ゲーム』はシネスコで作られているので、それがちゃんと活かせるスクリーンサイズであることも劇場選考の条件でした。あと、5.1chサラウンドの音響設備があること。どうしても5.1chの音で観てもらいたい、というのがあったんです。
── 何回かいろんなところで観てるんですけど、やっぱり劇場によってそれぞれ感じが違いますね。シネクイントは特に。
竹内 うちの社内にも5.1chの試写室があるんですけど、いかんせんスクリーンが小さくて。シネクイントさんで一般試写をやった時に、私も観させていただいて、通算8回目ぐらいだったんですけど、全然違いましたね。さっさと出て次の仕事しなきゃいけないのに、しばらく観ちゃって(笑)。「もうちょっと、神様のシーンまで!」「やっぱり、竹筒ダンスシーンまで!」って、ズルズルと。
── 結局最後まで観ちゃうみたいな(笑)。それで、具体的な宣伝の打ち合わせというのは、どんな感じだったんですか。
竹内 配給させていただく事になってすぐに、まずキービジュアルとメインになるカットをどうするかということで、STUDIO4℃の方で湯浅監督とも顔合わせさせてもらいました。ポスター案なんかも監督がすごくいっぱい描いてくださって、どれも素晴らしくて決め難かったです。
── 現在、チラシやポスターで使われているビジュアルに至るまで、二転三転してますよね。
竹内 そうですね、いろいろと(笑)。ここまでメインビジュアルを作るのが難しかった作品もなかなかないと思います。
── ああー。
竹内 最初に話し合ったのが、この映画の魅力を静止画でどうやって見せるのかっていう(笑)。普通の映画と違って、「ここが象徴的な部分です」という部分もないし。
── 少年バットがいる訳じゃないし。
竹内 そうそう(笑)。一番最初のビジュアルは、西君が暗闇でうずくまっていて、「キミハ、シンドウスルエネルギー」というコピーが乗ったデザインだったんです。かなり盛り上がったんですけどね。でも「ゲームっぽくて受け付けない人もいるだろう」という意見もあって。
── 難しいですよね。そこだけ見せて、そういう映画なのかと思われちゃうと、それも違うし。
竹内 そうなんですよ。あと、タイトルがタイトルだけに、あまりスピリチュアルな方向に行かないようにとか、まんまゲームっぽくならないようにとかは、劇場さんからも再三言われてました。ちゃんと映画っぽく見せてほしい、と。最初は「映像万博」とか「体感映画」という部分でやっていたんですけど、やっぱり話の良さも押した方がいいだろうという事になって。監督もおっしゃってますけど、これだけストレートでアッパーなメッセージがちゃんとこもった映画は最近希有なので、それはなんとしても出したいなと。……コピーとメインビジュアルに関しては、劇場宣伝会議でいろいろ二転三転してましたねー。みんなそれぞれ思い入れがあるので、なかなか決まらないんですよ(笑)。
コラム── 最初に東京国際アニメフェアとかで配っていたチラシ(ティーザー)は、その最初の案を中心にして、いろんな場面をパッチワークした感じでしたね(右画像・上段)。「いろいろ見せたい」という思いがストレートに出てる(笑)。
竹内 ああ……あのチラシの前に、実は別のデザインがあったんです。街をバックに西君の顔があって、頭が爆発してロゴが出てる、「未来世紀ブラジル」のUS版アートワークみたいな。
── ああ、はいはい。「週刊ユアサ」にも出てましたね。
竹内 その時は全員一致で「これで行こう」という話になって、ティーザーとかは作らないでメインビジュアルは最後までそれで突っ走るつもりだったんです。で、STUDIO4℃さんで実際に描いていただいていたんですが、結局いろいろあってそちらは一旦保留になりまして。ちょうどその時期が東京国際アニメフェアの直前だったので、今度は急いで本編中の画像をかき集めてデザイナーさんに並べてもらって。でも、短時間ですごくイイ感じにまとめて下さったと思います。そうやって急遽作ったティーザーだったんですけど、結構中身をいっぱい見せていたので、今度はそれよりもさらにメイン的なものを作らなくてはいけない。あと、実写とアニメの要素が混ざり合っている事を分かりやすく伝えなきゃいけない。それで、登場人物の顔がいっぱいある現在のビジュアルになったんです(右画像・下段)。顔や通天閣などのパーツは湯浅さんとSTUDIO4℃さんで作って、配置はデザイナーさんが組むというかたちで作っています。
── 結果的に、それまでの中ではあのビジュアルが一番映画の中身を表してますよね。
竹内 全部は見せてないけど、全体のイメージは伝えてるかな、と。看板なんかで大きくした時に、かなり映えるビジュアルだなと思いました。
── 今回、湯浅監督自らパブリシティ活動に積極的に参加されてますよね。日本各地を飛び回ったりして。
竹内 横浜・大阪・福岡と、キャンペーンに回っていただきました。有難いですね。やっぱり監督が行かれたところは、同じ地方でも数字が違いますし。インタビューもかなりの数を受けてもらいました。途中からどんどん媒体の数が増えていって、スケジュール表も大変な事になってました。
── プロモーション活動で監督と行動を共にされる事も多かったと思いますけど、何か面白いエピソードとかあります?
竹内 あー、そうですねえ……面白かったというより、すごい無茶をしてもらった時があって。公開初日の舞台挨拶なんですけど、渋谷での挨拶が11時50分ぐらいに終わって、3時半には心斎橋に着いてないといけなかったんです。「監督すいません、12時の電車に乗ってください!」って、渋谷をダッシュしてもらった事がありました。そういう時でも「あ、大丈夫ですよー」っていつものトーンで言ってくださって。
── 魅力的な人柄ですよね。
竹内 皆さんおっしゃるけど、ホントに飄々とした感じで、面白い方です。アニメ界でも、あれだけ多くの皆さんから応援される方も少ないというか……やっぱり、湯浅さんの才能が異質というか、別次元な芸当だからだと思うんですけどね。あと、作品から滲み出ている愛嬌とか。クリエイターの方同士って、普通そこまで誉めない気がするんですよね。
── なんかホントに「みんな湯浅さんが好きなんだなー」って感じしますね。まあ、御本人にお会いすると、すごくよく分かるんですけど(笑)。
竹内 私は、こんなに若い監督がこんなにすごい映画を作ってくれた事が嬉しい、というのが単純にまずあって。新聞や雑誌とかで取り沙汰されるような日本のアニメって、随分とイメージが固定化してるじゃないですか。そこから新しい監督が出てきてくれて、とても嬉しかったんですね。この作品で久しぶりにワクワクする感じを得られたという方も多くて、マインド亀掲示板を見ていただくと一目瞭然なんですけども。ライターさんやマスコミの方でも、盛り上がってくださる温度が普通じゃなくて(笑)。でも、最初は全然試写に来てもらえなかったんです。試写状も文字と写真だけでは分かりにくいと思って、DVDにしたんですけど。
── あ、なるほど。
竹内 それでもやっぱり伝わらなかった。開封すらしてないって噂もありますけどね(笑)。でも後半になるにつれて、どんどん試写室に人が増えていって、満員状態が続いたんです。入れなくて帰ってもらったりもしました。「もう、みんな早く観てくれればよかったのに!」って(笑)。
── そこまでとは言わないまでも、今まさに劇場で同じような事が起こってますね。
竹内 そうなんです! 先週末は前週比130%ぐらい集客率が上がってたんですよ。金曜日のトークショーも、平日とは思えない入りになっていましたし。ここに来てみんなの声がどんどん広まってる感じですね。やっぱり観た人の熱い言葉と一緒に伝えてもらわないと、なかなか……(苦笑)。キーワードを並べてストーリーを入れて画面写真があっても、やっぱり「どういう作品なの?」というのがあるみたいで。
── 「宣伝とは?」みたいなところに立ち返らされるような。
竹内 立ち返らされましたね! 今回は。
── 一番ストレートな勧め方は「観れば分かる」なんですけどね。
竹内 まあでも、我々の仕事は「観れば分かる」だけじゃダメですから(笑)。アスミック・エースで手がけるアニメ作品は、劇場版としては去年の『茄子 アンダルシアの夏』に続いて、『マインド・ゲーム』が2作目なんですが、これからも年に1本は劇場アニメ作品をやっていきたいと思ってます。ノウハウを溜めて、別の視点なんかも持ち込んで、もうちょっと映像業界全体の状況を変えたいなあと思いますね。
── 行く行くは企画・制作から参加するという事もあるわけですか。
竹内 ええ、スタジオさんとの間で、我々の方からもどんどん提案していきたいと思っています。
── その中で、「湯浅政明監督第○作」とか作れたらいいですね。
竹内 ねー! いやホントに、それは思いますね。
── 期待してます。じゃあ、最後に読者にメッセージを。
竹内 皆さん、もう作品は観られてますよね(笑)。まだ見つけられてないでしょう的なネタをひとつ言いたいところなんですけど……こないだのイベントでは多分、監督の解説でも触れられていなかったところで。クライマックスの脱出シーンで、登場人物それぞれに危機一髪の瞬間があって、それを助けてくれるのが、それまでの人生でなんとなく信じて持っていたものだった、という風に描かれてるんですよ。そこを2回目・3回目に見てもらえると、また感動できるのでは、と。
── いいところ突いてきますね。僕、そこもそうなんですけど、毎回観るたびに泣く場面が違うんです。
竹内 そうですねー!
── ホント、つくづくいい映画ですよね。じゃ、今日はどうも有難うございました!
竹内 有難うございました。金曜夜のシネクイントでの湯浅監督トークショーもまだあるので、よろしくお願いします!

 案の定、その後に天井が抜けたんですが、竹内さんは軽やかな受け身で着地しておりました。普段から何か鍛錬してるんですか? と訊くと、「毎週末に趣味で岩登りやってるんです。ボルダリングっていうんですけど、そんなに高くない場所を、ロープとか着けないで素手で登るんです。オススメですよ!」との事です。みんなもやってみよう! マットは下に敷いてね。


(04.09.03)


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