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コラム

『マインド・ゲーム』応援団
  第13回 応援団部室トーク《Vol.2 井上俊之》

 ども、応援団本部倒壊のため、看板背負って現在流浪中の「俺が本部だ」“でぞれ”です。最終回までに屋根ふさがるのかしら。
 前回に引き続き、今週も『マインド・ゲーム』応援団員をお招きして、その素晴らしさを熱く語っていただきます。第2回のゲストはアニメーターの井上俊之さん! カリスマ登場ですよ! わっちごときが初対面でいきなりクロスオーバートークなどぶちかますのは実におこがましいので、今回は小黒編集長に助っ人を頼みました。
 何はともあれ、カリスマの言霊に耳を傾けるがよいのだ!

2004年9月6日
取材場所/『マインド・ゲーム』応援団緊急仮本部(都内某喫茶店)
取材/小黒祐一郎、でぞれ
構成/でぞれ



小黒  えーと、それじゃあ、俺が井上さんに話を訊く感じで始めればいいの?
でぞれ あ、はい。それでお願いします。
小黒  それでは、井上さん。『マインド・ゲーム』を御覧になっていかがでしたか?
井上 すごく面白かった。久々にアニメーションを観て、声を出して笑いました。そういう事って、あんまりないでしょ? 最近のギャグアニメって面白いものが滅多にないから。しかも声まで出して、というのは久しぶりのような気がする。神様のシーンなんて大爆笑したからね。観終わった後も気持ちのいい、清々しい気分でしたよ。
小黒  アニメーションとしてはどうでした?
井上 アニメーションとしてはね、本当に羨ましい! まあ俺はいろんな巧い人の仕事を見るたびに、しょっちゅう羨ましいと思うタチなんだけど。観てる間は、「いいな、羨ましいな。俺も常々こんな風に描きたいと思ってたんだよな」と思いながら観てました。だったら、そんな風に描きゃいいじゃん、って事なんだけど、そうは簡単にいかないのがアニメーションの難しさなんだよね。それを湯浅さんは、あっさり描かれてしまうから。制作現場の実態は分からないけど、相当な量を湯浅さん自身が作画してるんじゃないかと感じた。こんな事を言うと作画したスタッフに悪いけど、多分、湯浅さんの力を借りないと描き得ないような表現がいっぱいあった。
小黒  ええ。特にレイアウトの段階で手を入れてるようですね。作監の末吉(裕一郎)さんと2人で、相当ラフ原画を入れていますよ。
井上 いくら優秀な原画マンを揃えたとしても、湯浅さん抜きでああいう画面にはなかなかならないはずだから。それはもう、ありとあらゆる面において。一枚絵もそうだし、動きもそうだし、空間の捉え方とか、カット割りのタイミングとか。エフェクトアニメーションも巧かったねえ。水の描写はすごく好きだな。バシャーンと弾ける水の、ああいう感じを出して描ける人って、なかなかいないんじゃないかな。日本のアニメーションの水というと、何かが落ちると水柱が上がるんだよね、伝統的に(笑)。『どうぶつ宝島』辺りから始まってると思うんだけど、でもああいう現象って実際にはほとんどない。それが見た目に気持ちよかったのと、技術的に破綻なく描けるから普及してるんだと思うけど。実際の水飛沫を見ると、かなり複雑なものなんだよね。だから、既成のスタイルを捨てて、それを描くのはかなり難しいことなんだ。でも『マインド・ゲーム』には、その感じを巧く描いてるショットがいっぱいあった。そういうのがすごく好きなんです。
小黒  ムックを作っていて、この作品のレイアウトの大半に目を通したんですが、湯浅さんの手の入れ方が巧いんです。エンディングの走馬燈のシーンとか、標準レンズのノーマルな構図にはあまり手を入れないで、斜めになってパースがついてる構図だけ全部描き直したりして。それを連続して観ると、全部を湯浅さんが描いているかのように見える。
井上 その辺が作品の幅なんだろうね。全部を湯浅調で固めないでも、要所要所にそういう画が来る事によって、いいところの印象で全体が締められるみたいな。『人狼』みたいな作り方だと、全体がしっかりしてるから粗いところがすごく目立ってしまう。でも、ああいう幅を出しておくと、いいショットがきいてくる。そういうラフさって、ある程度は大事なんだろうな。
小黒  技法的にも、バラエティに富んでますよね。ラブシーンで油絵調になったり、フルCGなんだけど絵本っぽい感じだったり。
井上 そうね。普通、商業アニメでああいうアートっぽいものに走ると、寂しい事になる場合が多い(笑)。かぶれただけで終わって、アートにはなり得ない。
小黒  すべってしまうわけですね。
井上 だけど、『マインド・ゲーム』は、そういうアートのジャンルに紛れてもおかしくないものになってる。むしろ最近、下手にもてはやされてる安手のアートより、よほど芸術的ですらあると思うんだ。ハンパなものを見るより全然いいんじゃないか、と。
小黒  湯浅さん自身にそういう素養が充分にあるし。
井上 アニメーションというのは、やっぱりすごく緻密な作業なんですよ。その中にああいう画を持ってくるすごさっていうのは、大したもんだなあと思った。一見、勢いとセンスだけで描いたような画を維持しながらアニメートしていく大変さというのは、本当に生半可なものじゃない。1枚ラフな感じに描いたら、あとはその各部の軌道をしっかり追わないと、決してちゃんとは動いてくれない。それを守りながら、最初に描いた1枚の良さを失わないで描き続けていくというのは、非常に難しい事なんです。落書きを10枚続けても、決してアニメーションにはならない。
でぞれ なるほど。
井上 アニメーションの作業にはありとあらゆる制限があるので、1枚の画を描く作業とは程遠いものがあるんだよね。論理的にもすごく考えていかなければならないし、描き進めていくうちに、どんどん縮こまっていくものなんです。その制約の中で、ああいう奔放な感じを出している事に、俺は驚きますね。最後までそれを失ってない事に。
小黒  湯浅さんが描くイメージボードの画が、『マインド・ゲーム』ではそのまま力を失わずにアニメーションになってる感じがしましたね。
井上 普通、ありえないよね! アニメーションやると、最初に描いた奔放なイメージも大胆な線の魅力も、だんだんなくなっていくものなんだ。なんというか、つまらない、ちゃんとしたものになっていく。それをあんなに維持してる、そのすごさの秘密を知りたいところだよね。まあ俺は、一枚絵で見るとつまらないけど、動かした時にやっとその素晴らしさが分かるような、きっちり描かれた原画もすごく好きですけど。
でぞれ 『マインド・ゲーム』で「自分が描くならあの場面」とかって、あります?
井上 自分なら? どこだろう……うーん、どこを振られても困ったような気がするね(笑)。
でぞれ ええっ!
井上 そういった“作画の力”を表現するには、自分に欠けてるものが必要だから。俺は言われた事をキッチリ描く自信はあるけど、アニメーションの魅力みたいなものをなかなか出せないでいるんですよ。きちんとした作画はできるけど、アニメーションの大事なもの、楽しさみたいなものは抜けてるから。「はたして俺に描けるんだろうか」と。
でぞれ いやあ。
井上 だから、湯浅さんの力を借りればね。湯浅さんがラフを入れてくれれば、みんなも描けたように俺にも描けるとは思うけど。そうじゃなくて、俺の力だけでそれを描き切ろうと思うと、なかなか難しいと思うんだよね。その辺が「こういう風に描けたら羨ましいな」っていうのに繋がるんだけど。
でぞれ じゃあ、単純にどのシーンが一番好きですか?
井上 だから裏返しになるけど、どこも好きですよ。どこもアニメーションの魅力に溢れてるから。
小黒  あ、俺にも聞いて聞いて。
でぞれ どこなんスか?
小黒  中学時代の回想で、西君とみょんちゃんが俯きながらすれ違うところ。あれが一番好きだな。
井上 ああー! あれ、いいショットだよねえ。
でぞれ いいですよね。
井上 他に何があったかな、ちょっと思い出してみる。どこだろう……ミュージカルシーンも楽しそうだったし。「はたして自分にあんな風に描けたのかなあ」とか、つい考えちゃうんだ。……こんなんでいいのか、と思うけど、やっぱり水飛沫を描いてみたかった(笑)。
でぞれ クジラに呑まれた後、西君が車から水の中に飛び込むところの水飛沫とか、まさにそういう感じですよね。
井上 ああー、そうそうそう! あれいいんだよー。水飛沫はホントに、どこを取っても良かったねえ。
でぞれ そもそも湯浅さんが水の描写が好きですもんね。
井上 そうね、ずっとこだわってるというか、過去の作品でも何回も出てくるし。「こう描いてみたい」っていうイメージがあるんだろうね。僕も水のエフェクトが好きなので、反応が普通の人より激しいのかもしれないけど(笑)、ああいうのを描いてみたいな。
でぞれ 映画を実際に観る前は、どういう印象を持たれてましたか?
井上 まったく予備知識なく観たので、想像を絶する映画というか(笑)。シビアに見れば、おかしな映画だと思うんですよ。普通の映画として考えると時間配分もおかしいし、シナリオの構成的にも妙なバランスだよね。クジラの中に入ってからが長いじゃないですか。そこからまた二転三転していくのかと思って観てたんだけど、そうはならなくて。普通だったら「ああいう構成って、ないんじゃない?」と思うところだけど、でもそんな事も気にならなくなる。
でぞれ すごいですよね、見せ切ってしまうという。
井上 うん、見れてしまう。おかしな映画だよね。
小黒  映画の冒頭で、イメージシーンらしきものが続くじゃないですか。最初に観た時、あそこでちょっと「ヤバイ!」と思ったけど(笑)。「この調子で、このまま終わったらどうしよう!」って。
でぞれ ちょっと不安になりますよね。
井上 でも、すぐに湯浅さんの呼吸というか、映画の確たる呼吸が感じられたから。最初に見せられたイメージも、ちゃんと後で「ああ、あれはそういうシーンだったんだ」というのが分かるんで、始まってすぐに安心しました。そういう不安感を与える映画って、あると思うんですよ。「オチがつかないんじゃないか?」とか(笑)、「考えてるようで、実は何も考えてないんじゃないか?」とか。演出の不出来がアートっぽい装いの下に隠されてて、体裁がいいがために勝手にみんなが深読みしちゃう映画って、結構ある。そういう種類の映画じゃないんだな、というのが始まってすぐに分かったから、安心して観ていられたんだよね。クジラに入ってから、ちょっと不安になったけど。やっぱり、バランスとしては変だよね。もっと端折れるじゃない、普通なら。
小黒  それもそうだし、西君が生き返ってからの勢いがもっと続くかと思うんだけど、そうはならない。
井上 そうねえ。ノーマルに批評していけば、すごく変な形態をしてると思うんだけど、「それすらいいじゃん!」っていうね。アニメーションが持ってる力というのが、非常にプラスに作用している。それは俺が作画好きだからそう感じるのか、と思うんだけど、でも一般の批評を聞いても結構、持続して観られるらしいから。だからやっぱり面白いんだと思う。作画のお遊びが空騒ぎで終わらないで、面白さに繋がってる。『トムとジェリー』とか、テックス・エイヴリーとかに似たようなものを感じましたね。動きそれ自体がそのまま娯楽になっているような、アニメーションの持つ力というものを再認識したというか。
小黒  ミュージカルシーンなんて、日本のアニメ映画で、あんなに物語の中で機能してる例ってあまりないんじゃないですか。
井上 普通にストーリー映画の中であの長さで入ってると、多分まずいと思うんだけど、そんな事は全然ない。湯浅さん天性の、タイミングを操るセンスなのかな。気持ちがいいんだ。それはアニメーターだけじゃなくて、普通の人にも届いてると思う。あそこはストーリー的に何か進展するわけじゃないし、普通だったら飽きてしまうんだけど、それを飽きさせない。まあ、あそこに到達する頃には、普通のストーリー映画じゃないんだという事は分かるんでね。ストーリー展開に期待しなくなる、という事ではないけど。
でぞれ ドラマでもしっかり惹きつけている上で。
井上 でもそれだけじゃない、やっぱりビジュアルの魅力と、アニメーション自体の持ってる魅力、その力だと思う。その辺がやっぱり羨ましい。僕が例えば、今(敏)さんの演出の下で仕事をすると、そういう作画本来の力を要求される事って、そんなにない。『東京ゴッド(ファーザーズ)』の時は、わりと作画の力を引き出すような感じだったけど。それほどアニメーションの力がなくても、カット割りやレイアウトの力とかで、今さんの作品は成立しちゃうし、見せてしまうから。特に最近は、押井(守)作品もそうだし。
小黒  『スチーム(ボーイ)』だってそうですよね。
井上 あれは言ってしまえば、画の密度で見せるものだから。『マインド・ゲーム』を観た時には、「俺はやっぱり根っからアニメーターなんだな」って再認識しちゃいましたね。最近はどうしても演出・ストーリー主義になりがちだけど、「やっぱり自分がやりたいのは、こういうものではないかな」って。
小黒  映像で楽しませるっていう事ですか。
井上 うーん、以前はそういうのって、やっぱり幻想でね。長い事、そういう作画主導でやった作品からは、何の快感も得られなかった。作画だけが空騒ぎしてる。まあ自分もそういうものに参加してきたし、たくさん見せられてきて、作画が面白いだけじゃ決して面白くはならない、と思っていた時期が長かった。でも最近、『マインド・ゲーム』と立て続けに、シルヴァン・ショメ監督の『ベルヴィル・ランデブー』(原題:LES TRIPLETTES DE BELLEVILLE)という作品を観たんです。観ました?
でぞれ ええ。DVDで観ました。
井上 あれも、ストーリー的には破綻してるというか、まあ要するに有り得ない話で、普通に演出したら成立しない。
でぞれ そうですね。
井上 それを作画パフォーマンスだけで見せてしまう、その作画力たるや……今さんと一緒に観たんだけど、呆気に取られてたね(笑)。普段はそういう、作画主体でアニメーターだけが喜んでいるようなのは映画じゃない! って否定してるんだけど。『ベルヴィル・ランデブー』を面白がって観てしまった自分に驚いてた。
でぞれ (笑)。
井上 あの作品の持っている、作画が醸し出しているユーモアっていうのは、日本のアニメーターは必見だと思う。……むしろ悪い幻想も抱きかねないけど。原画さえ良ければいいんだ、みたいなね。
でぞれ 『ベルヴィル』も『マインド・ゲーム』も、作画で見せるアニメであるのは間違いないんですが、それ以前に作り手の中身に豊かさがあるから、内容的にも面白い作品になってるんじゃないかと思うんですけど。
井上 やっぱり、確信があるという事……「これは面白いものになってる」というのがちゃんと分かってる、という事かな。でもなかなか、そういう事ってないんだな。ホントは大半がそうであるべきなんだけど。
小黒  でも、湯浅さんも言ってたけど、若い観客からの反応は微妙らしいですよ。
井上 えっ、そうなの? 若い人が?
小黒  とあるイベントで「作品の狙いが分からない」とか言われたらしいですよ。
井上 分からない!? あれほどストレートなのに、何を言わんとしてるのか分からない方が不思議だけど。深読みしすぎてる? そんな事ないよな(笑)。
小黒  誉めてくれる人は20代半ば以上とか、30代とかが多いらしくて。やっぱり1回、世の中に出て働いて挫折して、「俺、ダメなのかな」って思った経験があった方が、感動できるんじゃないですかね。
井上 そんなもんなのか。むしろ俺は、若い子たちがハマってしまうんじゃないかという気がしたんだけどね。観終わった後、この作品をバカ正直に捉えて、思いこみ次第で人生リセットできるんだとか、怖いものなしみたいになってしまう若者がいたら、ちょっと危ないな、とも思ったりしたんですよ。まあ、ある意味それを本気にして「頑張るぞ」ってなればいいんだけど。
でぞれ 「置いて行かれる」っていう人も多いですね。
井上 ええー?
小黒  途中、休む暇まであるのに(笑)。
井上 そうだよねえ。
小黒  ただ、俺はクライマックスの脱出シーンは、ちょっと置いて行かれた(笑)。
井上 長すぎて? いや、俺はあの長さすら気持ちよかった! 普通に考えれば、あの長さは必要ないんだけど。
小黒  半分でも充分ですよね。俺は半分くらいで「ここで終わると、ホロリと来るぞ」と身構えていたのに、そこから更に×××や×××(公開中につき伏せ字)が現れて「まだ続くの!?」って驚いた。
井上 だから、ありとあらゆる部分が普通の映画と比べると異常で、その異常さすら気持ちがいい(笑)。
小黒  作ってる側があの長丁場のクライマックスで、あれだけの緊張感を維持してるのがすごいですよ。
井上 そうだよね。あそこはね、作ってる方も懐疑的になると思うんだよ。あれを描き続けるというのはものすごく大変だから、必要かどうかというのを問うわけだよ。
でぞれ ええ。
井上 湯浅さんも自分で原画を描くわけじゃなくて、人に描いてもらうとなった時に、はたしてこの量が必要なのかどうか、自問自答したはずなんだけど、それでもあの量でしょ? 「この長さでいいんだ」と思える確信がすごいなあ。あれ、5分ぐらいあるのかな(編注:6分ありました)。普通ならあの長さは維持できないよ。
小黒  多分、湯浅さんのパワーでいうと、クライマックスはあのぐらい必要なんですよ。僕らはあの半分とか3分の2ぐらいで「すごい映画だったな」と思うけど。あ、ちょっとラストの中身に触れそうなのでこの辺で……じゃあ、最後に読者に向かってメッセージをお願いします。
井上 え。
小黒  若いアニメーターに「観ろ!」とか。
井上 それは是非、観てほしいけどね。でも、逆に心配になってしまうかな。『マインド・ゲーム』を観て、ああいうアニメーションがやりたいと思って業界に飛び込んできたとしても、実際にやらされるのは制約だらけの事だから。それと戦っていけるのか、というね。まあ、それは余計な心配ですけど。アニメーションを志す人たちに対して、間口を広げるという意味では、大事な作品だと思うんだよね。アニメというだけで毛嫌いする人たちの持ってる偏見を、取っ払える作品でもあるので。この作品を観てアニメーションを好きになってほしいし、そうさせる力があると思う。……やっぱり、天才的な才能がないと、あれはなかなかできない事ですよ。俺にだって多分できない(笑)。
小黒  カリスマをもってしても、できないですか(笑)。
井上 できない! 俺はこの制約の多い業界に順応してやって来た人間だから、なおさらかも。近年、この業界に入ってくるのはアニメーションが好きな人ばかりなわけですよ。昔みたいに、絵は描くけどアニメが好きかどうかは分からない人が、とりあえず一過程としてアニメーションをやってみる、という事はなくて。やっぱり今のアニメに適応できそうな人だけが入ってきて、さらにその中で適応する人たちが残っていって、より間口が狭くなってきてる。『マインド・ゲーム』は、それを変えられる作品だと思うんだ。この作品がそういうきっかけになってくれればいいと思うし、こういう作品がもっと続いて発表されれば……でも当面、湯浅さんに代わるような人は、なかなかいないから。
小黒  思ったんだけど、湯浅さんはタイプ的に、宮崎駿に近かったんじゃないですかね。自分の世界があって、抜群にパワーがあって、作画もできて、実は演出もできて、やってみたら馬力もあった。やってる事は全然違うんだけど、意外と作り手のタイプとしては似てたのかな、って。
井上 そうねえ。馬力が必要なんだよね、そういう人になるには。湯浅さんみたいに間口を広げる才能を持った人は他にも何人かいるけど、その馬力が欠けてる(苦笑)。だから、これを観て入ってきた人には、そういう人になってほしいよね。そういう人材になるんだっていう意気込みをもって。ぜひ『マインド・ゲーム』を観て、アニメにかぶれてほしい。

 ……井上さん、どうも有難うございました。内容の濃いお話をたくさん頂けて、もう頭クラックラです。ちなみに文中に登場した『ベルヴィル・ランデブー』という作品は、2005年お正月に新宿・テアトルタイムズスクエアほかにて公開予定です。『マインド・ゲーム』に比肩し得る傑作ですので、各自チェックの事。公式サイトはこちら
 それでは次回も『マインド・ゲーム』を愛してやまないゲストの方と一緒に、話に花を咲かせていきたいと思いますので、お楽しみに!


(04.09.13)


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