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コラム
「編集長のコラム」 小黒祐一郎

 第2回「『黄金戦士ゴールドライタン』と『Gライタン』」

 アニメ雑誌等の仕事をしていると、タイトルの表記に気をつかいます。
 気づいた方もいるかもしれませんが、なかむらたかしさんのインタビュー記事では『ゴールドライタン』を『Gライタン』と表記しています。
 この作品は『黄金戦士ゴールドライタン』と表記される場合が多いのですが、この作品のオープニング画面のタイトルには「黄金戦士」なんてついていないんですね。オープニング等で使われているロゴは『Gライタン』という文字の、「G」の部分に「ゴールド」とルビがふってあるという形です。
 ところが、この作品の関連商品では、パッケージに『黄金戦士ゴールドライタン』と表示されています。『Gライタン』のロゴの上に「黄金戦士」という文字が乗っているわけです。つまり、オフィシャルに「黄金戦士」がついた表記があるわけです。
 これと似た例に『太陽の使者 鉄人28号』や、『花のピュンピュン丸』等があります。オープニングのタイトルでは、それぞれ『鉄人28号』と『ピュンピュン丸』と表示されています。ですが、『太陽の使者……』というタイトルで、あるいは『花の……』というタイトルで記憶しているファンは多いはずです。後者に関しては、再放送時の新聞の番組欄に『花の……』と表記されていた記憶があります。
 つまり、本編画面に表示されたタイトルと、慣用的に使用されているタイトルは、必ずしも同じではないという事です。
 タイトルを表記する基準をどうするかというのは、難しい問題です。例えば、OVAでパッケージに印刷されたタイトルと本編中で表示されたタイトルが違うというような事は、よくあります。はっきりした基準がないと、ひとつの雑誌の中で、同じタイトルに関して複数の表記法が使われるというチグハグな事になってしまいます。
 「アニメスタイル」と「WEBアニメスタイル」は、記事中で作品タイトルを必ずフルサイズでタイトルを表記していくという方針ではありません。取材記事が多いため、それをやるとかえって読みづらくなる等の問題があり、略して表記する場合が多いはずです。ただ、作品リストや注ではフルサイズで表記するように心がけています。
 フルサイズで表記する場合は、「アニメージュ」のPERFECT DATAなどで知られるリスト制作委員会の表記法に、なるべく従うようにしています。これは初放映(公開、発売)時の画面表示に準拠するというスタイルです。多分、現在、アニメ作品のタイトル表記に関する唯一のはっきりした基準であるはずです。
 リスト制作委員会が編集した「Animage アニメポケットデータ2000」(徳間書店より発売中)は、国内の全ての商業アニメのタイトルと初放映(公開、発売)日等のデータを満載した資料集です。これを「アニメスタイル」編集部では数冊を常備して、タイトル表記の参考にしています。
 タイトル表記で、私が最近、気になったのはカナメプロダクションが制作した劇場作品『ウインダリア』です。この作品のタイトルに関しては、様々な媒体で、色々なパターンで表記されています。「イ」の文字が大きい表記と、小さい表記、あるいは『ウインダリア』の前に「童話めいた戦史」という副題がつく場合、つかない場合があるんです。
つまり、
 『ウインダリア』
 『ウィンダリア』
 『童話めいた戦史 ウィンダリア』
 『童話めいた戦史 ウインダリア』
という具合ですね。
「イ」の表記に関しては印刷物等に使われていたタイトルロゴが、読みようによっては『ウィンダリア』と読める形だったのです。しかし、そのロゴは本編には使われていません。「童話めいた戦史」という副題もついていません。ですから、本編での表示に準拠すると、この作品のタイトルは『ウインダリア』と表記する事になります。
 ちなみに当時、角川書店から発売されたこの作品のムックの中でも、数種類のタイトル表記が混在しています。さらに、原作者である藤川桂介さんが書いた同作品の小説版のタイトルは「ウィンダリア 童話めいた戦史」。この本のあとがきでは、藤川さん自身が「ウインダリア」と「ウィンダリア」では意味が違うのだという話をしています。これは表記法についての話ではなく、意味についての話ですが。
 画面表示に準拠するというスタイルが、全く問題がないかというと、そうでもないんです。画面上で、タイトルが改行されている場合はどうするか、ひとつのタイトルが数画面に分割されて表示される場合はどうするか、あるいは、複雑なかたちで英文でルビがついている場合はどうするのか、といった問題があります。
 例えば『ああっ女神さまっ』のタイトルロゴは「ああっ女神さまっ」の下に「AH!MY GODDESS」と英文が打ってあります。『機動戦艦ナデシコ』のタイトルロゴは「機動戦艦」の下に「Martian Successor NADESICO」と打ってあります。「AH! MY GODDESS」は「ああっ女神さまっ」の英文訳と考える事ができます。つまり、ルビだと考えられるわけです。ならば、この作品のタイトル表記は『ああっ女神さまっ』で構わないわけです。
 ところが「Martian Successor NADESICO」を「機動戦艦ナデシコ」の英文訳と考えるのは、ちょっと難しいかもしれない。それで、この作品のタイトルを『機動戦艦ナデシコ Martian Successor NADESICO』と考える方がいいかもしれない。
 勿論、これが皆が納得する表記法とは限らないわけです。『ああっ女神さまっ AH! MY GODDESS』と表記している出版物もあるでしょうし、『機動戦艦ナデシコ』と表記される場合もあります。
 画面表示に準拠するというスタイルでやっていくにしも、画面に表示されたタイトルを文字にしていく過程で「解釈」や「判断」が必要になるという事です。う〜ん、難しいですね。

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