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■「編集長のコラム」 小黒祐一郎
第5回「アニメフレーム物語(1) 3つのサイズ」 |
先日、リリースされた劇場『銀河鉄道999』DVDBOXでは、本編映像がビスタサイズで収録されています。これにはちょっと驚きました。なぜかと言うと、この作品は劇場公開時はビスタサイズでしたが、かつてのTV放映やLDBOXでは、スタンダードサイズだったんですよ。
劇場『銀河鉄道999』はスタンダードでフィルムを制作して、劇場での上映時に上下をカットしてビスタサイズにする形式の作品ですから、ビスタサイズでは画面の一部が観られないわけです。勿論、ビスタサイズの方が画面が締まるというメリットもあるので、どちらがよいとも言えません。
今回から数回に分けて、フレームサイズについての話をしましょう。極めて大雑把に分類すると、映画のフレームサイズは、スタンダードサイズと、ワイドスクリーンサイズのふたつに分ける事ができます。
ワイドスクリーンを、これまた大雑把に分類すると、アナモフィック(歪曲像)レンズを使う形式、フィルムの一部をマスキングする「ビスタサイズ」に分けられます。これと別に70ミリ等の方式もありますが、これは今回は触れません。このコラムでは、アナモフィックレンズを使う方式を分かりやすく「シネスコサイズ」と呼びましょう(シネスコとは、シネマスコープの略。本来は、20世紀FOXのアナモフィックレンズを使うスタイルの商標名です)。
スタンダートでも、ビスタサイズでも、シネスコでも、使用するフィルムは、同じ35ミリのフィルムです。フィルムの画を焼き込むことができる部分を最大限に使ったのが、スタンダードサイズ。その縦横比は、普通の写真や従来のTVと同じ、1対1.33。
フィルムの上下に黒味を入れて、横長の画面を映し出すのがビスタサイズ。縦横比は、1対1.85(あるいは1対1.66)。
シネスコで使うアナモフィックレンズとは、縦方向と横方向の圧縮率が違うレンズです。アナモフィックレンズで撮影された映像はフィルム上では、縦方向に圧縮されています。上映時に同じレンズを使い、正しい比率の映像にして上映するわけです。シネスコの縦横比率は一般に1対2.35。ビスタよりもさらに細長いサイズです。
昔、シネスコの映画をTV放映した時に、オープニングやエンディングのテロップが出る部分の画面のみが縦長になっている事がありましたよね。あれが、フィルム上の圧縮された映像です。通常の場面はTVサイズに合わせてトリミングして(左右をカットして)放映し、テロップが出る部分のみ、テロップが読めるように圧縮する形式での放映だったわけです。
おっと、硬い説明が長くなりました。
日本で最初にシネスコで制作された劇場アニメは、1959年に公開された『少年猿飛佐助』。東映動画の長編第2作ですね。全編がシネスコサイズで作られた最後の日本の劇場アニメは、おそらく1979年春公開の『龍の子太郎』でしょう。同年夏に公開された『銀河鉄道999』はビスタサイズで公開されています。このあたりが、シネスコからビスタへの過渡期です。アニメブームと共に、ビスタサイズが劇場アニメの主流になっていった印象もありますね。
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