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「編集長のコラム」 小黒祐一郎

 第11回「『ルパン三世』の話(1) 『風魔一族』の赤ジャケ」

 4月にリリースされるOVA『ルパン三世 生きていた魔術師』では、ルパンが青いジャケットを着ているそうで。長年のルパンファンにとっては「いやあ、今度はそー来たか」てな感じですね。今更説明するまでもなく、アニメ『ルパン三世』は1971年にその歴史が始まり、現在も新作が発表され続けている長寿タイトルです。
 長寿タイトルではあるけれど、『ルパン三世』は作品毎にテイストがかなり違います。内容もアダルト路線からギャグタッチまで。絵柄に関してもリアルタッチなものからグラフィックなものまで。そのテイストの目印になるのが、ルパンが着ているジャケットの色なんですな。
 ジャケットの色で歴代アニメ『ルパン三世』を分類すると、1971年〜72年に放映されたTV第1シリーズ『ルパン三世(通称『旧ルパン』)』で、ルパンが着ているジャケットが青(正確には青緑)。『旧ルパン』の“10年後の物語”でもある劇場第2作『ルパン三世 カリオストロの城』(79年)と、OVAとして企画され劇場公開された『ルパン三世 風魔一族の陰謀』(87年)も青ジャケット。
 1977年〜80年に放映されたTV第2シリーズ『ルパン三世(通称『新ルパン』)』でルパンが着ているジャケットが赤。劇場第1作『ルパン三世』(78年。通称『マモー編』)と、『ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!』(89年)から現在まで続くTVスペシャルシリーズ、そして、劇場『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』(95年)、劇場『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』(96年)が『新ルパン』と同じ赤ジャケット。
 1984年から85年に放映されたTV第3シリーズ『ルパン三世PARTIII』と、同時期に制作された劇場第3作『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』(85年)のみがピンクのジャケット。
 もの凄く大雑把に言えば、アダルトな『旧ルパン』路線が青ジャケット、陽気でコミカルな『新ルパン』路線が赤ジャケット。ピンクジャケットは、青ジャケットと赤ジャケットの中間に位置します。GAINAXの0VA『フリクリ』の5巻でも、赤ジャケットでルパンのコスプレをした主人公の父親が「ああ、この赤ジャケかい。ナオは緑の方が好きってわけかい」なんて言うくだりがありましたね。
 前述の『風魔一族の陰謀』は、歴代『ルパン三世』の中でも遊びの多い、肩の凝らない仕上がりの作品です。監修が『旧ルパン』と『カリオストロの城』の大塚康生、制作の中心が同じく『カリオストロの城』のテレコム・アニメーションフィルム。キャラクターデザインは『旧ルパン』チックで、ルパンは基本的には青ジャケットを着ているのですが、実はジャケットに関しても凝ったお遊びがあります。結婚式場から連れ去られた五右ェ門の花嫁・紫を、ルパンが敵から助け出して、彼女に「そこに俺の着替えがあるから、好きなのに選びな」って言うんですね。それで、フィアットの後部座席にあった服から紫が選んだのが、何と赤いジャケット。この作品のルパンは青いジャケットを着て登場していますが、彼は、着替えとして赤いジャケットも持っているわけです。『風魔一族の陰謀』の彼が乗っている車は『旧ルパン』後期や『カリオストロの城』と同じフィアット500ですが、アジトの車庫の中にはベンツSSKやアルファロメオがあるのかもしれません。青ジャケットを着せておいて、赤ジャケットのルパンも肯定している事を示す、作り手の懐の広さが感じられるお遊びでした。

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