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コラム
アニメやぶにらみ 雪室俊一

 第17回 畑ちがい

 熱心なファンが、ぼくの作品リストを作ってくれた。その中には自分でも書いたことを忘れているような作品もあり、その調査能力には脱帽するばかりである。
 ネット上で公開されているので、それを見た人から、いろいろなメールをもらう。いちばん多いのは、こんな作品を書いていた過去があったとは知らなかったというものだ。
 『バビル二世』『マシンハヤブサ』『氷河戦士ガイスラッガー』『ゲッターロボ』『ジェッターマルス』etc――ぼくの作品履歴を見た人が奇異に感じる作品たちである。
 少女ものやホームドラマなど、いわゆる軟派系のシナリオが守備範囲と見られているライターが、なぜこういう硬派系の作品を書いたのか、いろいろと推測されているようだ。元来、この手の作品は得意とはいえないのに、なぜ手を染めたのか。よほど金に困っていたのではと勘ぐる人もいるが、最大の理由は“時代”である。
 いまメカものの企画があって、雪室にシナリオを書かせようとする物好きはいないだろう。もし、いたとしても他のスタッフのブーイングにあって頓挫するにちがいない。
 しかし、当時はそういう物好きが若干、存在していた。別の作品で組んだプロデューサーが、あいつに頼むと毛色の変わったものが出来るのではないかと、注文をくれたのだ。不得手だからと丁重に断っても謙遜していると誤解されて、「苦手を逆手に取って新しい切り口で書いてほしい」などと持ち上げられたこともある。乗せられやすいタチのぼくは、その気になって引き受ける。
 その結果が派手なアクションが売り物なのに、どこを探してもアクションシーンがなかったり、基本設定を超越したとんでもないストーリーを創作して、演出家を面食らわせたりした。シリーズの中にこうしたピント外れの作品が紛れ込んでも許される、おおらかな時代だった。
 アニメではないが「ウルトラマン」で、カレーライスを食べている途中に変身しなければならなくなった主人公が決めのポーズを取ったとき、右手にスプーンを高々とかざしていて、物議をかもしたことがあった。まじめなファンにとっては、カレーのスプーンを持ったウルトラマンは見たくないかもしれない。いまだったらたぶん実現しないエピソードだろうが、当時は許されてちゃんと放映された。もっもとこういう、ウルトラCが通じるのは1回だけだ。
 ぼくの場合も最初は、さすが目のつけどころがちがうと、おだてられたりしても、すぐにメッキがはげてしまい、だんだんお呼びがかからなくなるケースが多かった。
 シナリオには柱というものがある。シーンのことで「磯野家・茶の間」とか「5年3組の教室」とか場面を指定してからキャラクターの動きやセリフを書く。
 『氷河戦士ガイスラッガー』で宇宙船同士の空中戦のシーンがあった。その柱をぼくは、なんの臆面もなく「空」と書いた。さすがのプロデューサーも渋い顔で、こういう場合は「宇宙空間」と書くのだと教えてくれた。たしかに「空」では戦士たちも戦闘意欲をなくしてしまいそうだ。
 まさに怖いもの知らずで当時は、あまり不得手だという意識はなかった。しかも書いていて、それなりにたのしかったのだ。もっともこういうライターがメインになることはなく、オマケ的に参加しているだけという場合がほとんどだ。
 そんななかで、なんと第1話を書けといわれたのが『バビル2世』だ。畑ちがいといわれる作品のなかでは、もっとも評価され、いまだに感想も求められたりすることがある。だが、成功したのは原作(横山光輝)と演出(田宮武ほか)の力でシナリオのウエイトは低い。
 かなりのカーマニアでクルマの雑誌を愛読していた、ぼくにとって『マシンハヤブサ』は得意なジャンルのはずだった。が、書いてみると生半可なクルマの知識が邪魔をしてあまりうまくいかなかった。この作品に限らないが、知りすぎている世界は意外と書きにくいことを痛感した。
 『ジェッターマルス』(手塚治虫原作)はアトムの分身のような作品である。これは辻真先さんのシナリオを読んで、とても太刀打ち出来ないと白旗をあげた。
 ぼくにとって不得手作品の最後は『Bugってハニー』である。ネット局も少なく、ビデオやDVDも発売されていないので、ほとんど知られていない幻の作品だ。テレビゲームのような作品をなぜ書くのかと非難する人もいた。なにを隠そう、縁がないわけではない。インベーダーやギャラクシアンなど初期のテレビゲームに凝り、ついには喫茶店にあったゲーム機を友人から譲り受けて、我が家がゲームセンター化したこともある。
 現在のパソコンには悪戦苦闘しているが、ソフトをオーディオテープでロードする時代のパソコンは2台も買い込んで遊んでいた。
 というわけで、決して畑ちがいではないのだが、書いてみると、地味すぎるとか、動きが少ないとか、評判はイマイチだった。それでもスポンサーが気に入ってくれ、かなりの本数を書いた。
 ぼくの作品の中では、もっとも毛色の変わった作品で現在、見ることが出来ないのは不幸というか、幸福というか……。
 さて、いまこういう作品の注文が来たらどうするか? たぶん、断るだろう。それ以前にそんな酔狂なプロデューサーはいないだろうな。

(了)

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