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アニメの作画を語ろう
animator interview
沖浦啓之(4)


小黒 『走れメロス』が初のキャラクターデザインになるんでしょうか。
沖浦 そうですね。ちゃんとやるのは初めてですね。ゲストキャラ以外では。
小黒 『走れメロス』は、どういった印象の作品になるんでしょうか。自分の仕事と、映画の仕上がりとでは、印象も別かと思うんですけど。
沖浦 作画的には井上(俊之)さんをはじめ、『老人Z』のメンバーがそのまま参加してくれて、クオリティの高い作画をしてくれたと思います。ただ、自分のせいでスケジュール的に間に合わないところも多くて、つらいところがあるかもしれません。ただ、今まで参加した中で、充実感という事では『人狼』と『メロス』が双璧です。なおかつ、自分に向いていた作品ですね。色々楽しかったし、思い出もありますし、充実感では計り知れないくらい。
小黒 なるほど。
沖浦 個人的には、おおすみ(正秋)さんとの出会いが大きいんです。それが、現在に至る自分の中で変化を作る、きっかけになっているんです。
小黒 というのは、具体的には。
沖浦 おおすみさんは、画を描かない監督なんで、打ち合わせの時に色々と言うんです。舞台なんかもやられてらっしゃいますけど、芝居の構築に関する考え方が、いちいち「なるほど」と思うようなものだったんですよ。
 打ち合わせの時に、おおすみさんが言われる事を全部メモして、忘れないようにしたんです。(おおすみさんは)自分でコンテを描かないから、最初の頃は他の人に描いてもらったものを、作打ちの時にどうにかするというやり方だったんですね。でも、どうしても作画していると不都合がでてきて、辛くなってくるんですよ。それで、途中からコンテは俺が清書したり、描き直したりするようになったんです。重要なシーンに重点を置いてですが。コンテの段階で手を入れておいた方が、後々、楽になるかなというのもあって。おおすみさんと打ち合わせして「こういう風にしよう」と話し合って進めました。
 大変な時には、作打ちの時間にまだコンテを描いてましたよ。作打ちの時間になって、原画さんも現れてる。でも、俺はまだそのシーンのコンテを描いてる。その間、打ち合わせにきている原画さんの、友達のアニメーターに話し相手になって時間を潰してもらって(笑)、なんとか30分か1時間待ってもらって、俺がその間にコンテを描き、完成したのをおおすみさんに見てもらって、コピーしたら作打ちが始まる、という感じで。
小黒 なるほど(笑)。
沖浦 コンテ打ち合わせや、作打ちの時に、おおすみさんの口から発せられた言葉は、いまだに覚えてますよ。それは自分の中で、演出する時の下地になってる。
小黒 それは作品作りの考え方とか?
沖浦 そうですね。大きな括りの事から、小さな事まで。
小黒 画作りというよりも、気持ちをどういう風に表現していくか、みたいな事ですか。
沖浦 ええ。この人間はこういう立場の人間だから、こういう芝居はしないとか、そういった感じですね。作画だけやってると、どうしても格好いい方に、自分が発散できる方に行ったり、その時に自分がこだわってる部分を強調して描いたり、色々あるものなんですけども。そういう演出上の裏づけがきっちり分かれば、カットも組み立てやすくなるし、無駄な事をしないで済みますからね。今まであんまりそういうタイプの演出家につかなかったという事もあるんですけど、だから新鮮で。(『メロス』では)まあ現場に監督があまりいないという事もあったんで(苦笑)、その辛さもありますけど、それはそれで自由にやれたっていう。
小黒 おおすみさんは、作打ちにはいるけれど、画を描いてる時はいないんですね。
沖浦 ええ。あとは現場に任せっきりで。だからこちらは好き勝手にやってましたね。背景の大野(広司)さんが、俺のすぐ背中に座ってたので、相談しながら。ひとつの現場に美術監督がいて、色指定がいて、作監がいて、という感じで、コンパクトなところで全部やっていたので、アニメができていくリアリティっていうんですかね、そういったものが感じられましたね。
小黒 御自身で印象的なシーンはありますか。
沖浦 好きなのは、森田(宏幸)さんが原画をやった、雨の中で妹と別れて、メロスが旅立つシーン。あそこがいちばん好きですね。
小黒 妹が、裸で寝床から出てくるシーンですね。
沖浦 ええ。
小黒 あれは、元々ああいうシーンなんですか?
沖浦 元々ああいうシーンです。
小黒 新婚初夜の妹の裸という、なまめかしいシチュエーションですよね。
沖浦 (笑)。あそこがあるんで映画が締まるというか。かなり効いてるな、と思っているんですが。ただ、それは参加してる人間の思いこみかもしれませんが。
小黒 いや、僕はあそこはシナリオになかったのを沖浦さんがコンテで足したんじゃないかと思って、前に井上さんに訊いた事があるくらいですよ(笑)。あのシーンの終わりで、旦那に「戻ってこいよ」とか言われて、妹が見送らないで戻っちゃいますよね。
沖浦 それがちょっと切ないというか、本当に良いシーンです。……『メロス』ができた時に、先輩に「やっぱりメロスとセリヌンティウスとは、最初から友達じゃないと話が成立しなかったんじゃないの」と言われたんですよ。けれど俺は、そうじゃないなと思っているんです。むしろ、メロスが頑張る動機としては、セリヌンティウスが初めて会った赤の他人ぐらいの方がすんなりいくんじゃないか。それが、おおすみさんが『メロス』に与えた核の部分だと思うんです。メロスはセリヌンティウスのためというよりも、自分の問題を解決するために走るわけで、その方がリアルだなと思った。そういう事も含めて、完成した後、観てくれた方の反応はわりと好感触だったんで。映画としては、リッチな作品ではないんだけれども、作るべき作品だったと思うんです。ある程度、普遍性も持ち合わせてるし。やってる時は「もう、この仕事を一生やっててもいい」というくらい、のめりこんでました。
小黒 そうなんですか。
沖浦 まあ、今、もう一度やれと言われたら、一生やるとまでは言えないけれど。
小黒 この時のキャラクターデザインなんですが、沖浦さんのそれまでの画とも違うし、その後の画とも違う。彫りの深い感じのデザインでしたよね。
沖浦 ああ、それはですね……そもそもの経緯を話すと、最初は「作監をやってくれ」という事で話を戴いたんです。「走れメロス」が題材だと聞いて、太宰治の原作は知ってたんで「ちょっとどうかなあ」と躊躇したんですけど、シナリオをもらって読んだら、「あ、面白いな」と思ったんですね。で、最初、キャラクターは他の方が作られたんですよ。
小黒 そうなんですか。
沖浦 有名なイラストレーターの方と、とあるアニメーターの方のキャラクターがあって。そのどちらかを選ぶというかたちで。そのキャラクターの打ち合わせに、なぜか俺も立ち会う事になったんです。その時に、おおすみさんのキャラクターに関するイメージを聞いていたので、他の方が上げてこられたものを見た時に、俺から見ても、おおすみさんのやりたい事と全然違うんじゃないかなと思えたんです。それで、僭越ながら、そのキャラで作監をやるのはちょっとキツイから、俺がキャラクターを描いて、もし、それをおおすみさんが気に入ってくれたら作監を引き受けたいと思いますが、とお願いしたんですよ。それで「これでダメなら、この仕事はなくなるかもね」ぐらいの気持ちで、キャラクターをパーッと描いてみせたら、「それで行こう」と言ってもらえて。それで、キャラクターをデザインする事になったんです。
 最初に描いたのは、もうちょっと日本人ぽい顔だったんですが、打ち合わせの中で、おおすみさんが「もうちょっとギリシャ的な彫りの深い感じにした方がいいかな」と言われて。メロスだけは黒髪にしたり、ちょっと日本人風なところを残してるんですが。観るのは日本人だから、あまりにも外人めいたキャラクターだと感情移入しにくいところもあるだろうと思って、自分の判断でそうしちゃったんです。他のキャラに関しては、おおすみさんが「日本人と外人の骨格はこう違う」なんて、色々説明してくださったのに添って描いています。おおすみさんは芝居をやっていて、その芝居でマスクを使っているためだと思うんですが、そういう事を研究しているんですよ。言われたように描いてみると、外人に見えるんです。ただ、描いてるうちに誇張されちゃって、鼻が大きくなりすぎた、などの反省点はあるんですが。
小黒 特に格好いいデザインを目指したというわけではないんですね。
沖浦 いや、違います。
小黒 『メロス』でも、今さんは大活躍ですよね。
沖浦 ええ。俺が巻き込んで(笑)、色々描いてもらって。
小黒 『千年女優』とか『TOKYO GODFATHERS』とかを観た後に、改めて『メロス』を観ると「ああ、ここは今さんのレイアウトだ」って分かりますね。石切場みたいなところとか。
沖浦 ええと、(石切場は)どうだったかな? ……印象的な所としては、ラストのモブシーンなんか、キャラまで今さんのテイストが残ってますね。
小黒 あのストーリーだと、美術的な素養も必要なんですよね。
沖浦 そうですね。セリヌンティウスを描く時には、後ろに彫刻が見えていたりするんで、大変でしたけどね。それから、大野さんの背景が素晴らしくて、「こんないい背景に、自分の画を乗せられるって、なんて楽しいんだろう」という感じで。
小黒 で、翌年は『機動警察パトレイバー the Movie 2』。
沖浦 そうですね。「(MEMORIES EPISODE1)彼女の想いで」の途中で、ちょっと手伝いで参加したかたちなんです。
小黒 そんなに量もやってないですか。
沖浦 そうですね。どれぐらいかちょっと忘れたんですけど。
小黒 原画を描かれたのは、飛行船のところですか。
沖浦 いや、ヘリコプターがビルの壁面を掃射したりとか、NHKの放送塔を撃ったりとか、というところですね。
小黒 メインスタッフというわけではないんですね。
沖浦 結果的には作監補みたいな事もやってます。作監補といってもヘリしか描いてないですけど(笑)。メインに近いポジションだったのかもしれませんが、ちょっと手伝いに行ったつもりが、帰してもらえなくなったという感じで。
小黒 「彼女の想いで」は数少ない井上さんの作監作品ですけど、井上さんとの出会いはいつになるんですか。
沖浦 井上さんとは『AKIRA』ですね。名前はずっと毛利(和昭)さんから聞いてたんですよ。
小黒 そうか、井上さんは学生時代に毛利さんのところに行ってるんでしたっけ。
沖浦 毛利さんに「井上っていう、凄いのがいるよ」と教えてもらって。それで、『AKIRA』で仕事ぶりを見て「確かにこれは凄いわ」と(笑)。まあ、その前に『(GU―GU)ガンモ』なんかは観てましたけど。
小黒 『メロス』の後で沖浦さんの仕事が、より緻密に、より精緻になっていった印象があるんです。『メロス』の時は大らかな感じが残ってて。それは何かきっかけがあるんですか。
沖浦 それは印象の問題なのかもしれない。自分では、『メロス』が終わった頃に、凄く窮屈な描き方をしてるなという気がして、逆に「彼女の想いで」に入る時に「大らかに描こう」と思ったんです。
小黒 僕の印象とは逆ですねえ(笑)。
沖浦 「定規はなるべく使わない」とか考えてた気がするんですよ。『パト2』もレイアウト集(「METHODS」角川書店)を見れば分かるんですけど、ビルをフリーハンドで描いてるのもあったり(笑)。もちろん実際にはかなり定規も使ってますけど。『パト2』の時と「彼女の想いで」の時は……。
小黒 むしろ大らかに描こうとしていたんですか。
沖浦 ええ、大らかに。動きの設計は別として、綿密に、見たままのものを目指してきっちり描くのはやめた方がいいかな、と思ってましたね。そういう志向があったので、柔らかいタッチで描こうかなと。
小黒 その後の『GHOST IN THE SHELL』では、緻密を極めたようなお仕事をされていますよね。
沖浦 『攻殻』は押井さんの作品で、黄瀬氏が作監っていうシフトだったので、自分がその時目指してたものとはちょっと違う方向だったんです。……あ、そうだ、その前に『アンネの日記』のキャラクターをやっているんです。まあ、これは途中で事情があって実際の作業には参加してないので、自分の経歴の中には入らない作品なんですけど。『アンネの日記』で、やりたかった事ができるかなと思っていたんだけど、それには挫折したんです。『攻殻』では、その延長上の事をやるのは、無理な作品だと思ったんで、自分の中で無理やり志向を変えて。
小黒 『アンネの日記』でやりたかった事と、『GHOST IN THE SHELL』でやった事は全然違うんですね。
沖浦 180度違う。
小黒 『アンネの日記』でやりたかったのは、もっと大らかなもの?
沖浦 大らかというか、結局、人間の動きを綺麗に存在感あるように描くためには、画が堅くちゃダメだという事です。柔らかい画で、影もつけない状態で描いてみるといいなあ、みたいな事を色々と考えていたんです。それは後の『人狼』でやや形を変えつつも全部やる事になるんですけど、それを一旦全部置いといて(笑)、むしろそれまでの『メロス』のような、きっちり描いていた頃に戻してやらないと、ちょっと作品(『GHOST IN THE SHELL』)の意図に合わないかなあ、と。
小黒 と言う事は『メロス』は、ギチギチに堅かった?
沖浦 それは『メロス』だけでなく、『AKIRA』以降、きっちり描く事を求めてきた部分を、一度、洗い流したかったんです。それが、また『攻殻』で、戻った上にさらに突き詰めなきゃいけなくなって(笑)。それは、やりたかったというよりも、作品として、そうした方がいいんじゃないかなという事でね。
小黒 『攻殻』の話はちょっと置いといて、「彼女の想いで」の見事な外人っぷりが、印象的でした。ハインツの娘さんを描いてますよね。
沖浦 それは井上さんのキャラが。
小黒 いえいえ(笑)。
沖浦 俺のところだけ、井上さんが遠慮したのか修正をほとんど入れてないから、それが、今観ると気持ち悪いというか。
小黒 ハインツがステージの上で拍手を受けて、回想に入っていって、回想が終わるまでが沖浦さんの作画ですよね。
沖浦 ええ。
小黒 ハインツの娘やテーブルが、白くボロボロになっていくところもそうですね。
沖浦 ああ、テーブルの上に乗っているものをバーッと撃ち壊してっていうところまでですね。「彼女の想いで」に関しては、ちょうどアクションというか、山場のようなところを描き疲れてた時だったので、楽しかったですね。(担当したそのシーンが)その頃やりたいような志向のシーンだったんで。井上さんには迷惑かけながらも(苦笑)。
小黒 いえいえ。
沖浦 新井さんが作画したところも、新井カラーになっていますけど。
小黒 新井さんの担当ってどこなんですか。
沖浦 新井さんでまとまっているのは、ミゲルが油膜の張った水面を歩いていって、ピアノにさわると周りがバラになって、カメラが回り込んでというところとか。
小黒 なるほど。
沖浦 俺のところと新井さんのところ以外は、見事なまでに井上カラー一色でまとまっていて、素晴らしい! という仕上がりだから、余計に自分のところがちょっと違うのが気になって、申し訳ないと思っているんです。
小黒 いえいえ。『バニパル(ウィット)』はどのくらいやっているんですか。
沖浦 『バニパル』は、40カットぐらい。
小黒 終わりの追っかけですか。
沖浦 女王様が気球に乗り移って、気球にロケットを縛りつけて飛んでいって、ドーンと爆発するところまでですね。
小黒 この前後だと『Gガンダム』オープニングもおやりですが。
沖浦 『Vガンダム』もやってますよ。
小黒 あ、『V』も!? 最初のと後のと、どちらのバージョンですか。
沖浦 最初の方です。主人公の男の子が桜の枝を持っているところとか、ガンダムが合体するところとかを描きました。『Gガンダム』も前半ですね。ドモンの後ろをガンダムが飛んでいたり。
小黒 あの、無重力っぽい感じでガンダムが浮いているやつですか。
沖浦 そうだったかな。
小黒 東方不敗も描いてるんですか。
沖浦 ん?
小黒 拳法家のお爺さんですよ。
沖浦 ああ! 描いてます。写真の上に、水滴がポトンと落ちたりするのも描きましたね。
小黒 ガンダムが剣を抜く時に「G.GUNDAM」って、剣の上に字が出ますけど、あれはコンテに描いてあったんですか。
沖浦 だったと思いますよ。ガンダムが出てきて、確かバシッと決めるまでは描いたような。
小黒 最初の地球があって周りにリングがある、というのも描いてるんですか。
沖浦 いや、最初のメカは、杉浦(幸次)さんです。なんだかよく分からないで(笑)、急遽手伝う事になったんですけどね。まあ逢坂(浩司)氏のやつは、そういう形で色々やっています。俺の時にも手伝ってくれてるから、お返しもするという感じで。
小黒 『GHOST IN THE SHELL』の話に戻りますけど。これは、どういう形で話がきたんでしょう。
沖浦 いや、経緯は全然覚えてないです(笑)。いつの間にかやる事になっていたという。まあ、いつもだったら黄瀬氏が1人でやれるんだけど、黄瀬氏はキャラクターデザインはなるべくしない、やりたくないというのがあって、だから、代わりに誰か人を立てる必要があったのと、作画監督に関しては内容が濃い上にスケジュールがない作品だったので、黄瀬氏1人じゃ無理だろうという事になって。それをフォローするという事で1人必要で、それが俺になったと、そういう事じゃないですかね。
小黒 内容的にはいかがでした?
沖浦 さっきも言ったように、世界観や自分のやりたい事からは遠いと思うんですけど、ただコンテを読んだ時に、押井さんのまとめ方が凄いと思って、ひどく感心させられたんです。それで、やれる限りはやろう、と。でも、スケジュールがなくて大変でした(苦笑)。
小黒 なるほど、そうですか。
沖浦 (笑)。
小黒 作画監督はパート制だったんですか?
沖浦 ええ、そうですね。ほとんどを黄瀬氏がやって、最後の闘うところだけを俺がやったんです。
小黒 じゃあ、沖浦さんの仕事としては、オープニングの原画を自分で描いて、クライマックスの作画監督という事ですね。クライマックスは、舞台が移ったところからですか。
沖浦 そうですね。博物館が出てきてから、そこが終わるまで。
小黒 そこは作監だけなんですね。
沖浦 ええ、作監だけです。
小黒 お仕事としてはどちらの方が大きかったんですか。オープニングの原画と、作画監督と。
沖浦 それはまあなんとも、どっちが大きいって事はないですけどね。ただ、面白いのは原画の方ですね。
小黒 これは原画を拝見したんですが、「本当に人間が手で描いたのか?」と思うぐらいの原画でしたよね。
沖浦 ああー。今観るとどうなのかな(笑)。
小黒 確かに『INNOCENCE』を観た後だと、「手描きのアジがある」って言うかもしれないけど(笑)
沖浦 (笑)。ただ、ちょっと発見した事はあるんです。(オープニングの内容は)アニメとしては非常につまらないものなんですよね。ジワーッと上に上がってくるとか、奥に行くとか。
小黒 しかも、動きはゆっくりしていて。
沖浦 そうなんです。動かすのが好きなアニメーターからすると、面白いものじゃない感じなんですけど、描いてて、これは俺に向いてるなと思う事があったんです。1枚につき何mm移動させるかっていうのを考えて、ジワーッとした微妙な変化を楽しむというか。人の体が回転する時に、体の出っ張りが次の画でどこに行くのかというのを動画任せにすると、理屈に合わない影のつけ方になったりしちゃうので、なるべく多く、原画とアタリを描くような事で、体が回ってる感じをいかに表現するかに執着してみたりとか。
小黒 泡も凄かったですよね。
沖浦 あるいは皮がめくれていくとかね。地味で辛いんですけどね(笑)。それが向いているかもしれないと思えたのは、自分の中の発見というか。
小黒 『GHOST IN THE SHELL』は手応えはどうだったんですか?
沖浦 どうだったでしたかね。音が入った段階で観た時には、好印象だった気がしますけどね。ただ、自分が本来描きたいものとはだいぶ違う世界だというのが、やっぱりありました。だから、どこか客観的に観ていたんじゃないかと。
小黒 レイアウトの役職でも名前が出てますけど、自分の作監担当パートのレイアウトを見たという事ですか。
沖浦 そうですね。
小黒 沖浦さんがレイアウトを描いて、原画マンに渡したり?
沖浦 それはないです。チェックをしただけ。
小黒 この時は、原画マンの配置ってどなたが決めてるんですか。
沖浦 どうでしたかね。俺の方で原画さんの名前を出したりしてるかもしれないですけど。実際の割り振りはどうしたんだったかな。
小黒 磯さん、濱洲さん、新井さん、みたいな感じですよね。
沖浦 ええ。俺が決めたんじゃないかなあと思うんですけど、もう忘れちゃってますね。

●「animator interview 沖浦啓之(5)」へ続く

(04.08.05)

 
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編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
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