アニメ音楽丸かじり(3)
『まりあ†ほりっく』OP・EDが同時発売!

和田 穣

 NHK総合TVのプレミアム10枠で先月30日に放送された「手塚治虫 漫画・音楽そして人生」がなかなか興味深い内容だった。映像化された手塚作品で音楽を担当した作曲家に幅広くインタビューを行っており、『ジャングル大帝』『リボンの騎士』の冨田勲を始め、『ふしぎなメルモ』『W3』の宇野誠一郎、カラー版『鉄腕アトム』の三枝成彰、今年公開予定の『MW』の池頼広らの手塚にまつわる貴重なコメントを聞くことができた。
 番組ラストでは冨田自らが手塚の母校・大阪大学交響楽団を指揮して『ジャングル大帝』のテーマ曲を演奏するというたまらない趣向。学生オケながら作曲者の意図をくみ取った堂々たる演奏だった。
 この『ジャングル大帝』はアニメの劇伴を交響楽に編曲してレコード化した作品のはしりで、今までに何度かCD化されている。しかしながら現在ではいずれの盤も入手困難のため、ひとまずはこのベストアルバムをおすすめしておく。『リボンの騎士』も収録しており、冨田の代表的な映像音楽のテーマ曲は概ねカバーしている。

新日本紀行/冨田勲の音楽

BVCF-1525/2,500円/BMGビクター
発売中
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 4日に『とある魔術の禁書目録』の新OP「masterpiece」が発売された。番組でOPが切り替わったと思ったらもうCDの発売である。こういう素早いリリースはファンを待たせなくていいですね。
 この楽曲は川田まみにとって7枚目のシングルとなる。限定版にはPVを収録したDVDが付属するという、I'veのシングルではお馴染みの仕様だ。今回は過去ほとんどの作曲を担当してきた中沢伴行ではなく、番組のBGMを担当している井内舞子が曲を提供している。このためどんな曲調になるのか、発売前から個人的にも興味があった。
 さっそく購入して聴いてみたけれど、これは予想以上にハードで複雑。ポップ性と攻撃性を併せ持ったナンバーだ。前OPがトランスを基調にしたオーセンティックなI'veソングだっただけに、ギャップが大きく感じられる。Aメロでは前回の記事で紹介したサントラの3曲目「運命の始まり」を思わせるような、激しいデジタルビートにエフェクト加工されたヴォーカルが載る曲調。プロディジーやブンブンサテライツなどのデジタルロックに近いものを感じる。
 一転してブリッジやサビではいつもの川田まみらしい美しいメロディやハーモニーを聴かせる。曲調がどんどん展開して飽きさせないハイブリッドな作りだ。このあたりは日常生活に魔術や超能力が交錯し、複雑な世界観を持つ『とある魔術』の番組内容によくマッチしているのではないかと思う。

『とある魔術の禁書目録』OP主題歌「masterpiece」[CD+DVD]/川田まみ

限定版:GNCV-0013/1,890円/ジェネオンエンタテインメント
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『とある魔術の禁書目録』OP主題歌「masterpiece」/川田まみ

通常版:GNCV-0014/1,260円/ジェネオンエンタテインメント
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 ここのところしばらく『絶望先生』『ひだまり』『ef』と続編ものが続いていたシャフト。1月から放映が始まった久々の新作シリーズ『まりあ†ほりっく 』のOP・EDが2月11日に同時リリースされる。
 OP「HANAJI」は主演も務める小林ゆうによるソロ曲。尾石達也によるハイセンスなOP映像とともに、楽曲の過激さが印象に残った方も多かったことだろう。特に小林ゆうの歌唱は、ありあまる程のパッション(笑)と表現力で相当のインパクトがある。これまで彼女がミニアルバム・ソロアルバムで披露してきたロック路線と、『スクールランブル』のキャラソン「ルチャドール」、『さよなら絶望先生』のベストアルバム「絶望大殺界」に収録の「豚のご飯」などに代表される、取り憑かれたような絶唱がうまく融合しているのだ。
 レトロっぽい音色のギターがぐいぐいとひっぱるアップテンポのスウィングリズムで、いわゆるサイコビリー(パンクとロカビリーを融合させたスタイル)の曲調だ。ワイルドにうねるバックのサウンドに、小林ゆうの艶っぽい歌声が存外ハマっている。
 なお2月15日にCDの発売記念イベントが秋葉原のショップで行われ、ゲストには小林ゆうが予定されている。モデル経験者らしく美しい容姿と、お辞儀の角度が深すぎてフレームアウトすると言われる姿をナマで見られるチャンスだ。詳細はアニメ公式サイトにて確認して頂きたい。

『まりあ†ほりっく』OP主題歌「HANAJI」[CD+DVD]/小林ゆう

限定版:ZMCZ-4480/1,890円/メディアファクトリー
発売中
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『まりあ†ほりっく』OP主題歌「HANAJI」/小林ゆう

通常版:ZMCZ-4481/1,365円/メディアファクトリー
発売中
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 ED主題歌の方はあのYMOが1983年にヒットさせた「君に、胸キュン。」のカバー。恐らくこれを聴いた業界関係者の中には「やられた!」と思った人も居たのではないだろうか。これほどアニメ向き、主題歌向きの楽曲がまだ手つかずで残っていたとは驚きで、選曲者がどなたかは存じ上げないが、そのチョイスには拍手を送りたい。
 オリジナル盤でもYMOの3人が敢えてアイドル風の楽曲を歌い、PVで不似合いな演技や踊りを披露するパフォーマンスがいわば「狙い」だった。そういった楽曲を現代風のテクノポップサウンドに載せ、女性声優の可愛らしい声でカバーすれば、結果として超キュートなアイドルポップになってしまうのは必然だったのだろう。原曲を散々聴いた僕のようなリスナーにとっても見事なまでに違和感のない仕上がり。正直言ってこちらのバージョンの方が好きなくらいだ(笑)。
 恐らくAuto-Tune(Pro toolsのプラグイン)を使ったと思われるPerfume風のヴォーカル処理もイマドキっぽい。この曲はテクノポップの始祖的な位置にあり、現代を代表するテクノポップユニットのテイストを導入することで、いわば正統進化とでもいうべきカバーとなった。

『まりあ†ほりっく』ED主題歌「君に、胸キュン。」/天の妃少女合唱団/かなこ(真田アサミ)&鞠也(小林ゆう)&茉莉花(井上麻里奈)

ZMCZ-4482/1,365円/メディアファクトリー
発売中
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(価格はすべて税込)

(09.02.09)