アニメ音楽丸かじり(22)
いよいよ発売!「ロボットアニメ大鑑」特集!
和田 穣
『化物語』の2巻「まよいマイマイ」のBDを購入した。主な目的はやはり、あの超ポップで楽しいOPを繰り返し視聴するためだ。曲調や歌詞の内容は「まよいマイマイ」のヒロイン、八九寺真宵のキャラクターソングそのものなのだが、楽曲のクオリティや板垣伸による映像の密度もあって、アニメのOPとしてもきちんとフックがあるところが面白いと感じた。
ふと思い出したのが、今年5月に放送された「BS熱中夜話 アニメソングナイト」で、ゲストとして登場した田中公平のコメント。「これからのアニメソングは、おしなべてキャラクターソング化していく。そしてその時代の旗手となるのが神前暁である」というような趣旨の発言があったと記憶している。そして言うまでもなく、『化物語』のOP曲はすべて神前暁の手によるものであり、アニソンであると同時にキャラソンでもある楽曲だ。これは田中公平の予言がほぼ完璧なかたちで的中したと言ってもよいのではないだろうか。改めてその時代感覚の鋭敏さに唸らされた次第である。
前々回の記事でもお伝えしたとおり、11月26日にキングレコードからロボットアニメの主題歌を集めたコンピレーションアルバム「ロボットアニメ大鑑」が一挙3種類リリースされる。収録曲は1960年代から2000年代までの多岐にわたり、曲数・選曲ともアニメソングの老舗らしい充実のラインナップ。いずれも劇場作品を含まずTVのロボットアニメを中心にまとめているのが特徴だ。
これまでアニソンのファンには、既存の主題歌集やアーティストのCDをコツコツと集めて、苦労して楽曲をコレクションしてきた方もいたと思う。このコンピレーションは入手困難な楽曲や未CD化の音源まで含んでおり、ボリュームの割りに価格が安い。キングレコード関連のロボットアニメコンピレーションの決定盤と言っても過言ではない内容で、個人的にも大いに期待している。
それでは、各タイトルの詳細について見てみよう。
まずは「サンライズ ロボットアニメ大鑑」
から紹介しよう。文字どおりサンライズのロボットアニメに特化した構成で、ディスク3枚組に57曲を収録し、価格は4800円。DISC1の収録曲はサンライズが前身の創映社から改組した後の第1弾作品となる『ザンボット3』からスタート。そして『ダイターン3』『無敵ロボ トライダーG7』と続く。
個人的な話で恐縮だが『トライダーG7』のOPは僕が幼い頃に初めて覚えた歌だ。歌謡曲調でユーモラスなメロディに始まり、サビで力強いメジャーコードに転調する展開は何度聴いてもしびれる。『最強ロボ ダイオージャ』OPは渡辺宙明作曲。たいらいさおの代表曲のひとつだと思うが、意外とCD化に恵まれていない。挿入歌まで含めた収録は嬉しいところだ。
DISC2は『戦闘メカ ザブングル』から。主題歌を歌う串田アキラ、挿入歌のMIO(現MIQ)ともにハスキーな声質であり、西部劇調の世界観によくマッチしていた。『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』とMIOの代表曲が並び、間に『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』が挟まれる構成だ。
DISC3は『機甲戦記ドラグナー』からスタート。こちらもこれまであまりCD化に恵まれておらず、4種類出たBGM集は現在入手困難。従来は鮎川麻弥のベスト盤を買うのがベストの選択肢だった。
そして何より特筆すべきは、関連CDのほとんどが現在入手困難になっている『熱血最強ゴウザウラー』だろう。OP・EDに加えて多くのイメージソング、挿入歌「READY GO! 熱血最強キングゴウザウラー」も含めた9曲を収録しており、文句のつけようもない。
「サンライズ ロボットアニメ大鑑」は収録曲が時系列順に並んでいるので、通して聴くとアニメソングの変遷が分かりやすい。特に1980年代はバックの編成がオーケストラからロックバンドに切り替わっていく時期なので、サウンドの変化も顕著だ。
次に「ロボットアニメ大鑑 上巻」を紹介する。ディスク2枚組の構成に35曲を収録し、価格は3000円。収録曲はバラエティに富んだ内容となっている。DISC1は、悲劇的な内容が知られる『グロイザーX』、羽田健太郎が作編曲を担当した『宇宙戦士バルディオス』などを収録。いまだにDVD化されていないアニメ版『愛の戦士レインボーマン』の主題歌は特撮版と同じ楽曲で、歌い手も同じ水島裕だ(特撮版は安永憲自名義)。
ハイライトとなりそうなのが、これが初CD化となる『サイコアーマー ゴーバリアン』。OPとEDに加えて挿入歌2曲まで収録している。歌を担当したネバーランドは、レイジー解散後にメンバーの井上俊次(現ランティス社長)と田中宏幸(故人)が結成したバンドで、作曲も井上のペンによるもの。OPは井上らしいキーボードを活かしたハードロックで、埋もれてしまうにはもったいない佳曲だと思う。
DISC2は『(太陽の使者)鉄人28号』『超電動ロボ 鉄人28号FX』『鉄人28号(2004年版)』と『鉄人』シリーズの楽曲を中心とした構成。ボーナストラックとしてOVAの『流星機ガクセイバー』OP・EDを収録する。渡辺宙明らしいド派手なブラスセクションが光るナンバーだ。
嬉しいのは『六神合体ゴッドマーズ』OP、ED2種、挿入歌3曲がまとめて収録されていること。かつてこれらを収録したヴォーカルコレクションが発売されていたが、現在では入手困難なのだ。OPは水島裕によるお馴染みの「六神合体!」の掛け声が懐かしい。
「ロボットアニメ大鑑 下巻」はディスク2枚組の構成に34曲を収録し、こちらも価格は3000円。収録曲は『銀河旋風ブライガー』を皮切りに『銀河烈風バクシンガー』『銀河疾風サスライガー』と国際映画社のJ9シリーズを中心とした構成だ。人気シリーズだけに既発のCDがないわけではないが、3作の楽曲すべてがまとまっているのは貴重である(以前にEMI盤が出ていたが現在では入手困難)。
『ブライガー』OPは改めて解説するまでもなく、作詞作曲・山本正之、歌・たいらいさおによる名曲だ。この後も山本正之はJ9シリーズの多くの楽曲を担当しており、『タイムボカン』シリーズと並ぶ代表作と言っていいだろう。終盤のEDに使用された「星影のララバイ」および挿入歌の3曲では、故・塩沢兼人のナレーションがたっぷりと収録されているのが嬉しい。ブラスター・キッドを演じた当時の若々しい声が魅力的だ。『バクシンガー』ED「アステロイド・ブルース」は、アコギのグルーブ感あふれるバックに増田直美のパンチが効いた歌唱が映える、個人的にも大好きな楽曲。今聴いても古さを感じさせないナンバーだ。
以上、内容が濃いために駆け足で紹介したが、興味のある方はぜひ公式サイトで収録曲の全貌についてチェックしていただきたい。
全体として適切なマスタリングがなされており、収録曲の年代はバラバラながら、違和感なく通して聴取できるのが高評価。特にドラムの音色や音圧は年代による差が顕著な部分で、恐らく制作時に苦労したのではないかと思う。またアニソンにおいて重要なブラスセクションのブリブリした音色が、生々しく捉えられているのも好感触だ。
内容の充実ぶりに比して価格は安く、個人的にも「ヒットしてほしいなあ」と感じたコンピレーション。今後は劇場作品やOVAを特集した第2弾、第3弾の登場にも期待したいところだ。なお、ジャケットのイラストは野中剛が担当。3枚がひと続きになっており、全巻を揃えると全貌があらわれるという仕掛けになっている。
(価格はすべて税込)
(09.11.24)