アニメ音楽丸かじり(29)
紙ジャケ『銀河鉄道999』5作品がリリース!
和田 穣
2月5日に発売されたランティスの特集本「ランティス・クロニクル」を読んだがなかなか面白い。200ページ近い厚みがあり、誌面の中心を占めるのはランティスがこれまでにリリースしてきた全作品のリスト(小さいながらもジャケ写つき)と、その中から一部をピックアップしたレビューだ。曲名や表記などは全て公式サイトに準拠しているそうなので、資料的価値もある。
インタビューはJAM Project、平野綾、茅原実里、GRANRODEO、栗林みな実などそれぞれ数ページ掲載されており、ランティス所属のアーティストはほぼ全員が何らかのコメントを寄せている。井上俊次社長と影山ヒロノブによるトップ対談(?)も6ページとなかなかの充実ぶり。
井上社長によれば、今後のランティスはネット配信やコンサートのブッキングなどプロダクション業務にも力を注いでいくという。近年海外ではマドンナ、プリンス、レディオヘッドなどレコード会社から距離をおき、ネット配信やコンサートを活動の軸にするアーティストが増えてきているが、井上社長もCDの売り上げに依存するビジネスモデルの限界を感じてきているのかもしれない。
この連載では過去の記事でも『化物語』の音楽について触れたことがある。アニメのサントラでは珍しくミニマルミュージックを中心に構成されているのが面白く、またその曲調が『化物語』の会話劇を中心とした作風によくマッチしているのだ。
2月24日に発売されたBD/DVD「つばさキャット 上」の初回限定版には「劇伴音楽集 其ノ壹」と題してBGM10曲を収録したCDが付属している。最終巻「つばさキャット 下」にも「劇伴音楽集 其ノ貮」が付く予定で、恐らくこの2枚で劇伴をほぼ網羅することになるだろう。従って当面は単体のサントラが発売される可能性は低いだろうから、劇伴を聴きたい人は「つばさキャット」上下巻を揃えるのが手っ取り早いということになりそうだ。
この「劇伴音楽集」によって初めてBGMの楽曲タイトルを知ったのだが、阿良々木暦の登場シーンで頻繁に流れるピアノのミニマル曲のタイトルは、ズバリ「人畜」。主人公に対してあんまりな仕打ちである。これはきっと八九寺Pの陰謀に違いないと思われる。
『化物語』第五巻「つばさキャット 上」
(完全生産限定版)
BD:ANZX-9459/8,400円/アニプレックス
発売中
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DVD:ANZB-9459/7,350円/アニプレックス
発売中
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『化物語』第六巻「つばさキャット 下」
(完全生産限定版)
BD:ANZX-9461/7,350円/アニプレックス
6月9日発売予定
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DVD:ANZB-9461/6,300円/アニプレックス
6月9日発売予定
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『とある科学の超電磁砲』のサントラ第1弾が1月29日にリリースされた。これまで取り上げ損ねていたので遅まきながら紹介したい。トータル46分に全22曲を収録しており、OP曲のTVサイズをCDの最初に、EDを最後に配置するオーソドックスな構成だ。
音楽担当は『とある魔術の禁書目録』と同じくI've Soundの井内舞子だが、今回のBGMは『禁書目録』の特徴だったテクノやトランスの要素はかなり控えめ。ピアノ、エレピ、ギターといった定番の楽器を前面に出し、曲調もカラッと明るい。キャラクターもの、学園ものの要素が強い『超電磁砲』らしさを音楽面でもアピールしているようだ。
ちなみに9曲目「いつもの仲間と」19曲目「逆転」は『禁書目録』BGMからの流用。この2曲以外にも劇中のあちらこちらで『禁書目録』の楽曲はよく使われている。
白井黒子が御坂美琴に対してセクハラ行為におよぶシーンでしばしば流れる7曲目「お姉さま…」は、ショパン風の情熱的なピアノソロ。番組のファンならば冒頭の「タターン」という和音を聞くだけで黒子の変態行動の数々を思い出し、つい笑ってしまうことだろう。
2月24日にコロムビアから『銀河鉄道999』関連のCD5作品が紙ジャケット・HQCD仕様でリリースされた。「組曲 銀河鉄道999」 「銀河鉄道999 主題歌挿入歌集」 「交響詩 銀河鉄道999」 「交響詩 さよなら銀河鉄道999 —アンドロメダ終着駅—」 「DIGITAL TRIP 〜さよなら銀河鉄道999 シンセサイザー・ファンタジー〜」というラインナップだ。内容や仕様からして、2008年に限定販売されたCD-BOXからの分売だろう。
紙ジャケット仕様のCDにはアナログレコードを模したものが多いが、今回の5作品はジャケットにLPの縮刷版を用いてるほか、盤面は黒色でレコードのような溝までプリントされており、LPの再現に力を入れている。もちろんブックレットもLPからの復刻で、縮刷のためにやや見にくいのだが、それを補うために別途白い紙に印刷されたものが付属している。
注目すべきは「交響詩 さよなら銀河鉄道999」が2枚組による全19曲完全収録となっているところ。過去2度のCD化ではいずれも4曲がカットされたCD1枚でのリリースとなっていたため、今回が単体商品としては初めて完全なかたちでのCD化ということになる。
僕が購入したのはしばらく入手困難となっていた「DIGITAL TRIP 〜さよなら銀河鉄道999 シンセサイザー・ファンタジー〜」。ご存じの方も多いと思うが、これは『さよなら999』の音楽担当でシンセサイザーの大家としても知られる東海林修が、映画公開直後の1981年に自ら劇中のBGMをシンセ版に編曲した作品。その後シリーズ化された「DIGITAL TRIP」の第1作だ。
5曲目「光と影のオブジェ」は「交響詩 さよなら銀河鉄道999」にも別アレンジで収録されている。劇中では唯一のシンセ曲であり、テクノポップ的なリズムと宇宙を思わせる広がりのあるシンセサウンドが『999』にぴったり。今聴いても格好いいと思える楽曲だ。
僕自身シンセを演奏する人間なのだが、ブックレットには使用した機材の一覧が記してあったので参考になった。『999』のファンのほか、シンセに興味のある人にもおすすめの1枚だ。
「DIGITAL TRIP 〜さよなら銀河鉄道999 シンセサイザー・ファンタジー〜」(音楽:東海林修)
COCX-36079/2,625円/コロムビアミュージックエンターテインメント
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(価格はすべて税込)
(10.03.09)