アニメ音楽丸かじり(45)
今回は『REDLINE』『みつどもえ』特集!

和田 穣

 ここのところ急激に寒くなり、うんざりしている方も多いと思うが、僕はその寒さをむしろ歓迎している。秋の長雨さえ終われば、その後は1年のうち最も燻製作りに適した気候になるからだ。今週はさっそくベーコン、ロースハム、パストラミ、コンビーフを仕込んでみた。「肉のハナマサ」秋葉原店で、大量の塊肉を買い込んでる大柄な男を見かけたら、それは僕である可能性が高い。

 10月9日より全国で劇場公開中の『REDLINE』。アニメスタイルでも「REDLINE SUPER ANIME ALBUM」を発行するなど、紹介に力を入れている作品だ。なんといっても、監督の小池健を中心に4年もの歳月を費やした濃密な作画(背景やモブの1人1人に至るまで、恐ろしく丁寧に描き込まれている!)が素晴らしい。僕も劇場で鑑賞したのだが、手間のかかるアメコミ風の絵柄ながら、グリグリとダイナミックに動いているのには驚かされた。
 さて、本作のサントラ盤は10月6日にリリースされており、全42曲もの楽曲をCD容量ギリギリの79分まで収録している。劇伴と主題歌・挿入歌を担当するのはジェイムス下地。主にCM音楽を手がけている作曲家で、リクルート社の「カーキン音頭」を作った事でも知られる。小池監督、および原作・脚本・音響監督を務めた石井克人とは、「PARTY7」『スマアニメ』に続いてのチームとなる。
 サウンドはバラエティに富んでいるが、中心となるのはデジロック的なハードな楽曲と、R&B風のお洒落な歌ものだ。前者の代表として、序盤のレースシーンで効果的に使われていたメインテーマ曲「Yellow Line」が挙げられる。4つ打ちのバスドラに始まり、ギターのリフが重なって、トランス風のうねるシンセが加わって厚みを増していく。7分にもわたって続くビートの上に積み上げられていく音像は、激しいレースの映像とも相まって、観客のボルテージを高めていくのにぴったり。まるで大会場のレイブパーティに参加しているような、本能に直結する高揚感を与えてくれる。
 そしてそんな興奮をサッと静めてくれるのが、EDテーマ「REDLINE DAY」の穏やかなR&Bサウンド。公式サイトのBGMとしても使われているので、耳にしたことのある方も多いだろう。作品の終わりを情感たっぷりに締めくくっている。本作には挿入歌が4曲もあるが、劇中でスーパーボインズが歌う「彼のシフトはブンブンブン」以外は、いずれも英語詞でヴォーカルは外国人を起用。洋楽っぽさが強く、アニメの音楽としてはやや異端だが、それが『REDLINE』の世界には実によく似合っている。

『REDLINE』オリジナルサウンドトラック(音楽:ジェイムス下地)

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 来年1月からTVアニメ第2期の放映が決まった『みつどもえ』。この作品の関連楽曲がいずれもクオリティが高く、かねてより紹介したいと思っていた。8月25日には丸井三姉妹のキャラクターソング「Vol.1 丸井みつば」「Vol.2 丸井ふたば」「Vol.3 丸井ひとは」がまとめてリリースされ、10月27日には「Vol.4 杉崎みく」「Vol.5 松岡咲子」が、そして11月27日には「Vol.6 佐藤が好きでしょうがない隊」「Vol.7 チクビ」が発売というスケジュール。ハムスターであるチクビが、一体どんな歌を歌うというのだろうか?
 これらの楽曲は、アニメ公式サイトで順次サンプルが公開されているので、興味のある方はチェックしてみてほしい。今のところVol.1からVol.3までは、iTunesStoreでも配信されている。
 これらのキャラソン作りに大きく貢献しているのが、OP主題歌「みっつ数えて大集合!」の作編曲を担当した前山田健一だ。彼はヒャダインという名義でも活動しており、そちらについては以前の連載で書いている。彼は『みつどもえ』関連の楽曲において、作曲・編曲のみならず作詞まで数多く手がけており、今や作品に欠かせないスタッフの一員となっているようだ。
 いずれの曲も面白いのだが、特に「Vol.1 丸井みつば」収録の「ありがたく思いなさいよねっ!」が強烈だ。ゴリゴリしたとんでもなくハードコアなギターに、みつばの攻撃的な罵倒ラップがひたすら続く劇薬のような曲調。みつばのファン(下僕)は大喜びだろうが、体調の悪い時の服用はおすすめできない過激なCDだ。みつば役の高垣彩陽は、音大の声楽科を出ているだけあって、本来歌は抜群に巧いのだが、わざと力んで音を外しているあたり、役所をしっかりと掴んで表現している。
 「Vol.2 丸井ふたば」収録の「ABCよりDEFっス!!」は、一言でいうなら「おっぱい愛」に尽きる楽曲だろう。「パイ」と名の付くあらゆる単語を詰め込んだかのような、速射砲を思わせる作詞は前山田健一の手によるもの。アニメ第8話でも使用され、大いにインパクトがあった。
 キャラソン以外の楽曲では、WEBラジオ「みつどもえラジオ 3ちゃんねる」OP「まさか三卵性!?」も印象的。「みっつ数えて大集合!」の発展形とも言える元気なテクノポップで、アニメ主題歌になってもおかしくないほどのキャッチーな出来。カップリング曲の「先生はこども?子供はせんせい?」は、ふたば(明坂聡美)と矢部先生(下野紘)の掛け合い。「もっといい教師になるんだ!」と熱意に燃える矢部っちに、ふたばが嬉しそうに「へーんーたーいー」「なーきーむーしー」と合いの手を入れる、『みつどもえ』らしい容赦のないコメディソングだ。

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WEBラジオ「みつどもえラジオ 3ちゃんねる」OP「まさか三卵性!?」

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(価格はすべて税込)

(10.11.02)