アニメ音楽丸かじり(54)
劇場『空の境界』音楽集がいよいよリリース!

和田 穣

 つい先頃ファン待望のBlu-ray Disc BOXが発売された劇場『空の境界』から、劇伴を収録した「音楽集」CDが3月2日に発売された。2枚組で全18曲と曲数こそ多くはないが、収録時間は136分とたっぷり。とはいえ、『空の境界』は全7章+終章という大作であるから、すべての劇伴を収録するのは不可能だ。今回のCDには、各章における代表的な楽曲を数曲ピックアップし、梶浦由記が新たに手を加えたものを収録。それぞれ再編曲や新規録音を行った上で、音楽CDとして聴きやすいかたちに再構成されている。例えば1分足らずの短い楽曲などは、メドレー形式にして繋ぐ、といった工夫が為されているのだ。
 ファンならご存じのとおり、これまでリリースされてきた各章のDVDには、限定版に限ってサウンドトラックCDが付属している。僕も限定版を買ったクチだが、既に全巻を揃えている熱心なファンにとっては、今回リリースされた音楽集との違いが気になるところだろう。結論から言うと、この音楽集は公式発表どおりの「ベスト&リアレンジアルバム」であり、DVD付属サントラとは聴いた印象がはっきり異なる。
 具体的には、『空の境界』劇伴の大きな特徴である、ノイズや音程のないシンセを含んだサウンドスケープ的な楽曲はあまり収録されていない。いわば各章のメインテーマ的な音楽を中心に集めており、しかもより聴きやすい形に再構成されているから、良くも悪くもとても分かりやすいのだ。一方で『空の境界』を特徴づけている難解さや、幻惑されるような不可思議さは感じにくい。どちらかというと「梶浦由記の作品集」という印象だ。
 この音楽集は、Blu-ray Disc BOXによって新たに『空の境界』の世界に足を踏み入れた方にとっては、劇伴への入口として最適なCDだ。終章『空の境界』の音楽がCDになるのはこれが初めてなので、その点でも価値がある。一方で、限定版DVDを既に持っている方には、そちらの付属サントラにも独自の良さがあるので、手放さないほうがいいよ、と伝えておきたい。

「the Garden of sinners −劇場版『空の境界』音楽集−」(音楽:梶浦由記)

SVWC-7749〜7750/3,675円/アニプレックス
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 終章「空の境界」には他章のようにKalafinaが歌う主題歌はないのだが、劇中のクライマックスにおいて、造語による「snow is falling」という歌曲が流れる。この楽曲をKalafinaが日本語カバーしたものが、『魔法少女まどか☆マギカ』エンディング主題歌「Magia」のカップリング曲として収録されている「snow falling」だ。
 なぜKalafinaがこの曲をカバーしたのかについては、『空の境界』公式サイトに梶浦由記がコメントを寄せているので、そちらを参照してほしい。ちなみに、「Magia」のシングルには3種類の盤があるが、アニメ盤にはこの曲が入っていないので、要注意だ。

『魔法少女まどか☆マギカ』ED主題歌「Magia」/Kalafina

初回生産限定盤:SECL-939〜940/1,575円/ソニーミュージックエンタテインメント
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 それにしても最近の梶浦由記の仕事ぶりは、驚異的なハイペースと言えるのではないか。話題作『魔法少女まどか☆マギカ』の劇伴を担当しながら、ED主題歌「Magia」をKalafinaに提供。NHKの「歴史秘話ヒストリア」もサントラ第2弾がリリース予定。そんな中で2枚目のソロアルバム「FICTION II」のレコーディングをニューヨークで行い、今回『空の境界』の音楽集では、わざわざリアレンジや新規録音まで行うサービスぶり。6月にはライブも予定されている。そう言えば前回記事で紹介した、勇者シリーズ20周年記念カバーアルバム「HARVEST」にもFictionJunctionとして参加していた。まさに八面六臂の活躍で、いままさに絶頂期にあるのではないか。

(価格はすべて税込)

(11.03.08)