アニメ音楽丸かじり(77)
『アクエリオンEVOL』、劇場『ベルセルク』主題歌が発売!

和田 穣

 2月前半はアニメサントラの発売予定が少なく、やや寂しい状況だが、そのかわりに主題歌の方はなかなか活況を呈している。前回紹介した『輪廻のラグランジェ』OP・EDの「TRY UNITE!/Hello!」(中島愛)の他にも、『ゼロの使い魔F』ED「キスシテ↑アゲナイ↓」(ルイズ:CV釘宮理恵)、『偽物語』EDナイショの話」(ClariS)、『あの夏で待ってる』OP「sign」(Ray)、『ハイスクールD×D』ED「STUDY×STUDY」(StylipS)など話題の作品・楽曲が揃っているのだ。

 そんな中で今回紹介するのは、菅野よう子が『マクロスF』以来4年振りにTVシリーズの音楽を手がける『アクエリオンEVOL』から、オープニング主題歌「君の神話〜アクエリオン第二章」と、エンディング主題歌「月光シンフォニア」のカップリングCDだ。2月15日にリリースされる予定で、歌うのはもちろんAKINO from bless4。今回はEDにAKINOの弟AIKIのソロパートが用意されており、姉弟デュエットが楽しめる趣向となっている。
 前作のOP主題歌「創聖のアクエリオン」は、パチンコ効果もあってアニソンの枠を超える大ヒット。続編となる『EVOL』での主題歌制作にはプレッシャーもあっただろうと想像するが、そこはさすが菅野よう子。前作の曲調とは異なるアプローチで、2012年の続編に相応しい楽曲を作り出した。
 爽快なロックサウンドを基調としながらも、パイプオルガンから始まる導入部、メジャーコードを連ねた底抜けに明るい曲調、ゴスペル風の力強いコーラスと、宗教曲のような祝祭感がある。楽曲名にもあるように、シリーズのテーマである「神話」を意識しての事だと思うが、特定の宗教・宗派を感じさせず、無国籍風に仕上げたところにセンスが光る。ちなみに河森正治監督は前作『アクエリオン』以降の作風を、自ら「神話的エンタテインメントの追求」と評している。詳しくは月刊アニメスタイル第5号の記事を参照されたい。
 ED「月光シンフォニア」は題名どおりクラシカルな雰囲気のある楽曲。間奏はピアノソナタのように華麗なピアノ演奏が楽しめ、AIKIとAKINOの姉弟らしく息の合ったデュエットを彩っている。アニメファンには初披露となったAIKIのソロボーカルだが、中性的なハイトーンの声質で独特の個性があり、今後の活躍を期待させるものと言えるだろう。

『アクエリオンEVOL』オープニング主題歌「君の神話〜アクエリオン第二章」(AKINO from bless4)

VTCL-35125/1,155円/フライングドッグ
2月15日発売予定
[Amazon]

 続いて紹介するのは、2月4日から劇場公開されている『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』の主題歌「Aria」だ。『ベルセルク』と言えばもちろんこの人、原作の三浦建太郎も大ファンである平沢進による書き下ろし曲だ。今 敏が亡くなったいま、アニメで平沢進の楽曲が聴けるのは『ベルセルク』くらいのものだろう。CDは同曲とそのカラオケ版を収録しており、劇場公開と同日にリリースされた。残念ながら、現在Amazonでは品切れ中である(2月6日時点)。
 1997年のTVシリーズ『剣風伝奇ベルセルク』の挿入歌「BERSERK 〜Forces〜」は、平沢進にとって知名度をより向上させるきっかけとなった楽曲。今回はその再来が期待されるところだが、シンプルでヒロイックだった「BERSERK 〜Forces〜」とは異なり、「Aria」は複雑で難解な楽曲に仕上がっている。コードも変則的だし、歌詞も何を歌っているのか判然としない。このような曲調に至った背景は、TVと映画の情報量の差、平沢進の制作スタイルの変化、そして原作が書き進められて複雑化したことなど色々な理由が想定できるだろう。いずれにせよ、映画の雰囲気に合っているというよりも、映画の雰囲気を自ら作ってしまうほどの、強烈な個性を持った1曲だ。
 劇場『ベルセルク』は年内に「黄金時代篇」3部作が公開予定。制作チームはその後も作業を続け、最終的には10年以上のスパンで原作すべてを映像化するという壮大なプランがあるようだ。「あの密度の濃い原作を全部!?」と考えると、気が遠くなりそうな話だが、なんとか頑張ってほしい。そして今後もぜひ、平沢進を起用し続けてもらいたいものだ。

『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』主題歌「Aria」(平沢進)

VTCL-35125/1,155円/テスラカイト
発売中
[Amazon]

(価格はすべて税込)

(12.02.07)