アニメ音楽丸かじり(79)
『ベルセルク』サントラは怒濤の大音響!

和田 穣

 これまでもインパクトの強い主題歌を次々に生み出してきた『化物語』『偽物語』シリーズだが、「つきひフェニックス」の主題歌「白金ディスコ」が曲調、映像ともにキャッチーでなんとも耳に残る。映像はまさに盆踊りで、曲調は音頭とディスコをミックスしたような印象。音頭とは本来、歌い手と囃子の掛け合いによって成り立っているが、この「白金ディスコ」では、囃子に相当する部分をシンセブラスで代用している。こういった手法は、ディスコ音楽では定番と言えるものだ。また作曲者の神前暁は1974年生まれ。多感な10代をバブル景気と第2次ディスコブームの中で過ごした世代だけに、このような曲調は作っていて楽しかったのではないだろうか。
 和服を好む月火にぴったりの和風テイスト、歌詞には「月」という単語を入れ、タイトルは月火の口癖「プラチナむかつく」から引用と、キャラクターソングのツボを押さえた作り。このように企画と曲調がカッチリ噛み合った主題歌は、聴いていて気持ちがいい。この楽曲は7月25日発売の「つきひフェニックス(上)」BD/DVDの限定版に、特典CDとして収録される予定だ。発売が今から待ち遠しい。

『偽物語』第四巻/つきひフェニックス(上)

ANZX-6717~6718/7,350円/アニプレックス
7月25日発売予定
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 コンスタントにCDがリリースされるゲームサントラに比べて、年明けからここのところアニメのサントラ発売は少なめ。3月下旬には注目作品が一挙にリリースされるのだが、今週はサントラの発売予定が少なく寂しいところだ。よって今回は先月リリースされた作品の中から、取り上げていなかったものを紹介したい。現在劇場公開中の『ベルセルク 覇王の卵』のサントラ盤だ。CDは全20曲を収録した65分の内容。平沢進による「Aria」、AIの歌う「ウツクシキモノ」の両主題歌は含まれていないので、2人のファンは注意してほしい。
 前々回の連載にて、平沢進の「Aria」については紹介した。平沢は1997年のTVシリーズ『剣風伝奇ベルセルク』ではBGMも担当していたが、今回は主題歌のみの参加。代わってBGMを担当したのは、『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』など、ガイナックス作品でおなじみの鷺巣詩郎だ。電子音が主体の平沢ではなく、フルオーケストラを得意とする鷺巣が起用されたという事実は、今回の映画の方向性がどういうものかをはっきり示しているようにも思える。
 原作「ベルセルク」の特徴といえば、やはり濃密な作画に支えられたバトル。特に「黄金時代篇」では、中世西洋のようにプレートアーマーに身を包んだ騎兵が、数万人の単位で衝突する大規模な戦闘シーンが魅力となっている。今回の映画化ではこの(作画スタッフ泣かせの)シーンを、CGを使って切り抜けているのだが、サントラ盤でもやはり大音響のオーケストラが鳴り響くバトル用音楽が大半を占めている。1曲目「The Wrath Of God (part II)」、7曲目「New Horizons」などはずっとティンパニが鳴りっぱなしという怒濤のバトル音楽であり、この迫力はぜひ劇場で体験してほしいと思わせるものだ。
 劇場『ベルセルク』音楽のもうひとつの特徴は、合唱の大胆な起用。5曲目「Semper Invicta」、12曲目「The Sound of Tortured Souls」、17曲目「Blood and Guts」など随所で重要な役割を担っている。これによってまるでヴェルディやモーツァルトの「レクイエム」のような、荘厳かつ終末感にあふれた雰囲気が出ており、作品の重厚な世界観をより一層引き立てているのだ。
 CDには44ページのブックレットが付属し、鷺巣詩郎本人による楽曲解説と、さらに収録曲「Blood and Guts」のスコア譜が掲載されているという、鷺巣ファン、劇伴マニアの双方にとって嬉しい内容だ。また今後公開が予定されている映画2作目、3作目と回を重ねていくなかで、どんどんダークになっていくストーリーに対して、鷺巣詩郎が一体どのような音楽をつけるのか。そのあたりを予想するのも楽しいだろう。

映画『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』オリジナル・サウンドトラック(音楽:鷺巣詩郎)

VPCG-84921/2,800円/バップ
発売中
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(価格はすべて税込)

(12.03.06)