第7回 『宇宙海賊キャプテンハーロック』
1978年は、夏に『さらば宇宙戦艦ヤマト ─愛の戦士たち─』が、年末に劇場版『ルパン三世』(通称『マモー編』)が公開されている。TVでは春に『宇宙海賊キャプテンハーロック』や『未来少年コナン』が、秋に『銀河鉄道999』と『科学忍者隊ガッチャマンII』が放映開始。「24時間テレビ」内では、TVスペシャル『100万年地球の旅 バンダーブック』が放映された。つまり、アニメファンを意識して企画された作品が発表されるようになってきた。ラジオでもアニメ関連番組が多かった。「アニメージュ」創刊もこの年の夏だ。街の画材屋で、ファンがセルイラストを描くためのセル、タップ、絵の具等の画材を売り出した。つまり、アニメブームだった。その前の1977年に劇場版『宇宙戦艦ヤマト』が公開されており、そこをアニメブーム元年とすると、ブームが勢いよく盛り上がっていったのが1978年だ。
『宇宙海賊キャプテンハーロック』は、アニメブームに盛り上がっていたファンの期待に応えてくれる作品だった。勿論、僕も熱心に見た。原作は『宇宙戦艦ヤマト』に監督、設定デザインの役職で参加していた松本零士。彼の作品を代表するキャラクターであるハーロックを主人公にした宇宙ファンタジーだ。『ヤマト』のロマンの部分を取りだして、それをメインにすえて作った作品という印象もある。ハーロックはヒーロー的な人物であり、そのナルシスティックな言動に痺れた。
『ヤマト』のヒットを背景にして、松本零士自身の人気も上昇していた。当時、僕は『ヤマト』や『ハーロック』だけでは飽きたらず、過去の松本零士のマンガも読みあさった。彼がイラストを描いた海外SF小説(C.L.ムーアの「大宇宙の魔女」)にまで手を出した。松本作品はセクシーな内容のものもあり、中学生には刺激が強い作品も多かった。『ハーロック』の原作を連載していたのも、「プレイコミック」という大人向けの雑誌だった。アニメ版の放映が始まった前後だと思うが、「プレイコミック」でアルカディア号のポスターが付録についた事があった。その号をきっかけにして「プレイコミック」を買うようになったような気がする。雑誌ライターの仕事を始めるようになってから、同年輩の女性ライターがやはり、アルカディア号のポスター欲しさに「プレイコミック」を買ったという話を聞いた。女子中学生に「プレイコミック」を買わせるとは、『ハーロック』恐るべし。逆に言えば、当時はそういったものに手を出さなくてはならないほど、アニメに関する商品が少なかったのだ。
TVシリーズの『ハーロック』は、設定の改変はあるものの、松本マンガ独特のビジュアルや雰囲気を再現しており、その意味でも満足だった。メインスタッフとして、チーフディレクターがりんたろう、キャラクターデザインが小松原一男、美術設定が椋尾篁と、翌1979年に劇場版『銀河鉄道999』を手がけるトリオが参加。りんたろうのスタイリッシュかつシャープな演出も格好よかったし、小松原一男の繊細でありつつ色気のある画も素晴らしかった。全てのエピソードの完成度が高かったわけではないが、スタッフの存在が気になる作品だった。
第8回へつづく
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(08.11.12)