第71回 『ダグラム』と『ゴッドマーズ』
『太陽の牙ダグラム』は高橋良輔監督による、リアルロボット路線の第1弾だ。同じ日本サンライズ(現・サンライズ)の『機動戦士ガンダム』の影響下にある事は疑いようもないが、よりリアルな方向にドラマ、設定を押し進めた意欲的な企画だった。とは言え、僕はこのシリーズを全話は観ていない。多分、半分も観ていないはずだ。今回はどうして『ダグラム』をちゃんと観ていないのか、についての話。
『ダグラム』はテレビ東京系で、毎週金曜の夕方に放映されていた。問題だったのが裏番組だ。同じ曜日の同じ時間に、日本テレビ系で放送が始まったのが『六神合体ゴッドマーズ』だった。他の地方での事情は分からないが、関東ではそうだった。『ゴッドマーズ』については、次回改めて書く予定だが、美形キャラクターが登場するスーパーロボットもので、子供だけでなく、ティーン以上のファンの注目を集めた作品だ。
1981年秋の段階で、どのくらいのアニメファンのビデオデッキを所有していたのだろうか。まだ、大半の家にあるというわけではなかったはずだ。僕の周りで言うと「あいつの家は買ったぞ」とか「うちももうすぐ買うぞ」なんて言っていた時期だ。前にも書いたが、僕の家にビデオデッキがきたのも1981年の秋か、年末のはずだ。『ダグラム』と『ゴッドマーズ』が始まった10月には、まだビデオデッキはなかった。また、仮にビデオデッキがあったとしても、現在のハードディクスレコーダーのように、裏番組を同時に録る事はできない。録画するにしても、どちらを録画をするか選ばなくてはいけなかった。当時のアニメファンは「ダグラム派」と「ゴッドマーズ派」に分かれたと、よく言われる。
それまでも、アニメ番組同士が裏表になった事はあった。ただ、少なくとも僕は、アニメブームが始まってからここまでの数年間で、どちらを観るのかでこれほど悩んだ事はなかった。両方ともロボットものであり、片やリアルロボット、片やスーパーロボットである。『ガンダム』のシンパとしては『ダグラム』を追いかけたいところだが、『ゴッドマーズ』は、前番組の『新・鉄人』に続いてスタジオZ5とスタジオNo.1のメンバーが参加している。作画マニアとしてはそこをチェックしたい。最初の頃は、チャンネルをガチャガチャさせて『ダグラム』と『ゴッドマーズ』を半分ずつ観た。そして、結局、『ゴッドマーズ』を観るようになった。決め手は『ダグラム』の展開が遅くて、なかなか話が進まないと感じたからだ(改めて観ると『ゴッドマーズ』の展開も決して早くはないのだが)。それから『ゴッドマーズ』の方が華があった。
その2作品の放映データを、書き出すと以下のようになる。
『六神合体 ゴッドマーズ』(全64話) 日本テレビ系
01〜26話(1981年10月02日〜1982年04月02日) 18時00分〜18時30分
27〜64話(1982年04月09日〜1982年12月24日) 17時30分〜18時00分
※60話はイレギュラーな時間に放映
『太陽の牙 ダグラム』(全75話) テレビ東京系
01〜19話(1981年10月23日〜1982年02月26日) 18時00分〜18時30分
20〜75話(1982年03月05日〜1983年03月25日) 17時55分〜18時25分
※11話と63話はイレギュラーな時間に放映
改めて放送時間をチェックして、『ダグラム』と『ゴッドマーズ』の放送時間がダブっていたのが、最初の半年間しかないという事に驚いた。という事は、『ゴッドマーズ』の放送時間がズレた1982年4月以降は、僕の『ダグラム』を観る頻度は上がっているはずだ。確かに最終回近くはちゃんと観たような気がする。『ダグラム』が17時55分に始まり、『ゴッドマーズ』が18時00分から始まる期間が、1ヶ月しかないのも意外だった。17時55分から『ダグラム』の頭の部分を観て、『ゴッドマーズ』のAパートが始まるタイミングでチャンネルを変えている時期が、長かった気がしていたのだが。1983年4月以降の記憶とゴッチャになっていたようだ。
『ダグラム』と『ゴッドマーズ』が終わっても、金曜夕方の作品についてのアニメファンの悩みは終わらなかった。『ダグラム』の後番組は『装甲騎兵ボトムズ』だった。高橋良輔監督のリアルロボット路線の第2弾で、ハードさを極めた人気作だ。『ボトムズ』スタートの数ヶ月後、再び、日本テレビ系で金曜18時のアニメがスタートする。『魔法の天使クリィミーマミ』だ。『マミ』は少女向け作品であるのと同時に、アニメファンにもアピールした作品だ。この時も、アニメファンは「ボトムズ派」と「マミ派」に別れた。
その2作品の放映データを、書き出すと以下のようになる。
『装甲騎兵 ボトムズ』(全52話) 日本テレビ系
全話(1983年04月01日〜1984年03月23日) 17時55分〜18時25分
『魔法の天使 クリィミーマミ』(全52話) テレビ東京系
全話(1983年07月01日〜1984年06月29日) 18時00分〜18時30分
ただ、この時、僕は悩まなかった。すでに友達もビデオデッキを購入し、録画したテープをコレクションとして残すようになっていたのだ。自分は『マミ』を録画し、『ボトムズ』は友達のビデオコレクションで観せてもらっていた。
第72回へつづく
太陽の牙ダグラム DVD-BOX The 25th anniversary memory
カラー/2層ディスク・17枚組/4:3/音声:TVシリーズ・モノラル 劇場作品・ステレオ
価格/91560円(税込)
発売・販売元/タキ・コーポレーション
[Amazon]
(09.02.23)