第75回 『ゴッドマーズ』思いつくまま
本放送時、アニメ雑誌の中でも、特に「アニメージュ」がスタジオNo.1とスタジオZ5を押していた印象がある。1982年11月号(vol.53)の『ゴッドマーズ』特集では、「映画用イメージ・イラスト競作選」と題して越智一裕、飯島正勝、亀垣一、平山智、鍋島修が描いた劇場版『六神合体ゴッドマーズ』のイメージイラストを、それぞれのコメントつきで1ページ1枚ずつ掲載(劇場版はTVシリーズ「ギシン星編」に新作を足して再編集したもので、TVシリーズ最終回直前に公開された)。同特集では、鍋島修が初めて絵コンテを描いた49話を取り上げて、No.1とZ5とメンバーの作画担当パート、プロフィールを紹介している。また、「かめがきはじめくんの『えっ?にっき』 スタジオZ5の1日」という愉快な描き下ろしも掲載。『ゴッドマーズ』関係記事ではないが、翌年の2月号(vol.56)には「1983年版アニメーション白書」記事の一部として「スタジオNo.1とスタジオZ5の『俺たちの10大ニュース』」という座談会がある。これも印象的な記事だ。その10大ニュースで、僕の高校でやったサイン会が3位にランクインしている。ちなみにその座談会記事のサブタイトルは「今年もキャラは似なかった」だ。
「TVアニメ25年史」の編集をしていた頃(僕がアニメ雑誌で仕事を始めて数年目)に、アニメージュ編集部で、何人かで原稿の内容について話をしていて、僕は「『ゴッドマーズ』は究極のロボットアニメだと思う」と言った。ロボットアニメの様式美を突き詰めた作品だし、ドラマチックな部分は、長浜忠夫監督のドラマチックロボットアニメを受け継いでいるように見える。美麗なキャラクターも、いかにもロボットアニメらしいもので、アクション作画はシリーズ通じて充実している。そういうつもりで「究極のロボットアニメ」だと言ったのだが、ライターさんに「え〜〜」と言われてしまった。そのライターさんは「それはないだろ」と思ったのだろう。今なら「古典的なスーパーロボットものとして洗練された、完成度の高い作品」といった表現にする。ただ、当時、リアルロボットものという言葉はすでにあったけれど、ロボットアニメを「リアルロボットもの」と「スーパーロボットもの」に分けて考えるのは、一般化していなかったはずだ。
本放送当時、僕の周りで「『ゴッドマーズ』の最終回には、『新・鉄人』の鉄人と正太郎が助けにくる」という噂が流れていた。『ゴッドマーズ』には、『新・鉄人』に登場していた大塚警部が、引き続き大塚長官として登場していたので、ちょっと真実味があった。僕は、タケルが大ピンチになった時に、大塚長官が「ついに、この日がきたか……」などと言って、正太郎を呼び出すのだろうと予想していた。『新・鉄人』の鉄人&ブラックオックスに続く、ダブルヒーローというわけだ。ところが正太郎も鉄人も、『ゴッドマーズ』には登場しなかった。DVD BOX解説書のために堀越徹プロデューサーに取材した際に、その事について確かめた。大塚警部を引き続き登場させたのは、視聴者の気持ちを『新・鉄人』から繋げるためのフックであり、また、メインキャラクターが原作のイメージと変わってしまったので、どこかに横山作品の匂いを残したかったため、だったそうだ。堀越プロデューサーとしては『新・鉄人』と『ゴッドマーズ』の世界が繋がっているとは思っていなかったし、鉄人を出すつもりもなかった。ただ、関係者に話を聞いていくと、参加していたアニメーターの中に「自分も鉄人が出ると思っていた」と言ってくれた人がいた。ただ、そのアニメーターも他のスタッフからそのプランを聞いたのか、勝手にそう思っていたのかは覚えていなかった。ひょっとしたら、メインスタッフの誰かが「鉄人登場案」を考えていたのではないかと思うのだが。
以前から、何となくタケルが所属するクラッシャー隊が、「ウルトラマン」の科学特捜隊、「ウルトラセブン」のウルトラ警備隊に似ている気がしていた。どこが似ているのか考えてみると、まず、いずれも最新メカを駆使して、地球を護る組織ではあるが、実動する隊員の数が非常に少ない。コスモ・クラッシャーが、ウルトラホーク1号と同様に3機に分離する。ユニホームがブルーを基調にしているのが、ウルトラ警備隊に似ていると言えば似ている。途中で、明石ナミダという少年が、クラッシャー隊の隊員になるが、これはホシノ少年が科学特捜隊の特別隊員になったのと、同様の展開であるはずだ。またクラッシャー隊の話題でもなければ、第1期ウルトラシリーズの話題でもないが、10話「宇宙からきた少女!」は、『帰ってきたウルトラマン』の傑作である31話「悪魔と天使の間に…」とプロットが似ている。クラッシャー隊の運営や、ナミダに関しては、シリーズ構成の藤川桂介の作劇によるものだろう。この原稿を書きながら調べたら、「ウルトラマン」でホシノ少年が特別隊員になる17話「無限へのパスポート」も、彼の脚本だ。前述のDVD BOX解説書では、本橋秀之にも取材をしており、それについても聞いている。彼は、クラッシャー隊のイメージについて「特に理由はないですけど。ただ『ウルトラセブン』風に……と考えたところはあると思います」と語ってくれた。
第76回へつづく
(09.02.27)