第91回 『Gライタン』
世間では、この作品のタイトルを『黄金戦士ゴールドライタン』と表記する場合が多いが、WEBアニメスタイルは『Gライタン』だ。これは、データ原口さんのリスト制作委員会の考えに則り、映像でどのようにタイトルがクレジットされたのかを重視しているからだ。本作品のオープニング映像では『Gライタン』と表示され、「G」に「ゴールド」とルビが振られている。
『Gライタン』は、1981年3月1日から翌年2月18日まで放映されたタツノコプロのロボットアニメだ。ライターのようなメカが変形&巨大化して、ロボットとして戦うという、ちょっと変わったアイデアの作品だった。総監督は真下耕一。彼はタツノコ四天王と呼ばれる若手スタッフの1人で、アニメ史的に言うと、タツノコで育った彼らが、力を発揮し始めた頃の作品となる。この作品にあったスタッフの勢いが、続く『未来警察ウラシマン』に受け継がれていく事になる。基本的には、子供向けのロボットアニメなのだが、ところどころに、それまでにない新しさが感じられた。僕は主に作画的な興味で観ていたが、ゴールドライタンがやってきたメカ次元という異世界の描写等が面白いと思っていた。シリーズ終盤は敵ボスの交代劇もあり、ストーリーも楽しめた。主人公とロボットの関係で言えば、先日最終回を迎えた「ケータイ捜査官7」とイメージがかぶるところが多い。というか、「ケータイ捜査官7」のスタッフが『Gライタン』を意識していないわけがないと思っている。
僕は、放送開始時には『Gライタン』を観ていなかった。よく知りもしないで、子供向けの作品だと思って馬鹿にしていたのだろう。シリーズが半ばを過ぎた頃に、友達が「『Gライタン』が凄いんだ」と教えてくれた。なかむらたかしというアニメーターの回が凄いのだ。彼は熱弁を振るってくれた。それで『Gライタン』を観るようになった。最初に観たのはどの話だっただろうか。とにかくなかむらたかしが作画監督を務めた、超絶作画のエピソードに、鼻血が出そうになるくらい興奮した。「こんなアニメがあったのか!?」と思った。他のアニメと明らかに別モノだった。
当時も今も、僕にとっての『Gライタン』のベストエピソードは、なかむらたかしが担当した41話「大魔神の涙」だ。これは何度観てもうっとりする。アニメ雑誌に取り上げられた事と、ドラマ面での面白さから48話「標的マンナッカー」が話題になる事が多いが、作画の密度、完成度の高さでいったら「大魔神の涙」がベストだ。これは強く主張したいポイントだ。クレジットを信じるなら「大魔神の涙」は、なかむらたかしの1人原画であり、「標的マンナッカー」には他の原画マンも参加している。大きな話になってしまうが、日本のTVアニメ史上において「大魔神の涙」くらい1人のアニメメーターがパワーを発揮したフィルムは他にないだろうし、あれほど動きの快楽に溢れたフィルムもないと思う。「大魔神の涙」に次ぐ仕上がりが、22話「生きている人形」だ(この話は、前述の友達が勧めてくれた時には、すでに放映されており、再放送で観た)。これもクレジットを信じるならば、なかむらたかしの1人原画だった。なかむらたかしに次いでパワフルな活躍していたのが、井口忠一だった。シリーズ終盤で、井口忠一は48話、51話、最終回である52話(なかむらたかしと共同)と、連続して作画監督を担当。『Gライタン』を盛り上げた殊勲選手だ。井口忠一は、各話のゲストメカのデザインも素晴らしかった。
なかむらたかしの『Gライタン』の魅力は、フルアニメ的な動き、それまでになかった緻密さ、日本のアニメならではの外連味だったのだろう。僕は、直感的に「これが本当のアニメなんだろう」と思った。そう思うくらい魅力があった。前述したとおり、他にも見どころのある作品だったが、僕にとっては『Gライタン』イコール、なかむらたかしだった。
第92回へつづく
(09.03.24)